碇家のドタバタ年末〜正月

著者:YRRさん



 12月31日、年末はどこの家庭でもあたふたするが、碇家は特にあたふたする。クリスマスが終わって、年賀状を書いて一息つくと、すぐに大掃除とおせち 料理の仕度である。そして、このおせちの仕度というのがくせ者である。なにせ、惣流家と碇家が合同でやるからである。惣流キョウコと碇ユイは料理が非常に うまい。そこに、アスカとシンジがいれば百人力である。今回は、おせちなど作ったことのない葛城家のものまで作るため、レイも手伝うこととなった。
「ええと、三浦産煮物用大根(俗に言う三浦大根)を12本と、青首大根が10本、里芋が1キロ、人参20袋、油揚げが10袋と・・・」
シンジが、マンション近くの農協やスーパーでいろいろなものを買い込み、アスカはというと・・・
「しょうゆが5本、圧力鍋、しゃもじ、栗の甘露煮、サツマイモ、みかん、田作り・・・」などと、ドイツでは考えられない知れものばかり。
「ドイツじゃ、七面鳥とパーティー料理だから、ちょっとね、日本のおせちってすごいのよね・・・」
と愚痴をこぼす。
「これが、日本の風習よ、アスカ」
レイが間髪入れずにつっこむ。
「あ、マグロの大トロ・・・・」
アスカがよだれを垂らす。
「アスカ、中トロで我慢しなさい」
レイが釘を刺す。
「どうして??」
「値段を見てみなさいよ・・・」
レイが大トロと中トロの冷凍物をアスカに見せる。
「げっ、こんなに違うものなの・・・?」
その差は歴然、アスカは諦めて中トロを買った。
「その食い意地どうにかならないかしら??」
レイはため息をついた。

「だ〜れ〜??中トロなんか買ってきたの??」
アスカの母、キョウコがアスカの方をじっと睨む。
「いや〜、お刺身食べたくて・・・」
アスカが苦しい言い訳をする。
「アスカ、イカとホタテが足りないね・・・」
シンジがどうでもいいつっこみをする。
「とにかく、一番時間のかかる、栗金時と豆金時をやりましょ」
レイはふか〜いため息をつきながら、そう言った。

「このサツマイモの皮むきって意外と難しいのよね」
レイがサツマイモに包丁を入れながらそういった。
「レイって、サツマイモ食べるの??」
アスカがそう聞いた。
「食べるわよ。肉が苦手だから、その分芋類をおおく取ってるからね」
レイが素っ気なく言う。
「そっか、綾波は肉が苦手だったんだっけ??」
シンジがそう言った。
「魚は相当食べられるようになったけど・・・」
レイが言う。
「レイちゃん、一番どの肉が嫌い??」
ユイがレイに話しかけた。
「マトンです(羊肉のこと)」
レイがあっさりという。
「ああ、羊の肉ね。あれは、レイならずとも、人によりけりよ」
アスカが冷静に言う。
「豚とかは平気??」
シンジが聞く。
「豚汁最高よね」
レイが思いも掛けない言葉を発した。
「あら、ちょうど里芋も余ると思うし、ジャガイモもあるし、白菜や豆腐もあるわ。圧力鍋をたくさん買ったから、一個は豚汁にしましょ」
キョウコがそう言った。
「さてと、次は里芋を剥いて、圧力鍋でちゃっちゃとやりましょう」
アスカが買ってきた、市販品では一番大きいであろう圧力鍋を取り出し、一体何人前分あるのか分からない、煮物づくりはスタートした。

「正月と言えば、ビール〜〜〜〜♪」
自分ではおせちが作れない(というより、殺人的な料理は作れる)ミサトは、正月用の日本酒やビール(えびちゅ、アサヒスーパード○イ、一○搾り等)、ワイ ンなどを大量にディスカウントストアで購入していた。
「あぁ、領収書は葛城でお願いします〜〜〜〜」
せこいミサトである。
「さてと、シンちゃんのところに突入しますか」

 碇家に来たミサトは、5人の手際の良さにある意味感動していた。煮物等はすでに圧力鍋の中、豚汁もしかり、アスカがローストビーフまで作っている手際の 良さである。
「何でこんなに、手際がいいの??」
ミサトは愕然とした。
「だって、昨日からしっかり計画が立ててたからよ」
ユイはミサトにそう言った。
「まず、農協に野菜の注文を出して、圧力鍋を購入して煮る時間を短縮する。大体、3件分作るんだから、計画を立てないと、あっという間に除夜の鐘よ」
キョウコが力説した。
「私にはちょっち無理です」
ミサトはあえなく降参。
「あとは、そばを茹でるだけ」
アスカはミサトにそう言った。
「ええ〜〜〜!!まだ、作れる余裕があるの??」
ミサトは絶句した。

