――その感触。

 

 

暖かい。

 

 

求めいた物?

必要ない物?

 

 

解らない。

 

 

分からない。

 

 

判らない。

 

 

ワカラナイ。

 

 

だけど……

 

 

 

イヤじゃない。

 

 

ずるり。

入ってくる。

そして、一つに。

待ち望んだ瞬間。

これが、終わりの日。

これが、約束の時。

これが、無に帰る為の儀式。

 

感嘆。

いえ、恍惚?

あるいは、安堵?

 

そして、ゆっくりゆっくり流れ込んでくる。

この人が、私になっていく。

そして、私は、この人になる。

 

いや、違う。

全てが、全てに帰るのだと言う。

全てが、原始に還り、失楽園が復興されるのだと言う。

 

 

ああ、この感覚は…

何と心地よいのだろう

 

ああ、この温もりは…

何と満たされるのだろう

 

一人では無いという事。

孤独ではないという事。

自分だけが他者と異なり、

自分だけがただ一つの異端ではない。

すべて溶け合い、『同じ』になる。

 

淋しい思いを、

空洞の感覚を、

言いしれぬ虚しさを、

全て取り払われていく。

 

この結末の、終焉の、何と素晴らしい事か!

 

 

 

 

 

刹那に感じた、ぶるりと身震いするような、充足感。

 

しかし、それはすぐさま冷え切った。

いかなる表情に表れるよりも、早く。

絶望的なほどに。

 

ああ、これは…?

 

そんな、これは…

 

これは…!?

 

イヤ…

 

イヤっ

 

イヤ!!

 

この人の中には、私がない。

私の居て良い場所がない。

この慈しむ瞳を向けてくれたこの人は!

見守っていてくれたはずのこの人は!

少しも!

わずかにも!

私を、私としてくれては居ない!?

 

 

 

 

「レイ」

(ユイ)

 

「レイ、大丈夫か?」

(ユイ、大丈夫か?)

 

「レイ、もう上がっていいぞ。

食事にしよう」

(ユイ、さあ行こう。

久しぶりに二人で食事だ)

 

 

 

――自分で解るもの…

 

それは、まさに甘かったのだ。

 

――お気に入りじゃないわ…

 

しかし、どこかに期待もあった。

 

――あの人は、私を見ていないもの…

 

でも、わずかくらいには、

ほんの少し、意識の片隅くらいには、

どこか気にかけて貰っているはずだと。

 

彼とは、

あの、この人の息子たる者とは違って、

完全に道具としか見なされていない、あの「哀れな生け贄」とは違って。

 

私は、この人に必要とされる。

少なくとも気にかけられるだけの、価値のある存在。そのはずだった…

 

しかし、

それは、思い上がりにしか過ぎなかった。

それは、都合の良い解釈に過ぎなかった。

それは、夢だった。

 

異端者が、

人外の私が、

孤立無援の、この『綾波レイ』が、在り続ける為に抱いた、ただ一本きりの支柱。

 

 

 

ああ、この人の心には、碇ユイの幻影しかなく…

 

ああ、綾波レイは、その愛する女のヒトガタに過ぎず…

 

ああ、私の住む場所は、この人の中にはわずかたりとも無く…

 

ああ、私は私は私は私は…

 

結局、完全無比に、

ただの過程に過ぎず、

ただの手段であって、

ただの「人形」

 

「人形のクセに!」

 

結局、弐号機パイロットの、セカンドチルドレンの、惣流・アスカ・ラングレーの、

 

あの言葉は、正鵠を射て、いた…?

 

結局は、

息をする、

生きている、

言う通りに動く、

それだけの人形に過ぎなかった?

 

この人の中に、私の住む場所なんてどこにもない。

いや、最初から有りはしなかったのだ。

いや、人形に、道具に居着く場所など与える必要など、考える事もなかったのだ。

 

だって、人形だから…

だって、道具に過ぎないから…

 

――必要なときまで生きてさえいれば、それで良かったのね…?

 

あの、切り捨てられた哀れな無様な女と同じように…

あるいは、それよりもっと…

 

――取るに足らない存在だったのね…?

 

 

存在の意義は、音もなく崩れ去り。

瓦礫の一欠片すら残さずに、淡雪と化し、消え去るのみ。

 

ああ、全てが、足下が、私の礎が崩れていく!

 

ああ、そんな事になれば、そんな事を認めてしまえば、私が何もかも無くなってしまう!

 

ああ、今までの全てが、全く、何もかも、総て、無為と消えてしまう!

 

 

それは、刹那でさえ、生まれて初めての充足を感じたが故に、

激しく揺れ動いた、恐怖。

 

 

 

だから、綾波レイは、

使徒でもなく、人でもない、

属するべき所を持たない、還るべき所を知らない、

その哀れな生き物は、必死に何かにすがった。

 

何かすがる事の出来る物を、必死で、まさに生まれて初めての、必死さで。

探した。

手探りで。

心に残る事の出来た、少ない思い出と呼べる物のその内から。

 

「あの子って絶対ヤバイ事やってるのよ」

「止めなさいよ!目を付けられたらどうするの…!」

「綾波ってウリやってるんだぜ?ホントだって。俺見たんだよ。変なオッサンと一緒に歩いてるの」

「ワシ、アイツ苦手や」

「俺だってそうさ」

「アンタ、司令が死ねって言えば死ぬんでしょ!?」

「ご主人様の、ご機嫌をとるのだけは上手ね?」

「あの子…やっぱり苦手です。こっちの考えてる事、全部見抜いてるみたいで…」

「レイ。お前は事時の為にいた」

「あなたは、命令さえ聞いていればそれで良いのよ!」

「綾波さん…いえ、何でも無いの…ごめんなさい」

「大丈夫!アイツなら、ヤっても多分訴えないってっ」

「アンタが死んでも…代わりなんていくらでも居るのよ!!」

「あの子、怖い…何考えてるか分からないもの」

 

そんな耳障りな内より一つ、心地よい音色が耳に付く。

 

――……の言葉……初めての……

 

ふっと、暖かい感触。

必要かどうかワカラナイ感触。

でも、イヤじゃない感触。

 

今のは…何?

