複素数の行列表現

複素平面と2x2行列で扱う平面上の対応である。
結論的に言うと
実数単位 1 =>単位行列      Eとおく
虚数単位  i =>90度回転の行列  Iとおく


複素数を乗じるとは偏角だけ回転させる、かつ、絶対値はスカラー倍=> 回転の行列による一次変換とスカラー倍という作用

純虚数iをかけると、90度回転する。複素数とは、「実部」と「90度回転させる純虚数i」の要素で表現される。=> 実部は単位行列、虚部は90度回転の行列に対応していく 

回転の式が結局 オイラーの式の複素数表現だったとはね。
横道にそれるけど、こっちで双曲線関数と楕円関数の話もどうかい。


さらに、趣味に走ると、4元数なんてのもある。
今度はaとbを複素数として、あらたに j という虚数単位を導入し a+bj  なんてのを想像する。

 
a + bj  α、β、γ、δを実数として a=α+βi    b=γ+δi  で代入してみると
=α+βi +γj+δij  問題は, iとjを掛けるとどうか?これは、なんと新しいまた「虚数単位 k 」だという。 すなわち4元数だ。
=α+βi +γj+δk
(さらに4元数を係数にして、新たな虚数単位を1つ追加すると8元数に拡張されます)

ここで、jというあたらに導入したものは複素平面をさらに立体的に見て上向きに向いた新しい軸なんて想像したりできるかもしれない。
そのとき、正の実軸から見て90度づつ回転すると 1→i→-1→-i→1という複素平面と同じように
j方向についても、同じで1→j→-1→-j→1 だからiもjも2乗すると-1である。

このとき、ij=k、jk=i、ki=j といった3次元の単位ベクトルの外積の関係のような決まりごととなっている。
4次元を想像できないから、このときは実軸を捨てて3軸を想像してみることになるだろう。
ij=kの両辺にkを掛けると kij=kk  ki=jだから jj=kk  左辺がjの2乗だからkの2乗も-1ということになる。
i,j,kはみな2乗すると-1であるから、馴染みのあるiだけ特別という立場でもない。

i,j,kは外積のように掛ける循環が逆だと符号がマイナスになることもわかる。
また、ijkも-1である。


なので、
4元数なんて数はベクトル積みたいなものが出てきてやっぱり行列なんかと関係ありそうな話になるだろう。
外積と同様で、異なる虚数単位の交換の法則は成り立たない。 ij=-ji というように符号が反対になる。

(a+bi)(c+di) =(ac-bd)+(bc+ad)i  a、b、c、dを実数、  i という虚数単位
今回は上記のようにはいかない。 a、b、c、dを複素数として、あらたにjという虚数単位を導入して掛け算をやってみると、
(a+bj)(c+dj)≠(ac-bd)+(bc+ad)j   ただし、ij=kなので、虚数単位kまで出さなくても そのままやってみる。

2つの式を並べてみると
(a+bi)(c+di) =(ac-bd )+(bc+ad)i  a、b、c、dを 実数、  i という虚数単位
(a+bj)(c+dj) =(ac-bd*)+(bc*+ad)j  a、b、c、dを複素数、 j という虚数単位  ここで、*マークは共役複素数を表す。

複素数が係数であるからである。「複素数の虚部」と 「j」 の掛け算は、ixj と jxi は同じではない。
掛ける順序により ij=-ji となり虚部符号がかわるから、かける順序変えたら、共役複素数が出てくるのである。

 c=p+qi    d=r+si  として 、c、d の共役複素数を、c*、d* とすると、c*=p-qi    d*=r-si 
jd=j(r+si)=rj+sji=rj-sij=(r-si)j=d*j     jc=(p-qi)j=c*j

(a+bj)(c+dj) = ac+bjdj+bjc+adj = ac+b(jd)j+b(jc)+adj =ac+bd*jj+bc*j+adj = ac+bd*(jj)+(bc*+ad)j
= (ac-bd*)+(bc*+ad)j

行列表現も違う、上の積がうまく成り立つのは共役複素数を使った表現である。


α、β、γ、δ の係数がかかる行列は4つの2x2行列を抽出する。ただ、成分に[虚数単位のi]があるので、表現として一般性を欠く。

α、β、γ、δを実数として、複素数の行列表現を使い置き換えれば、 1=>E 、 i=>I というので良い、
もしくは  a=α+βi =>αE+βI     bγ+δi=>γE+δI  a*=α-βi  =>αE-βI    b*=γ-δi =>γE-δI  で代入してみてもよい

αEI γE
-γE αE

ここで E と I という2x2行列が成分になるので、全体としては 4x4行列となる。実数に対応するのはやはり単位行列である。
その他の虚数単位i,j,kに相当する4x4行列が3つ出てくる。これらの相互の掛け算はi,j,kと同様の性質で演算が矛盾しない。

α γ
β α δ γ
α β
δ α
実部
虚数i
-1
-1
虚数j
-1
-1
虚数k
-1
1 0
-1
1

3つの虚数方向成分ベクトル的に扱うとベクトルの積のような性質が如実にわかるが、
虚数成分同士の積はベクトル積なのか内積なのか?

どちらとも言えず その差分のような式の形になる。
 「ベクトル積」−「スカラー積」で、 「外積」−「内積」 という形である

虚部同士の掛け算の部分をi,j,kの方向成分を持つベクトルと想定して9項を表にしてみると、

外積(i,j,kの成分を持つベクトル量)−内積(スカラー) のような演算である。

a×b

b1i

b2j

b3k

a1i

-a1b1

a1b2k

-a1b3j

a2j

-a2b1k

-a2b2

a2b3i

a3k

a3b1j

-a3b2i

-a3b3


共役複素数のようなものも4元数で定義してよさそうだ。
解と係数の関係からして、お馴染みの実数係数の二次方程式の解にも無理やりなってしまう。
(高校では2次方程式の係数が実数しかほぼ扱わないことに注意、別に係数が複素数でもいいのだが)

解と係数の関係からして,互いに足しても掛けても実数になる2解は、それらが共役複素数である。

(x−α)(x−β)=0  という方程式の 2つの解は αとβである。

たとえば 2±13i という解の場合   α+β=4 、αβ=2
2+132 =4+169=173 
しかし  2±(3i+4j+12k) でも   α+β=4 、αβ=2
2+32+42+122 =22+52+122=22+132 =4+169=173   
 .... 計算の中で ik とki などは打 ち消 しあ うところがミソである。
ここでは、共役複素数同士の掛け算は4元ベクトルの大きさの二乗になるのである。

この例では2乗の3つの和が、13の2乗になるような、係数を選べばいいから、いくらでもできるのだ。
ここでは、整数でわかりやすい例にしただけだ。


なので、jとkの成分には遠慮してもらって、高校レベルでは、
解の虚数部は(±13,0,0)という13の大きさのベクトルを代表して解ですと言っている。
なんて解釈してもおもしろいが。

大きさ13のベクトルだから、(3,4,12),(-3,4,12),(12,-4,-3),(0,5,12),(5,0,12),(-12,5,0)とかいろいろ、さらに整数でないなら、いくらでもある。

4元数の虚数部がベクトルとして使われるようになって、廃れていきますが、行列計算より便利とのことでコンピュータでは使われているようです。
8元数の実用性が見出されなかったのですが、超弦理論などで10次元や11次元における時間を除く次元には、8元数が有力とされています。