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Theater Reports #73
28.Aug.02
 “The Boys From Syracuse”
 初日1日で観て置きたかった作品3本の内2本を観る事が出来た。時差呆けも少々有って疲れた。

 この作品は新聞評は良くなかったらしいが、Broadway関連のHome Pageで客の入りを観ると実によく入っていて、時にはあの「Producers」よりも多く入っていたりする日もあるという。大いに期待出来る作品なのである。

 内容はSyracuse(シラクサ)から来た2人組とそっくりのEphesus(エペソ)に住む2人組が入れ替わって起きるドタバタ喜劇である。内容的には他愛もない話で最後はハッピーエンドで終わる。目出度し目出度しと言った感じである。それぞれの2人組がみんな兄弟であることも判明し父親母親も判明し、実に目出度いラストである。コメディなので勿論笑える所も結構ある。

 この劇場は以前ケビン・ベーコンの独り芝居「An Almost Holy Picture 」のリハーサルを見学させて頂いているので、舞台の懐や裏をよく知っているのだが、よくまああれだけの大道具を出したり入れたりするものである。非常に懐は狭いんですよ、此処は。それなのに下手からはそこそこ大きな階段は出てくるし、上手からは9尺以上はありそうなワゴンは出てくるし、でこれを考えた人は偉い。拍手!上手は下手より少し広い筈だがあんなワゴンを隠しておける余裕は余り無いはずだ。どうやってるんだろう。Broadwayの劇場では、裏を見せて貰うと何時もこの点に関しては感動的な気持ちになる。例えその作品が詰まらなくてもこの大道具のパズルの一見に関しては実によく考えてあって素晴らしい。この作品の場合あの人懐っこいスティーブが考えたんだろうか?

 この作品“The Boys from Syracuse”は観ていて嫌になることはない、好きな人は結構好きだと思う。事実私はそんなに嫌いなミュージカルではない。結構楽しめた。
 然し問題は多い。まず古代ギリシャを舞台に繰り広げられている舞台にしては音楽が現代的過ぎる。もう少しそれ風のメロディがあっても良いんじゃなかろうか。Girls5名の内1名がユニゾンで踊る時に必ず1拍遅れるのもいけない。その様な難しい振付をしているとは考えられないのであれは確実にズレていたのだ、1名だけズレていると云うのは実に見苦しい。何とかして頂きたい。コメディには欠かせないと言っても良い人気者の小母さんというか姉御のキャラが弱い。もう少し押し出しがなければいけない。もう少しスピード感が欲しいし、場面毎のメリハリも欲しい、冗漫と云う程酷くはないが、とてもスムーズとは言えない。この辺はマチネで「〜Mille」のとてつもなくスムーズなものを観てしまってその印象があるので少々可哀想かも知れない。

 このミュージカルで最も良くなかったもの、それは音響である。五月蠅い!あんな大音響を出す必要が何処にあるのか?2階の6列目の一番上手よりの席で観たのだが、始まった瞬間「五月蠅い!」と心の中で叫んだ。大して広くもない劇場で音量を上げすぎているので当然音の抜けは悪く、返って台詞が聞き取りにくい。オーケストラと声のBalanceも良くない。大音量なので当然声と役者の位置の距離は多いにズレている。距離感は違和感だらけであった。

 もう少し煮詰めて、Dancerを鍛えて、音響を何とかすればもう少し良くなると思う。折角客が入ってんだから悪い点を修正して少しでも長く上演して頂きたい。