「プレゼントですか?そりゃ、貰えるもんならもらいますよ。なに、爆弾入りかもしれないって?そんなら嫌ですよ。当然でしょ。どこの誰が爆弾入りのプレゼ
ントなんか好んで貰いますか。2回に1回は爆弾?強制的に貰わなければならない?だったら調べるしかないでしょ。失敗すれば死ぬのはこっちなんですから。
慎重にやらなくちゃいけないな。なに、周りに気付かれちゃいけない?それじゃあ尚更慎重にやらなくちゃいけないな。でも、これ仮定の話でしょ?当然だよ
ね。こんな馬鹿な話あったもんじゃないよ。なに、この条件で事を成した人たちがいた?そりゃ凄いな。僕ならこんなの一瞬でドカンだよ」……ある爆弾魔との
対話より
新 世 紀 エヴァンゲリオン
WRITTEN BY
神羅大和
第伍話 贈り物
Episode5 Red eyes for you
太平洋小笠原沖国連軍太平洋艦隊旗艦オーバー・ザ・レインボー
蒼い海は牙を剥いていた。
大きな波と共に破壊音、続いて爆発音。
『奴』は恐るべき殺戮を行っていた。
「テンペスト沈黙っ!」
双眼鏡を構えた見張員が叫んだ。
再び大音響がし、イージス艦『テンペスト』が存在していた場所には大きな赤い炎が、地獄のように燃えていた。おそらくその炎の中では何百人もの人生が終
焉を迎えているのだろう。
旗艦艦長はその光景を見てうめいた。いったい何が起きているのだ?我々はこの地球上でもっとも強い存在ではなかったのか。国連軍太平洋艦隊の総攻撃を受
けても一切変わらず存在し、今だ我々の艦を攻撃しつづけている。奴はいったい何なのだ!?
「対潜魚雷四発命中っ!」
それでもそれは変わらず超速度で動きつづけていた。
「何故だ!?何故沈まん!?」
艦長がそう叫んだ直後、新たな犠牲が発生した。
「コンゴウ沈黙っ!」
「畜生っ!?」
士官のキャップを投げ捨てて再び叫んだ。
どうすればいい。どうすれば奴を沈められるんだ?
そこで艦長はフッと気付いた。沈める?違う。奴は生物だ。忌わしきNERVが成立した原因『使徒』だ!
沈めるのではない。殺すのだ。奴が我等の仲間を殺したように。
通信が入ったのはその時だった。
「誰だ!?」
「輸送船にいる渚カヲルです。どうやら、あの『人形』から通信しているようです!」
間髪入れずに副長が言った。よく訓練された優秀な男だった。
艦長は通信機を奪うようにして取った。
「貴様何をしている!?」
通信機の奥からはタイミングを間違えたような暢気ともとれる声がした。
「何って、エヴァに乗っているんだよ。出撃するのさ」
「ふざけるなっ!発艦の許可は出していないぞ!」
「でも、君たちはやられているんだろう使徒に?君たちは人間相手の戦闘にはプロかもしれないけど、あのバケモノは僕じゃなきゃ倒せない。僕はあのバケモ
ノ退治のプロなんだ」
「………」
艦長は内心でうめいた。こんな若造にっ!
「あなたが優秀な艦長ならどうすべきかわかっているはずだ」
「…………」
カヲルの指摘通り艦長は優秀な軍人だった。結果が全ての軍人は、戦場でどう行動すべきか心得ていた。プライドに判断が揺るがされてはいけない。全ては勝
利の為に。
艦長は決断した。
「発艦を許可する……」
苦渋に満ちた声だったが、確かにそう言った。
「ありがとう。ついでに電源のソケットを出してもらえると嬉しいんだけど」
「わかった。すぐに用意する。貴様はすぐに奴を殺せ!出来なかったとは言わせないぞ!」
通信を切る。
艦長は大声で指示をした。
「すぐにエヴァの電源ソケットを用意しろ!!」
エヴァンゲリオン参号機エントリープラグ
艦長からの通信を切るとカヲルは薄い、そして冷たい笑みを浮かべた。
「悪いね。消えるのは君たちだと、もうシナリオに書かれているんだよ」
思考を集中して一気に輸送船から跳び上がる。
カヲルは素早く海面を見渡して、オーバー・ザ・レインボーまでの飛び石を決定した。エヴァのジャンプ力を計算して考えると必要な艦は2隻。
まずは一隻目。
片足を器用に使ってイージス艦独特の艦橋に着艦する。凄まじい衝撃が艦を襲い、一時的に喫水はかなり低下した。
次の瞬間、着地(?)の反動を利用して再び跳び上がる。艦は再び凄まじい衝撃に襲われて、反動その他諸々の力によって横に大きく揺さぶられる。
ここまでは順調。問題は発生していない。だが…そう甘くことが運ぶハズがない。
カヲルは2隻目に着地しようとする寸前、使徒がその艦に突っ込んで行こうとするのを目撃した。
艦と使徒の速度、進路はともにクロスを刻もうと一点を目指している。
間に合うか!?
