▼クリオネの灯り
──ボイスドラマ──
『ミノリちゃんの未来の想い出』
〜遠い街の病室で独り書き綴ったメール〜
◎ 6月23日 09:19:10 メモ
病院ではいつもパジャマです。
だけど、ベットの横には制服がかけてあります。
またいつでも着て行けるように。
◎ 6月26日 23:02:22 メモ
今、夜の11時です。なんか眠れなくて、
待合室の自動販売機のところに来ています。
私、フルーツ牛乳大好き。
方君と杏子ちゃんは何が好きですか?
いつか、夜風に当たりながら三人でジュース飲めるといいな。
◎ 6月28日 13:30:33 メモ
真夜中、看護婦(師)さんがバタバタしていました。
病院で優しくしてくれてたおじいちゃんが死んじゃったんだ…。
でも、今朝になったらベットはキレイになってて、
みんな何事もなかったように、いつもと変わらない日常で。
…ねぇ、人って亡くなるとどこに行くのかな。
天国って本当にあって、みんなまたそこで再会出来るのかな。
それともみんな消えて無くなって、忘れられちゃうのかな。
◎ 6月30日 16:11:44 メモ
病気の具合が良くないみたい。
また遠くの病院に転院することになりそうです。
また二人と離れちゃう…ね。
◎ 7月7日 14:35:16 メモ
今、午後の2時半です。
外は小雨が降っています。
昨日、新しい病院の先生に、
「入院はちょっと長くなりそう」って、
言われちゃった…。
その言い方がとっても冷たくて、
その時は「はい」って普通に答えたけど、
夕方、少し泣いちゃった。
夏のお祭りは外出許可もらうつもりだったけど、
この分だと無理みたいです。
◎ 7月8日 20:23:10 メモ
私の空想…。
夏休みに三人でお祭り行くの。
それで金魚すくいとか射的とかたくさんやるの。
そしてね、一通り夜店回ったら、
夜の海を見ながら三人で色んな事いっぱい話すの。
方君の気持ち、杏子ちゃんの気持ち、私の気持ち。
それから、方君と杏子ちゃんは仲良く走っていく。
途中、二人は振り向いて笑顔で手を振ってくれる。
そしてまた走り出す。
私はそんな二人の姿をいつまでもいつまでも眺め続ける。
見えなくなるまでずっとずっと…。
そして私は静かに目をつぶり消えていく。
私の消えた跡には携帯だけが残ってる。
その携帯が私の生きていた証。
でもそのうち波にさらわれて暗い海に沈んじゃうの。
誰にも知られずにひっそりと。そこが私のお墓…。
ごめんなさい。こんな変なこと言ったら二人に嫌われちゃうね…。
◎ 7月30日 14:10:16 メモ
今日はさわやかな日和です。
窓から入ってくる陽射しは柔らかくて、
カーテンがそよ風で揺れています。
なんか気持ちよくって、
気が付くと、あの街を思い出しながら
一人唄を口ずさんでいました。
辛いことがいっぱいあったのに、
今でも帰りたい。なんでかな。
方君と杏子ちゃんが待っていてくれるからかな。
この風に乗って二人のところへ
行けたらいいのにな…。
※ ※ ※
あ り が と う ――
※解 説 語りの内容は物語と大きく関係しています。「ミノリちゃんの未来の想い出」数十編中より抜粋。
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原作:Natural-Rain
音楽:Satoru
語り:Naki
Copyright Natural-Rain. All rights reserved.
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