何の言葉?

何時の言葉?

昔の言葉…?

二人目?

あなた…いえ、私?

私の言葉?

 

「ありがとう」

 

誰?

この人…?

…じゃない…?

…碇司令じゃないの?

………………………

 

「お前が心配しとんのは………や」

 

誰?

鈴原君。クラスの男の子。

誰って言ったの?

私が誰を心配しているって言ったの?

 

「綾波って最近、少し変わったよ。………が来てから」

 

相田君?クラスの男の子。

誰?

誰って言ったの?

教えて…

知りたいの…

『それ』を

 

「バカシンジぃにファーストぉ?

随分とお仲のよろしい事で…ああ、やだやだ…妬けちゃうわぁ」

 

弐号機パイロット?

 

 

バカシンジ?

 

シンジ…碇シンジ? 

 

碇君?

 

 

「綾波はさ、父さんといつもどんな事話してるの?」

 

「人を殺すより、ずっとマシだよ!」

 

「綾波は、どうしてこれに乗るの?」

 

「うわ〜〜っ、何だよこれ!?どういうことだよ!ミサトさん!?」

 

「あ…あの…その…か、カード…!そうカードが変わったから…それでその…」

 

「綾波!」

 

「別れ際にさよならなんて言うなよ!――

 

――自分には何もないなんて淋しい事言うなよ!!

 

 

そうなの?

本当にそうなの?

私にも、

人じゃない私にも、

誰も必要としない私にさえも、

何かあると言うの?

 

 

「何か…お母さんって、感じがした」

 

「強いんだな、綾波は」

 

「ゴミ以外、触ってないから…」

 

「ありがとう、助けてくれて」

 

「主婦なんて似合ってたりして…」

 

「もう、大丈夫だから」

 

 

碇君…

あなたは…

私を心に住ませてくれるの…?

人じゃないのに…?

 

 

「笑えば、良いと思うよ?」

 

 

そう…

あなたは確かに…あの時…

確かに、私の身を案じてくれた…

 

 

「…何、泣いてるの?…」

 

 

あなたにとって、父親を取る敵なのに…

それでも、私を助けてくれたのね…?

 

 

「きっとさ…今は何もなくても。

生きていれば、きっと何かが、

何か良い事が有ると思うんだ…

生まれてきて良かったって思える何かが…

僕にも、綾波にも…だって――」

 

 

『太陽と月と、地球がある限り、生きていれば、生きてさえいれば、

どこだって天国になりますよ?

だって――』

 

 

…信じて良いの…?

信じて…良いのね…?

 

――「生きているんだから」

――『生きているんですもの』

 

碇君…!

 

少女は、その想念にしがみつく。

少年と一つになる事を望んだ、二人目の情動に。

いや、彼女は『それ』にすがる以外に、何一つとして選択肢が有り得なかった。

もう、これを手放せば、彼女には全く、本当に何も無くなってしまうから…

 

だから、もう何であろうと、暖かさを与える者に。

一時であろうと安らぎを、感じさせてくれる者に。

 

それが、何者でさえ、すがりつく他に無いのだ。

例え、それが何者であれ…

 

 

だから、すがりつき。

そして、振り切った。

 

希望をくれ、そして打ち砕いてくれた男へと。

かつて、全てであった男へと。

拒絶。

否定。

排除。

別離の言葉。

 

「私は、私。貴男じゃない」

 

もう、絶望は欲しくない…

それは思っていたものと違ったから…

 

もう、無へ帰りたくはない…

包まれる心地よさを知ってしまったから…

 

そして、この人はもう必要ない…

だって、私が私である事を許してくれないから…

 

だから、

当てつけであるかのように。

あるいは、復讐のように。

当て馬として、

彼の切り捨てた、

彼が必要としなかった、

彼にとって取るに足らない、

全くの道具に過ぎなかった、

その『生け贄』である子息の名を告げる。

 

「ダメ…碇君が呼んでいる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

     

 

作:ヤケンザン

 


 

 

 

 

「私は私…あなたじゃないもの…」

 

 

「…は?…レイ?」

 

 

「ダメ…お布団が呼んでる…」

 

 

「って、二度寝するなぁ〜〜!!」

 

げしっ

 

 

「……痛いの…」

 

 

「そりゃ痛いでしょねぇ?蹴ったんだもの。力一杯」

 

 

「…どうして…そういう事するの…?」

 

じ〜…

 

 

「アンタがいつまで経っても起きないからでしょ!?」

 

 

「止めて…寄らないで…私の事何も知らないクセに…」

 

ごそごそ…

 

 

「ワッケ分かんない事言ってないでぇ…っ

とっとと起きろ〜!!」

 

がば〜!

 

 

「…寒いっ…

…これは…っ?

温もりを求める私の心…?

いえ…体が冷えていくのね…」

 

 

「バカやってないで、さっさと準備しなさいよ!