間一髪でカヲルが早く、跳び上がった直後に艦は破壊され、盛大に誘爆した。
オーバー・ザ・レインボーではすでにソケットが用意されていた。
着艦するとすぐにソケットを装備する。
「こっちはB型装備なんだ。水中戦をやる気はないよ」
残り起動時間のカウントが消滅するのを確認して、プログナイフを取り出す。
目を海に向けると海面をこっちに向かって使徒が突き進んでいた。概算で80ノットは超えている。抵抗の強い海でほとんど有り得ない速度。
残り100メートル。使徒は大きく海面から飛び跳ねた。
バケモノ風情の巨体が空中を飛んでカヲルとオーバー・ザ・レインボーに襲いかかった。
水飛沫と使徒を正確に見極めてカヲルはナイフを動かした。
軽い感触から一気に重い感触へと変化する。ナイフは肉を正確に切り裂いていた。
銀の参号機に赤い血が飛び散った。
使徒は下腹を大きく抉られて怯んだのか、勢いを失った。
しかし、使徒の体重はその分参号機に圧し掛かることになった。
600メートルを超える巨体の体重が襲ったのだ。さしものカヲルも顔を歪めた。
だが、本当に不味いのはオーバー・ザ・レインボーの船体だった。アメリカ海軍時代からの旧式空母の船体にかかる負荷としては大きすぎた。嫌な音と共に船
体が大きく傾いた。
ヤバイな……
カヲルは考えた。ここでシンクロ率を一気に上げてこの使徒を海に投げ捨てることも出来る。だが、今それを行ってもいいのだろうか?
……勝つためには仕方ないか…
その瞬間、目の赤みが大きく増した。
同時にエヴァの目に大きな光がともる。全身の筋肉繊維が爆発的に巨大な運動エネルギーを生み出す。
使徒は海に投げ捨てられた。反動で船体は大きく揺れた。
「艦長!今なら奴に止めをさせます。ありったけの火力をぶつけて下さい!!」
カヲルは叫んだ。
使徒は海面に揺れていた。明らかに動きは鈍い。
NERV本部発令所
「凄い攻撃だ」
シンジが呆れたように言った。
メインモニターには使徒に総攻撃をかける太平洋艦隊が映し出されている。
ビデオだ。先日勃発した『旧伊豆諸島近海遭遇戦』を収めたディスクが各研究材料とともにNERV本部に送られていた。これはその資料の中の1つだった。
リツコの解析その他が終了したのでシンジやアスカ、その他NERV職員に放送されていた。
画面が一瞬眩い閃光に包まれる。
「N2爆雷まで使ったのね。まだ海上に人が溺れてるのに」
腕組をして、アスカは言った。
「しょうがないよ。彼らも軍人だし、あの場面で使徒を殺らなかったら艦隊が壊滅してただろうし」
「それはそうだけど……」
アスカは嫌悪感を隠さずに後ろを向いた。
「こっちの戦闘がああいう風にならないように心がけましょ」
ミサトが出来る限り明るく言った。
「守るべき人たちをあたしたちが殺しちゃったら意味がないものね」
「そうね。で、FOURTH CHILDRENは今どうしてるの?」
「ホテルで待機してるわ」
「そう」
「僕たちとはいつ会うんですか?」
モニターの戦闘は終わりを告げていた。
「明日の学校よ」
「学校?」
「そう。明日、あなたたちのクラスに転校してくるわ」
シンジは少し嬉しそうな顔をした。早く新しい仲間に会いたいのだ。昔はかなりひとみしりなところがあったが、アスカの教育(?)がいいのか、最近はてん
でそうではなくなってきた。
対してアスカは無表情だった。まるで関心なし。…というよりはむしろ嫌悪している。
ミサトはアスカの嫌悪が、この戦闘からきているものと思った。
「さて」
ミサトはそう言って立ちあがった。
「楽しみは明日の学校までとっといて、今日は帰りましょ」
「はい」
シンジはアスカの手を握るとミサトの後に続いた。
第三新東京市市立第一高等学校1−A教室
今日はミサトが学校についてきていた。といっても、2人の授業を見るとかではなく、FOURTH
CHILDRENの保護者として(NERVが保護者だが、ミサトはCHILDRENの全私生活の担当者なのだ)手続きに来ていたのだ。
代理人でも通用するようになったが、面倒な手続きは旧世紀から相変わらず残っていた。おそらくこの習慣は人類が死滅するまで続くのだろう。まぁそんな話
