−西暦2000年−

南極に大質量コロニーが落下。

かくして有史以来未曾有のカタストロフィー「セカンド・インパクト」……又の名を「ブリティッシュ作戦」、何故作戦なのか、それが秘密なのは君と僕とのお約束だ……は、起こった。

水位の上昇、天変地異、経済の崩壊、民族紛争、内戦……

世界人口は半分に激減。

……それから15年、ようやく復興の兆しが見え始めた頃、人類に新たなる危機が訪れた。
「し(以下略)」である。


次々に襲来する正体不明の巨大戦闘兵器群。

果たして彼等は、その冠する名の如き「スペースノイドの宿敵」なのか…。



汎用人型決戦兵器…要するにロボット。

それを見つめる怪しい中年。規格外の詰襟軍服が素敵です。

えー、ぼちぼち開幕ですんで、何か一言。


「ソロモンよ、私は帰ってきた!」


…それ、あんたのセリフじゃないんで。



バカがモビルスーツでやって来る。

その名も…






新機動世紀ジオンゲリオン







第一話(仮)、「白いの、襲来」

written by Whoops!






宇宙世紀0079。

碇シンジは、必死で父親の顔を思い出していた。

血色の悪い肌、赤ん坊も泣き出す三白眼、陰鬱なる顎鬚、変な色のグラサン、僕と同じような髪型……。

すぐに思い浮かぶ三年前の記憶。決して温かみを伴うことなどないものの、確かに存在していた「僕の父親」。

では、目の前にいるこの男は、一体誰だ!?誰なんだ!?



「来たかボディ…いや、シンジよ。私の息子よ」



染めたのか?その銀髪は。しかも、オールバックでセンター分けだし。かろうじて、薄い生え際が昔の面影といえない事もないが…。

赤眼鏡…もといサングラスは…ない。それはいいとして眉毛がない。ないったらない!

目つきも昔より数段悪い。陰険さ十割増って感じ。

あの気持ち悪い顎鬚もない。剃ったのか?従って、顎の稜線丸出しなのだが、こんなに細面だったか?

声も違う。立木文彦さんそっくりの声だったのに、目の前の男のそれはまんま銀河万丈ボイス。

何より、どこのビックサイトですか、そのナ○ス親衛隊とゴールデンバウム王朝を足しっぱなしにしたような軍服は。以前のガクラン紛いの制服はどうしたのよ?

そんなオヤヂが目の前でニヤリと笑ってたらどうする?ねえどうするよ!?



「どうした…三年ぶりの対面だぞ?もっと喜べ」

「そんな…無理だよ」

「何が無理なんだ」

「んーと……」




はたしてどこから突っ込んだものやら。

一言「来い」とだけ書かれた手紙。

来てみりゃ誰もいない第三新東京駅。無論、使徒もいません。

迎えに来たお姉さんは美人で巨乳、顔に傷。父さんの愛人ですか?って聞いたら無言で殴られました。修正だそうです。なんか緑色の…軍服ですか?それ。肩口に色々ビラビラが付いてますが…ともかく、そんなのを羽織っておられます。はい。胸元の十字のペンダントがやけに普通に見えるんだ。

で、連れられてきたのがジオフロント。ここは知ってる、でかい地下空洞を丸ごと都市にしたって話。でも、実物を見るのは初めて。

まあ、ここまではいいよ。百歩譲って。

けどさ、そこに悪の要塞にしか見えないものがあって、そこに無理やり連れ込まれたら、君ならどうする?ねえ、どうするよ?

えーと、外観を説明するね。国会議事堂ってあるよね?あれに、スペースシャトルが墜落して、そのままゲッター線を浴びたような形。解るかなあ。解らないだろうなあ。

お姉さん…葛城ミサトさんっていうんだ…がちょっとイッた目で説明してくれた。


「あれがズム・シティ。世界再建の要、スペースノイドの最後の砦よ」



すいません!サッパリ解りません!



ええと、この辺から記憶があやふやになる。…防衛本能とは違いますよ?

結構遅刻していたらしく、またまた出迎え。その人は…ミサトさんの数倍珍妙な格好です。金髪に黒眉毛はお約束だからいいとして、何故黒マントに紫レオタードですか?二十一世紀にもなって何故腰にサーベル挿してますか?極めつけに白い兜。角付きの。


「その子ね、例のスター・チルドレンって」

「あ…初めまして、碇シンジです」

「私はフラナガン機関強化人間計画担当博士、赤木リツコ。ソウルネームは赤木・キシリア・リツコ・ザビ。よろしく」



………………………………………………………はあ?


