「心が安らぐ魔法の言葉」   PHP文庫 476円

新家庭教育協会理事長   山崎 房一

 

第一部 自分を生かす

 

心の問題は自分で解決する。

 老若男女、年齢を問わず不安になったり、気持ちが落ち込んだりする心の病の原因は、二つ考えられる。孤独感(淋しさ)と罪悪感である。

                                                                       

            淋しさとは、自分が自分を見失ったり、

            自分が自分であることを否定したり、

            孤独感と罪悪感の殻にこもってしまうことです。

 

            淋しい人は、否定した自分を探し求めて、

            あちらこちらをさまよい歩いて、ついには、

            袋小路に迷い込んで病気になってしまいます。

 

 罪悪感には二つの種類がある。直接他人に被害を与えてしまった場合は謝罪して償いをすればよい。始末が悪いのは、自覚しづらい自分に対する罪悪感で、自分はこうあるべきだという自分の理想を描いてそれにあわせようとし、自己否定して自分で自分を絶えず責め続ける。こころが硬くなり、孤独で淋しい人間になってしまう。なぜなら、自分の気持ちがいつも自分の内側に向いていて、他人を愛したり、他人から愛されるという心の余裕が無くなってしまい、硬直した人間になってしまうのだ。

 そうすると、自分の気持ちにちょっとでも逆らう他人の言葉に、すぐに腹を立て不機嫌になる。そして、理由なしに相手を冷たいと批判するようになるのである。

 また、現実の問題として自分の欠点や短所、自分の中に存在する悪い心を変えようとしたり、取り除こうとしたら自殺以外に解決法はない。

 

            「そのままの自分で良いのだ」

            「自分を変える必要はないのだ」

            「そのままの自分がすばらしいのだ」

            そう気づくまでに私は六十年もあちらこちらを彷徨っていました。

 

            そのままの自分を認めると安心できる。自分がわかってくる。

            そして、自分をしっかりつかむことができる。

 

            人間だから,良い心や悪い心、長所や短所があるのが当たり前。

            そのままの自分でいい、そのままの自分で100点満点。

            自分は40点だなあと思っても、無理をして百点をつけていると

            自然に自分の古い殻が破れて、新しい自分に変わる。

 

            そう知った時、初めて自分の心は安住の地を得、

            自分探しの長い長い旅が終わった。

                                                                                 

 

自分をつかむ

1.開き直って自分を100%肯定する。

2.決して自分を責めない。

3.そのままの自分で百点満点で生きる

 

自分を解放する。

4.自分の価値、信用を落とすような秘密は、堅く守る。

5.自分を無理に変えようとしない。

6.自分は、徹底的に自分の味方をする

 

自分を好きになる。

7.自分を好きになる。

8.あるがままの自分を好きになる

 

            自分を大切にする人は、人を大切にします。

            自分を粗末にする人は、人を粗末にします。

            自分を愛する人は、人を愛することができます。

            自分が嫌いな人は、人に愚痴ばかりこぼします。

            自分が好きな人は、自分を伸ばします。

                                     

第二部 効果的に生きる

 

こころ

            人間は、心の中に恨み、憎しみ、呪い、嫉妬,復讐など、

            いかに極悪非道な考えを持っていたとしても、心の中にある限り、

            それは罪悪ではない。すべて無罪である。

            安心していい。具体的な被害を誰にも与えていないからである。

            心は、黙っていては相手に伝わらないから、お互いに安心していられる。

 

            目に見えないこと、耳に聞こえないこと、

            わからない事に気を回さない。

            目に見えたこと、耳に聞こえたこと、

            わかっていることだけを頼りに生きている。

            すると、わからないことがわかってくる。

            自信が生まれるのはそのせい。

 

            感謝・安心・幸せ−−−

            人生を肯定的に生きる心豊かな人間は、自分も他人も許し、

            心にも余裕があり、愛のぬくもりを身につけています。

            彼らは、善人、悪人が混在する世の中が永遠に続くと思っているから、

            ありのままの社会を素直に受け入れることができます。

            人生を肯定的に生きると、どんな人とも平等につきあうことができます。

 心の中の自分、自分がそう思う自分が自分自身。地獄の訓練のような無理をしても、その外部からの圧力が無くなったとき元に戻ってしまう。

 外部の力で自分を変えることはできない。ごくふつうの生活をしながらでも、自分に対する自分の考え方を変えると自分は変わる。そのようにして自分が変わると、もう元へは戻りません。

 もし、どんな努力しても、心が変わらないときには、心は横にそっと置いて言葉や行動を変えてみる。演技してみる。心は不思議にも変わってしまう。

 

            心は、言葉によってコロコロ変わるのです。

            「人生にとってもっとも大切なことは、心の持ち方よりも言葉の使い方です」

            言葉によって言葉通りの自分に変わる。

            心の中の自画像は言葉という絵筆によって描かれている。

            自分の中の良い心、悪い心、長所や欠点をひっくるめて、

            自分はこれで良いのだと納得すれば心は自分の中に安住の地を得る。

 

