サードチルドレン、碇シンジ。葛城家の専業主夫。家事全般を引き受けているが、最近ではそれを苦痛に思うこともなくなった。なにしろ今の彼には喜んで欲しい人がいるから……
「遅くなっちゃったな。晩御飯が遅くなるとアスカ怒るだろうなあ」
彼は楽しげに家路についた。彼はまだ、彼の大事な人を襲った悲劇を、知らない。
「アスカ、帰ったよー」
シンジは葛城家のドアを開けた。アスカが玄関にいた。
(アスカ、僕の帰りを待っていてくれたんだ!)
シンジの顔が思わず綻ぶ。だがアスカの様子がおかしい。うつむいて震えている。まるで泣き出したくなるのを堪えている様にも見える。それを見て、シンジの顔色が変わる。
「シンジィ!」
突然、アスカはシンジに抱きついた。
「!?、どうしたのアスカ?!」
泣き出すアスカ。
「シンジ、あたし、あたし……うっうっ……うぐっ」
「アスカ、落ち着いて!」
「あたし、汚されちゃった……汚されちゃったよう…シンジィ」
シンジは部屋の様子を見渡し、何が起きたかを悟った。
シンジは愛するアスカの14歳の肉体に加えられた暴虐を思い、言葉を途切れさせた。そっと抱きしめる。シンジの腕の中でアスカは体を震わせていた。
その姿はシンジに華奢な印象を与えた。それまで見たことのないアスカの姿。
(アスカも女の子なんだ……そう、僕がついていなければいけなかったんだ……)
「アスカの所為じゃないよ……僕がいけないんだ………アスカを一人にしたから………」
「それにアスカは汚れてないよ!アスカは…ただ…『痛めつけられた』だけなんだ」
その言葉を聞いたアスカは顔をあげてシンジの顔を見つめる
「だったら……あたしが汚れていないっていうなら…キスして、シンジ」
まぶたを閉じ、唇をつきだすアスカ。
「!!」
思わずシンジは顔を背けてしまう。
アスカの瞳に涙が浮かび、頬をつたって流れ落ちる。
「シンジの……嘘つき……」
「ちょっとアンタたち……」
「シンジ、……あたしはシンジにとって大切じゃないの?もうあたしをみてくれないの?」
シンジはアスカの涙を見て自分のするべきことを悟った。彼にしかできない、彼だけが出来ることだ。
「ごめん、アスカ……僕の弱さを許して」
シンジはそういうとあらためてアスカを抱きしめると、熱い口づけを交わした。
(シンジ……あたし、シンジがいてくれればきれいになれるわ……)
「あんたたち、いいかげんにしなさぁぁいっ!」
カレー(もどき)の入った鍋を抱えて、この家の主で二人の(一応)保護者、葛城ミサトが叫んだ。
「まったく!どうしてあたしの作るカレーを食べると汚れたり、痛めつけられたりしたことになんのよ!説明してもらいましょうか!シンちゃんにアスカ!」
ミサトカレーをいきなり口の中に放り込まれるのは、確かに『拷問』だ。『汚染』とも言える。
「そんなこと説明するまでもないことだと思いますけど……」
「シンジ、この嫁かず後家の酔っ払いに何いったて無駄よぉ、無駄!」
「な……!」
その後、暴走したミサトから逃げ出した二人は、翌日の午後になるまで行方不明だったそうだ。
なお、その間二人がナニをしていたかは、秘密だ。
Fin