新世紀エヴァンゲリオン×機動戦士ガンダムSEED DESTINY

第三回 奇妙な同居
筆者 YRR

 救出活動をひとまず終えたミサトであったが、問題は山積みであった。まず、「エターナル」「アークエンジェル」の二隻の艦の乗組員の数である。二つ併せて500人。搭載されていたモビルスーツは50機あまり・・・。また、あれだけ大きな空飛ぶ戦艦をネルフの修繕工場に運び込むのも一苦労。必然的にエヴァ三機の修理は後回しとなり、ゼーレが意図している、有人ロボットによるネルフへの侵攻作戦への妨害活動も出来なくなるという四重苦に陥っていた。
「今、ゼーレに攻められたら、勝てない戦ではないけれど大混乱は必至ね・・・」
ミサトは最高司令官らしくリツコに問うた。
「そうね。おまけに科学者としては彼らをいかにして元の世界に戻すかというとんでもない仕事も増えたし・・・」
リツコはそういった。500人のクルーをどうやって元のコズミック・イラの世界に戻すかも当面の最重要課題。科学者としての限界を越える難事業だ。
「でも、救いは、主要クルーの人たちとシンジ君やアスカ、レイやカヲル君とウマがあったことね」
ミサトはせめてもの救いをふと言った。
「あぁ、元議長閣下と代表首長?」
「そうそう、ほぼ同年代だったことも良かったし、キョウコさんやユイさんにも相談できてホントよかったわ・・・」
ミサトのぼやきにリツコも苦笑した。

 アークエンジェルとエターナルのクルーは取り敢えずネルフの施設内で保護されていたが、突貫工事で仮設住宅をネルフの敷地内に建設、下士官以下はそちらに皆移り住んだが、問題は、オーブ連合首長国代表のカガリ・ユラ・アスハとその婚約者であるアスラン・ザラ大佐、プラント最後の最高評議会議長のラクス・クライン、その恋人でカガリの双子の弟(カガリの主張によると)キラ・ヤマト中将の扱いであったが、碇家と惣流家が公にしないことを条件に、この四人の身柄を引き取るとミサトに持ちかけた。すでに、葛城家にはアークエンジェル艦長であるマリュー・ラミアス、エターナル艦長のアンドリュー・バルトフェルドの両名の身柄を預かることが決まっていたため、ミサトにとってまさに救いの手が伸ばされた格好となった。
「本当に良いんですか?厄介にならせてもらっても?」
ミサトがユイに尋ねた。
「いいのよ、楽しい方が。キョウコも大人数の方が良いと言っているし・・・」
セキュリティーもばっちりだしね!とユイがそう言って、ミサトを説得した。
「では、お言葉に甘えてよろしくお願いします!!」
ミサトは一つ問題をクリアしたような心意気となった。

「え?最重要人物他多数の皆様方が来ると??」
シンジが母であるユイから発せられた言葉に目を丸くした。
「ええ、うちは男性軍よ。机の上にメンバー表を置いておいたから目を通してみて」
シンジはそのメンバー表を読んだ。
「ええと、キラさん、アスランさん、シン・アスカさん?あのガンダムとかいうロボットを操るエースパイロットの方たちと聞いたけど・・・」
「まあ、良いんじゃない?にぎやかで」
「にぎやかって・・・。警備は??」
「ここの警備は世界一よ。そんじょそこらの不良に入られないわね」
ユイはどこまでもマイペースだった・・・。

「はい〜?クルーの女性軍が〜?ママ大丈夫なの??」
アスカはクルーの最重要女性軍の身柄を預かると聞いた途端、キョウコにそう聞いた。
「シンジ君のところにも男性軍が行くわけだし。最重要人物をネルフの敷地内でウロウロさせるよりも、意外なところに置いておくのが、治安維持の基本よ」
キョウコは持論を展開した。
「ええと、カガリさん、ラクスさん、ルナマリアさん、メイリンさん、ミリアリアさん?みんなでどこかの旅館に泊まるような状況になるかも・・・」
アスカはそう言った。普段は二人しか住んでいないこの部屋に、いつ帰られるか分からない五人が入るわけである。部屋の問題は空き部屋があるのでクリアできるが・・・。
「お金なら、ネルフからも出るし心配いらないわよ」
キョウコもどうやらマイペースらしい・・・。
「相当にぎやかになりそうね・・・」
アスカはもはや自棄であった。