アンタに付き合って遅刻するの、もうイヤだからね!?」

 

 

「…ぐすぐす…寒いの…まだ眠いの…」

 

 

「嘘泣きしてもダメだからね?」

 

 

「…………」

 

…ちっ… 

 

 

「――アスカ〜、綾波〜。ご飯出来たから早くおいでよ」

 

 

「――!

…うう〜…碇くぅん…」

 

とてとてとて…

…ずるずるずる…

 

 

「…ゲンキンなやつ…鳴いたカラスがもう帰るってやつよね?」

 

 

「あ、綾波?

…何泣いているのさ?

あと、モンちゃん(ぬいぐるみ)は引きずっちゃだめだよ?汚れるから」

 

 

「…アスカが…いえ…猿が…

…どう猛な赤毛猿が…か弱い私をいたぶるの…」

 

ぎゅっ…

 

 

「――っこんっっっっのぉ〜〜!くそファースト!!

だいたい、何抱き付ついてんのよ!?

離れなさいっ」

 

ぐいっ

 

 

「…いや…」

 

ぎゅっ

 

 

「は・な・れ・な・さ・い・って言ってんのよっ!」

 

ぐいぐいぐいっ

 

 

「…あうう…い、碇君が離れていく…

…それはとてもとても悲しい事なの…」

 

じたばた…じたばた…

 

 

「何考えてるのよ!このバカレイっ!

朝っぱらから発情してんじゃないわよ!」

 

ぽこんっ

 

 

「ああ。また始まっちゃったよぉ…

…時間無いのに…」

 

はぁ〜…

 

 

「…むむむ…

…野蛮のみならず…

…口も悪いのね…

…救いようがないお猿さんなのね…?」

 

…くすくす…

 

 

「はぁ〜っっ良い度胸してるじゃないっっ!?

毎日起こしてあげてる恩人に対する感謝の言葉が、それって訳!?」

 

ぴくぴく…

 

 

「シンちゃ〜ん、おみそ汁ちょうだい〜」

 

 

「はい、ミサトさん。熱いですよ?」

 

 

「…恩人?…

…いいえ…あなたは邪魔者…

…猿は用済みなの…

…あなたが居なければ碇君が起こしに来てくれるの…」

 

…ぽ…

 

 

「ふ、ふざけんじゃないわよ!

アンタ、またシンジ布団の中に引っ張り込む気でしょ!?」

 

 

「…碇君と一つになるの…それはとてもとても気持ちが良い事なの…」

 

 

「―――っっっっ!!?」

 

ぽんっ

 

 

「シンちゃん?

あのね、今日ね残業で徹夜になりそうだから、夕食要らないと思うわ…」

 

 

「はあ…――加持さんですか?」

 

 

「――なっ!!何考えてんのよアンタは!?

はしたない!!」

 

かぁ〜〜!

 

 

「…事実よ…認めなさい…

…それに…ウサギと人間は…いつでもサカリが付くモノなの…」

 

ぽ…

 

 

「な、なななななにいいいいいいてんのよアスカぁ、レイぃ!?

そんなご無沙汰だから、今夜は牛肉たんまり食べて精付けて激しくだなんて…朝までだなんて…そんな事言ってないでしょぉ!?

や〜ん、もう!

この子ったら、エッチなんだからぁぁ♪」

 

べしべしべしっ…

 

 

「…痛いの…碇君…」

 

ぐすぐす…

 

 

「…………」

 

なでなで…

 

 

「…いいなぁ…」

 

じ〜…

 

 

「…碇君…もっと…」

 

ほふぅ…

 

 

「そんなぁ、もっとだなんてっ……」

 

もじもじ…

 

 

「………」

「………」

「………」

 

 

「…綾波、アスカ。アレは放っておこうか?」

 

 

「そうね…正直、関わりたくないわ」

 

 

「…君子危うきに近寄らず…」

 

 

 

「やん…加持のバカぁ〜ん…」

 

うっとり…

 

 

 

「――そだね、頂きます」

 

「いただきまぁす」

 

「…いただきます…」

 

 

 

「ダメだってばぁ…もうえっちぃ」

 

もだえもだえ…

 

 

 

「……………」

 

ぱくぱくぱく…ふ〜ずずっ…

 

 

「……………」

 

もぐもぐもぐ…ずるずる…

 

 

「……………」

 

もそもそもそ…ごくごく…

 

 

 

「ダメだってば…もうっ…すぐそうやって誤魔化すぅ」

 

えへえへえへ…

 

 

 

「ごちそうさま…」

 

「ごちそうさまぁ」

 

「…ごちそうさま…」

 

 

 

――はっ!

 

「あれ?

もう食べちゃったの?

――っていうか何?その冷ややかな目は?

私、なんか変な事でも言ったぁ?」

 

 

「行ってきます」

 

「いってきまぁす」

 

「…行ってきます…」

 

 

「ちょっちょっと、みんなぁ?

後片付けどうすんのよっ?」

 

 

ぷしゅ〜…

 

 

「……………………………」

 

 

「クエ…?」

 

 

「ペンペン…片付けよろしくね?」

 

 

「クエ…?」

 

 

「うう…やっぱしダメよね…

シンちゃん怒ると怖いし…」

 

えぐえぐ…

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「今日転校生が来るんだってね?」

 

 

「…そう…」

 

 

「女の子なんだって。どんな子かなぁ」

 

 

「……………」

 

 

「かわいい子だと良いなぁ…」

 

 

「……えい…」

 

蹴りぃ!

 

 

 

「や〜ん!転校初日から遅刻だなんてっ

超ヤバイって感じぃ〜」

 

 

 

「――うわぁ!

