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市民環境研究所から
マスコミに載らない情報の意義

前号で、2010年を表す一文字が「暑」だったと書いたが、その直後から日本列島は大「寒」波に襲われた。先週は所用で鳥取市に出かけてきたが、年末から続く降雪と曇天の連続で市民の疲れは極限に達しているようで、新聞の見出しも、「雪、もう嫌」であった。
 通常国会が始まったが、菅内閣の「熱」い思いはまだ伝わって来ないばかりか、野党の寒々しさが寒波を増幅させている。そんな日本の寒々とした状況から目を転じれば、チュニジアとエジプトでは大衆が死をも恐れず突き進んでおり、その熱さに見とれている。
 インターネットでの民衆・市民同士の情報交換の素早さが、事態の進展に大きく影響したと報じられている。それに比して独裁国のテレビ放送は権力者の言い分のみで、だれも信じてないニュースを流し続けている。チュニジアやエジプトの事態は、そのことを明瞭に示している。
 独裁者はいないが、日本のマスメディア、とくにテレビ界の質の低さは目に余る。ついこの間までは、なんとか海老蔵と暴力団とのもめごと報道に大きな時間を割き、それが終わると沢尻なんとかに膨大な放送時間を使っている。なんともはや情けない限りである。
 民主党の小沢一郎の政治資金問題とて同一レベルだ。そう言えばお叱りを受けるかもしれないが、これほど金と時間を掛けなければならない問題だろうか。
 自民党をはじめとする野党集団も、この問題を追及すれば国が良くなるとは、おそらく本気で思ってもいないだろう。「政治とカネ」という総論を被せれば、さも重大事になるのを利用しているだけではないか。にもかかわらず、あたかも鬼の首を取ったかのように騒いでいる谷垣に国を任せられないことだけは確かである。
 テレビが信頼されないのは、独裁国も今の日本も大差がないように思われる。それに比べれば、まがい物が大半を占めるかも知れないとはいえ、インターネット上から信頼できる情報を見つけ出すテクニックと見識を持てば、これほど便利なものはないだろう。
 テレビコマーシャルでは連日、“低炭素社会実現は原発推進から”などと真っ赤な嘘が垂れ流されている。昨夜、その嘘を暴く市民講座を開いた。「上関原発」反対運動に取り組んでいる人も参加してくれた講座は、意義深いものだった。
 一夜明けて、我が家のアドレスにメールが届いた。上関の運動に加わっている若者がハンガーストライキを敢行しているので支援の輪を拡げてほしい、との要請だった。この若者達は、新聞やテレビでは報道されない上関原発問題をインターネット上で知って、やって来た人たちだという。
 このメールを見て、鳥取で出会った旧知の新聞記者との会話を思い出した。地方で起こったことで、地方版にしか書かせて貰えない事案でも書いていれば、その地方版を見ることがない他府県の人からの問い合わせがあるという。
 インターネット上での検索でヒットして知ったのだろう。この硬骨記者はインターネット社会で仕事をしているのだと再認識し、全国紙には載せて貰えない記事を地方版の片隅にでも書き続けるだろうし、そのことが社会を変えて行くことに繋がるだろうと思った。 
(石田紀郎)


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