サードインパクト。



 世界の終りと再生。

 

 それはなぜ起きたのか?

 

 それは何を残したのか?

 

 ‥‥誰がこの問いに満足な解答が出来るだろうか?

 

 ここではこの『人類史上最大の事件』の周辺の人物、事件を描写することで、解答の替わりとすることにしよう。


本格映画補完小説

L・A・S

written by Kaisaku


 LCLの海から人々が復帰して、第壱中学校も再開された。ここは3年A組の教室。

 シンジとアスカは三年生となり、復帰したヒカリ、トウジなどとともに通っている

「シンジ!ちょっといい‥‥」

 アスカがシンジの側で耳打ちする。

 碇シンジは振り向いて「元」同居人の顔を見つめる。

 全てが終った後、葛城ミサトのいないコンフォート17マンションの一室に思春期の二人を同居させるわけにはいかない、という大人達の良識的判断で二人は今別々の家で一人暮らしをしている。

「シンジ、あんた今日暇‥‥‥?」

 アスカはシンジに尋ねる。

「ひ、暇だよ、一応‥‥」

 当然、という顔のアスカ。

「まあ、アンタみたいな奴、彼女作れるわけでもないし、用事なんかあるわけないわよね。あたしのうちに来なさい‥‥するわよ」

 最後の一言は小さな声で告げた。

「あ、ああ、わかったよ。アスカ」

 シンジはおどおどとした様子で返事を返す。

 シンジは夜はずっとアスカの家にいるようだ。大人達の配慮は無駄であったらしい。

 

 

 

 

 


 1940年頃(正確な日付は定かではない。関係者全員が死亡またはLCL化した今となっては、その日付を知ることはもはや不可能だ)、ナチスの支援のもと、「ミューラー調査隊」がパレスチナへと向かった。その目的はイエスが実はユダヤ人ではなくアーリア民族であると証明することであったが、調査隊は当初の目的を達成することはできなかった。

 そのかわり、彼らは驚くべきものを発見した。

 後に『裏死海文書』と呼ばれるようになる文書である。

 クムランの洞窟の近くで発見されたそれらの文書は、物理学、生物学などの人間の科学のレベルを越える知識が記載された‥‥‥『あり得ざる古文書』だった。

 さらにその古文書には2015年までの人類の歴史が予言されていた。

 

 

 

 

 


「センセ、さっきの何なんや?なあ?」

 鈴原トウジが聞いてきた。小さな声のためよく聞こえなかったらしい。

 ケンスケはシンジを問い詰めた。

「なあシンジ、惣流とはどこまでいったんだ」

「べべつに、何もないよ」

「実は結構関係が進展していると見たぞ」

 メガネが怪しく輝く。

「‥‥違うんだよ、ケンスケ‥‥ケンスケが想像するような関係じゃないんだ‥‥」

 弱々しくシンジは答える。その様子にただならぬものを感じ、二馬鹿は硬直する。

 口も開けず、ただシンジが教室を出ていくのを見つめることしかできない。

 ややあって、ケンスケは口を開いた。

「俺の想像よりススんでいるっていうのか!羨ましいぞ!シンジ!」

「アホウっ!」

 パチキ一発。

(どうしたんや、センセ!センセと惣流の間になにがあったんや!)

 

 

 

 

 


『裏死海文書』の研究を進めるにつれ、研究者達はより深い秘密と神秘に触れていった。

 人類の異なる可能性「使徒」

 生命の母、リリス。

 アダム。

 絶対領域、ATフィールド‥‥‥。

 

 

 

 

 


 放課後。

 一度自分の家によってから、シンジはアスカの家に向かった。途中シンジは自分達と年が同じぐらいのカップルをみつけた。二人はとても初々しく清純に見えた。

 どうして僕とアスカはああいう風にできないんだろう?

 ふう。

 シンジの足は重かった。

 

 

 

 

 


 裏死海文書には謎のヘブライ語三文字の単語を含む意味不明・判読不能の文章があった。それは、

『人類の歴史の全ては***のためにある。約束の日、偽りの預言を奉ずる者達は打ち倒され、神の定めた真実の***が実現するであろう』
というものであった。
 この文章の真の意味はミューラー秘密調査隊のメンバーの誰も解読できなかったのだ。

 これを解読したのは一人の早熟の天才であった。ローレンツという姓のその青年は驚くべき解釈をした。

 単語***を『カバラ』(ユダヤ神秘主義の魔術的な秘伝)の手法を用いて、数字に変換する。すると各文字はそれぞれ30、1、60の数字となり全体では『91』、これを神秘学で『死』を意味する数字13の7倍と考える。すると‥‥‥