「今日からお世話になります!!」
一同を代表してキラがユイとキョウコに挨拶をした。
「いいのよ、それにしても大変だったわね〜」
ユイはキラに科学者らしからぬ一言を発した。
「私たちもあなたたちを元の世界に戻せるよう、精一杯サポートするわ」
キョウコは科学者らしいあいさつである。
「ありがとうございます!まだ、僕たちも現実をうまく飲み損ねておりまして・・・」
キラは率直な感想を述べる。違う時代から違う時代へタイムスリップするとは、いくらSFに興味のあるキラでも、信じられないのは無理もない。
「そうよね。事態なんか飲み込めないわよね・・・」
ユイは同情するような言葉でキラを慰めた。
「でも、二件とも二人しかお住まいでないのに、妙に部屋が広くありませんか?」
「こら!メイリン!」
メイリンが素朴な疑問を二人にぶつけた。ルナマリアの注意付きで。
「うん、警備上の問題で、このマンションにはネルフで働いている人やその関係者が居住しててね。大家族の人もいれば、うちみたいに二人家庭の人、一人暮らしの人もいるのよ。いちいち合わせてられないから、建てられた当時一番の大家族家庭の人数に合わせたら、こんなに無駄に広くなっちゃったわけ。だから、部屋はたくさん空いてるわよ」
ユイが解説した。
「私たちも家事を手伝いますので、どのくらいの期間かは分かりませんが、どうぞよろしくお願いします」
ラクスが破格の笑顔でユイとキョウコに頭を下げた。
「「こ、こちらこそ・・・」」
二人はラクスの天使のような笑顔にただただ、言葉を返すしかなかった。

 そのころコズミック・イラの世界、オーブ・プラント両国と地球連合や他の中立国が月面都市であるコペルニクスに代表者が集まり、今後の対応に追われていた。
「イザーク司令官、これは報道協定を結んでも、世界各国の人民にどういう状況であれ、情報が伝わるのは時間の問題ですぞ?」
連合の外務政務官がプラント国防軍最高司令官のイザークを問いつめた。
「確かに今回のミッションにはかなりのリスクがあったが、彼らでなければ出来ないと判断し、オーブとプラントの二国間で決めたことです。責任はオーブとプラント両政府が・・・」
「これは二国間の問題ではありませんぞ!地球的問題ですぞ、すでに」
外務政務官がイザークの模範的な答えにいらついた。先の二回目の大戦で、地球連合の力が完全に失われ、代わってプラントの侵攻を受けながらも力強く復興し、現在は地球の基軸国となったオーブの国家元首が、乗船していた艦船共々蒸発するという信じがたい事象が起きたとなっては、どうしようもない。おまけにこの外務政務官はオーブ出身であるため、つい感情的となってしまったのだ。
「政務官殿、これはオーブの国家元首が消えたとともに、プラントの前国家元首もその恋人も親友も、世界に誇る艦船も、その乗組員も全て消えてしまったのですから、事は大事です」
オーブを代表してきていたキサカが目頭を押さえながら政務官に言った。
「プラントとしても、ラクス・クライン嬢を失ったわけです。生きているのか、死んでいるのかもわからない。これがもし公になれば、プラント国民は悲しみに暮れるでしょう。各報道機関の報道協定はあと16時間で切れます。あと16時間でどうにかなるとは到底思えません。我々も覚悟しなければなりません・・・」
イザークも珍しく消沈していた。こんなことならば、ラクスとカガリだけでも参加させなければよかったと、後の祭りではあるがそう感じていた。

「こちらはオーブタワー、アークエンジェル、エターナル聞こえますか?みんなはいや、地球に住む全ての人類はあなた方の帰りを待っております。それまで、お元気にお過ごし下さい」
オーブ広域管制塔は、二隻の戦艦にこの無線が届かないことは百も承知で毎日10回、決まった時刻になると、管制官が無線でしゃべっていた。このことが、後に無駄ではなかったことが証明されることとなる。

「今頃は、私たちの世界では大騒ぎになっているだろうな」
カガリが惣流家でテレビを観ながらそう呟いた。
「ええ、何せ向こうから見れば私たちは突然身を消したに等しいわけですから、地球やプラントの皆様には大変な心配をかけているでしょうね」
ラクスも自分たちが不可抗力とはいえ、起こしてしまった現象をCEの世界の人たちに謝罪したい気持ちであった。
「でも、ラクスさんが悪い訳じゃないわよ?」
アスカがすかさずフォローを入れた。
「そうですよ〜、ラクス様やアスハ代表のせいではないですよ。私だって、メイリンだってこんなことになるなんて思っても見なかったのですから」
ルナマリアもそうフォローした。
「そうですよ、ラクスさん。ラクスさんが気にすることじゃありません」
メイリンもラクスに同情的だ。
「まあ、今は今のことだけを考えましょう。すぐに解決できる問題じゃないわよ」
話を聞いていたキョウコもラクスに助け船を出していた。
「さあ、今日は私も腕をかけるわ。アスカ手伝って」
「あ、私も手伝います」
「私も」
キョウコの料理開始発言に、アスカ、メイリン、ラクスが加わり、明らかにおいしい料理になる予感であった。

