ねぇ、だからアタシだけを見てよ。

アタシはアンタのものなんだから。

ほかの女に目を向けないで。

笑わないで。

 

 

 

 

 

 

Rosso

written by yumemibito

 

 

 

 

 

アタシのことちゃんと見てる?

ほら、テレビなんかどうでもいいのよ。

ごはんは最低限だけ見なさい。

こぼさない程度にね。

 

 

 

 

頬杖を付いてアンタを見るの。

おもしろいのよ。

お茶碗を持つ仕草とかまるっきり女の子じゃない。

なんでそんなに睫毛が長いのよ。

一回一回噛みしめて食べるのね。

 

 

 

 

 

あ、紅くなった。

気付いてないフリしないでもいいのに。

ちらちら見てる。

木目調のテーブルに麦茶の入ったコップを置いて、

ボトルから注いで、

ん?氷足りないの?

コップを持って冷蔵庫の前に立ってる。

コップから落ちた露がテーブルの上にダイヤモンドリングみたいな形を作った。

ガラ、ガラガラガラ。

バタン。

戻ってきた。

おいしそうにゴクゴク飲んじゃって。

もうごちそうさま?

 

 

 

 

 

 

 

だんまりしちゃってるわ。

下向いてないでこっち見なさいよ。

…………………

え?何でそんなに見てるかって?

好きだからよ。

言えないけどね。

正直に、素直に。

また紅くなった。

 

 

 

 

 

 

 

あ、立った。

どこに行くの?

リビングか。

目で追う。

生意気にソファで腕広げて座ってるわ。

いまからアンタのアタマの中をアタシだけにしたげる。

 

 

 

 

 

 

 

アタシは椅子から立ってあの馬鹿の居るとこに行く。

目の前に立つ。

おどおどしちゃってるわ。

可愛いのね。

この馬鹿の左腕側に突っ込む。

驚いて悲鳴あげちゃった。こいつが。

わっ、だって。

顔を真っ赤っかにしてアタシを見てる。

腕が緊張してる。

 

 

 

 

 

 

………………ピト。

寄りかかる。

かなり動揺してるわ、作戦通り。

心臓バクバク。

聞こえんのよ?

それだけアタシを意識してくれてるのね。

嬉しい限り。

あ、アタシ今、笑っちゃってるかも。

 

 

 

 

 

 

んぅ?腕を肩に掛けようとしてるわね。

肩を抱きたいのかしら。

延々と続くシャンプーの香り攻撃は確実に効いてるみたいね。

もっと深く寄りかかる。

じれったいから背中でわざとこいつの左腕を肩に掛けさせてやる。

あちゃー。

もっとバクバクいってるわ。

 

 

 

 

 

 

十時になった。

もうそろそろオトナっぽいドラマが始まる頃ね。

ただのメロかもしんないけど、そんなの関係ナシ。

雰囲気を作り出すのよ。

あ、はじまった。

 

 

 

 

 

ふう。

目を瞑る。

トクン、トクン。

静かになったわ。

慣れてきたのかしら。

テレビでは色っぽい女優が何かしゃべってる。

いいわ、そんなの。

所詮この馬鹿にとっちゃアタシが一番だもの。

 

 

 

 

 

 

終始無言。

でもいいの。

このままが。

変わらなく。

涼しくて。

暑さも抜けて。

ベランダから吹く木々の香り。

眠たく、ぼんやりとした意識。

もうこいつしか頭にない。

 

 

 

 

 

 

アタシはこの人だけ見るの。

ずっと。

そしてこう、言うの。

好きって。

エゴイズムなのでしょうね。

きっと。

でもこの気持ちは本当。

嘘じゃない。

この人だけがアタシを見る。

アタシだけがこの人を見る。

誰も、視界に入れてやんない。

 

 

 

 

 

 

優しいのよアンタは。

だからアタシが好きになっちゃったの。

きつく当たっても、優しい。

笑顔でアタシを見てくれる。

あなたは知っているの?

アタシにそれがどれほど安らぎを感じるか。

人がさけるような振る舞いをしても、

あなたはもう私を包んでくれてる。

 

 

 

 

 

 

 

ドラマはもうピークね。

えっちぃコトしてる。

ちょっと、何ドキドキしてんのよ?

ほかの女で紅くなんないでよ。

見るな!

テレビ消してやった。

しーんと静まりかえる。

え?って顔でこっちを見てる。

もう。

 

 

 

 

 

こいつは右手をソファに突いて座ってる。

かたっぽの手はアタシに。

アタシの左手でこいつの右手を押さえつける。

さっきより驚いた顔してるわ。

瞳を見つめる。

そして、上目遣いに。

ゆっくりと目を閉じる。

 

唇があったかい。

キス、してくれたんだ。

優しい。

耐えきれなくなって首に手を回す。

気持ちいい。

ぼんやりしてるけど、気持ちは確か。

………抱きしめてくれた。

ずっとこうしていたい。

 

 

 

 

 

 

ねぇ、アタシはあなたが好き。

あなただけ見たい。

感じたい。

だから、言って?

好き、って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシも好きって言うから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 夢見人さんから投稿小説をいただきました。

 可愛らしいシンちゃんに胸をときめかせるアスカ様(笑)
 これはアスカ様のほうからシンちゃん押し倒すか‥‥と思ったら、シンジ君、やるときはやるんですねぇ。

 一人称でらぶらぶな感じが良く出ておりました。みなさんも是非夢見人さんに感想メールをお願いします。

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