1.自分の心がどんな動きをしても、そっと見守る。

2.対人関係では言葉に十分気を付ける

3.過去に一切こだわらず、目に見えないこと、耳に聞こえないことに気を回さない。

 

英知で生きる

 人々を幸せにしようと私も一生懸命やってきたが、悪人の悪知恵の効果と比べると全く無力感に陥ってしまう。私は、相手によかれと思って自分の考えを一方的に押しつけてきたと思うからである。「余計なお節介を焼くな」と恨まれたこともたびたびあった。なぜ効果のないことを夢中でやってきたのだろうか。

 

 「人間はこう生きるべきだ」という強固な価値観と手段を持っていたからである。それらが高名な学者の本であればあるほど、その学者の名声や権威に頼ってしまう。その知識や考え方がすでに効力を失い時代遅れになっても絶対に捨てない。捨てると、自分が頼るべきものが何もなくなるからである。自らの実践者でも、創造者でもなく、他人の知識の解説者にすぎなかったのである。

 しかも、解説者は「自分は偉い」 と錯覚し硬直しているから、臨機応変、自由自在に変身できない。相手の気持ちや都合を考える余裕もなく、勝手に自分の善意(知識)を押しつける。相手が自分の考えに同意しないと、「あなたはきっと不幸な目に遭う」と捨て台詞を吐く。

 

 一方、人々を本当に幸せにしている人たちがいる。彼らは、自分の価値観をしっかり持っているが、自分のものであって他人に押しつけるものではないと心得ている。悩みのある人の相談に乗っても、無心であって、自分の価値観を出さない。その人を幸せにするために、その日との必要とするものを見抜いて、 適切に応えていく。そのためには、手段を選ばず、もっとも効果のあるものを提供する。昨日まで効果があっても、今日効果がなければさっさと捨てる。臨機応変、自由自在に変身できる。偉いと思っていないから、名声や権威に頼らない。

 このように生きる人こそ、「英知の人」ではなかろうか。

                            

 

人生設計

            無目的でやった成功は、まぐれだと思うから、その体験は身に付かない。

            無目的でやった失敗は、自信を失い、劣等感の原因となる。

            人に言われた目的で成功した場合、人のせいと思うから、喜びや満足感が薄い。

            人に言われた目的で失敗した場合、人を恨むようになる。

 

            自分が設定した目的、たとえそれが小さくても成功した場合には、

            喜びと満足感にあふれるから、自信となる。

 

            自分が設定した目的で失敗した場合は、

            人生の貴重な体験として生かされるから宝となる。

 

            目的を持つと、知恵が湧き,知識も知恵に変わる。やる気も出てくる

            自分の目的は祈りと執念で必ず達成できる。

 

開き直る

 か弱くて、傷つきやすい心を自分で責め立てていると、どん底に落ちて立ち上がれない。その結果、人格破壊を起こしながら一生を送るようになる。自分を責めて自分本位の心を捨てたからである。

 

 黙って、他人のせいにして自分の心を守ること。他人のせいにするということは、即ち開き直ると言うことです。すると、前進できる。

 自分を見失って、どうにもこうにもならなくなったらまず、自分を責めることをやめなさい。そして、そのままの自分で良いのだと開き直る。

 すると、強い自分がよみがえってくる。それが開き直ると言うことです。

 

 同じ人生なら、言い出しっぺがよい。年齢も、学歴も関係ない。言い出しっぺは、リーダーになるための最大の才能である。言い出しっぺは他人の価値基準で評価されない。たとえされても、そんなのは気にしなくても良いのである。

 

4.信念を持った優しい言い出しっぺになる。

5.自分が自分の人生の主人公


第三部 暖かい家庭を作る

 自分を大事にし、家族一人ひとりを大切にするもっとも手近で、

やろうと思えば誰でも簡単にやれる方法は、言葉遣いに気をつけることである。

 

            言葉を大切にする人は、ごく自然に心を大切にしている。

            こころを大切にする人ほど、往々にして言葉遣いがきつくなりがちである。

 

やさしい言葉は命

            こころは、言葉や態度によって表さない限り、相手に伝わらない。だからこそ、

            相手がわかっているように思っていても、優しい態度で言わなければならない。

            夫は妻に、「君と結婚して良かった、安心して仕事ができる。」

            妻は夫に、「あなたがいるから私は幸せ、淋しくないわ」

            親は子供に、「お父さんもお母さんも君が大好きだ。

            君は、お父さんとお母さんの宝物だ。どんなことがあっても、

            私たちは君の味方だ。」と

            お互いにやさしく言葉を掛け合わなければ、家庭も砂漠のようになってしまう。

 

