お誕生日 By asuka
著者:Su-37さん
ふと見る、時計と目の前のケーキ。そう。今日はアタシの誕生日。でもアイツは目の前にいない。
仕方が無いよね・・・この家にはアタシだけ。
このケーキもアタシがアタシを祝う為に。目の前のご馳走もそう。エヴァ、エヴァとしがみついてきた結果がこれだもの。あれに乗らなければアタシは何も無い。友達のヒカリ?まだ誕生日を教え合う仲じゃない。今日も普通に別れて、アタシはNERVへ。そしてその帰りは差し回しの車で帰って来た。その時にスーパーへ寄って貰ったんだけど、保安部の化粧が濃い女性部員の人は首を傾げてたっけ。
シンジ?アイツも知らない筈。しかも戦術理論の補講とかでまだNERVにいる。それにね、シンジにはファーストがいる。アタシなんかよりずっとお淑やかで優しい・・・悔しいけどシンジと似合いだ。アタシなんて喧嘩友達くらいにしか思われていないだろう。
いや、嫌われてるかも。ふん!あんな軟弱な男、こっちから願い下げだわ!!加持さんは兎も角、アイツよりずっと良いアタシにピッタリな男なんか選り取り見取り・・・・じゃない、アタシに合うのはシンジだけ。それこそ加持さんでも駄目。
悶々としながら時計は9時を回って、まだケーキもご馳走も食べていない。何だか自分で自分が可哀想になるくらい無様だもの。
ああ、一人がとても寂しく感じたのはいつからだったか。多分、アイツと出会ってからね。ううん、多分一人になったら壊れてしまうかも。でもシンジとは何でも無い以上、何れは一人に戻ってしまう。それがとても怖い。
いっそ戦死でも出来れば楽なんでしょうけどね。それまではシンジとの生活があるんだから、アタシは最後まで寂しくない。
いや、このアタシの気持ちをアイツに言わないで死ぬのはもっと怖い。せめて想いを寄せる女の子が確実に一人いた事を忘れないで欲しい!例えいつも酷い事言って酷い事しているアタシでも。ふふ・・・なんだか凄く贅沢を言っているかもね。
ローストビーフに手を伸ばす。行きつけのスーパー自家製総菜の味は決して悪くない筈だけど、美味しくない。一人だから?そんな自分が無様だから?シンジがいないから?
ノンアルコールのシャンパンも開けてみた。やはり美味しくない。炭酸ジュース程度の味すらしない。
なら白い生クリームで出来たバースデーケーキは?これも不味いと言っていいかも。
なんだか食欲すら無くなってきた。もういい、全部捨ててしまおう。アタシはダイニングの椅子から立ち上がる。
その時、玄関でドアの開く音。
「ただ今。」
とても聞きたかった声。しかも足音は一人分。
「アスカ、今日は誕生日だよね・・・って何やってたの?」
「ふん、自分で自分のバースデーパーティーしているのが変!?」
何故か口からは非難じみたものが出てくる。アタシってやっぱり最低の女だ。
「なら僕も混ぜて貰っていいかな?」
そう言いながら、右手に持ってたケーキの箱をテーブルにおいてる。
「ふん、勝手にすれば!」
嘘!凄く嬉しいのに。
「有り難う。それと、プレゼントもあるんだ。」
「いい心がけね!貰っておいてあげるから感謝しなさいよ。」
ああ、アタシの莫迦莫迦!益々嫌われちゃうじゃないの!
「これなんだけど・・・アスカに似合うかな〜ってね。マヤさんと一緒に選んだんだ。」
小さな長い包みを差し出して、いつもの優しい笑顔までくれる。
「ファーストにも上げてるんでしょ!良いわねぇ、色男のシンジ様は!」
「莫迦言うなよ。綾波の誕生日なんか知らないし、それに僕が好きなのは・・・っと!それは関係無いね。」
ん??どういう続きなの?