「あ、言い忘れてた、ソウルネーム」

葛城さん、あんたもか。

「あたしのソウルネームは葛城・ドズル・ミサト・ザビ。ミサトでいーわよ」


…………………………………………………………………………………………………。


「「…あ、あの、シンジ君?」」

「……………逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…………」

「ちょ、ちょっとシンジ君!それはもうちょっと後でしょ!?」

「…無様ね」


そこから先は、あんまり覚えてない。僕はあの後、ミサトさんとリツコさんに手を引かれて知らない部屋に連れられた(ブラックメンに連行されるグレイみたいだったよ、と後で影の薄いロンゲの人が教えてくれた)。

着いた所は鬼が島、もとい格納庫。

そこで僕を待っていたのは……



動力パイプ剥き出しの頭部。

額に角。特徴的なモノ・アイ。

戦国武者の胴丸の如き胸部と腰部には、これまた剥き出しの動力パイプ。

両肩には白兵戦を想定してか、凶悪な形状のスパイクが付いている。左腕には中世騎士のカイト・シールドに似た大盾。

左右非対称の指。左指は、どうやら砲門のようだ。

そして、しなやかさと重厚さを危ういバランスで表現した両足。

一言で言うと、男の浪漫を具現化したモノ。



「これは、………ロボット!?」

「厳密に言うとロボットじゃないわ。人の造り出した究極の汎用決戦兵器!モビルスーツ・グフンゲリオン、略してグフ!我々スペースノイド最後の切り札、これはその初号機よ………」

「地上専用だけどね」

「うるさい」



うわあ、ダメっぽおい。

僕の頭の中の誰かが、本多千恵子の声で呟きました。



「これが、父の仕事ですか」

「そうだ」
で、目の前に変なオヤジが現れて。

「久しぶりだな。」

「え……誰?」

「三年ぶりだな」

「まさか……父さん!?」

「そうだ。お前の父、碇ゲンドウ。ソウルネームは碇・ギレンドウ・ザビだッ!!」




以上、回想終わり。


「ごめん、やっぱ無理」

「何ィ!?」





ま、そんな訳で。

三年ぶりの親子会見は、壮絶かつへっぽこな物別れに終わりました。

ってな話だったら簡単だったんだけどね。

ところがギッチョン、世の中そんなに甘くない。

フリーズしている親子は置いといて、ちょっと格納庫の外に目を向けて見ましょうか。



同時刻、ズム・シティ内作戦本部。

「正体不明の物体、海面に姿を現しました!」

「物体を映像で確認!!メインモニターに回します!!」

ってな感じで、例によってピンチである。例って?解ってるくせに、イケズー。


「15年ぶりですね」

「ああ…間違いない、し……だ!!」

この辺、人物が影で見えにくいのはお約束。しかし、皆さんの記憶と違う所といえば、座っているオヤヂがヒゲメガネでなくスキンヘッドにヒゲという点。無論親衛隊スーツはデフォルトである。

「来るべき時がついに来たのだ…我々スペースノイドにとって避けることの出来ない試練の時が……」

ここで、なにやらプルプル震え出すハゲ。やがて、感極まった表情で彼は叫んだ。

「我々は、三年待ったのだ!!」

だから、そのセリフ違うって。



そうこうしているうちに、メインモニターに件の物体が表示された。

抉れた海岸線からそれは姿を現し、そこに敷き詰められた国連軍の戦車舞台を踏み潰す。そこに群がる航空戦力。良く言って、象と水鳥。
時折、それが煩そうに手を振り回すと、UN部隊は煙草の灰のように自由落下していく。


それは、一応、人型と言えなくもない。

目立った違いと言えば、足が無い。代わりに無限軌道。要するに、キャタピラである。

肩口に巨大なキャノン砲。手の部分には四連式ポップ・ミサイル。

いい感じに雑魚っぽい外見の癖に、バシバシ飛んで来るミサイルその他の直撃を喰らっても傷ついた様子も無い。巨体が唸るぞ空…は飛ばないが。

「全弾直撃のはずだぞ!なんてヤツだ!」

「後退!後退ィ!!」

次々と退散していくUN空軍の方々。そのうちの一つにそれが手をかざす。

ポップ・ミサイル発射。

閃光。

爆発。

連鎖。

ファンタビジョン。

絵に描いたような地獄。



ダメっぽいスメル漂う作戦本部。遂に、鶴の一声が飛び出した。

「水爆用意!南極条約が何だってんだ馬鹿野郎!!」

マ・クベっぽい目の色に変わった国連指揮官。

「あれはいいものだー!!!ポチッとな」

イカす水爆、着弾。





「………………………あれ?」

爆発、起きず。




「モ、モニター映せッ!!」

そこに現れたのは。

水爆を指も無いのにキャッチしているヤツの姿だった。



「はあッ!?」



そのまま空へとブン投げる!

