東京U笠原情報誌    MAIL版   <No.97>  2005年4月27日

 

                                発行:笠原町美濃焼振興協議会

                                  0572-43-3131

                                  発信:笠原町東京情報局

                                  03-5330-1686

                                                                                                                                             

 


2004年度「笠原政経塾」  〜地域経済の活性化を目指して〜

『ボケない建築をつくるタイル選び』 形態表現とタイル

講師 今井秀明氏  (株)今井建築設計事務所

 

2004年度「笠原政経塾」は、200532919時より笠原町中央公民館において開催され、建築家のタイルへの熱き思いを語って戴きました。

第一部では東京より建築家の今井秀明先生をお招きし『ボケない建築をつくるタイル選び』に関する講演を頂き、第二部では今井秀明先生とタイルコーディネーターの太田吉雄氏を囲んで『タイルコーディネーターの役割とは、何か?』と題して座談会を行いました。

ここでは、今井秀明先生の講演内容を紹介します。

 

今井先生の講演内容

「ボケない」ということはよく講演でのタイトルに使っています。こうすればボケないのですねと誤解をされやすいのですが、そうではなく、設計を通して私自身30年間の中で試行錯誤をしたなかで、ボケない建物とは、しっかりと明快な意味を持つ建物のことです。今回はタイルという素材を通してお話したいと思います。建物を単純にひとつの箱として捉え、タイルを素材として選んだ時に、色、形というものだけで選ぶものではないと常々思っています。

今日は30年間やってきた自分の建物をスライドで見ながらしゃべっていきますが、基本的に、なぜタイルを使うのか? なぜこういう形のものなのか? 常にこの「なぜ」という問いかけなのです。

皆さんも、いま仕事でいろんなことに接していられると思いますけど、「なぜこういうタイルなの?」「予算がないから・・・」じゃないと思います。平米2万、5万を出して良いものができるかというとそうではないです。本当にそれを使う場所、建物の表現、建物がしっかりとした主張を持って、あるコンセプトの元にタイルというものが使われてきたなら値段は関係ないものです。この事をいろいろと考えてきまして、今行き着くところ、あるところまではきていますので、この流れをスライド(今井先生が設計した建築物)で見ていただき説明しますので、その中から学んでいただければと思います。

 

※ 以下スライドで説明されたポイントを羅列します。(キーワードなどとなると思いますので、先生のホームページの設計例を見ながら、参加できなかった方は参考にしていただければと思います。

※ 今井建築設計事務所 http://www.ne.jp/asahi/imai-architect/partners/index.htm 

 

■ 三井サンガーデンホテル(千葉県船橋市) 

下の部分は石、その上の部分は45のモザイクタイルを使用。色の違いとテクスチャーの違いがたまたま表面の釉薬の使い方、焼き方で出た物を利用。その時になぜ45モザイクを使うのかという話になりますけれども、この建物(の外壁を)を大きな面として捉えていきたい。その時にはタイルというものが一個一個は主張してはいけないのではないかと考えたのです。

そのときに一番良かったのが45のモザイクタイルでした。建物というのは必ず基壇(足の部分)、胴体、頭と三部構成というのが建築の中にあります。色出しをすると、同じ45のモザイクでも、基壇になる部分では釉薬が梨地に仕上がること。上の部分は空に消えていくように、釉薬がまるでイスラムのサマルカンドのタイルと同じように非常につやのあるきれいな仕上げになるというのがこのときの建物の条件だったのです。それらはひとつの面として捉える必要があり、そのためにはタイルが主張して欲しくなかった。全体としてひとつのテクスチャーとなって欲しかった。

 

■ 観タワーハウス(45モザイクタイル例)

同じ面でタイルを貼っても、いろいろな重なりを作ろうとしました。45モザイクを使ったのは、この時もひとつひとつのタイルの主張ではなくて面という表現をしていきたかったというのがひとつ。もうひとつは面がいろいろな重なりを持って、ただ色だけではなく、タテ、ヨコ、いろんな重なりで皮膜を作りたかった。

