「‥‥‥苦いな碇‥‥」
「問題ない‥‥‥」
碇め‥‥甘党で砂糖に目のない私にこんな苦いコーヒーを出してくるとは‥‥
私への嫌がらせのつもりか‥‥‥?「冬月先生、あとを頼みます」
相変わらず無気味な笑い方をするヤツだ‥‥。あの表情の下で何を考えているか、わかるものはまず世界に数名とおるまい。
ふっ、だが私にはわかるぞ碇。おまえでも今のコーヒーは苦すぎたのだな?
ふっ無理して呑むからだ‥‥。
甘いもの
「茶だ。渋めの茶を」
碇は書類の決済だとか国連への報告文書作成だとか、碇の言うとこの『雑務』をこなし終えたあとで茶を持ってくるように指示をだした。
最近、この男もようやく仕事をするようになった。
まぁ、それはいいことだ。今までが悪すぎたとも言えるが‥‥。それはいいのだいいのだがこの男はやたらと渋い茶や無闇と苦いコーヒーを仕事の合間に‥‥私に呑ませるのだ。
渋い渋い、と言われる私は、実のところ甘いものは大好きなのだが‥‥
苦いものや渋いものは苦手なのだ。できることなら茶菓子などがあると良いのだが‥‥この男は全く気がきかん!
やはりこちらから言ってみるべきだろうか‥‥。「碇‥‥この茶はなかなか渋いな」
「やはりそう思うか、冬月」
相変わらずもったいぶった男だ。特に意味のないことを‥‥。
「お茶受けのする甘い菓子などがあれば良いとは思わんか‥‥?」
「ふっ、冬月先生。もっといいものがありますよ」
ニヤリというあの俗悪な笑みを浮かべ、ゲンドウは呼び出しボタンを押した‥‥
「私だ、例のものを頼む」
「わかりました」
もっといいものだと‥‥?は!?まさかレイで女体盛りなどというのではあるまいな!?
いかん、いかんぞ碇‥‥レイはユイ君に似てるし‥‥少しばかり嬉しいが‥‥そんなことは楽しすぎ‥‥いやいや鬼畜すぎるぞ!わしの常識人としての感性がそんなものには抵抗‥‥するのだぁ!
「‥‥‥冬月?」
は!?いかん、電波を受信してしまったようだ‥‥。
わたしとしたことが‥‥。
‥‥‥?
これはいったい?「何なのだ碇?これは?」
「モニタとビデオですよ‥‥」
それは見ればわかる‥‥む、女体盛りではなかったか‥‥。
いやいや、これで何か楽しい画像を‥‥ではない!「碇、これでどうするというのだ?」
「こうするのです‥‥」
碇はリモコンでビデオの再生をはじめた‥‥。
『シンジぃ〜〜晩御飯なぁにぃ〜』
『お昼御飯食べたばっかりじゃないか〜』
『お腹が空いたわけじゃないのぉ。シンジがどんなふうに料理を作ってくれるか、どんなふうにアタシに食べさせてくれるか、今から想像して浸ってみたいのぉ』
「‥‥碇?これはいったい?」
ビデオにはシンジ君とアスカ君の姿が映し出されていた‥‥。
「ふっ驚きましたか?あの二人、他人が見ていないとこうなるんですよ」
確かに驚いた‥‥ではなくて!
「これがどうして茶菓子のかわりになるのだ?碇」
「まぁ見てて下さい」
『ん〜〜今日は烏賊墨スパゲッティなんか挑戦してみようかなってるんだけど‥‥』
『え〜〜ハンバーグじゃないのぉ?』
『‥‥あ、ゴメン。‥‥イヤだった?』
『そ、そんなことないわよ〜シンジの作るものだったら何でもおいしいわよ〜』
『僕しか作る人いないから、アスカはそういって無理にでも食べてくれるんだね‥‥でも僕はアスカを満足させたりは‥‥』
『違う!違う!アタシはシンジの料理が食べたいのぉ!シンジの愛情で作った料理が欲しいのよぉ!』
『アスカ‥‥ありがとう‥‥大好きだよ‥‥』
『シンジ‥‥』
「ふふ‥‥これでわかるでしょう」
何がわかるんだ‥‥と言いかけた私はゲンドウの顔を見て驚いた!
‥‥か、顔が!
目尻が垂れ下がりきって、口元も緩みきってお茶が流れてるし‥な、なんという顔をするんだ!
「ふふ‥‥つまりこの甘い甘い姿を見てると、自然に苦いコーヒーや渋いお茶が欲しくなるでしょう?」
よけい口の中が渋くなったぞ‥‥!
しかし、碇のやつ‥‥実は子煩悩な男だったのか‥‥。
ふ‥‥ユイ君がかわいいと言った理由がわかるような気がしてきたな‥‥。
おまけ
次の日‥‥。
ゲンドウは一人でビデオ観賞をはじめた。
冬月は逃亡していた(笑)
『ねぇシンジ、‥‥いつかアタシはあの司令を義父さんって呼ぶようになるのかな‥‥?』
「ふ、ふふふ‥‥」
頬は緩み‥‥ゲンドウの顔の崩壊が始まっていた‥。
『大丈夫だよアスカ、その前に父さんとは親子の縁を切るから』
『嬉しい♪アタシのことを愛してくれているのね♪』
「な、なにぃぃぃぃ!?シンジ!?」
ゲンドウは二時間後冬月が司令執務室にもどるまで、頬を流れる滝のような涙を拭いもせずただただ硬直していたらしい‥‥。
どもみなさま怪作でございます。
こんな話でも自分のページに飾る?第一作。 ぜひ拙作の感想を聞きたいです〜。メールはにどうぞ〜。