飛ぶ飛ぶ凄い飛距離。



「だ、大雪山おろし……」

キャタピラ繋がりだとでも言いたいのか、作者。

「せ、成層圏の彼方まで飛んでっちゃいました……」

「爆発、確認できず!」

「な、なぜだ!?」



「人は癒され、ガ……を呼ぶ……黒歴史の言い伝えどおりだな、碇。いや、総統…」

スキンヘッド、少々錯乱気味。




「…………はっ、わかっております……やっぱり水爆は無茶?いえ、あれは軍人として、いや、男として……無駄?は、は、はぁ………はいっ、では失礼いたしますっ」

ピッ

「………冬月君、本部から通達だよ。今から本作戦の指揮権は君たちに移った。お手並みを拝見させてもらおう」

この期に及んで取り繕おうとする姿勢が素敵なUN司令官。どこへ飛ばされるのでしょう?シベリア?

「我々国連軍の所有兵器が目標に対し無効であったことは素直に認めよう…だが冬月君!!君達なら勝てるのかね?」

冬月と呼ばれた男は、禿頭を撫でながら答えた。

「ご心配なく………その為のジオンです。それと」

「それと?」

「私のソウルネームは、冬月・デラーズ・コウゾウです。お忘れなく」

アリアス・モマではない。試験に出るぞ。



と、大人たちがお約束のダメ空間を演出し終わった頃。

格納庫ではバカ親子の睨み合いが続いていた。



「だから、何が無理かと聞いている!」

「無理なものは無理!」

「無理ではない!父さんと呼べ!」

「嫌だよ!絶対無理!」

「父さんが嫌なら総帥と呼べ!!」

「ふざけないでよッ!!」

「何もふざけてなどいない!!貴様こそなんだそのなよっとした面構えは!碇シンジの名が泣くぞ!」

「シンジって名前のどこが悪いんだ!僕は男だよ!!」



「………………」

「………………」

「………………」

「……………あ゛」


「……………………フッ」


「……………無様ね」


蛙の子は蛙、というのが今回の結論。それとも、これが残酷な天使(主に性格反転モノ)のアンチ・テーゼということだろうか。どちらにしても、人の革新は遠い。



「………父さん」

「フッフフーン、なんだ」

僅か四文字の言葉をひねり出すのにも、逆子出産以上の苦痛を味わう少年、碇シンジ。対して、小躍りどころかリオのカーニバルばりの勢いで踊りだしかねない男、それが今のギレンドウである。独裁者は孤独なのだ。解りたくもないが。

「グスッ…僕は、父さんの仕事が『人類を守る立派な仕事』って聞いてたんだよ……でも、これじゃ『人類を征服するのが仕事』の変人集団にしか見えないよ」

シンジ、半泣き。

「先行者は常に奇異の目で見られるものだ……中華キャノンとかな」

時事ネタはすぐ風化するぞ。

「このロボットは」

「モビルスーツと呼べ」

「………じゃ、このモビルスーツって何」

「これにはお前が乗るのだ」

「………はぁ!?」

「そして、白い悪魔と戦うのだ」



「な………使徒は!?これはエヴァのSSじゃないの!?『し』しか合ってないよ!!」

「フッ………我が辞書にそんなヒゲメガネの妄想は存在しない。従って、私が親子ドンブリの好きな外道だったり、妻の為には世界を滅ぼしたりする愚鈍な輩でもないということだ。敵が小さく見えるって事は、あたしが勝つって事さ!!ビバトミノ!虐殺マンセー!!腐ったサブカル映画に手を出しやがったヒゲメガネなんか死……うぐぅ」