同じ種類の形、色で焼き方を変えている。低層部はラスタータイル(濃いグレー)、上層は釉薬をかけた(グレー、薄いグレー、ブルー)物を使っています。

 建物自身が大きな正方形の形態をとる、そういう形にこだわった部分でもタイルを45角を使うことで全体がきちっと収まっていく。さらにタワーという建物の大きな表現ができる。だからこそ方向もあまりない、モザイクタイルを選んで使っています。

 

■ 板橋FM

この建物は、二つの道に挟まれた建物ので、大きな道路、騒音に対して、音などから守ってあげたい。大きな面で囲まれた中に居住部の建物が作られています。

細い通りから見た部分ですが、こちらからの方が、大きな面に囲まれた住居部分が入り込んでいるのがよくわかると思います。45モザイクと45二丁の対比でわかるように、囲まれた中にまた別の塊が入り込んでいる事を表現するためには、焼き方も基本的に梨地の45二丁の横使いに対して、45モザイクで大きな面で捉えたい、上薬を多く塗ったテカッとした感じでタイルを使っている。

 

     京都K眼科医院

ひとつの塊の中で薄い皮膜を45二丁掛けタイル使っています。

住むための住居は光をふんだんに取り入れたい。生活の中では重要なことで、その為に塔屋に弓形のカットされたシリンダー空間があり、そこから光が1階まで入れ込むようになっています。それを強調するためには垂直性の強いデザイン、重い表現では合わないので、さらに軽いスチールの柱と梁のスケルトン、壁も非常に柔らかなも、薄いものを表現してあげることでシリンダーの意味が強調されます。

 

     京都北山店舗併用集合住宅 

表面に少し膨らみをもったものと普通の45モザイクタイルと、タイルを割ったものを貼り付けています。これは泰山タイルです。色は横の建物の色に近い白にしてあります。それにより町並みの連続感がつくられ一体性が創られると思いました。カーブのついた壁は上部のモザイクタイルで創られた壁の力を受け止めています。モザイクで横に流れる面の表現になっている、これに対して力の流れはタテに流れていくわけですから、ここでは目地がランダムになることで大きな力の流れが視覚的に伝える事ができます。ここでは割モザイクでひとつな大きな面を作ってあげたい。大きな力の流れをつくってあげたいから割モザイクのタイルを使いたいと、この頃からなってきました。

 

■ エントランスです。ここの壁は一枚ずつ泰山で焼いたタイルの裏側にアクリルの乳白の物を張り、それをフラットバーで積み重ねていって、1個1個が光るようにひとつの面を作りました。焼ムラがかなりあるが金属のフラットバーの中で自由に暴れさせて、ひとつの大きな光の焼き物の面を作ることができたと思います。これらは手作りなのですが、与えられた時間のなかで泰山という作家と共につくっていく考え方。タイルという焼き物を扱っていく考え方です。

 

■ 京都山科共同住宅 一期、二期 ひとつの敷地の中で二つの建物をつないでいく方法。

第二期は、3,4年の時間が経過している。敷地が鍵方になっていますが、裏の建物と表の建物をどう繋げていくかがひとつの課題でした。もうひとつの課題は、年代で素材の表情が変る。面で用途が違うと選ぶタイル、選ぶ色をどう繋げていくか? ひとつの共通項は、以前使ったモザイクタイルを連続して使うということがキーワードになりました。

そのかわり表情の違いを一期が45モザイクを使っていましたので大きさをそろえつつも違いを出すために45二丁のスクラッチをつくり、二つの建物の連続性を持たせながらも違いを目立たたせる、際立たせる事を試みとしてこういったタイルを選びました。具体的には、裏側から繋がっている通路ですが、第一期の建物の特徴である外壁タイルを第二期の中で色を違えながらまた45二丁スクラッチの特徴であるタイルの使い分けをすることで連続性を出していきたいというのが狙いです。

 