 31日午後七時過ぎ、「日本人ならこれよね〜」と言いながら、ユイはテレビをつける。「NHK紅白歌合せ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
司会者が大きな声で、大晦日恒例の紅白の開催を宣言した。すでに、碇家の食卓には、年越しそばと、レイリクエスト(?)の豚汁が並べてあった。
「こたつにみかんに年越しそばに、これが日本の大晦日!!」
ユイは楽しそうにそう話した。
「ドイツにいたときなんて、もっと、わたわたしてたわよ・・・」
キョウコはドイツでの思いで話を披露する。
「そばだから、今日は日本酒かな??」
ミサトは、ビニールの袋の中から、日本酒を取りだし、早々と飲み始めた。
「では、今年もいろいろありましたが、来年はいい年でありますように、乾杯!!」
シンジの威勢の良いかけ声で、ささやかな忘年会は始まった。
「でも、今年はいろいろあったわね。バルタン星人が来たり、ゼーレの残党がうちの高校を占拠したり・・・」
レイは、そばをすすりながら、今年の思いで話を語り始めた。
「でも、何と言っても、シンちゃんとアスカちゃんが、分かれなかった事よね」
ユイがとんでもない事を言ったおかげで、シンジがあわゆくそばを吹き出しそうになる。
「ゴホッゴホッ、か、母さん・・・」
「ユイおばさん、私とシンジが離れるわけがないです!!」
アスカがシンジに変わって、抗議する。
「はいはい、分かってるわよ」
キョウコもしょうがないなと言う顔をしながら、アスカにそう言った。
「私もそろそろいい人見つけないと・・・」
レイはふとそんなことを言った。
「あ〜〜〜〜 ん??この私をさしおいて、彼氏をつくるだぁ???十年早いわよ、レイ!!!!」
日本酒のおかげですでに目が据わっているミサトは、レイにからんできた。
「うわ〜、妖怪酔っぱらい婆だ・・・」
アスカがそう言った。
「私だってね、彼氏欲しいわよ。どうよこの胸とウエスト!!こんな美人がいるのに、罪よ罪!!そうでしょ〜〜〜、ユイさ〜〜〜〜ん」
ミサトは半泣き状態でユイにもからんでくる。
「葛城さんて、泣き上戸だったんだ・・・」
ユイが呆れる。
「葛城さん、大丈夫よ、そのうちいい男ができるから・・・」
キョウコ必死のフォロー。
「うえ〜〜〜ん・・・」
ミサトは泣きながら、日本酒を飲み続けていた。

 翌日のおせち料理披露会のため、レイにATフィールドを使わせてまで、部屋に運ばれたミサトを除き、キョウコとレイはそれぞれの家に帰った。
「あっそうだ!!ユイ、今日はアスカをシンジ君の部屋に泊めてあげてくれない??」
キョウコはそんな提案をユイに話した。
「シンジやキョウコやアスカちゃんが良いなら良いけど、突然どうして??」
「こういうときくらい、二人っきりにしてあげましょうよ」
「まぁ、いいけどさ・・・」
ユイはキョウコが何でそんな提案をしたのか、しっくりこなかったが、とりあえずアスカを泊めてあげることにした。

「何か、あっという間の一年だったわね」
シンジの部屋でアスカは、そんなことを言った。
「そうだね。星先生も来たし、カヲル君も戻ってきたし」
シンジもしみじみと言う。
「あっ、除夜の鐘」
外からは、ゴーンゴーンという鐘の音が聞こえ始めた。
「シンジ、今年もよろしくね」
「アスカ、これからもよろしくね」
二人はそんな挨拶をした。が・・・
「ところでシンジ、さっきこれからもって言ったけど・・・」
アスカはそういうことは聞き逃さない。
「これ」
シンジは机の引き出しから、大事そうにアスカの手のひらにあるものを渡した。
「これって・・・」
アスカの目に涙が溜まる。
「婚約指輪だよ。僕たち今年で18でしょ??だから・・・」
「シンジ〜〜〜〜〜〜」
アスカは泣きながらシンジの胸に飛び込んだ。
「アスカ、ずっと僕らは一緒だよ・・・」
「うん、うん・・・」
アスカの涙は止まりそうになかった。
「あと、シンジ」
「何?」
「今夜は寝かせないから!!!!!」
「覚悟の上さ」
シンジはアスカを押し倒した。長い夜になりそうだった。

