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Theater Report #79
01.Sep.02 19:00
 “MERCE CUNNINGHAM DANCE COMPANY”

 これは「RIVER TO RIVER FESTIVAL 2002」と云うEventの中の更に〈EVENING STARS Music and Dance Festival〉と云う催し物の中のProgramでBattery・Parkに設けられた野外特設ステージで行われていた。無料の催し物で誰でもBattery・Parkに足を運べば観ることが出来る。

 このDanceCompanyの主宰であるMerce Cunningham氏は1939〜1944年Martha GrahamのCompanyでSoloistを勤めていた人物でこのCompany自体も1953年の創立で来年創立50周年を迎える。立派なものである。その歴史に敬意を表したいと思う。

 敬意は表したが、この日のステージが面白かったかというとそういう訳ではない。音楽もダンスもとても古臭い感じがした。何となく60年代後半〜70年代初頭に掛けてのMovementの中から生み出された作品の様に感じた。もしかしたらその頃の作品の再演かも知れない。そうであるとしたら、これは50年と云う歴史の記念なのかも知れない。歴史的記念的作品だからと云って面白いとは限らない。寧ろそういう作品は歴史的知識や感慨というものがあってこそ面白いのであって、何の思いもなく観に行った人間を感動させるにはもっと他のものが必要なのは言うまでもない。と言う訳で私には面白くなかった。
 音楽はStageの前の2人の演奏者(Takehisa Kosugi & Christian Marclay)による生演奏であった。この日は雨が降っていたので2人は透明なビニールシートの中に楽器共々入ってと云うか、シートを掛けられて演奏していた。どちらかと言えばこのMusicianの蠢きの方が面白かった。

 何故面白いと感じられなかったのか?私の感性が乏しいのも理由の一つかも知れない。然し最も大きな点はそれは「作品と会場(空間)がFitしていなかった」為だと思う。これは明らかにModernDanceなのだが、屋外でModernDanceをやる場合は空間をしっかり把握し綿密に計算しておかないとDancerやDance自体が持つEnergyが拡散放射されてしまい観客に伝わる事無く雲散霧消してしまう場合が多いと思う。今回は間違いなくその例だ。恐らくこのDanceから滲み出すEnergyが空間から消えることなく蓄積され、その蓄積されたEnergyの中に置かれた観客はそのEnergyに浸されて初めて作品を感じ取る事が出来るのではないだろうか?然しこの会場は雨の降る屋外でEnergyは土に吸われ、森に吸われ、開け放たれた空間に散って行ってしまった。これでは観客に伝わるものは何も無くなってしまう。その辺に面白く感じられなかった最大の原因が在る様に思う。
 屋外でのPerformanceには余りSeriousではないものやEntertainment性のあるもの等の方が向いていると思う。

 然し音楽の、特にSynthesizerの音の選び方が古臭いのは否めない。丸でAnalogueSynthの様であった。もしかしたら本当にムーグ辺りを使っていたのかも知れない。そんな懐古趣味的な懐かしい音に溢れていた。それが一概に悪いとは思わないが、兎に角この作品の中では古臭さを強調するだけに終わってしまっていた様に感じた。

 きっとこのCompanyももっと作品に適した空間で演じれば面白いと思うので機会があったら是非もう一度、今度はそういった空間で作品を見てみたいと思う、New York辺りに住んでいないと仲々そんな機会はないだろうけど。