「そうか〜、君もいろいろ大変だったんだ」
キラはシンジから昔話を聞いていた。突然父に呼び出されてエヴァに乗せられ、使徒と戦ったこと、サードインパクトを防げなかったが、それでも大切な人たちは帰ってきたことなどを話した。
「はい、で今があるわけです」
シンジはそう答えた。
「君も未来を選んだ訳だね。でも正体不明の化け物相手じゃ、大変だった?」
「そりゃ大変ですよ。それこそ死にものぐるいですから」
キラの問いにシンジはすぐに答える。
「うわ〜、アスラン、あの二人の会話は時代が違っても通い合ってますよ」
そばで聞き耳を立てていたシンがアスランにそう言った。
「しょうがないだろう。今の話を聞いていると、キラとシンジ君の境遇がよく似ているからな。キラだって戦いたくて戦ったわけじゃないからな。俺達職業軍人とは違うよ」
アスランはそう答えた。
「あの、ヤキンでの戦いの後、キラさんは抜け殻のようだったってラクス様から聞きましたけど・・・」
シンは自分の大戦後の心境と同じようであったキラのことをアスランに問うた。
「ああ、カガリと俺とラクスであそこまでにしたんだ。あと、おばさまとおじさまだな。両親の愛情が何よりの薬だったようだからな。あと、ラクスの愛か?」
アスランにしては珍しい恋話まで披露した。
「え?ということはラクス様とキラさんって、親公認の同棲状態だったんですか?」
「というより、親と一緒に住んでたんだから事実婚だろ」
アスランのさらりとした発言は、シンを驚愕させるのには十分であった。
「知らなかったな〜、あのおとなしそうなキラさんが、ラクス様を落とすなんて・・・」
シンもキラの方を見ながら小声でぼやいた・・・。

「キラ」
ラクスはちょうどマンションの通路で、外に出てきたキラと鉢合わせした。
「ラクス。大丈夫?この世界に慣れた?」
「ええ、キョウコさんやアスカさんに親切にさせてもらってます。女の子もいっぱいいますし」
ラクスは心配ないといった表情でキラの質問に答えた。
「うん、でも君はすぐに無理をするから、それだけは駄目だよ」
キラはラクスの性格をすでに見抜いているため、こういう発言が飛び出す。
「はい!」
ラクスは満面の笑みでそう答えた。
「その笑顔、反則・・・」
「えっ・・・!?」
そうキラが言うと、突然ラクスの腰を手に回し、熱いキスを始めた・・・。
「んふっ///キラぁ/////・・・」
「ラクス、愛してる・・・」
そんなことが行われているとはつゆ知らず、碇家からはシンジが、惣流家からはアスカが顔を出した。
「夕食の用意ができ〜〜〜〜〜〜!?」
「ラクスさん、ママが夕食出来たって〜〜〜〜〜〜!?」
前者はシンジ、後者はアスカの二人の熱烈ラブシーンを目撃した叫びである。
「わ〜〜〜〜っ!!!キラさん、ラクスさん何を・・・?」
「ちょ、ちょっと何やってるんですか!」
二人の悲鳴に双方の部屋にいた全員が玄関から顔を出す。
「悪い、あれ毎日見せつけられてた」
アスラン談。
「うわ〜、俺ルナと外であんなことはしたことないです・・・」
これはシンの率直な感想。
「こら、キラ!!そういうことは夜にやれ夜に!!」
カガリの激怒発言。
「うわ〜、私は真似できない・・・」
ルナマリア撃沈。
「あそこだけ、ピンクの雰囲気ですね。大戦中もずっとそうだったっけ・・・」
これはメイリンの感想。
「やってくれたわね。これで一つ話のネタが増えたわ」
仮設住宅入居を拒み、女だらけの秘密の会話でもしようと強引にラクス達に付いてきたミリアリアはゲラゲラ笑いながらの感想。
「「若いっていいわね〜〜〜〜」」
これは、キョウコ、ユイのぶっ飛んだ感想。
「あれ〜?僕たちがこういうことやってるのみんなだって知ってるじゃない?」
キラは全く悪びれた様子はなかった。
「そういうことを言ってるんじゃない!場所と時間を弁えろ!!」
カガリの猛烈な抗議。
「キラ〜〜〜/////」
ラクスもさすがに恥ずかしいらしい。
「さて、キラ夕食でも食べながら、じっくり言い訳を聞こうじゃないか」
アスランが場を収めようと提案。
「そうね〜、ラクスアスカちゃんから質問攻めにあってもちゃんとに答えなさいよ」
ミリアリアの的確なコメント。
「う゛〜〜〜〜〜〜〜」
キラはもう観念するしかなかった。ラクスも真っ赤な顔で惣流家に戻っていった。