もうっ、何するんだよあやな――うわぁぁ!?」

 

「ひあぁっ!?」

 

――ごっちん☆

 

 

 

 

「痛たたたぁ…」

 

 

「………碇君…大丈夫?」

 

 

「綾波ぃ…ひどいよぉ。

いきなり蹴るなんてっ」

 

 

「あうぅぅ〜…いたたたぁ…」

 

ぴよぴよぴよ…

 

 

「あ、ごめんだいじょう――ぐがっ!?」

 

――ごきん!

 

 

「…だめ…私以外のパンツ見ちゃ…」

 

 

「く、首がぁ…」

 

 

「――怪我はないみたい…この人…

…放って置いても大丈夫…

…行きましょう、碇君…」

 

 

「…く、首がぁ…」

 

ずるずるずる…

 

 

「あ、あう〜…お星様きらきらしてるぅ〜」

 

ふらふら〜…

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「綾波ったら、ひどいや…」

 

 

「で、峰打ち…じゃなかったムチウチはもう良いのか?」

 

 

「あ、うん。もう大丈夫」

 

 

「ホンマに、オノレは丈夫やなぁ」

 

うむうむ…

 

 

「半端な回復力じゃないよな」

 

うむうむ…

 

 

「そだね。

僕じゃなかったら死んでる…とまでは行かないにせよ。

二、三日は起きあがれないかも?」

 

 

「物騒な生活やな」

 

 

「スリルには不自由しないよなぁ。

あと退屈もしないだろ?」

 

 

「…………ケンスケ…

代わりたいの?」

 

 

「……謹んで、辞退させていただきます」

 

 

「ワシは、例え頼まれたとしても。

シンジだけとは絶対に、イヤやっ

代わりとうない!」

 

 

「…………」

 

 

「まあ…なんて言うかな…隣の芝は青い?」

 

 

「大体、シンジがはっきりせんか――」

 

 

「――トウジ…

アスカに刺されるのとさ、綾波に呪われるの…どっちが良いと思う?」

 

 

「――うっ…………う〜ん……」

 

 

「きゅ、究極の二択だな…それ」

 

 

「だろ?」

 

 

「なんつーか、シンジ…ワシが悪かった」

 

 

「お前ん家の場合。

一事が万事、本気で命に関わるからなぁ」

 

 

「それはともかくさ…

転校生って?」

 

 

(ああ、何か、女の子って話だな?)

 

ぼそぼそ…

 

 

(どんな女の子かな…?)

 

ぼそぼそ…

 

 

(かーっ センセも淡泊な顔して好きやのぉ〜?)

 

ぼそぼそ…

 

 

(良い被写体だと、今度はレンズが…!)

 

ぼそぼそ…

 

 

(ワイはやっぱり。髪はロングの方が…で性格は慎ましく…やっぱり大和撫子って感じがなぁ〜)

 

 

 

「―――!!」

 

ひくひく…

 

 

「……むっ………!」

 

ぷくぅ〜…

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「トウジにはイインチョが…」

 

ちらり…

 

 

 

 

「すずはら〜!!」

 

っぎゅう〜!

 

 

「いたたたた…!

イインチョっ何すんや!?」

 

 

 

 

「――そして、シンジには綾波…」

 

ちらり…

 

 

 

 

「………いかりくん…」

 

ぐごごごごごご…

 

 

「あ、綾波ぃっ?

ご、誤解だよ!」

 

 

 

 

「…………………………」

 

ふ…っ

 

「――俺だけ、誰も言ってこないのか…」

 

 

――ふんふんふんふふふふ〜ん♪

――ふふふふふ〜んふふん♪

 

 

「――くはっ!?

このハミングは!」

 

 

「嫉妬は良いね…

リリンの情動の発露だよ。

そうは思わないかい、ケンスケ君?」

 

 

「出やがったな!女の敵その1!」

 

 

――このバカケンスケ!

――カヲル様になんて口きくのよ!

――変態カメラオタクのクセに!

――アンタ、自分がモテないからって妬むんじゃないわよ!

 

 

「うるへ〜!余計なお世話だ!!」

 

 

「まあまあ。お互い振られた者同士。

仲良くしようじゃないか?」

 

 

「なんかさ…

お前と同列になるのもどうかと…」

 

 

ぶわさぁ〜

 

「ふ…僕にはリリンの言う事が、今ひとつよく解らないよ…」

 

 

「その気障ったらしい髪かき上げるの止めろよ、鬱陶しいから…」

 

 

「キミは、僕の何処が不満だと言うんだい?」

 

 

「だって…お前『ほも』じゃん?一緒にされても困るし…」

 

 

「ふ…公的には『げい』と呼ぶようだよ?」

 

 

「俺、一応ノーマルだし…」

 

 

「らしいね?

アスカちゃんに告白して、手ひどく振られたという話だし」

 

 

「ふ、ふふ古傷をえぐるなぁ!!

――つーか誰から聞いた!?

トウジもシンジも知らないってのに!」

 

 

「アスカちゃんご当人からさ。

昨年のNERVの忘年会で、酔って暴露していたからね」

 

 

「ちくしょ〜!女なんて女なんて…」

 

しくしく…

 

 

「そうかい。

なら『こっち』に来るかい?

僕はいつでも歓迎するけど?」

 

 

「………それは、イヤだ…」

 

 

「そうかい、残念だね…」

 

ぶわっさ〜…

 

 

――きゃーカヲル様ステキ〜っ

 

 

「……………」

 

 

「――ん?

どうしたんだい、ケンスケ君?」

 

 

「い、いいや別に…ちょっと不条理だなって…」

 

 

「そうかい?

