敵は宇宙にあり!!



第二回 マヤが見た光景

筆者:YRRさん

 マヤは、キョウコの勤める日赤医療センターに搬送された。ネルフからは、リツコとミサトが飛んできていた。
「何か、光線のようなものを浴びて、全身にダメージを負ったようです。幸い、命に別状はありませんでしたけど・・・」
日赤の医師はそう言って、リツコとミサトの前でマヤの症状について話した。
「光線ですか??」
リツコは医師に聞いた。
「ええ、それも地球には存在しない光線ですね。放射線による初期症状とはまるで違いますからね」
医師は淡々と答えた。
「この日赤医療センターには、ネルフの付属病院に肩を並べるほどの技術が詰まってることは承知しておりますが、マヤはどのくらいになったら意識を回復する でしょうか??」
ミサトは医師に聞いた。
「少なくとも、2、3日はかかるでしょうね・・・。心の傷がどれくらいのものかによりますけど」
「分かりました・・・」
二人は医師に頭を下げ、医療センターを去った。
「うまくやってくれた??」
物陰から3人の様子を伺っていたキョウコは、先ほどまでリツコとミサトに説明をしていた医師に問いかけた。
「はい、エヴァを出すことの無いようにしたつもりではありますけど、もし相手の宇宙人の正体がばれたら、躊躇することなくエヴァを出すかもしれませんから ね・・・」
医師はキョウコにそう言った。
「ま、あとはレイちゃん、シンジ君、アスカにマヤちゃんのことはまかせましょう」
キョウコはそう言って、医療器具開発センターの方に戻っていった。

「にしても、ママもエヴァを出したくないのは分かるけど、まだネルフには諜報部員がわんさか残ってるのに・・・」
アスカが不安そうにリンゴを剥いていた。
「マヤさん、相手は??どんな相手だった??」
シンジがマヤに聞いた。
「あのセミ顔といい、手のハサミといい、相手は十中八九バルタン星人ね・・・」
マヤは冷静にそう答えた。
「バルタン星人・・・、前世紀最も地球に侵略しようと馬鹿みたいな執念を燃やした異星人ね・・・」
レイはそう答えた。
「ATフィールドがないから、エヴァで簡単に倒せると思うのだけど??」
シンジがマヤに聞いた。
「相手は異星人よ??それも、一番厄介なバルタン星人よ??無理よ・・・」
マヤは力無く言った。
「どうすればいいんだ・・・」
シンジの言葉が病室に虚しく響いた。

 この日マナは芦ノ湖畔にいた。その時、見たこともない人影を見た。
「あなたは誰?私は霧島マナ。あなたは宇宙人??」
マナはその人影に言った。
「私は、M78星雲ウルトラの星から来たウルトラマン」
「ウルトラマン??」
マナは不思議そうに聞いた。
「私はしばらく、あなたの体を借りたい。承知してくれないか??」
「何故??」
「バルタン星人が再びこの地球に攻めてきた」
「バルタン星人!!あの伝説の侵略者・・・」
「そう、我々はバルタン星人を倒す義務がある。けれども、この姿ではバルタン星人にすぐに見つかってしまう。そこで、君に協力を頼みたい」
ウルトラマンはマナに懇願した。
「でも、なぜ私なの??」
「君は元軍人だ。私が君と一心同体となっても、君であれば負担は軽いだろう」
「分かった。私、この地球のために戦うわ!!」
「ありがとう、マナ」
ウルトラマンはそう言って、光に包まれた。
「あれ?ウルトラマン??」
「マナ、もし困ったことがあったら、君のポケットの中にある、ベータカプセルを焚いて使うといい。そうすれば、私に変身できる」
ウルトラマンはマナの心の中に話しかけた。マナはポケットに入っていたベータカプセルを見つめた。
「分かったわ、ウルトラマン。私、頑張る!!」
マナは決心したように、その場を離れた。

「報告!!芦ノ湖畔に宇宙人と見られる反応あり!!」
日向はミサトに向かって叫んだ。
「あそこには、マナが行ってるはずよ!急いで!!」
日向はマナと連絡を取った。
「はい、霧島です」
「マナちゃん、いまその近くで変わったこと無かった??」
ミサトはマナに聞いた。
「いえ、特別何もありませんでしたけど??」
マナは一世一代の芝居をした。
「そう、何もなかったのね・・・」
「誤作動でしょうか??」
日向はミサトに聞いた。
「相手が、地球人に見えないようにしているのなら、マナも気づかないわよ??」
「そうですね・・・」
「ごめんねマナちゃん、そのまま芦ノ湖で待機してて」
「了解です」
マナはほっとしたように、回線を切った。

