晴れた日は空を見上げて

筆者:素人さん








マンションの一室。一人の少年が咳き込みながら苦しそうにしていた。

「風邪ね」

女性はそういうと、今日は休みなさい。そういい外へ出ていった

風邪か…今は季節の変わり目だしなそれよりも…

少年は仰向けにねっころがり天井を見上げながら思った

来てくれるかな。元より過度の期待なんかしてはいないけど。出きる筈が無いよ。彼女と僕とでは全然釣り合わないもの。でも…お見舞いぐらいには来てくれるかも。

僕は彼女がスキ。でも…それを悟られちゃ駄目だ。彼女は優しいから…彼女は優しいから僕と無理に接する。そうしようとする。

そんな事…僕には耐えられない。だから…僕は幼馴染。ただそれだけ

少年の思考がそこまで行ったとき、来客の訪れを知らせる鐘が鳴る。

なにやら話しているらしい。話す声が聞こえる。

来客は少年の部屋の前に来ると深呼吸をし、息を整えてから部屋に入った

「そんなに、なよなよしてるから風邪をひくのよ!!」

少女はベッドで寝ている少年に向かい言った

「うん…」

少年も答える

お互いに頬を紅くしているのだが、二人共視線をずらしているので気付かない。

「アタシがお見舞いに来てやってんのよ!ありがたく思いなさいよ!!」

「うん…ありがとう」

少女は少年のすまなそうな顔を見ながら思う。

まったくこのバカはなんでこんな時に風邪をひくのよ。明日一緒に買い物行くって約束してたのにぃー!!

「…ごめんね。約束破っちゃって…」

「いいのよ…別に…そのかわり。今度埋め合わせしてもらうからね!」

「うん…わかったよ」

少年はそういい窓を見る。

晴れてる。雲一つ無い快晴。

少年は何処までも続く蒼穹を見上げながら思った

こんな日には、昔から彼女とよく遊んだ。公園。家。林。でも…ね…もう駄目なんだ。そう。彼女に相応しい人がそのうち現れる。そうだ。僕は邪魔な人間なんだ。

「…僕はもう寝るから。でてってくれない?風邪移っちゃうし」

「わかったわ」

少女は部屋を何かを探し始めた。その間に少年は眠りにつく。

少女は洗面器に水をいれ、タオルを持ちかえってくる

「このアタシが看病してあげるのよ。ありがたく思いなさいよ」

少女の言葉には明かにただの友人に対する物とは違う響きが入っていた…





夕暮れ時の学校。闇色の髪を持つ少年と紅色の髪を持つ少女が向かい合っている

「ごめん…」

少年の前で少女はうなだれる

「なんで?なんでなのよ…」

赤髪の少女はうなだれたまま呟いた

「駄目なんだ。僕は違うから…」少年は決して少女の方を見ようとせずに言った「君には君の生き方がある。そして君はそれを守らなければならない。さよなら。もう逢う事も無い」

少年はそう言い立ち去る。

「まって!なんで?なんでなのよ!そんなの別に良いじゃない!私は!」

「君にはわからないよ」少年は立ち止まり少女の声を遮るように言った「永遠の時。僕は何時までも生きつづける。そう50億年たって、太陽も月も地球も全てが無くなってもね。わかる?永遠に一人で生きつづける事に?」

「それなら一緒に生きてくれる人を探せば良いじゃない…」

「…駄目。駄目なんだよ」少年は悟った様に言った「永遠を手に入れる事が出きるものはいない」

「アタシは─」少女の言葉は少年が遮った「それも可能かもしれない。でもね」少年は昔のよう優しい瞳で話し続けた「君にはやっぱりわかっていない。人と人とは分かり合えないんだよ。絶対に。ね」

沈黙。少女は震える声で言った

「それでもいい。それでもいいの。人と人とが完全に分かり合える世界はあの世界でしかない。アタシ達が生きて行きたいのはこの世界。全てを一つにしてまでわかり合いたいとは思わないわ。少なくともアタシは。だから……」