「全く、あんなところでラブシーンをするな。見られたのが俺達だから良かったものの」
アスランは親友のキラをピシッと注意した。
「以後気をつけます・・・」
オーブでの位はキラの方が上だが、こういうときは立場が逆転するのがおかしな二人である。
「俺は真似できません、絶対」
シンからも無理がある宣言であった。
「あれを、戦艦の中でやってたわけですか?」
シンジはアスランに聞いた。
「あれを毎日だ。ひどいときなど、俺は二人が・・・」
「うわ〜、アスランお願いだからそれ以上は言わないで〜〜〜」
キラはこれ以上アスランに話されるとまずい展開となるため、慌てて止めた。
「意外だ・・・」
シンもアスランが何を言おうとしていたか大体分かった。
「僕もアスカと付き合ってますが、公衆面前に出る可能性があるときは、一応自粛してますよ」
シンジもキラの大胆すぎる行動に引いていた。
「もう、アスランてば!!」
キラはすっかり機嫌を損ねてしまった。

「ラクス、頼むからあれはやめてくれ・・・」
カガリは眉間に手を乗せ、うつむきながら話した。
「いや、つい流されてしまいました・・・」
ラクスの言い訳にならない言い訳が口から出た。
「でも、いいな〜お二人はラブラブで。シンなんかあんなことしてくれません!路上では」
ルナマリアは怒るどころか憧れの眼差し。
「お、お姉ちゃん・・・」
メイリンは姉の発言に呆れていた。
「あれで何か、ある意味おなかいっぱいって感じよね〜」
ミリアリアはやっぱりゲラゲラ笑いながらそう言った。
「私も早く同棲したいな〜」
アスカの意味深な発言まで飛び出していた・・・。

「シンジ君それは?」
夕食後、一通りのキラへのからかいが終わり、シンジはミサトから渡された資料に目を通していた。
「ネルフと敵対します、ゼーレという組織が密かに建造した有人ロボットの図面です」
シンジはさらりと言った。
「有人ロボット?」
アスランは興味深そうに言葉を返した。
「ええ、ただデザインが・・・」
アスランにそのゼーレが作ったというロボットの図面を見せた。
「うわ、ひどいデザインだな。戦車に足と頭を付けただけみたいだ」
アスランはそのあまりにひどいデザインを見て、思わず吹いた。
「でも、ミサイルとか積んでるね」
からかわれていたキラが復活し、一緒に図面を見ていた。
「推定されるロボットの数は?」
シンがシンジに聞いた。
「ゼーレのシステムに侵入してその図面と個数を確認したそうですが、およそ500機。多分こんなので大量に攻められたら、勝てるでしょうが犠牲者多数と出てます」
「ほ〜。でも、運がないな。今俺達がいるうちに攻めてきたら、10機あれば勝てるか?」アスランのとんでもない発言が飛び出す。
「おっ、アスランも珍しくやる気だね。まあ、動力源を破壊すればただの鉄の塊だから、任せて置いて、シンジ君」
「はあ・・・」
キラとアスランの思いがけない言葉にシンジはただ黙って頷くしかなかった。

次回予告 ゼーレのS2機関搭載型有人ロボットが第三新東京市に侵攻する。この大軍に立ち向かうのが、モビルスーツ10機ほど。果たしてキラとアスランの戦略とは?

あとがき どうも〜YRRです。1年以上間が空いてしまいました・・・。あと1回か2回の予定です。次回もお楽しみに!!

YRRさんから種死+エヴァなお話の第三話をいただきました。

なんだかリツコさんのキャパシティを超えた事態のような気もしますが、大丈夫なんでしょうか。
それよりもゼーレ撃退のほうが大事でしょうか。とはいえ皆ラヴラヴの方が大事でそっちも大事じゃないみたいです(笑

感想は作者さんの原動力です。YRRさんにぜひ読後の感想をお願いします。

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