世の中は、道理で出来ていると思うんだけど?」

 

 

「――なら。

何故、シンジがああも…」

 

 

「シンジ君は優しいからね?

あの繊細さ、そして周囲への細かな心配り、

どれも女性から好意を寄せられるて然るべきだと思うけど?」

 

 

「…だったら、トウジは何故?」

 

 

「彼は、確かに大雑把で無骨だけど。

そこが逆に不器用な優しさ、男らしさを際立たせるのだと思うよ?」

 

 

――あ〜ん カヲルさまぁ〜 こっち向いて〜

――カヲル様〜 そんな奴と話なんかしてないで、こっちにいらして〜

 

 

「……………」

 

ぐぅうっ

 

 

「――まあ、そんなに嘆かなくとも。

いつかは。

きっと。

誰かが、ケンスケ君の良さを解ってくれるさ?」

 

 

「……むっちゃくちゃ慰めだな。しかも、見え透いた」

 

 

「おや?いけないのかい?

これが日本の文化の『思いやり』だと聞いたのだけど?」

 

 

「だれから聞いた?」

 

 

「アスカちゃんだよ?

ちなみに、最後にちゃんとトドメを刺すのが『オチ』だと言うらしいね?」

 

 

「…………なんか、違うぞ…」

 

 

「確か…こういう場合はこうかな?

――まあ、その『良さを解ってくれる人』が、女の子だとも限らないけど?

こんな感じでどうだい?」

 

 

「…………俺に何と答えろと…」

 

 

「さあ?

とりあえず、『うわ〜ん、グレてやる〜』とか言って走り去ってくれると、

こっちとしても対応がしやすいけど?」

 

 

「まあ…どうだって良いけどよ…」

 

 

「もう…いいのかい?

ケンスケ君」

 

 

「………なんだよ、それ?」

 

 

「『お約束』。上方の文化の極みらしいよ?」

 

 

「………………………

…ふぅ…

大体考えてみればさ…シンジだって昔っからあんなにもてた訳じゃないし…

と言うか、転校してきた当初は、

くらい奴、気味悪い奴って、

みんなに疎まれてた訳だよ?」

 

 

「へえ…そうなのかい?

僕の知らないシンジ君、という訳か…」

 

 

「綾波だってそうさ。

いつも一人で、しゃべらなくて、話しかけてもろくに返事もしないし…

その上、たまに姿見ないと思えば、包帯まみれになって学校にきて…

変な噂ばかりされてて…

実際、こっち見る目が怖かったからなぁ…

怖い奴だって、危ない女だって、陰口叩かれてたし…

今みたいに、人気があった訳じゃないから」

 

 

「………

レイちゃんについては、

僕は今でも怖いんだけど…?」

 

 

「……お前が、シンジに変なちょっかい出すからだろ?

自業自得だ」

 

 

「…………それにしても不条理だと…あの扱いは…」

 

 

「知るか!

――しかしよ、だったら…俺だってさ。

今から良い出会いが有るかもしれないじゃないか!?

いや、きっとそうだよ!

きっとどこかで運命の出会いが!」

 

 

「――例えば…転校生とか?」

 

 

「そう今日の転校生がそうだって可能性だって――」

 

 

「――いや。それはないよ」

 

きっぱり!

 

 

「――何故言い切れる!?」

 

 

「だって…」

 

 

「だって、何だよ?」

 

 

「――あ。来たみたいだよ?

先生が」

 

 

「はにょ〜ん!

みんなおはよ〜にゃん!」

 

 

「…『はにょ〜ん』ってアンタ…幼稚園じゃないんだから…」

 

 

「いや、ケンスケ。

今時幼稚園でも『はにょ〜ん』は無いと思うで?」

 

 

「ま、マヤさん…っ」

 

ほろり…

 

 

「…碇君…いくら原形を止めない程壊れても…

…本人が楽しければ…きっとそれはそれで…」

 

 

「…し、幸せって…

こんな形でいいのかなぁ」

 

 

「…少なくとも…ヤられて弄ばれて捨てられて…

…かつ心中を図り…死に損なった…

…某・女性研究員よりましなはずよ…?」

 

 

「それは…そうかも…」

 

 

「あははははは。赤木博士の事かい?」

 

 

「か、カヲル君…名前出しちゃだめだよ」

 

 

「フィフス…あなたは知らないのよ…

…某・マッドサイエンティストの恐ろしさを…

…大体…この会話…多分盗聴済みよ…?」

 

くすくす…

 

「…可哀想に…

…生体実験なのね…?

…解剖なのね…?

…それとも新薬の被験者…?

…副作用でひどい目にあうのね…?

…死んだ方がマシな目にあうのね…?」

 

くすくす…くすくす…

 

 

――ぞくっ…

…ひくっひくっ…

 

「――し、しかし、あれだねぇ?シンジ君。

オペレーターのみなさん全員教師だとは」

 

 

「…逃げたわね…フィフス…」

 

 

「レイちゃん…勘弁してよぉ…」

 

 

「綾波ぃ…あんまりカヲル君いじめたら可哀想だよ?」

 

 

「…い、碇君…?

…ソレをかばうの…?」

 

が〜ん…

 

 

「シンジ君…」

 

じ〜ん…

 

 

「だって…カヲル君は友達だから…」

 

ぽ…

 

 

「………………………そう…

…解ったわ…」

 

ちぃ…っ

…ぎりぎりっ…

 

 

「――れ、レイちゃん?」

 

どきどき…

 

 

「――しかし。

流石は、通称・NERVの墓場…

リストラ先は、ほとんどここだからな」

 

 

「失業せんだけマシやろ?」

 

 

「と言うかさ。

マヤさんにしても青葉さんにしても日向さんにしても、よく教職免許持ってたよね?」

 

 

「…所詮…オペレーターなど切り捨て部品で…

…本人達にもその自覚があった…

…そういう事でしょ…?