「………ありがとう」

二年前に希望も絶望もせずただ前進する。そう決めた少年は今、未来への──あるいは永遠ヘの──希望を初めて抱いた。

そのとき二人の門出を祝う様に鐘が鳴った





「夢…?」少年は半ば眠ったまま呟いた

少年はすぐに夢の世界へ入っていったため気付かなかった。彼の想い人が部屋に帰って来た事に。

「起きたの?」少女は水を変えてきた所だった「まったく、こんなかわいい女の子が看病しているんだから、さっさと風邪なんて治しなさいよ」

少女は優しく微笑み、少年の寝顔を見つめた。

「なんか」少女は少年の寝顔を見ながら言った「けっこう可愛いわね…」

少女は晴れた空を見上げた。

こんな日は昔からコイツとよく遊んだ。公園。家。でも…このままじゃ駄目。こいつは鈍感だから自分の気持ちは自分で伝えなきゃ。ね。

「わかってるの?」少女は少年の頬を突っついた「アタシがなんで看病してやってるのか…」





世界の少年は「決戦兵器」そうよばれる機体に乗って、進行してくる敵を倒しつづけた

少年の長きにわたる戦いは最終幕を迎えていた。

少年の所属する組織はすでに多くの敵を倒した。

少年の周りは死と破壊で満たされていた。

少年は今までやってきた事を悔い、そして死を望んだ。しかしそれは到底叶う物ではなかった。少年の能力は組織の最後の希望。紫色の機体に乗り、その日も来襲してくる敵を屠ることを望まれた。

そして少年は見た。少女の乗る機体が八つ裂きにされている光景を…

少年は吼えた。その少年の乗る機体は遺憾無くその性能を発揮し……数十秒後。地上に五体満足な姿なのは少年の機体だけだった

少年は見た。少女の機体。少女の乗りこむ部分に敵の槍が突き刺さるのを。

少年は機体を走らせた。そして、少女の乗る機体の残骸の中から探し出した。

少年は見た。少女の乗りこんでいたと思われる部分の粉々に粉砕された残骸。

そして…少年は…





「起きたの?」

少女は少年の顔を覗きこみながら言った

少年は少女を抱き寄せ言った「夢を…夢を見たんだ」

「ど、どんな?それより手退かして…」

少女は顔を紅潮させ言った

「怖い夢…」少年は手の力を緩めなかった「僕達は変なロボットのパイロットなんだ。それでも戦いつづけたんだ。色んな人を傷つけても、友人を殺してまでも、それで」少年の双眸から涙が零れる「最後に死んでしまうんだ。そんなの嫌だったんだ」

「なんで?」

「なんでって…」少年は頬を紅くして俯き小さな声で言った「大切な人だから…」

「ありがとう…」

少女も頬を染めた

しばしの沈黙

少年は自分の額に載せられていたタオルに気付いた。

「やってくれたの?」少年はタオルと少女を交互に見ながら言った

「そ、そうよ」

「なんで?僕は単なる幼馴染でしょ?」

少年は少女を抱きしめていたのに気付き手を離した

「そうよ」少女は少々残念そうに言った「アンタがそう思っている限りはね」

「それって…」少年の問いとも似た呟きを少女は微笑みで返した「あの……」




数日後



「ねえ。本当にいくの?」

少年は心配そうに言った

「あったりまえよ!」

少女は力強く断言した。

「でも…」

「でもじゃないの!行くって言ったら行くのよ」

「でもねえ」少年は盛大に溜息をついた「全品大特価!っていっても荷物持つのは僕なんでしょ?」

「あたりまえの事言わないでよ。アンタはレディに荷物持ちをさせる気なの?」

「でも…」ふと空を見上げた少年は少女に向け優しく言った「こんな晴れた日は寝っ転がって空を見上げたいと思わない?」

「そうね…それも良いかもしれないわね。でも」少女は少年に微笑みかけた「それは買い物が終わってからよ」

「わかったよ」

少年は苦笑しつつうなずいた。

少年は少女の、少女は少年の顔を見ながら同じ事を思っていた。

『このまま…二人でいつまでも…』







少年と少女は歩み出す

共に助け合いながら未来を目指す為

少年が見た夢

それも、また一つの可能性

少しだけ運命の歯車がずれた世界の出来事…







END


この度はホームページ開設&一万ヒット突破おめでとうございます。

「こんな物いるか!」と思ったら容赦なく送り返してください。

本当はコメディ風に仕上げたかったのですけれどこうなってしまいました。申し訳ないです。

意味不明ですか?やっぱりそうですよね。突然閃いたネタなので。何がやりたかったかと言われると……困ります。



怪作殿。毎回毎回感想を下さり嬉しい限りです。今回はそのお礼の筈なのですが迷惑だったらごめんなさい。

では辺境より貴殿の御活躍を祈らせていただきます。


 『ライジングサン・アイアンクロス』の素人さんが投稿作品をイカ作にくださいました‥‥。

 違った可能性‥それもまた、あの子供達(チルドレン)‥‥。

 むぅ、とても言葉で表せないほど素晴らしいです。

 送り返すなどとんでもない、有り難く頂いておきます。

 みなさんもぜひ素人さんへ感想を送って下さい。

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