敵は宇宙にあり!!



第一回 第三新東京市への侵入者

筆者:YRRさん

 サードインパクトから、3年あまり・・・。地球の地軸も少しずつ回復し、日本にも四季が戻ってきた今日この頃。ゼーレは滅び、ネルフもエヴァの使用及び 管理という責務を残して、規模を縮小した。当然、使徒など現れない。こんな、平和な日々がずっと続けばいいと思っている一組のカップルがいた。碇シンジと 惣流・アスカ・ラングレーである。二人は、高校生になった。ほとんどの人たちがLCLの海の中から戻り、第三新東京市もめざましいほど復興した。
「つい、3年前まで、ここで使徒とやり合って、戦自と殺し合いをやったところなんて信じられないわね」
アスカはシンジと高校からの下校途中、ふとそんなことを言った。
「どうしたの、急に??」
シンジはアスカが突然、感慨深げになったので聞いてみた。
「いや、あのときは大変だったな〜って・・・」
「そりゃそうだよね・・・。あんなでっかい人造兵器に乗せられて、やり合いなさいなんて、精神状態がおかしくならない方が逆に変かもね」
「だから、あのとき私の首を絞めたの??」
「うっ・・・」
シンジは返す言葉もなかった。
「でもさ、シンジがあのとき私の首を絞めた理由、3年経ってようやく分かってきたような気がするの。あんな状態で、普通にいろって言う方が無茶苦茶だし ね」
「あのときは、すみませんでした・・・」
シンジが申し訳なさそうにアスカに改めて謝った。
「いいのよ。ある意味、あのおかげで私たちは結ばれたんだから!!」
「そう言ってもらえると、心が軽くなる感じだよ」
シンジは若干ホッとしたような顔となった。
「おうおう、いつも仲の良いことやの〜」
あとから来た、トウジがシンジとアスカに話しかけてきた。
「別に良いじゃない!付き合ってるんだから!!」
「へ〜へ。分かりました・・・」
トウジはアスカの気迫に一瞬で白旗を上げた。
「ところでトウジ、足の方は??」
シンジがトウジに足の具合を聞いた。
「義足の技術が進歩して、ほれ見、健常者とかわらんやろ??」
「そりゃ〜、ママがトウジのために一生懸命作った義足ですもん!!当たり前よ!!」
アスカが自慢げに言った。実は、サードインパクトのあと、LCLの海からシンジの母親のユイと、アスカの母親のキョウコが一緒に帰ってきたのだ。
「さすが、キョウコおばさんだよね。そう言うものを作らせたらピカイチ」
シンジも納得していた。なお、ゲンドウはサードインパクトのあと、長年の激務が応えたのか、体を壊して、長野県内の病院で療養生活を行い、ネルフはミサト が仕切っている。ユイは、自らのせいでシンジを追いつめてしまった罪悪感からか、ネルフには戻らず、国連の出先機関で働き、キョウコは日赤医療センターに 勤め、義足や義手、医療器具の開発などを担当していた。
「お〜い、みんな〜!!」
声を掛けてきたのはケンスケだった。
「おっ、なんか新しいネタでも仕入れてきたな??」
「新しいネタね・・・」
「ギョッ!!あ、綾波いつのまに!?」
「今来た所よ?そんな怖い顔しないで・・・」
やはり、LCLの海から帰ってきたレイが、ヌッと顔を出した。
「で?何か、おもしろいネタでもあったの??」
「これこれ!!」
アスカの問いにケンスケが答えた。
「持ち出し厳禁・・・、異星人怪獣ファイル、1982年地球防衛軍作成??」
シンジはびっくりしたような顔で、ケンスケからファイルを受け取った。
「地球防衛軍て、怪獣とか異星人とかと戦った、20世紀の精鋭部隊よね??なんでこんな資料が、流出するんだろ??」
「サードインパクトの混乱で、日本政府の機密文書保管室から誰かが持ち出して、どこかの古書店に売り払って金に換えたらしい。それが流れに流れて、第三新 東京市の図書館にたどり着き、そのコピーがこうやって出回っているというわけ」
ケンスケが力説した。
「確かに、このコピー本はネルフの倉庫でほこりをかぶっていた資料の中身と同じだわ」
アスカはシンジと一緒になってファイルを見ていた。
「ネルフにもあったんや??」
トウジが丸い目をする。
「まだ、使徒の襲来が少なかった頃、シミュレーションに使う相手を誰にするかで、結局そのファイルに載っていた怪獣ちゃん達ってわけ」
アスカがトウジにそう言った。
「確か、赤木博士が怪獣のDNA情報を保管していたのを覚えているわ」
レイが凄い一言を発した。
「それで、その保管していた情報は??」
シンジがレイに問う。
「使徒の襲来が多くなるに連れ、セカンドインパクト以前の怪獣の資料よりも、今ある使徒の情報の方がはるかに重要だもの、ドラム缶の中で燃やしてたわ」
「リツコさんらしい・・・」
レイの答えにシンジは妙に納得した。
「まぁ、こんなのがまた来たら、たちまち人々がパニックになるわね」
「ええ・・・」
アスカとレイは少し心穏やかではないなとお互い感じていた。
「異星人と怪獣ね・・・。ホントにまだ混乱の続いているこの地球に来るのかな??」
シンジはまだ明るい空を眺めながらそうつぶやいた。