暴走する一方の総帥の後頭部で、シュツルムファウスト炸裂。


「………話が進まないでしょう、兄上」

「は、はい。きしりあクンノイウトオリダネ。星ガぱーっト散ッテ…アレハ流星カナ?」

それもあんたのセリフじゃない…って、もういいか。哀れな。



「あ、あの……リツコさん」

「何?」

「いつから父さんの兄妹に」

「シンジ君……お約束に突っ込むと、後が辛いわよ」

「……はい」



「………えーっと」

中々会話に入り込めないドズル葛城。今の所、それほど無茶なキャラクターじゃないのが逆に災いしているらしい。

「あ、あの、いいかな?シンジ君」

「は、はい」

久留米トンコツよりもディープな二人よりは話が判りそうだ。そんなシンジの打算。

「あの二人は置いといて……とりあえず、グフに乗って欲しいんだけど」

「………どうして僕なんですか」

「………んー」

どうやら、彼女もよく解ってない様子。

「たしか、サイコミュシステムだかモビルトレースシステムがどうのこうのって話だったんだけど、あたし技術畑の人間じゃないからよくわかんないのよ。リツコに聞く?」

「いえ、それはいいです」

「あ、やっぱり。ま、それはいいとして」

ここでドズル姉さん、シンジを横山光輝ばりのパース表現で指差す。

「何にせよ、このグフはシンジ君専用機なの。あなた以外の人間では、指一本動かすことも出来ない。それは事実なのよッ」

ビシッと決まったポーズ。ついでに震えるデドアラ乳。こんなヨゴレSSとは言え、葛城ミサトは伊達じゃない。

「はぁ」

対して、まるで力の入ってない返答の碇シンジ。心持ち、猫背だ。こちらもどうやら伊達じゃないらしい。まるで有難くないが。

「でも、これ、量産型っぽいデザインだし」




一瞬の沈黙。




「ま、まあねえ。実を言うと、あたしもそう思ってたんだけど」



また、僅かな沈黙。



「こ、こ、この大バカモノ!!!」

酸素欠乏症に陥っていた筈のギレンドウ、突如復活。

「うわあビックリした!」

「急に大声を出さないで下さい総帥!」

「これが怒鳴らずにいられるか!言うに事欠いて量産型とは何だ量産型とは!!お前らは何もわかってないバカだバカだバカだ、大バカボン野郎だァッ!!!お前らの脳髄はなあ、まるでおはぎのようだよッ!!ジオンのなんたるか、モビルスーツのなんたるかをお前らは解っているのか、……お前だ、お前!!そこの爆乳ドズル!!!」

「ハ、ハイッ」

「ハイじゃないよ!お前、リーンの翼読んでるかコラッ!イデオンノベライズ版でもいいぞ!」

「いえ、あの、あれは日本語になってないし……」

「バカモノーッ!!!俺はなあ、俺は、学生の頃、あんなモンしか読むモンが無かったんだよっ!!!昔のオタクはなあ、オタク文化全盛の今と違って、唯々諾々と朝日ソノラマに頼らざるを得なかったんだよっ!!!それをだなあ、お前……」

「総帥」

「何だようるさいな」

「主旨がずれている上、作者の怨念ダダ漏れです。それに『パンクでポン』は若年層では辛いかと」

「う、うむ…」



続く…ってしたいなあ。収拾つかないよなあ。まあとりあえず続けますわ。



「ともかく、いいから乗れ!今乗れ!すぐ乗れ!早く乗れ!!!」

「い、嫌だよ!できるワケないよっ!こんなのに乗れるわけないだろ!!」

うおお、やっと進んだ気がするぞ。



「こんなことのために僕を呼んだのか?僕に死ねってゆーのかよ!今までほったらかしにしてたくせに、虫がよすぎるじゃないか!!」

シンジ節、全開である。ここまで来るのにどれだけかかったことか…(涙)ここでギレン、もといゲンドウが突っぱねてくれれば万事オッケー!!



「い、いや、ほったらかしにしてたワケじゃないですよ!?むしろ、その……」



…この役立たず。



「あ、あのな、シンジ。俺はな、お前を見捨てたのじゃなく、むしろ、その……おふぅ」

ボガス。今度はイーゲルのドリル棍棒である。

「…兄上も意外とお甘いようで」

そのまま、豪快に前に倒れこむギレンドウ。バンプ、一切なし。ビンス・マクマホンもヤツには真っ青である。そのまま、ピクリともしない。


「………もう、いいですよ、兄上………あ、兄上?」

本当に動かない。死体?頭からドクドク流れているのは、LCL?

