◇ 神 話 ◇


心理学者のC.G.ユングは、彼の主著「変容の象徴」のなかで、こう記しています。『神話はこどもっぽい空想ではなく、未発達な人間生活のもっとも重要な遺物のひとつである。』(野村美紀子訳/ちくま学芸文庫)と。ここでいう“未発達な人間生活”というのは、全人類の生活そのものを指しています。
また、作家のトーマス・マンは、心理学者フロイトの八十回の誕生日を記念する祝典での講演で、こう述べています。『人間の魂の底の底は、同時に「原始時代」なのであります。そこにおいて神話が存在し、人生の根源的な規範と根源的な形式の基礎があるところのもろもろの時代の、かの泉の底なのであります。なぜならば、神話は人生の基礎づけを意味するからであります。』(高橋義孝訳/河出書房)
言うまでもありませんが、神話は宗教でも思想でもありません。ましてや、政治や経済とは全く関係ありません。神話は人間の人生の、普遍的本質的な仕組みを、神々の名を借りて様々な物語形式として展開され、語られているのです。神話は、本物の人間としての個人が、本当に自分らしい人生を、生きぬいて行くための羅針盤のようなものではないでしょうか? 少なからず、僕はそう考えています。
尚、中世騎士物語において、「トリスタンとイゾルデ」のページ末尾に、神話の解読法を簡略化し掲載しましたので、そちらの方もご覧いただけますと幸いです。


 ギリシア・ローマ神話

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