■ 建物エントランスの部分では、外壁のタイル、ハーフボーダータイル、泰山の焼いた割タイルでつくられた陶彫の面が看板になる。それに対しいてここからエントランスだというひとつの表示、人を導いていくことをタイルの変化とタイルの使い方で表しています。コラボレーションの形でのタイルを表しています。

 

     京都山端郵便局  

外壁で扱ってきたタイルの表現では、タイルの素材を消したり、できるだけ大きなモザイクタイルを使うとか、大きな力の流れを作るためにタテ、ヨコの流れをグリットで表現されないために泰山のタイルを割っていくやり方で面を表現しました。この郵便局では、もう少し違った試みです。

 

■ モザイクの泰山でのレリーフを嵌め込んだり、郵便局の公共性の高さを強調しようと、地域のランドマーク、地域の中心であるので、タイルでどういうことで参加できるか、表現できるかというから、構造体に抽象的なレリーフをつけています。公共性の高い場所設定のためのデザインがあります。また局長がスポーツ好きで、タイルでスポーツのレリーフを表すことで地域の人に親しんでもらう狙いを入れました。

 

     洛北高校同窓会館 

この高校(昔の府立京都一中)では、旧校舎が昔の泰山タイルを使っていて、同窓会館では、昔の脈略、他の人達にはわからなくても、また形は異なっていても、その当時の精神、造られた素材を継承していくことが時代を超えてつなげていく方法ではないかと考えます。経年変化するなかで、タイルという素材は実はあまり経年変化がない。素材としてはものすごく親しみを感じつつ、時代を超えて繋がっていける素材ではないかと考えています。昔の泰山の素材を使うのではなく、その精神、釉薬がまだ残っていましたのでその色を使って、同窓会の入り口に時代を超えて誰も記憶にないのですが、そういう素材をこちらだけがささやかに繋げて使ってみようと考えた試みです。スロープの面に泰山のタイルを貼り、滑らない素材のタイルですが、さらに黒い滑り止めのゴムをいれ、エントランスとしての面と扱ってあげようとしています。新しい素材と古いものが融合させていく使い方。

 

東京大学経済学部の例では、まわりの校舎は縦スクラッチタイルが使われています。当然スクラッチを使うのですが、知識、素材に対する突っ込みがあいまいであったことから、既製のタイルのタイルから選んでいますが、たぶん今だったら、古い校舎のスクラッチのタイルを復元してみようということからはじめています。その当時は自分自身も力がなかった。すぐに選んでしまったという反省が原点になって今があります。

 正面の大きな壁ですが、その向こうにある教室は、光を入れて欲しくない教室などもありプログラムで決まっています。先ずスクラッチタイルが大きく構成されます。この壁の表現はスクラッチのリズムではなくて大きな正方形で形がつくられ正面性が強調されます。45のモザイクを使ってスクラッチとの対比、正方形という形から素材も同形をえらんでいます。この時ぐらいまではまだネット貼りでなくって、タイル割をして、目地調整をして貼りました。部材はカタログの中から選んで当時やったことに対して、20年経過した今では恥ずかしい思いです。もっと突っ込むべきでキャンパスに対して非常に申し訳ないと思っています。もと設計された方々の精神をもっとくんでいくべきで、古い素材をそのまま使うこともあるし、復元して使うこともある。形は違っても精神を継いでいくことがタイルの醍醐味なのです。

 古い素材を使って、そのまま組み立てた東大の地震研究所があります。解体され残っていたタイルを使って、もう一度組み立てた例もあります。

 同じ大学の総合資料館です。ネオゴチックという様式では、建物の形は必ず玄関の上にペディメントという形が取られます。このペディメントを大きな面から輪郭で取っていく。中にはめ込まれるものは元々はスクラッチタイルで出発しますから、そこから単純に選ばれているタイルを主に使っていこうということで選ばれました。中のタイルを連続させていく中に45のモザイクタイルをはめ込みました。素材でペデュメントを強調してあげる。

 