「………よいしょ、っと」

唖然とするシンジとミサトの前で、リツコはギレンドウを担ぎ上げた。結構な膂力だ。そのまま背後に回りこむと、ギレンドウの顎をグワシと掴む。

「………ウォッホン、マ゛―、マ゛―、マ゛―、マ゛―……」

イガラムですか。

「えーっと、『お前など必要ない、帰れ…』」

「!!」

あーあ、やっちゃったよ、この人。

「『冬月、レイを起こせ!』」

片手でギレンドウを抱え、片手で傍らのコンソールを操る女、赤木・キシリア・リツコ・ザビ。スゲエ。

「うむ、使えるのかね……って、あ、赤木君!?」

「『私は赤木ではない。総帥だ』」

「ハ、ハハーッ」

判っちゃいても総帥にゃ弱い。さすが腐ってもデラーズ閣下である。

「し、しかし、彼女は無理です!」

「『死んでいるわけではない。こっちへよこせっ!』」

「……そこまで彼女が憎いかね」

「はい」

うわあ。今、素で答えたよ、この女。ミサトは頭を抱えたくなった。シンジは…。


「オクレ兄さん……」

「魂出てるー!!」


主人公のエクトプラズムを無視して、話は進む。


「さってと、フフフ、出撃出撃……なにこれ、邪魔ね」

ポイッチョと捨てられるギレンドウ。又もバンプもとれず床に転がる。その目に光が…宿らない。しかし。

その無駄にでかい体の上を、息も荒い全身包帯の少女がカートに乗って踏んづけた時、事態は急変した。



「嘘だと言ってよバーレイ〜〜〜〜〜〜!!」



爆竹をタイツに突っ込まれた江頭2:50のような動きで、飛び起きるギレンドウ!

「誰だ!誰が許可した!?」

「そ、総帥自身であります」

とっさに、嘘っぱちをぬかすドズル葛城。さすがに百戦錬磨。

「何ィ、キシリア、本当か!?」

「ハイ。そうですよねデラーズ殿」

「む…そ、その通りです総統」

大人って汚いよねみんな。

「むう…いかんいかんいかんいかんぞう。バーレイは特別なのだ。何しろ、フラグ次第でほいほい裏切るどこぞの下士官や兄弟どもとは違い、最後まで私に従ってくれる貴重な部下だからなバーレイは。なあ、キシリア」

さて、何の話だろうか。最近の調査では、ほいほい裏切ることが判明して俺様萎え萎えなんだが。

「私に対するあてつけですかそれは」

「うむ」

「………」

黙って宇宙ピストルを取り出すリツコ。

「…まだ早い」

「チィッ」

「……あのー」

「何だドズル」

「そうこう言ってる間に、死にそうなんですが、レイ」

出血多量でピクピク震える綾波レイ。うわあ、ミンチよりひでえや。ちなみに、彼女のソウルネームはバーナード・レイズマン。略してバーレイ。命名の時点で自爆フラグが立っているすごいキャラである。

「ぬうっ!マズイ!ドズル、シンジを叩き起こせ!」

「へいへい。シンジくーん?」

「……僕は嫌だ」

作品が違うぞ、それわ。ヒントは涙はない。

「シンジ君、お父さんから逃げちゃダメ」

「だって、父さんはあーだこーだ」

「それはそうだけどうだうだうだうだ」

「だからってぐだぐだぐだぐだ」

「うじゃうじゃうじゃうじゃ」


……………………………。


「ぬう、遅い、遅いぞ葛城君!」

あんまりにあんまりな展開の遅さに、遂にギレンドウがカチ切れた!

「見ろ、シンジ!」

ギレンドウは息も絶え絶えのバーレイを指差す。思わずつられてそちらを見るシンジ。

「これ、美少女。死にかけ。文句あるか!?」

「あ、ありません!!」

思わずシャキッと背筋を伸ばすシンジ。なぜかインディアン口調のギレンドウに突っ込む余裕はないらしい。大変だねえ、君も。

「おまえ、あれ乗らない。そうすっと、この子、あれ乗る。わかるか!?」

次に、ギレンドウが指差したのは、ハンガーの奥。そこには、明らかに目の前のグフと違うフォルムの機体が鎮座ましましていた。

どんな機体か。まず、グフを思い浮かべましょう。色々グフをグフたらしめてるファクターがありますね?それを全部取っ払ってください。そりゃもうすっぱりと。ジオン系のモビルスーツの素体のような機体が残されましたね、ハイ。それです。