…つまりは…保険ね…」

 

ニヤリ

 

 

「綾波…」

 

「レイちゃん?」

 

「綾波さん…」

 

「綾波。オノレ、ごっつこわいで…?」

 

「つーか、その笑い方止めてくれよ…」

 

 

 

 

「はいはいは〜い。

みんなぁ〜ちょ〜と静かにしてね〜?良いかな〜?」

 

 

 

 

「ワシたまに思うんやけど…マヤ先生。

本気で幼稚園と勘違いしとらんか?」

 

 

「むしろ。持ってる免許が、実は保母さん。とか言うオチじゃないのか?」

 

 

「――あ、ありそう…」

 

 

 

 

「今日は、な〜んと!

転校生を紹介しちゃいま〜す!

拍手〜ぱちぱちぱちぱち…」

 

ぱらぱらぱら…

 

「お〜いみんな〜、拍手が小さいぞ〜?

これじゃ新しいお友達が出てこれないぞ〜?

じゃ、も一回『おっきく』拍手〜ぱちぱちぱちぱち…」

 

ぱちぱちぱちぱち!!

 

「は〜い、良く出来ました〜。みんないい子ね!」

 

 

 

 

「なして…高校生にもなって『いい子』なんぞ言われなならんのや…くぅぅ!」

 

 

「泣くなよトウジ…

気持ちはみんな一緒だからさ」

 

 

「じゃ!新しいお友達入ってぇ!」

 

 

「え、え〜と…」

 

 

――お…?

っうおおおおおぉぉぉぉぉ!

 

 

「あっ…!」

 

「うん?」

 

「へ!?」

 

「あれ。あの子?」

 

「…朝の…水玉パンツの人…?」

 

「あ?…ああ!?」

 

「へ?…えええ!?」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「オペレーションM1の発動か…」

 

「ああ。少し早いな…」

 

「彼女が予定を一つ繰り上げた訳か」

 

「そうだな」

 

「しかし…碇…

果たしてこんな下らん事に保安諜報部を使って大丈夫なのか?」

 

「問題ない…

花より実をとった。

それは彼らの意志によるものだ」

 

「………脅しとかわらんではないか…」

 

「失業するよりましだろう?」

 

「それはそうだが…

――しかし、ユイ君。一体何を考えている?」

 

「――知らん。

ここ二ヶ月ばかり口も聞いて貰ってない…」

 

「碇…」

 

「泣くな…

哀れむな…

余計に自分がみじめになる…」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マナ!」

 

「シンジ!」

 

がばぁ!

 

 

「本当に、また会えるだなんて…っ」

 

 

――ぐごぉぉぉぉん!ぶおぉぉぉぉぉん!

 

 

「シンジ!シンジ!私嬉しい!」

 

 

――き〜!きゃきゃきゃきゃ〜〜!!

 

 

「元気だった、マナ?」

 

 

――ざわざわ…バタン!…かつかつかつ…

 

 

「不思議…

嬉しいのに…嬉しいはずなのに…

涙でシンジの顔よく見えないよぉ?」

 

 

――かつかつかつかつ…ざわざわ…!

 

 

「マナ…っ」

 

「シンジ…っ」

 

「マナ!」

 

「シンジ!」

 

「マナ!!」

 

「――バカシンジ!」

 

「――マナ…って…へ…?」

 

 

「何抱き合ってんのよ!アンタは!」

 

ぐごごごごごごごごごごご…

 

 

「あ、アスカぁ!?

な、ななななななんでここに!?」

 

 

「…呼んだの…」

 

 

「綾波っ…

何で!?」

 

 

「…浮気…ダメ…」

 

ぷくっ…

 

 

「アンタはぁ〜!!

ワタシって者が有りながら〜!!」

 

ぐい!がくがくがく…

 

 

「ひ、ひぃ〜〜…ごめんなさいごめんなさい…」

 

 

「…………」

 

くいくい…

 

 

「――って、なによレイ?

今大事なとこなの。後にして」

 

 

「…ダメ…大事な事…

…『ワタシ』…それは単数形…

…『ワタシたち』の間違いでしょ?…」

 

 

「細かいやつね…」

 

 

「…細かく…ないもの…」

 

 

「――し…シンジ…?」

 

 

「マナ…そんな目で僕を見ないで…」

 

 

「ど、どういう事なの…『私達』って」

 

 

「ふはぁ〜ん?

そう?

知りたいのぉ、霧島マナさん?」

 

 

――かっち〜ん☆

 

「ええ、もちろんよ!

惣流・アスカ・ラングレーさん。

だって『私のシンジ』の事だもん!」

 

 

――かっち〜ん☆

 

「あ〜ら光栄です事!

ワタクシの名前覚えていらしたの?」

 

ぴくぴくっ

 

 

「そりゃもう!イヤって程!

だって、『私のシンジ』をつけねらう『泥棒猫』の事ですもの!

ほほほ…イヤね。『横恋慕』って!」

 

へへんっ!

 

 

「――!」

 

ぎりぎり…っ

 

 

「アスカ、負けちゃダメよ」

 

 

「ありがとうヒカリ!ワタシ負けない!」

 

 

 

 

 

 

――惣流って言うのか?あの綺麗な娘?

――あの娘、碇の何?

 

 

「ええっと…何て言えばええんかのう?」

 

 

――それより。『私達』ってどういう意味?