夫婦とも似合い手の言葉から受けた心の傷口がいやされないまま、同じ屋根の下で「相手さえ変わってくれたら文句なし」と思いながら、冷え冷えと暮らしている。そのとばっちりで、子供の心も深手を受けているように、庶民の精神生活はまことに冷たく、貧しいのである。その原因は、心ばかりが重視され、言葉が軽視されたために「言葉の文化」が育っていないからではないか。

 

            年齢に関係なく、人間にとって一番悲しくて、淋しくて、苦しいことは、

            好きになった人から「好きよ」と言ってもらえないことです。

 

            お父さんが元気がないのは、「好きよ」とお母さんが言わないからです。

            お母さんが悲しい顔をしているのは、

            「好きよ」とお父さんが言わないからです。

            子供たちが淋しいのは、「好きよ」とお父さんとお母さんが言わないからです

 

            人間にとって一番うれしくて、楽しくて、幸せなことは、

            好きになった人から「好きよ」と言ってもらったときです。

            みんなの目が輝いてきます。

 

            「好きよ」というひと言は、

            どんな高価な金品でも代償できるものではありません。

 

誇り

 子供は、ほめたりかばったりしてくれるお父さん、お母さんを誇りに思う。

その誇りが子供の誇りとなって子供を前進させる。また、横道にそれた場合でも、その誇りが復元力となり、子供自身の中に自立心を育てる。それが、本当のしつけである。誇りとは、地位やお金とは無縁である。自分をかばってくれる人、自分を大切に思ってくれる人を身近に持つことが誇りなのである。

 

聞き上手

            聞き上手の親は、子供を幸せにします。

            聞き上手になるためには、子供が自分を味方だと思う言葉や

            子供の気持ちを汲んだ言葉を素直に言うことです。

            子供の気持ちを汲んだ言葉は、子供の気持ちを温かくします。

 

            自分の口から出る子供の気持ち、それが聞き上手のこつ

            子供は安心して心を開きます。

            自分の気持ちを言ってもらうと、ストレスが消え、こころが癒されます。

 

            自分の言葉が、善悪で判断されることなく、相手にすべて受け入れられたとき、

            気持ちがとても元気になり、自信が育ちます。

 

人の欠点に触れない

            他人とのつきあい方は、相手の長所とだけつき合えばよい。

            相手の欠点や短所にお互いに触れなければ、

            相手を嫌ったり傷つけてしまうことはないのである。

 

            相手が傷つきやすい子供であればなおさらのこと。

            子供は、欠点を指摘されると、

            冬の荒野に放り出されたような気持ちになってしまう。

 

            どんなことがあっても、家族はお互いに、そのままを認めあうこと。

            すべてを受け入れ、味方になりきること。

            温かい家庭とは、欠点をやさしくカバーしあえる場所のことである。

           

やる気、人を育てる

            子供にやる気を出させようと思うなら、

            たとえわかっていることでも、子供に相談してみると良い。

            そして彼からえたアイデアがたとえ効果が少なかった場合であっても、

            心を込めて「ありがとう」と子供に感謝の気持ちを伝えよう。

            彼の心は次第に躍動を始めやる気人間に変わります。

            これが、人を育てるコツです。

 

            人間は他人に役立った喜びの経験で、

            自分の人間的価値を知り、生きる喜びを体で感じる。

 

父親のすること

 

01.家庭内のことは、妻を完全に信用して任せること。こちらからは一切口出ししない。妻から相談されれば熱心に協力すること。

02.妻の欠点、過去の失敗,古傷には絶対触らない。よい点や苦労していることを子供に話して聞かせる。陰で妻をほめる。何かの機会には最大限に誉める。

03.妻に良い格好を見せることをやめる。

04.妻の忠告に対しては「ごもっとも」と言って心を込めて聞くこと。

05.大切な手紙や原稿を書いたら必ず,妻に読んで貰って助言を得る。

06.「おはよう」「ただいま」「おやすみ」「ありがとう」は、自分から先に言う。子供が応じなくとも文句は言わない。「いただきます」「ごちそうさま」を必ず言う。

07.妻と一緒にデパートに行ったら忍の一文字に徹すること。いらいらしない。  

08.家庭内の大切なことは妻と一緒に決める。妻が反対する場合にはやらない。

09.友人を家庭に招待する場合は必ず、妻の了解を得ておく。

10.妻に対して、好きだ大切にしていると言うことをいつも忘れずに告げる。

11.妻の誕生日には表彰状とプレゼントを贈る。

12.実母と一緒に住んでいるときには、全面的に妻の味方をする。

13.毎月給料日には、妻の努力に感謝の言葉を述べ、子供たちにも激励の言葉をかける。

 

母親のすること

 

01.夫に冷たい態度をとらずに、やさしさを演技をしながら受け入れてあげる。

02.へそくりをしておいて、非常時にそっと差し出す。

03.夫の誕生日には表彰状とプレゼントを贈る。

04.毎月給料日には、夫の努力に感謝の言葉を述べ、いっしょに食事をとる。