この後の座談会でお話させていただくセラミアートの大田さんが神戸女学院で復元されたタイルを、たまたま私どもの事務所に持ち込まれたのを見たのですが、復元されたタイルを見たときに本当に焼物なのです。この原点を私自信も本当に忘れていたものでした。本当にタイルの本質に戻っていく、そのためには、その当時は非常に焼きムラもあるし、当然暴れもあります。しかし、どんどん時代が変るとその焼ムラが良くない。暴れることも良くないという違う視点でどんどん進んでいったように思えます。

サンガーデンホテルの設計の時には、当時は色の均一を求めた。プレーンなもの、きれいなものを求め、次の施工でも同じような視点でタイルを求めた。温度差があり、いろいろなムラがあるときに、焼かれた中から本当に均一なものを常に求めていた。そういうものに対してこのタイルに出会ったときに、もう一度原点に戻してあげよう。当時の昭和初期、戦前から戦後というのは、素材が非常に自由に使われていた。これは非常に大事なことです。

いま、いろいろなことで品質ということを求めるときの品質って何だろうと問うときに、我々設計者の反省もあるのですが、ゼネコンの社内検査の品質項目に必ず色のムラが出てきます、欠けがあってはいけませんが。少々暴れてもそれを許容できないような、今の品質のなかではねられていくことが時代の中であるのではないか。どうしても求めたいときは徹底してきれいなものを求めるときもあるが、場合によってはもっと自由に、焼かれて出てきたものをそのまま自由に使っていく、それも大事なものだとこの数年間は思っています。

この試みとして、東京に建てた自然体で演技される有名な女優のご自宅ですが、この場所を訪れたときに非常に強いエネルギーを感じました。少々の素材では負けてしまう。しっかりとした存在感があるタイルを使用したいという思いがありました。コンクリート打ち放なしと存在感のあるタイルで、それも目地を大きく取って昔ながらの目地でデザインしてみようと思いました。それはひとつの大きな塊でないものを表現したい。ここでの素材は、素材が存在感を持つ。質量も感じるけれども、しかし重さを感じてはいけない。重量をガーッと感じてはいけない。考え方が全く違うものをタイルの中で求めてきたのです。

例えば打ち放しでは、型枠自体が昔のサネ工法ですが、今ゼネコンに求めても値段が高いということで撥ね付けられる。どういうものかコストですぐに決めてしまう。この場合は建設会社に間伐材で木造の壁下地に使う、皮がついたような杉板を大量に買ってきてもらって、皮は剥がしましたけれども、あとは水分を含んでいて暴れようが何しようがいいと、またこの型枠は、私と事務所のスタッフと、大学からカリキュラムで研修に来ていた学生4人で、みんなで型枠を作りました。そういう力強さに対して実はタイルの存在は強いですから、しっかりとしたものを作ることで力強さを連動させたものです。

暴れているものを目地で許容することで、暴れが心地よいものになってくる。もっと有機的なものになってくる。人の1個1個で作ったようなタイルの存在感が伝わってくる。

建設会社は、いかにきれいなものを作ろうかということばかり考える。彼らの頭ではきれいに作ることしか認められない、非常に病的な面をもっている。僕らが型枠を作りつつ、大工さん、型枠業者にも協力をしてもらったのですけども、彼らはいかにきれいにつくるか、素材はきれいなものを選び出すから、そういうものではなくいかに崩していくか、汚く作るのではなく、あるひとつのしっかりとした考えの上で、崩す美学というものがあっていいというのがこのときの試みです。

 

エントランスの床は、陶彫家の池田泰佑さんと泰山のタイルを一緒に張ってもう8年になりますが、我々設計者が図面上で書いて、タイルというものに対してもっと手の感触を大事にしていく。タイルという素材はやはり土から作られていくし、自然の火を使って、実はこれは人間的なスケールです。我々設計者サイドが、もう一度自分の五感の中で感じ取れる素材として、場所によって使っていく素材として扱っていかなければいけないと思います。

 