はシンジとアスカには一切関係ないが。
シンジとアスカは教室にいた。2人だけではなく全員がすでに席について教室にいた。
先生が入ってきて私語が一切消える。
「今日は転校生が来ます」
先生がそう言うと、教室に軽いざわめきが起きた。
「そんな話聞いてないぜ」「女かな?」「男かな?」「かわいいかな?」「かっこいいかしら?」etc…
一応、ホーム―ルームの時間だが委員長もこのときはなにも言わなかった。なぜなら彼女は恋人の転校生妄想談義に心配そうな顔を浮かべていたからだ。
「シンジ知ってたか?」
「えっ、何?」
前の席のケンスケが声をかけたとき、シンジはまるで話を聞いていなかった。
「おいおい、何をそんなにボォーとしてんだ?寝不足か?」
「違うよ。昨日はちゃんと寝た」
「ならどうしたんだ?」
突然、ケンスケはメガネの奥を光らせた。
「お前まさか、惣流から転校生にのりかえようとでも!?」
「ちょっと、そんなわけないだろ!」
「なんだ違うのか」
そう言った目が少し残念そうだったのはなぜだろうかとシンジは思った。
ケンスケはしばしシンジの顔を眺めて、改めて言った。
「……転校生って、エヴァのパイロットか?」
「うん。どうしてわかったの?」
「お前、顔に出てるんだよ」
それにとケンスケは言った。
「惣流も不機嫌な顔してる。お前と惣流の共通点で、俺たちとの違いはNERVくらいだろ?」
「うん」
「だったら、他にはないよ」
ケンスケはそこで表情を変えてシンジの方に顔を突き出した。
「あとで、そいつのこと教えてくれよ!」
「あっ、う、うん…」
教室中に歓声が沸き起こったのはその直後だった。
「渚カヲルと言います」
黒板には老教師が名前を書いている。
「碇シンジ君、惣流アスカラングレーさんと同じエヴァンゲリオンのパイロットをしています」
歓声が更に大きくなった。「すごーい!」「かっこいい!」女の子のあげる声は後ろにハートマークがついてきそうなくらいにも聞こえるものが多々ある。
天然色の銀色の髪、中性的で男くささを一切感じさせないスター顔負けの顔、夏服(?)だからこそわかる体のしまり具合。とどのつまり完璧に見える容姿
だ。しかもそれがはにかんだ笑顔を浮かべていたから堪らない。歓声は中毒のようにクラス全体を覆い尽くしたのだ。
前を振り返ったケンスケは自分の前の席のマナまでもが歓声をあげていることに、いくぶんの面白くない気分を味わったがそれも仕方ないことだと理解した。
「それじゃあ渚君は………碇君の後ろに座ってください。碇君、手を上げてください」
シンジは手を上げながら隣の席のアスカに視線をやった。
アスカは周りから浮くくらいに好意的な表情をしていない。
「君が碇君だね。あなたが惣流さん」
視線を上に戻すとカヲルがいた。長年会いたかった恋人を見つけたような顔をしていた。
「渚君」
「ああ。これから一緒に戦うことになるけどよろしくね。それと、カヲルでいいよ」
「僕も、シンジでいいよ」
「惣流さんも、これからよろしくね」
カヲルはそうにこやかに言うと席についた。
R極秘資料(重要度RSSS・赤木リツコの許可なく何者の閲覧も禁ずる)
以下は某所での極秘会議の録音記録である。
「タブリスは無事に潜入を果たした」
「これで計画はE‐IIに突入したわけだ」
「ロンギネスの槍の運搬も完了した」
「LASの方はどうだ?」
「問題は生じていない。Second Third ともに相変わらずだ」
「計画は全て順調にいっている」
「このままの調子でいきたいものだ」
「人間のやることだ。そう上手くはいくまい」
「面倒なことだ」
「だからこそ補完計画は必要なのだ」
「なんにしても、今後の計画を遂行しよう。我らには時間がないのだ」
記録は以上である。
第伍話終幕
新たにカヲルをメンバーに加えた1−A
そこは修学旅行に盛り上がる騒ぎの坩堝だった
しかしNERVのシンジ・アスカ・カヲルは行くことを止められてしまう
唯一行ける条件は使徒に無傷で勝つこと
3人の旅行を賭けた戦いが始まる
第六話 勝利あるのみ!
Episode6 We Will Win!