 規模を縮小したといっても、ネルフはまだエヴァを持っていたし、ゼーレの作った量産型のエヴァの後始末作業を行っていた。その間に、量産型エヴァの部品 を流用して、エヴァ新零号機を製作、初号機、弐号機も量産型エヴァを流用、S2機関を搭載したエヴァ初号機改とエヴァ弐号機改を所有していた。
「にしても、あれから3年経ってるし、ちょっち無用の長物ね・・・」
ミサトは格納庫でため息をついた。
「シンちゃんもアスカもレイも、サードインパクトで精神的にボロボロになったんだから、今更、訓練というのもね。まあ、なんか怪獣でも来れば別かな??」
「独り言はやめたら??ミサト」
リツコが声を掛けてきた。
「いやいや、つい・・・」
「でも、ミサトの言葉にも一理あるわ。確かに、シンジ君達は、よほどの緊急事態がない限り、エヴァには乗らないでしょうし、私たちも無理矢理乗せる権限は もはやないわ。一人の人間として、あの子達には残りの人生を送って欲しいもの」
「そうね・・・」
ミサトも、ネルフの最高司令官という肩書きを持ってはいるが、使徒など来ないのだからはっきりいって税金泥棒と自分で言っている。リツコもエヴァの復元や 後始末が終わったあとは、一週間に一度のメンテナンスで体を動かすくらいで、普段は自室の研究室で、ユイやキョウコ、ミサトの悩み事や相談事などを聞くく らいだ。
「は〜あ。ここで、宇宙人でも来ないかしら??久々に暴れたいわ・・・」
「暴れたいんだったら、ジムで思いっ切り暴れてらっしゃい・・・」
リツコは苦笑しながらミサトに言った。
「まぁ、平和が一番てことね・・・」
ミサトも変に納得した。

 翌日、第三新東京市立第一高校。言うまでもなく、シンジ達のいる高校である。ユイとキョウコが戻ってきてから、アスカとシンジは新築されたマンション で、それぞれの母親と暮らしていた。しかし、お隣同士のため、しょっちゅうマンションの廊下で楽しく談笑している、いわば双方の親公認の仲。今日もいつも のように、アスカとシンジは登校していた。二人の住んでいる階の下の階に、レイはミサトと共に住んでいる。シンジは未だにレイのことを「綾波」と呼んでい るが、ミサトと養子縁組を結び、「葛城レイ」と姓を改めている。レイによれば、ミサトの家の中の汚さは相変わらずで、「碇君、よく我慢できたわね??」と 言わせるほどだという。シンジとアスカは、一度階段を降りて、レイを迎えに行く。そして、今度は隣の棟に住んでいるヒカリを迎えに行くのだ。
「おはよーレイ!!」
アスカがレイに朝の挨拶をした。
「おはよう」
いつもレイはこんな感じ。朝は弱いらしい。
「今日も目覚めが悪い??」
シンジもレイを気遣った。
「いや、昨日使徒とは違う気配を感じたの・・・」
「使徒とは違う気配??」
アスカはレイにそう質問した。
「そう・・・。妙な電波を感じたの」
「電波ね・・・」
シンジが不思議な顔をした。
「レイは勘が鋭いからね。まぁ、使徒の細胞が少し混じってるから、当たり前だけど・・・」
アスカはそう言った。
「なんか、この星が危ないという、そんな感じがした・・・」
「なんか、綾波が言うともの凄くリアルだな・・・」
シンジも寒気を覚えた。
「あと、もう一つ気配を感じたの・・・」
「もう一つ??」
アスカはびっくりしたような顔になった。
「正義心に燃え、もう一つの気配を追うような感じだったわ・・・」
「使徒ではないとしたらなんだろ??って、学校遅刻しちゃう!!」
シンジは慌ててレイとアスカを引っ張って、ヒカリの家へと直行した。