「きゅ、旧ザク…」

「そうだ、旧ザクだ」

「無茶だよ父さん、いやさ総帥!あんたやりすぎだよいろいろな意味で!」

「仕方ないのだよ!キシリアが『男は黙って旧ザクです』とか甘言を弄したから!んでもって、『旧ザクがウエスタンラリアートかます様、見たくないですか?』とか聞くから!つい、なあ!わかるだろう!」

「わ、わ、わかるわけないだろ!」

「大バカモノー!」

「バカはあんただー!」


またお互いを罵倒し始めるバカ親子。なんだか書いてるこっちも頭痛くなってきた…。



「はあ、はあ、と、ともかくだな、シンジ。ちょっと考えろ。目の前にあるものは?」

「…グフと旧ザク」

「で、だな。ここにいるパイロットは?」

「素人と半死体」

「ちっとでも勝ち目があるのは?」

「う……」

「持ち時間は五分だ」

「妙に長いね」

「大体それぐらいで、白い悪魔がここにやって来る」



「……マジ?」

「まじ。」



「だだだだだだだ大ピンチじゃないか!!」

「だから大ピンチだといっとろーが!!さあどうする!!俺たちと一緒に死ぬか!?殺るなら早くしろ!でなければ逃げさせてくれ!!」



「……わかった。乗ればいいんだろ?」


「「「「よっしゃーーーー!!!」」」」


や、やっとここまで来た(作者魂の叫び)…。


「と、その前に」

ギレンドウが悪魔的笑みを浮かべる。

「乗る以上、ソウルネームを決めねばなあ、シンジ」


「へ?」


「第一回、シンちゃんどんな名前がいいかしらチキチキ十字勲章争奪戦!!」

その言葉に、その場にいる全員の目がキュピーンと光った。

「ハイハイハイハイ!」

「ハイ、ドズル!」

「ここは手堅く、ガルマがいいと思いまーす!」

「ガルマか…悪くないんだが、語呂が悪いな。保留」

「では、ワシが」

「おお、デラーズ。案があるのか?」

「シュタイナーはどうだ?裏切らんし、有能だ。何より語呂がいい」

「おお、シンジタイナーというわけか。なるほど」

「ぶー!おっさんすぎます!」

「それもそうだな、じゃあこれも保留」

「…ハイ…ごふっ」

「バ、バーレイ…大丈夫かお前さん」

「も、問題ありません…クリスチーナ・マッシンジーが、私はいいと思います…」

「ク、クリスはなあ…却下」

「そうよねー、ジオンじゃないもんね、そもそも」

「もう…ダメなのね…」

「…みなさん、では、これはどうです」

「自信満々だな、キシリア」

「当然です。というより、これしかありません。ララァ・スンジ。どうですか?」

「「「「そ、それだあ!!!」」」」



シンジは、それを聞いた途端、因果地平のかなたに旅立ってしまいました。



前略、母さん。

もうダメです。勘弁してください。逆さに振っても鼻血も出ません。

「誰か、僕を助けてよぉ……」



無理。少なくとも作者こと俺には。













続くかもしれない。とりあえず完。










後書き


怪作様のホームページ初投稿のWhoops!と申します。昔、怪作様にSSの感想を戴いたのでお礼のつもりで書いたのですが…何というか、申し訳ない気持ちで一杯です。いいんだろうか、こんな小説投稿してしまって(←じゃ、やめろよ俺)。

えー、見ての通り、決して混ぜてはいけない洗剤をドバドバとぶち込んでごった煮にしたような小説であります。基本的にガンダム及びその他サンライズ系列のリアルロボットものを知らないとついていけないようなネタ満載です。まずいですか?まずいですねえ。でも、俺しらねえ。

続編は…どうしよう。少しでも笑えた!というメールがきたら考えます。…催促ですか?はい、その通り(笑)。根性汚いねえ、俺。では、命あったら語ろう真実ってことで、また会えたらいいですね皆さん。さようなら。





Whoops!さんから初投稿をいただきました。

なんというか凄い話です。大丈夫かなぁ掲載して(^^;;

続き?‥‥うーむ、これも続くのでしょうか。期待していいのでしょうか。どんなものでしょう。

読者の皆様、まずはWhoops!さんに感想メールを出してから考えましょう。

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