 新年1月1日。ユイはそんなとてつもない状況になっているとも知らず、いつも通りシンジを起こしに行った。
「シンちゃ〜ん、アスカちゃ〜ん、朝ですよ〜」
シンジの部屋を開ける。そして・・・
「ちょ、ちょっと二人とも!!!!素っ裸で・・・、あっ・・・」
ユイは昨日のキョウコの提案を思い出した。まんまとやられたとここで感じた。
「ふう、しょうがないわね・・・」
ユイはため息をついた。シンジとアスカが、こういう関係であることは分かっていたが、正月早々からこんな現場を目撃するとは夢にも思っていなかったからで ある。
「ほら、二人とも、さっさとお風呂に入って、葛城さんとレイちゃんを呼んでらっしゃい!!!」
ユイはシーツをひっくり返した。シンジとアスカは全裸のまま、何が起きたか分からないと言う表情をしながら、ユイの方を見つめていた。

 シンジとアスカは、二人で寝ぼけながらお風呂に入って、レイとミサト、キョウコを呼びに行った。
「シンジ君、婚約大作戦はうまくいった??」
どうやら、仕掛け人は本当にキョウコのようだった。
「ま、ママ!!もしかして・・・」
「あら、シンジ君から相談があってね。どう、私のプロデュースは??」
キョウコは鼻高々であった。
「アスカ、その指輪は大事にしなさいよ」
「うん!!!」
アスカは、昨夜シンジからもらった婚約指輪を大事そうに見つめていた。
「まんまとやられたわ。それも婚約つきとは・・・」
ユイは完敗であった。

「えっ!?婚約したの〜??二人とも??」
レイは正月早々、狐につままれた顔をした。
「私を差し置いて・・・」
ミサトは悔しさで涙を流していた。
「まあまあ、さて、おせち料理披露会の始まり始まり〜〜〜」
アスカはミサトの嘘泣きっぽい涙を無視して、おせち料理を披露した。
「うわ〜〜〜、豪華・・・」
ミサトが泣くのをやめて、感嘆としていた。おせちというおせちは全て、目の前にある食卓に並んでいたからである。
「5人の自信作よ。どう、ミサト?」
アスカが胸を張る。
「とにかくいただきます!!」
まずは、圧力鍋で煮た煮物。
「うまい!!!さすがは、皆々様・・・」
ミサトは謙遜した。

 おせち料理も一通り終わり、レイ、アスカ、シンジは近くの神社に初詣に行った。
「アスカ・・・、首にキスマークが・・・・」
レイはアスカに怖々と指摘した。
「これ??気にしない気にしない」
アスカは全然気にしていない様子だった。
「そう・・・」
レイは心の中で「まずいわよ〜〜〜〜」と悲鳴をあげていた。

 神社には当然、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、涼子、カヲルが来ていた。
「センセ!!ホンマに婚約したんか!?」
トウジは自分のことのように喜んだ。
「いいわね〜アスカ。幸せになりなさいよ!!」
ヒカリも祝福ムード。
「若いって良いわよね〜」
涼子も笑顔。
「賞賛に値するね」
カヲルも硬い表現で祝福。
「でも、シンジ君、昨日はどうもアスカと激しくイチャイチャしてたみたいね・・・」
ヒカリはアスカのキスマークを見て、そう言った。
「途中までしか覚えてなくて、気がついたら朝だった・・・」
「か〜〜〜〜〜、こんな所で惚気話かい!!」
トウジが突っ込みを入れた。

「シンジ、何てお願いしたの??」
アスカが帰り際に聞いた。
「アスカの思っていることだと思うよ」
「じゃあ、私もシンジの思っていることだと思うな」
二人は笑った。二人の願いは
『ずっと一緒に二人とも幸せに暮らせますように』
fin

あとがき
どうも〜、YRRです。自分で書いてて、かゆいかゆい・・・。でも、こういう婚約の仕方もありかなと・・・。今度も甘いLASにしようかな・・・。

YRRさんから年越LASをいただきました。

これはシンジ君、姫始めってことなんでしょうか(笑

二人の新年が素敵な年であるといいですね。

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