――まさか二股!?

 

 

「それは…

ちょっと…説明しづらいんだけど…」

 

 

――あの転校生の方は何だよ?

――『私のシンジ』とか言ってなかった?あの転校生

 

 

「あ〜…ワシは何とも…」

「俺もちょっと…」

 

 

――どういう事だよソレ!?

――碇の奴、綾波さんと付き合って居るんじゃないのかよ!?

――って言うか、何人に手ぇ出してんだよアイツは!?

 

 

「そんなん…ワシらに言われても…のう?」

「…なあ?」

 

 

 

 

「――ま、まあっ。私もね、こう見えて結構カンヨウだからぁ〜。

なんて言うの?『昔の女』ぁ?

それと『フィアンセ』!が、昔を懐かしみ合うくらいの事は許してあげなくもないわよ〜?

ね〜、レイ?」

 

 

「…昔の女…?

…いえ…気の迷いでしょ…

…くすくす…

…むしろ…過去の汚点?」

 

 

「…ねえシンジ…

あ、綾波さんって…こんなキャラだったけ?」

 

 

「色々…有ったんだよ…マナ。

…ふぅ…色々ね…」

 

 

「…『フィアンセ』とか『わたしたち』ってのも…その色々なの?」

 

 

「――えっ…その…あの…っ」

 

 

「――ふんっ。

説明してあげるわよ!」

 

 

「…そして諦めて…だって面倒だから…」

 

 

「ワタシ、惣流・アスカ・ラングレーと、

この、綾波レイの二人は、

――ワタシたちの、ふ・た・り・と・も・が!

その、碇シンジと婚約してるのよ!

ワカル?こ・ん・や・く!!」

 

 

――えっ…ええええええええっっっっ!!!?

 

 

「…だから…もう…貴女の付け入る隙間なんて何処にもないの…

…18に成ったらすぐ結婚するから…」

 

 

――何…?

――婚約?

――二人と?

――へ?三人で婚約!?

――三人で結婚!?

――どういう事?

――何ソレ!

――そんなのアリか!?

 

 

「ああ…せっかく頑張って隠してきたのにぃ…」

 

がっくし…

 

 

「…碇君…秘密とは…いつか必ずあばかれる物なの…」

 

ふふふ…

 

 

「し…シンジ…?」

 

うるうる…

 

 

「マナ…ごめん。そう言う事なんだ…」

 

 

「わ、私を裏切ったの?」

 

 

「やかましい!

戦自のスパイで、シンジだまして、助けてもらって、

そのクセ他の男選んで、果てにどっか消えた女が、

今更一体なに言うか!?」

 

――→ずいっ

 

 

「――ううっ…」

 

――→引きっ

 

 

「…そう…それに貴女キャラかぶりすぎなの…」

 

――→びしりっ

 

 

「――くうっ…」

 

――→引きっ

 

 

「そうよ!まさにソレ!

いくら声優一緒だからって、キャラ的に近いからって、TV26話の転校生レイまんまの登場して!」

 

――→ずずいっ

 

 

「…挙げ句の果てに…ヒロイン候補なんて都合良すぎるの…」

 

――→びしびしりっ

 

 

「し、知らないわよ!

シナリオ書いてる奴が、安直に思いついただけじゃないの!?」

 

押し返し←――

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「――い、碇…ばれてないのか?」

 

「いや。問題ない…」

 

「本当に大丈夫か?

こんな事があの二人にしれたら…」

 

「ああ…ただでは済まないだろうな」

 

「ユイ君も発案しておきながら…

多分こちらになすりつける気だろうな…

責任…」

 

「責任者は…

責任を取るのが仕事らしいぞ?」

 

「はあ…」

 

「ふう…」

 

「碇…」

 

「なんだ…?」

 

「何で、こんなバカな事しているんだろうな…」

 

「全く…つらいな…

生きていくって事は」

 

「はあ…」

 

「ふう…」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「大体あなた、あの時

『なんなら、そのまま持っていっても良いわよ』

っとか言ってたじゃない!」

 

 

「う、うるさいわね!

事情が変わったのよ!」

 

 

「何よソレ!さいってぇ〜」

 

 

――おい、碇!

――コラ貴様!

――てめぇどういう事だよ!

――二股どころか三股だと!

――碇君って大人しそうな顔して実は…

――女の敵ね!

――誰かこっちに回せ!

――お前は敵だ!

――つーか殺す!いつか殺す!必ず殺す!

 

 

「うう…僕?…悪いのは僕なの?」

 

しくしく…

 

 

「…大丈夫…碇君は私が守るから…」

 

ぎゅっ…

 

 

「あ、綾波…」

 

じ〜ん

 

 

「碇君…」

 

ほふぅ…

 

 

「アンタたちっ、人がちょっと目を離してる内にぃ!

イチャついてんじゃないわよ!」

 

げし!べし!

 

「い、痛いよっ」

 

「…あう〜…」

 

 

 

 

 

「あの〜、みんなぁ?

まだ、HR終わってないのよ?

……うう…誰も聞いてないわ…先生悲しい…」

 

 

 

 

 

「……なんつーか…えらい懐かしいな。こういう騒ぎ」

 

 

「教室の中に惣流が居るっていのも、懐かしいって言うか、なんか変な感じだな?」

 

 

「アスカが、中学卒業してすぐ就職しちゃったもんね。

一年ぶりくらい?」

 

 

「――しかし…まさか、この調子でシンジと関係有るオナゴが片っ端から転校してくるんやないやろうな?」

 

 

「まさかぁ」

 

 

「そんなねぇ」

 

 

「あはははははは…」

 

 

「あはははっははははは…」

 

 

「ふふふふふふふ…ふう…ありそう…」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、副司令。

アスカが見ませんでした?」

 

 

「ああ、惣流君かね?