「アンタが好きなのは誰?ファースト?」
「ち、違うよ!何て言うか、そういう風に見られないんだ。」
もしかして・・・もしかしてと思うけど・・・。
「じゃあ、アタシ?」
シンジは暫く考えた後、俯いてゆっくり頷いた。
「ふん!アンタに同情されるなんてアタシも堕ちたもんだわ!」
何でそんな事言っちゃうのよ、アタシ!こんな口、捨ててしまいたい。
「違うよ!!同情なんて器用な真似は出来ないし、それにそれに・・・本当に好きなんだよ!!」
コイツ優しいから・・・でも本当だったら嬉しい。
「なら、アタシにキスしなさいよ。好きなら出来るでしょ。」
「出来るよ!!出来るけど、アスカが望んでいなければしない。それはアスカに失礼だから。」
「莫迦。アタシはしていいって言ってるのよ。」
「アスカは僕の事、好きなの?そうじゃなければ僕なんかとしないで方がいいんじゃないかな。」
「ウダウダ五月蠅いわね!アタシもアンタの事が好きなんだからいいじゃない!!」
あ・・・ああ?アタシ、今素直になれた?
「ほ、本当?」
「ええ、本当よ。どんな男よりアンタは素敵よ!自信を持ちなさい。」
「あ、有り難う。」
「ね・・・キス。」
「上手くいくか解らないけど・・・・」
そして、ゆっくりと近づくシンジの顔。女の子みたいに綺麗。やがて合わさる唇の感触がとても心地良い。まるでずっと見つけられなかったアタシの半身と出会ったみたい。
暫く口付けた後離れるとシンジの顔は真っ赤だった。もしかしたらアタシもそうなのかな・・・。
「嬉しい。最高のプレゼントだわ。」
「これもそうなんだけど・・・。」
シンジの視線が示す細長い包みと、ケーキの箱。まずは小さな包みの方かな。
「ありがと、開けてみるね。」
包みを破って箱を開けると、そこにはロケット付の金色をしたネックレス。
「これにアンタの写真でも入れろって?」
ちょっと意地悪く笑ってみせる。
「そしたら嬉しいな。」
でもそれが通用しなかった。少し悔しい。いやうんと悔しい。何だか主導権を握られたみたいじゃない。でもそんな感じが逆に嬉しくもある。
「解ったわよ、仰る通りに致します。」
シンジの喜ぶ顔も見てみたいじゃない。ほら、ニコニコしてる。アタシもそんな風に笑えるかな。
「アスカって・・・笑うと可愛いね。」
「なっ!?」
「そんな顔もアスカなんだね。」
顔から火が出そうなくらい恥ずかしいけど、喉から大声が出そうなくらい嬉しい。
「そ、それとケーキはどうなのよ。」
「そこに置いてある物程じゃ無いけど。」
シンジが箱から出したのは、小さくて綺麗なデコレーションのバースデーケーキ。アタシの名前も書いてある。
「よ、良かったら食べてよ。」
「うん!シンジの方から頂くわ。」
それから、シンジと楽しく食事をしながら色々話した。生い立ちや両親の事。それと今までおどおどしていた彼が何故ここまで言える様になったのかも聞いてみた。そしたら、初めての出会いから意識してたのはアタシだけじゃないと解った。シンジもそうだったんだ。それで少しでもアタシに近づける様に努力して・・・で、告白(じみた?)も自分が少しでも強くなる為だって。それが全部アタシの為になんて泣けてくるじゃない♪
な〜んて事が昨日あったとヒカリに報告したんだ。
「ははは・・・そうなんだ。碇君とねぇ。」
「そう!これが貰ったロケット付ペンダント。中には・・・」
勿論シンジの写真よ。
「なら、無理よね。」
「何が?」
「お姉ちゃんが友達に頼まれて・・・アスカとのデート取り持ってくれって。」
「ああ、駄目よ駄目!明日はシンジと初デートなんだから!」
「御免なさい!勝手な事言って。それより聞かせて、昨日何処までいったの?」
ふとシンジの視線を感じてそちらを見ると・・・困った顔してた。
「や〜、シンジが言わないでって。少なくとも教室じゃあねぇ。」
「なら・・・今度聞かせて!」
ふふ・・・いいわよぉ!明日のデートと合わせて凄いのを聞かせてあげるわ。精々転げる事ねっ!!
おしまい
後書き
相変わらず展開が早いです(^^;
何せ、必要な事が書けていませんから(爆)
Su-37さんからアスカ誕生日小説をいただいてしまいました。
アスカも土壇場?で心から祝ってくれる人が出てきてくれて良かったですねぇ。それも一番祝って欲しかった人で‥‥。
それにしても一体アスカとシンジはどこまで進んだのか、それは気になりますね(笑)
なかなからぶりぃで良かったのです。みなさんも是非感想メールをお願いします。