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Theater Report 50
           

02.Feb.02 14:00
 “The Complete Works of William Shakespeare ( Abridged )”
 長いタイトルですが、呼んでお分かりの様に西洋演劇の古典中の古典、西洋演劇の基礎、西洋演劇史上最高の劇作家、凡ての西洋演劇の中心にいると一部で言われているシェークスピアの作品の凡てを一度にやってしまおうという試験前の一夜漬けみたいな舞台です(ロシアではどうもチェーホフが演劇の基礎にして最高の劇作家らしい)。
 シェーさんの戯曲37作と154編のソネットを約2時間で捲し立てる早業コメディーと資料にはありますが、全部出ていたかどうかは不明です。全部は読んだ事ないし、第一英語では読んだ事もなければ覚えている筈のないので不明ですが、結構な数は出てました。「King John」から「King Henry [」まではフットボールの試合にして、ボールの変わりに王冠をやり取りして中継風に約5分で済ませてました。
 その他「ロミオとジュリエット」「マクベス」「オセロー」「真夏の夜の夢」「ベニスの商人」は出ていたと思う、何せゴチャ混ぜなので考えている間に次に行ってしまう所が殆どだった。「ジュリアス・シーザー」と「アンソニーとクレオパトラ」は一度にやっていたし、「テンペスト」と何かも混ぜていた。
 ソネットについては元を全く知らないのでお手上げでした。それにつけてもテンポの良い舞台であった。間の使い方も抜群で、台詞や動きなしでも上手く笑いを取っていた。
 「モンティーパイソンの桁外れのユーモアと、マックスブラザースの剽軽さをサタデーナイトライブ型のコントに纏める」と矢張り資料にあるがモンティパイソン的な所は至る所にあった。

 然し矢張り西洋演劇の基本はもう少しちゃんと勉強して置かなくてはいけないのである。勉強不足で判らなかった所があると思うと悔しいのである。演劇に限らずあらゆる分野でシェークスピアの影響の及んでない作家はいないんじゃないかと思われる程の影響力の持ち主ですから、この人をちゃんとやっておけば結構見えてくる作品多いはずです。日本の漫画文化に於ける手塚治虫みたいなモンですね。直接又は間接的に必ず影響を受けているわけです。基本をちゃんとしとかないと型破りな事は出来ません。基礎なしで型に嵌ってないのは「形無し」というのだと猿之助さんが言ってました。

 多くのお客さんは基を知ってて来てるんだからそりゃあ、面白いでしょう。爆笑の嵐でした。シェーさんは西洋に於ける知的会話の基本でもありますから、これを押さえておかないとインテリジェンスなお付き合いは出来ないそうです。皆さんも電車なんかに乗り遅れた時なんかは「too late , Yuranosuke」位の事は言って見ましょう。南北は日本の基本の一人ですからね。日本人ももっと自国の古典を勉強しないといけませんよね。形無しの舞台しか出来なくなっては困りますからね、何時か観た「カルメン」の様に。

 さて色々シェーさんの作品が出てきて、一幕は、次は「ハムレット」をやろうと言う所で終わりです。一人があれは嫌だやりたくないと言って劇場を出て行ってしまい、それを追ってもう一人出て行ってしまうと残った一人が困った様に彼らは絶対戻ってくるから10分待って下さい。と言って休憩です。2幕は彼らが戻ってこないので、みんなでソネットでも回し読みしましょうかと言っていると戻ってきてハムレットの始まりです。ハムレットでは女の子1人と男の子1人が舞台に上げられます。やる事は2人とも簡単です。女の子は切っ掛けが来たら悲鳴を上げるだけ、男の子は舞台上の2つの柱の間を矢張り切っ掛けが来たら行ったり来たりするだけです。これに出演するとTシャツが貰えます。欲しい方は出演者が探しに来たら「私はやってみたい」という顔をして訴えて下さい。出演出来るかも知れません。
 2幕は「ハムレット」だけです。これで引っ張ります。ここが一寸解せなかった所です。折角1幕を快調に飛ばしていたのに、2幕で少し失速します。少々諄くもなってきます。2幕をもう少しスッキリさせた方が面白いと思うけどなあ。

 NYに来て初めてメインのスピーカーがカモフラージュしてあった。舞台は大臣柱から框まで凡て作り込まれているので、スピーカーも舞台に合わせたモノで隠されていた。フットボール中継やハンドマイクを使って1人が台詞&効果音をやる所など以外は生なのでマイクと生を巧く使い分けていたなと云った感じでした。

 かなり楽しめる舞台なので機会のある方は是非御覧下さい。ロンドンでもやっているらしいです。当然役者は違うと思いますが、同様に若しくはもっと面白いかも知れません。何せエゲレスの方ですからね、シェーさんは。