「変な気配ね??それも二つ??」
ヒカリもその話しに興味津々となった。
「あや・・・、じゃなかった葛城さん、それは今までで感じたことのある気配??」
「ないわ・・・」
ヒカリもまだ、綾波という姓を言いそうになってしまう。
「今日は、学校さぼろうか??」
アスカが言う。
「そうね、もしその話しが本当だったら、えらいことですもんね。分かった!!私の方から、先生にはうまく言っておくから、早くネルフに行って」
ヒカリはそう言った。

 ネルフに着いた3人は、早速リツコの研究室に駆け込んだ。
「妙な気配??」
リツコはレイに聞いた。
「それも、2つの気配です。何かここ数日間で起きましたか??」
「そうね〜、これは一昨日の話しになるんだけど、富士山の山麓周辺の住民から、空から妙なものが降ってきたという通報が寄せられたらしいんだけど、警察や 消防がヘリを出して調べた結果、山麓で煙がくすぶってて、隕石じゃないかと言うことだったんだけど」
リツコはレイにそう答えた。
「でね、その通報から25分後に、今度は旧都心付近で同じような通報があって、やっぱり隕石じゃないかってさ・・・」
「へ〜・・・」
アスカは隕石がそんなほぼ同時にたかだか100キロという近距離に落ちたことにしっくりこなかった。
「よく調べたの??現場の物質を採取したりとか・・・」
「警察がやってるけど、鑑定結果が出るまであと数日かかりそうよ」
「その二つの隕石が、綾波の妙な気配と関係があるのだとしたら・・・」
シンジは声がうわずっていた。
「使徒以上の敵が、この地球にやってきたことになるわ・・・」
リツコの顔もいつの間にか険しいものとなっていた。

「隕石が落ちてきて、非常召集をかけるのはちょっち無理かも・・・」
アスカとシンジはレイのことやリツコの話しを総合してミサトに伝えた。
「でも、もし地球外生命体が地球に攻めてきたとしたら、使徒以上に厄介なことになりますよ!?」
シンジはミサトに大声で叫んだ。
「分かったわ。非常召集ではなく、臨時召集をかけるわ。これは、災害時に本来使うものだけど、シンちゃんの頼みじゃしょうがないわね」
「ありがとうございます!!」
「チェッ、シンジには大甘ね・・・」
アスカはそうぼやいた。

「へ〜、レイちゃんが変な気配を感じたわけね??」
ユイはシンジと一緒に食事の支度をしながら、今日の顛末を聞いていた。
「もし、地球外生命体だったらどうしようかって、アスカや綾波と話してたんだ」
「レイちゃんは勘が鋭くされちゃったから、我々凡人には分からないこともあるのね・・・」
「うん・・・」
シンジもユイもため息を付いた。

「で、レイちゃんはうちに泊まるのね??」
キョウコは家に帰ってきたレイとアスカに聞いた。
「まあ、緊急事態だから、ミサトも帰ってこないのよ」
「しばらく、ご厄介になります」
「いいのよ、でも地球外生命体なんて事になると、ネルフはおろか、全世界が震撼する大事件ね・・・」
キョウコは身震いしながら答えた。
「また、エヴァに乗ることになるのかな・・・」
アスカは不安そうにそうつぶやいた。

 第三新東京市第三新東京駅前。真夜中のこの駅前を一人のネルフの職員が自宅に向かって歩いていた。
「今日も疲れたわね・・・」
マヤはぶつぶつと独り言を言いながら、家路を急いでいた。
「何かしら??あのシルエットは??」
帰り道の途中にある、公園の街灯にうっすらとシルエットが浮かんでいることにマヤは気が付いた。
「あなたは誰??」
その後、マヤはそのシルエットに近づいた瞬間、その場に倒れ込み意識を失った・・・。

次回予告 ついに現れた謎の異星人にマヤが襲われた!!敵の正体は??目的は??使徒との戦いが終わったネルフに、新たな危機が訪れた!!

どうも初めまして!!YRRと申します。さぁ、ある意味賛否両論が分かれそうな作品にこれからどんどん仕上がっていくかもしれませんが、それはご了解下さ い。それでは、次回にお会いしましょう!!



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