ちょっと、こっちの用事でな。使いに出しておるが?」

 

どきどき…

 

 

「そうですか…

いきなり急用が出来たとか言って出ていって…

そのままだから心配してたんですが…

それなら良いんです」

 

 

「うむ。済まないね。赤木君」

 

 

「まったく…ミサトも休み取って居ないし…

…マヤは先生になっちゃうし…

…司令は奥さんとより戻すし…

…私なんでいまだにこんな事やってるんだろ…」

 

 

「本っっっ当に!申し訳ない。

今の研究が一段落ついたら、まとめて年休取ってくれて構わないから。

今はとにかく頑張ってくれ、赤木君」

 

はらはら…

 

 

「まあ…やるしかないから…

やりますけどね。

年休の話、よろしくお願いしますね?」

 

 

「うむ、任せたまえ」

 

 

「――ところで、司令は?」

 

ぎらん!

 

 

「あ、ああ!碇か!?

あ、あやつはな、何だか『上』で会議が有るとか何とか…」

 

ぞくぞくっ…

 

 

「本当っ…ですね?」

 

ずごごごごごごご…

 

 

「あ、ああ。

外出中だよ…何か用があったのかね?」

 

だらだらだらだら…っ

 

 

「なら…良いんです…

たいした用じゃないですから…」

 

ふぅ…

 

 

「そうかね…

――じゃ、じゃあ、実験よろしく頼むよ」

 

はぁ…

 

 

「はい。失礼します」

 

 

――ぷしゅ〜…

 

 

「ふ、冬月…行ったか?」

 

 

「ああ…無事乗り切ったぞ…」

 

 

「ふぅ…本当に生きていく事は、つらいな」

 

 

「全くだ」

 

 

――ぷしゅ〜…

 

 

「あ、副司令。そう言えば、この書類の事忘れて――ああ!!」

 

 

「――ひぃぃ!?」

 

びくぅっ

 

 

「――う、うわああああ!!?」

 

びくぅっ

 

 

「――だ、だましたのね!

また私をだましたのね!!」

 

ぎりぎりぎり…っ

 

 

「ま、待て!いや待ってくれ!赤木君!

コレには深い事情が…!!」

 

おろおろっ

 

 

「おおおお落ち着き給え、リツコ君!

話し合おう!

そう!話せば分かる!

分かり合えるさ!

人間だもの!

――と、とりあえずそのカッターは床に置いて!」

 

わたわた…っ

 

 

「うるさい…っ!!

問答無用!!」

 

――殺(しゃあ)ぁぁぁぁっっっっ!!!

 

 

「ひあああああああああああ!!!!」

 

「うぎゃあああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ…」

 

 

「あ、父さん…?

…一体、こんな夜中にどうしたのさ…」

 

 

「済まないが…一つ教えて欲しいのだが…」

 

 

「――何…?

って言うか、なんでそんなにボロボロなんだよ…?」

 

 

「気にするな…」

 

 

「むっちゃ気になるんスけど…」

 

 

「大した事ではない…

ソレより、どうやれば…

何をどうすれば…

ああも上手く、両立させられるんだ?」

 

 

「…は?……何の話さ…

僕に料理以外の事聞いても、全然解らないよ?」

 

 

「だから、つまりだな…」

 

 

「…碇君…誰…?

…お客さん…?」

 

 

「あ!綾波!?」

 

 

「…しまった…レイ!」

 

 

「…司令…!?」

 

ぎらん!

 

「…そう…

…そうなのね…

…今までの人生を踏みにじってきただけでは飽きたらず…

…私が苦労と涙の末に掴んだ…

…必死で掴んで育んだ…

…この小さな幸せまで邪魔する気なのね…

…そうなのね…」

 

 

「ち、違うぞ!レイ!

わ、わたしはただ!

シンジに、息子にちょっと聞きたい事がだな!」

 

 

「…ふ…例え、碇君の実父だとしても…

…やはり外道は外道…

…いまさら、問答など無用…」

 

…カテゴリーAの怨敵として認識…

…第一種・第二種・第三種拘束式解放…

…クロムウェルの承認により…

…敵殲滅のその時まで…

…能力完全解放…

 

 

「――マズ…っ

父さん逃げて…っ

早く!」

 

 

「――ぃひいいいいいいいっっっっっ!!!!」

 

だだだだだだだだ…

 

 

「…逃がさない…」

 

ごっふぁあああぁぁぁぁ!!

 

 

「―――うぎゃあああああああああ!!!」

 

 

第三新東京市の夜空に、今日もまた哀れなオヤジの悲鳴が響いたという…

どうでも良いか…

所詮、自業自得だし…

 

 

 

 

 


<つづくような…つづかないような…>

 

 

読み直すと…

 

思った以上に、後味悪くない…

 

精進が足りぬのだろうな…

 

次書くとしたら、もっと努力して、

後残りが悪くなるように頑張りますので、

今回はコレで勘弁下さい。

 

 

 

 

 


野見山(ヤケンザン)さんから投稿小説をいただいてしまいました。

後残りですか?‥‥うーむ、不思議な食感なのです。

レイってやはりいいものですね。マナも登場してきてシンジ君の奥さんが増えていくらしいのがちょっと嬉しかったです。それにしてもシンジ君精力持つんでしょうか。

みなさん読後には是非ヤケンザンさんへの感想をお願いします。

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