■ コンクリートの打ち放しに色をつけているのですけれども表情は暴れまくっている。これに対してひとつの面として、上から見ると海底の湖面に引き込まれるような美しさを感じさせる。住民も来た人も同じような感想を持っているのは、ひとつのタイルの面白さです。あの厚みの中で、実は非常に深みのあるものが作れるのがこの素材です。

 

■ 同じ建物の中のゲストルームでは壁面でタイルを使って空間を創ってみました、レリーフの扱い方は、泰山が東京の上野にある帝室博物館で使っている。遠目にはタペストリーに見える、布のように見るものをひとつのヒントにしてもう一度試みてみようと思いました。

昔の泰山の作品を見たときに、この建物では竹やぶが非常に大事なものです。竹やぶは生前、ご主人が非常に大事にされておられた土間に続く風景です。ご家族の方にとっては非常に大事な空間、思い出の空間であったので、私自身がタイルとどう絡ませようか、外で動いている風とか、竹やぶの動いている竹の流れが、部屋の中に入って、壁のレリーフの中へ消えていく。レリーフを見ることで外の大きな力とか、竹の流れ、風とか光とかが感じとれるように、タイルを使って表現してみようとの試みです。

 

今述べたように、反省に立った上で、タイルの素材というものをもう一度自然なりに戻してあげたい。この後いろいろ話になりますが、私の場合はメーカーを通してということはあまりしなくなりました。メーカーを通して、介して物を伝えて、生産する方が作ってメーカーを通して出てきたときに、こちらの意図が伝わらないことが多い。

メーカーの下に来る営業の人間がタイルの事を全然知っていない。彼らは商品をよく知っていても、今の私の思いを伝えても全然理解しないし、また知識のない営業とやってそこを介して、我々が検査と称して工場へ行く。全然違うものができてくる。関係ない話です。メーカーが忙しくて生産が間に合わなくても関係ない話ですけれども、大手の論理で納期への努力、物を創り出す努力が感じられない。カタログに無い物は時間と金がかかる。あたりまえと言えばそれまでですが、良い物を創ろうという思いが感じられません。

それでその中から出てきたのはタイルコーディネーターの大田さんとやり始めてから、我々のこういう思いを伝えて、理解して頂いて、それを生産の方に伝えてもらって、彼自身がこれだったら良いだろうという商品を、一緒に工場へ見に行く。これは非常に大事です。物を作る材料というのは基本的には、人が作る。物の素材というものは地球上から出てくるもの、そうすると人間とその素材というものは、じつは人間的なスケールにならないといけない。ですからタイルを自分で貼っていく作業もします。当然できない部分はとにかくその職人と共に考えていく。貼ったものを必ず見届けるまでいる。これは私の務めで時間は惜しまない。それから生産される工場へ行くことは絶対やる。半日かけていろいろな話をします。工場見学もさせていただく。その中にはいろいろな面白い物が一杯あります。商品として作っているものを紹介されるのですが、実はそうではなく、そこでは価値のないものに、こちらは価値を見出す事は一杯ある。そういうものが発見できるのはメーカーではなく、やはり現場、工場です。ですから、僕は今の行き方としては五感を大切にする。直接作り手と会話をしていく。フェイス トウ フェイス、素材の顔が見える素材を作る事が大事です。そのためには我々から積極的に参加していく。それと同時に真中に入られる方は決してメーカーではない。やはりそれを理解していただける方、その人と共にみんなで作り上げていく。タイルに対してはすごい愛着を持って、いま作りつつあるところです。

 

●質疑応答

「タテの力の流れ、ヨコの力の流れ」という言葉でてきましたが、頭の中でイメージできなかったものですから、説明をお願いします。

 

建物を作る時に、ここで言えば当然、柱があって、梁があって、それを見ると力の流れは見えますよね。で、これは単純なことで、我々の表現というものは、こんな形を作りたいなぁとかいう問題以前に、建築というのは、用・美・強といいます。用とは使い勝手がいいこと、美とは常に美しくなければいけない、かつ強とは、自然に対して強くなければならない。強さを求める為に美がだめになってもいけないし、美しさばっかり求めてもいけない。