『人類の歴史は7回の死と再生を通じて、神の定めた完全人類の世界を実現するためにある。約束の日に、劣悪な部分を切り落とし、人類は完全な存在となる』

 と読むことが出来たのである。

 ローレンツ博士(すでに博士号を授与されていた)によると、4度の死がすでに起きているとのことであった。

 五つめの死はその時点では『不明』だった。後にドイツ第三帝国の崩壊であることが『発見』された。一説によるとキール・ローレンツはすでにこれを予想していたが、沈黙を守ったとのことである。

 六つめの死はセカンドインパクトによる人類の半分の除去とその後の世界復興。

 七つめの死はサードインパクト‥‥‥

 

 

 

 

 


「こんなこと続けてたらいけないんだよ、アスカ‥‥」

「‥‥恐いの?」

 アスカは瞳に冷めた軽蔑をこめてシンジを見つめた。

 

 

 

「いけないよ‥‥アスカ‥‥僕達は」

 シンジの言葉はアスカの張りあげる声にかき消される。

「何よ!シンジ‥‥病院であんなことをしておいて‥‥今更遅いわよ!」

 

 

 

 

 


 男は電話をかける。最愛の女性に。

 自分の愛する女性、自分を頼もしい兄のように慕う少女の二人を置き去りにして‥‥‥『真実』を求めてきた。

 全ての『真実』を知った今、もっとも大事なものを捨て去ったのだと『真実』に教えられることになろうとは思っても見なかった‥‥‥だが、もう遅い。

「俺の育てている花を頼む‥‥‥場所はシンジ君が知ってる」

 その台詞に自分の思いの全てを込めた。

 

 

 

 

 


「さあ‥‥‥はやく‥‥‥来なさいよ‥‥」

 アスカの声はこれから起こることへの期待と興奮でかすれている。

 シンジはゆっくりと手を伸ばす。アスカはまぶたを閉じまつげを震わせている。彼女はこれから起こることが全く始めてで自分は何も知らないと装うことが好きなのだ。シンジは考える。今しなきゃ駄目なんだ。そうすればアスカに馬鹿にされたりして苦しむこともないんだ、だからしなきゃならないんだ。

 でも‥‥‥僕には‥‥‥

 その思考はアスカの声に遮られる。

「何してんのよ、トロいわよ‥‥馬鹿‥‥」

 アスカの不機嫌な声。その声にシンジの手がびくっとする。

 もうためらっている時間はない。

 もう今しかない。

 シンジはアスカの首に手を回すと‥‥‥

 力をこめて首を締めた。

 アスカの眼が大きく見開かれる。

 

 

 

 

 


「何、ヘブライ語?‥‥かばらぁ?‥‥‥ええと、この文字はAlefでローマ字で言えばAね‥‥数値は1に相当、この文字とこの文字は30と60に対応‥‥‥あれ?なにか変ね?‥‥‥」

沈黙

「まさか‥‥‥これがセカンドインパクトの真相なの?」

‥‥‥そして、これが人類補完計画の真実‥‥!!

 

 

 

 

 


「うう‥‥」

アスカが締めあげられていた首をおさえて声を出している。シンジはその横でうなだれている。

アスカの瞳が光り、顔をあげる、そして‥‥‥

「‥‥あーっ、やっぱりこういうのって燃えるわね!興奮してきたわ!」

 


「アスカ‥‥やっぱりいけないよ‥‥僕達は中学生なんだ‥‥‥今から首締めプレイで気持ちいいなんていってたら‥‥‥」

「‥‥‥大人になるころには変態さんになっちゃうよ‥‥‥」

シンジにとって今のは変態じゃない、らしい。

「それに、僕達は中学生だし、やっぱり中学生らしいシチュエーションからシタほうがいいよ‥‥」

何をいまさら。

「なによ‥‥シンジだって‥‥喜んでるじゃない」

アスカは笑みを浮かべて手をシンジの下半身に伸ばしてもてあそぶ。

「あ、あ、あ、‥‥‥」

シンジはあまりの気持ち良さに言葉も出ない。

「欲しくないの?‥‥これ」

とどめ、とばかりにアスカは股を大きく開いて、その中心の淡い紅色を見せる。

ふわり、とした草地におおわれた、淫らな花。

加持リョウジが生きていたらアスカをここまで開花させた弟子を誇らしく思っただろう。

「ア、アスカァァァ!」(嬉)

がばっ。

「きゃあっ、シンジぃ!」(はぁと)

‥‥‥‥

 

 

 

 

 


地上で最も神聖な書物、『裏死海文書』には次のような一文がある。

『人類の歴史の全てはLASのためにある。約束の日、偽りの預言を奉ずる者達は打ち倒され、神の定めた真実のLASが実現するであろう』

 

 

 


「「気持ちいい‥‥‥」」

 

 

 


 



こんにちは怪作であります。

このお話も2回も転載してやっと自サイトに転載されることになったものです。

運が悪いというかなんというか‥‥。

まだ読んでなくて感想を書いてみようか!と思っていただいた方はまでお願いします。


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