「芦ノ湖の湖畔に地球外生命体の反応??」
アスカがミサトに聞いた。
「そうなの、10分くらいで消えちゃったけどね」
「綾波が感じた二つのうち一つか」
シンジはふとそんなことを漏らした。
「ところでアスカ、レイは大丈夫??」
「そうとうナーバスになってるわ。今レイに聞くのは、レイの精神状態が崩壊する危険性があるわ」
「そう、深刻なのね・・・」
ミサトはため息を付いた。
「マヤの方は??」
リツコがアスカに話しかけてきた。
「相変わらず。包帯ぐるぐる巻きで、横になってるわ」
アスカがリツコに言った。
「手掛かり無しか・・・・」
ミサトはため息をつく。
「確か、芦ノ湖にはマナが警備のために行ってたわよね??」
アスカはミサトに聞いた。
「だけど、相手が地球人の目に見えないようなことであれば、いくら勘のいいマナだって100%無理ね。事実、何も起こらなかったと報告があったわ」
「何がなんだか、いよいよ・・・」
シンジはお手上げのポーズを取った。

 アスカは家に帰ると、レイが横になっている部屋を覗きに行った。
「レイ、気分はどう??」
「最悪よ、アスカ・・・」
レイは元々色白なのに、さらに顔色が真っ青となっていた。
「それに、三つ目の気配を感じたわ・・・」
「三つ目の気配??宇宙人がまたもう一つ来たと??」
アスカはレイに質問した。
「正義心に燃えた、気分のいい気配だったわ。少なくとも地球人には害はなさそうよ」
「そう・・・」
アスカは「まいったな・・・」という顔をした。これをミサトに言うべきかというわけである。
「三つ目のレイが感じた気配に会えるかな・・・」
アスカはふとそんな気持ちを感じた。

 星涼子は久しぶりに、地球に来てその変貌ぶりに愕然としていた。
「一回、地球人は全滅して、復活したなんて・・・、地球人てすごいわ」
涼子は第三新東京市で感心していた。すでに、別のウルトラ星人からの報告で、地球で劇的な変化があり、一度地球上の全ての生物が死んだということは聞かさ れており、その後、何事も無かったように復活したことも報告書を読んで聞いていた。
「にしても、まだまだ復興途上の地球にバルタン星人が潜入してくるなんて・・・」
涼子は唇を噛んだ。バルタン星人はウルトラ星人にとって、最大の敵である。過去に十数万人のバルタン星人を駆逐してきたが、まだまだその生き残りは宇宙中 に散らばっているからである。
「ウルトラマンが来ているらしいけど、うまく地球に潜り込めたかしら・・・」
涼子は不安そうに地球の空を眺めていた。

 翌日、レイは久々に登校した。まだ、三つの気配を感じてはいたが、それが段々弱まってきたため、いつものメンバーと一緒に登校することになったのだ。
「ケンスケ、まだ怪獣ファイルは持ってる??」
レイはケンスケに聞いた。
「おう、葛城持ってるぜ」
ケンスケは何の躊躇もすることなく、レイに怪獣ファイルのコピーを渡した。
「バルタン星人・・・。過去に6回にわたり地球に侵攻。そのたびにウルトラマンに倒された・・・」
レイは書いてあることを呟く。
「えっ、ウルトラマン??」
シンジはそう聞いた。
「ウルトラマンというのは、M78星雲ウルトラの星から来た、正義の戦士だよ」
ケンスケはさすがという知識でそう話した。
「もし、レイの感じた気配のうち、ウルトラ戦士のものがあるとしたら・・・」
「すでに、第三新東京市に潜伏しているわね」
アスカの疑問にレイが素早く答えた。

「おはよう!!マナ!!!」
「おはよう!!アスカ」
マナも警備の任務を解かれ、久々に高校に登校した。
「マナから何かを感じる・・・、私が感じたあの気配にそっくり」
レイがアスカに小声でそう言った。
「ちょっと待って、レイ。マナは立派な地球人よ!?」
「もし、マヤの体に宇宙人が一体化していたとしたら?」
「でも、マナから悪意を感じなかったけど?」
「恐らく、ウルトラマンがマナと一体化したんだわ」
レイが推理した。アスカは目を丸くしている。
「じゃあ、ウルトラマンがバルタン星人を追ってきたってわけ??」
アスカはレイに聞いた。
「そうね。エヴァの存在を知っているかは知らないけど、少なくともバルタン星人が現れたら、姿を現すかもね」
レイはアスカにそう答えた。