よく登場する建築家に、スペインの建築家でアントニオ・ガウディといますが、アントニオ・ガウディがどういうことをしたか、その当時もうひとり巨匠・ドメニクがいますが、バルセロナのサクラダ・ファミリアという建物に対して、正面にサクラダ・ファミリア通りというのがあって、その通りにドメニクが設計した病院があるのです。実は同じような装飾性のタイルを使いながら全く違うのです。ドメニクは伝統のモザイク壁画を表現として使おうとした。それに対してガウディは、どういうふうに捕らえているかはわかりませんが、あれは装飾タイルではない。それは今言った縦、横の力の流れを視覚的、造形的表現のためのものなのです。何が力の流れかといいますと、我々が求めているのは両方がありますけれども、ガウディの形というのは、実はどこから出てきたのかというと、向こうのカタロニアボールトという構造があるのですが、彼自身が力の流れにものすごく興味を持っていた。自然の力、木を見れば木の先がだんだん細く、幹は大地にしっかり根ざしていく。これは力の流れです。ですから彼はこの自然の力の流れというものが必要ではないのかと考えています。そこで張られているタイルというのはたまたまの素材だけであって、ある意味では大きな力の流れでもあると見えます。

私がさっき言った横と縦の力の流れの話は、いま言ったように、建物の大きな力の流れに、例えばタイルを使う時に、普通に使えば縦横に目地のグリッドになります。そうすると、私の頭の中では、なぜ縦横に制限されなければいけないのだろうと思うのです。ここでは力を上から下に流したいと言う時に、なぜ縦横に目地が入らなければいけないのだ。だったら縦だけに目地が通っていいじゃないか、横は目地なしでいいじゃないのというのが私の考え方なのです。

だからいま言った流れというのは、素材をその表現のために使った場合は、材料自身も既成概念を外していかなければならないことなのです。ある時代からタイルのネット貼りというものが出だしたわけですが、出る前はさっき言ったように、我々は徹夜してタイル割をするのです。それをメーカーに任せるのではなく、こちらが表現としてするのですから、どうしてもここまでにこう割りたい、さらにこう入れたいとか、そうすると最初のスライドのららぽーとのホテルの時だって、上にはモザイクがあり、写真にはなかったのですが真中の大きな壇上の庭があるのですが、そのモザイクから降りてきたものがなぜ目地を合わさなければならなかったのか良くわからないのですが、その当時は壁から床に降りた目地が、降りた大きな床のタイルの目地と合わさっている。目地が全部規制されていたデザインなのです。それはもっと返せば上から見たときに、大きな70メートル角の正方形のデザインなのです。その時に縦と横のグリッドで表現してもいい。縦横は力の流れ、設計に対して材料がこうでなければ使えませんではない。その辺の概念を外すためのものとしての縦と横の話を出しました。

 

 

今井 秀明(いまい しゅうめい)氏 1952年京都生まれ

≪プロフィール≫

日本大学生産工学部卒業

丹下健三・都市・建築設計研究所、シビックデザイン研究所、槇総合計画事務所、神谷 庄司計画設計事務所

日本大学大学院生産工学研究科 博士課程前期修了 工学修士

香山アトリエ・環境造形研究所(現 香山壽夫建築研究所)

日本大学生産工学部建築工学科非常勤講師 日本建築学会会員 みんなで明るく挨拶をしよう会会員

≪連絡先≫

京都事務所  〒606−8002

       京都市左京区山端大城田町27−8

       TEL.075−791−6111 FAX.075−791−6113

       ※IP電話 050−3303−3396

東京事務所  〒152−0004

       東京都目黒区鷹番1−9−15−404

       TEL.03−3791−2223 FAX.03−3791−2224

ホームページ http://www.ne.jp/asahi/imai-architect/partners/

 

 

取材場所:笠原町中央公民館にて

取材日時:2005年3月29日