「えぇ、今日は教育実習の先生を紹介したいと思います」
ホームルームで教育実習生が、担任から紹介された。
「星涼子です。短い間ですがよろしくお願いします!!」
涼子は生徒に向かって深々と頭を下げた。
「きれいな先生やな・・・。ケンスケ、あの先生の生写真を撮影して売る気になったか??」
トウジがケンスケに聞いた。
「ホント、きれいだな・・・。でも、毎年教育実習の先生の写真を売ってるけど、全然売れないんだよな。今年はやめようと思う・・・」
「そうか・・・」
トウジが残念そうに言った。
「なんだ?個人的に欲しいのか??」
「う、うんまあな・・・」
「分かった分かった。特別に一枚だけおまえ用に撮ってあげるよ」
「ほんまか??ありがとな!!」
トウジはケンスケに感謝した。
「ほら、そこうるさいぞ!!」
担任から二人は注意された。
「「す、すいません・・・」」
二人は声を揃えて謝った。

「マナ、彼女はウルトラ星人だ」
「ホントなの?ウルトラマン」
マナの心にウルトラマンが話しかけてきた。
「ホントだ、彼女の本当の名前はユリアンだ。あとで、彼女と二人っきりになれるかい??」
「OK、やってみるわ」
マナはウルトラマンに約束をした。

「あの、星先生もものすごいオーラを感じた・・・」
「えっ、星先生も宇宙人だと??」
シンジはレイに聞いた。
「確かに悔しいけど、私より美人だわ・・・。ウルトラ戦士だとしたら、悔しさ100倍ね・・・」
アスカが妙なライバル心を燃やしていた。
「あとで、ネルフに行きましょ・・・」
アスカがふとそんなことを言った。

「星先生!!」
「なに??私に何か??」
マナは涼子を呼び止めた。
「ちょっと、こちらへ来てくれませんか??」
マナは涼子を連れて、放送室へと向かった。
「こんな所に連れてきて、何のよう??」
涼子は少し怒った顔でマナを見つめた。
「そんなに起こらないで下さいよ、ユリアンさん」
涼子の顔色が変わる。
「あなたは一体何者なの!?」
「ユリアン、私だ。ウルトラマンだ!!」
涼子の心にテレパシーでウルトラマンが話しかけてきた。
「大丈夫、彼女に一時的に体を借りているだけだ。彼女は決して怪しいものではない」
「私のことを教えたの?」
涼子はウルトラマンに聞いた。
「すまない、妙な詮索をされる前に、マナだけには真実をと思ってね」
「お人好しなんだから・・・」
涼子は呆れた。
「ユリアン、しばらくはテレパシーは使わないようにしよう。そうしなければマナが危ないのでね」
「分かったわ」
ウルトラマンはそう言って、テレパシーをやめた。
「マナさんだったわね??バルタン星人が地球に潜伏したわ。一緒に手伝ってくれる??」
「分かりました。星先生!!」
「ユリアンて言わないの??」
「星先生は、星先生でしょ??」
マナはそう言って涼子にほほえんだ。涼子もマナに向かって笑った。

次回予告 バルタン星人を追って、ウルトラマンとユリアンが合流した。マナは戸惑いながらもウルトラマン達と協力していく。そして、ネルフでは涼子の正体 を調べ始め、チルドレン達は地球を守るためにある決断を下す。物語はいよいよ佳境に・・・!

どうも、YRRです。第二回どうでしたか??相当変化球の物語になってきましたが・・・。では、次回お会いしましょう!!
補足説明
ウルトラマン ウルトラシリーズの記念すべき初代の正義の戦士。身長50メートル、体重2万3千トン。必殺技はスペシウム光線、八つ裂き光輪など。

ユリアン 第二ウルトラシリーズ最後となったウルトラマン80に最後の8回だけ登場した女戦士。身長50メートル、体重は不明(どうやら、女性だから非公 開にしたかったようである)。ただし、変身したのは最後の2話だけ。ウルトラ戦士としてはウルトラの母とユリアンしか女ウルトラ戦士は登場しない。必殺技 もこれといったものがないが、設定上ではウルトラマン80と同じくサクシウム光線が使えるらしい。

バルタン星人 いわずとしれた、ウルトラシリーズはもとより、ゴジラやガメラに匹敵するくらい有名な宇宙人(怪獣)の一つ。カニのような手から放たれる光 線は強力。設定上では火星にある、スペシウム物質に弱いらしい。ウルトラシリーズでは、ウルトラマンに三回、ウルトラマン80に二回、ザ・ウルトラマン (アニメ)に一回、OVAのウルトラマンパワードに一回登場した。手はカニのハサミのようだが、基はセミだそうです。ウルトラマン、ウルトラマン80で、 ミクロ化されたバルタン星人の乗った宇宙船を撃墜しているので、ウルトラシリーズ史上一番犠牲者の多い怪獣でもある。推計10万人以上。!



YRRさんから連載二回目をいただきました。

YRRさんはメールアドレスを公開していません。感想は掲示版までお願いします〜。

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