君の爪の上の砂を僕が落とさないようにしよう

手が震えるなら、支えてあげる

疲れたなら、僕の肩に乗せて休めばいい


もし、零れ落ちても、大丈夫だよ

僕の手のひらが、それを受け止めるから

そして爪の上にまた、そっと戻してあげる

君があるがままでいられるように

君が君のままでいられるように







 シンジが書いた詩。

 監禁されてたころ、端末に日記と一緒に入ってた詩。

 当時のアタシには、何がなんだか全く解らなかった。

 それに、これが引き金になるなんて思ってもみなかった。





〜思惑after

書イタ人:しふぉん




 「爪の上の砂って… 釈迦だっけ? リツコ」

 アタシの研究室に最近、サボりに来ては居座ってるのは…
 ミサトと、そしてリツコ!
 なんで、リツコまでサボってるのよっ!
 それも、朝からっ!
 『優秀な研究員が一人増えた分、私の仕事が減っちゃったからよ』
 って、その分アタシが忙しい思いをしてるわよっ!
 最初の頃は、その存在自体を認識しないように努めてきたけど…
 一日中、居座られてちゃったら、そんなもの関係ないって感じで…
 そのうち、アタシも慣れちゃったのよね。
 んで、今もアタシを無視して二人はお茶をしてる…
 そんな中で、ミサトが急にそんなことを言い出した。

 「そうね…確か、ガンジス川の砂全てと、釈迦の爪に乗った砂のどちらが重いかって話ね」

 あれ? それって、シンジが書いてた詩になかったっけ?
 アタシの手は全く無意味な文字の羅列を刻み始めた。

 「ガンジス川の砂が生きるもの全ての数、つまり生物の総数で、爪の上は人の数ってことよ」

 爪の上の砂が人の数ねぇ…
 まぁ、対比としては面白いわね。

 「恒河沙って単位もここから来てるのよ。」

 へぇ〜っ って何で急にミサトはこの質問を?
 って、ミサトを覗き見れば…
 相変わらずよね…100年の恋も冷めるどころか、こんなんじゃ男が寄り付けないって顔で、アタシを見てる。
 リツコまでそろって。
 そういうこと、読めたわよ。
 シンジの日記も覗いてたことは既に知ってる。
 ということは、あの詩も見てたってことよね。
 二人が今してることは、きっとその詩の話。
 アタシが解らないのをいいことに…からかうつもりね。

 「へぇ〜っ 流石リツコよね。」

 口では、リツコを褒めてるけど、視線はアタシに向けたまま…

 「っで、それがどうしたって言うのよっ! こっちをジロジロ見てっ!」

 アタシが反応を見せたことで、二人の唇が歪む。
 往年の髭色眼鏡司令を彷彿させる、厭らしい笑い…

 「ん〜 シンちゃんの詩って、ロマンチックよね〜」

 「そうね、あんなこと今のシンジ君に言われたら、即座に何人の女性職員が虜になるか見ものね」

 くぅ〜っ、二人はあの詩を理解してるのね。
 悔しいけど、アタシにはわかんない。
 いいのよっ! アタシはキリスト教圏なんだから、わかるわけないでしょっ!
 無視するに限るわね…
 二人の冷やかしを無視して、アタシは仕事に戻るふりをした。

 「まぁ、仏教的思想ってやつよね。 輪廻転生を元に考えてるわけだから」

 「そうね、シンジ君もそこまでは気づかなかったようね」

 輪廻転生?
 えっと〜 確か、人の魂は死後、別の命に宿って生まれ変わるって話よね。
 理解できないアタシを無視して、二人の話は進んでいく。

 「生まれ変わっても… あ〜ぁ そういうこと言ってくれる人、いないわねぇ」

 「そんな優良物件は残ってるなんて、そうそういるわけないでしょ?」

 生まれ変わりがなんだっていうの?
 端末に向かって、指を奔らせるけど、流れる文字は全く意味不明。
 そう、頭の中はすでに詩のことでいっぱいだから。

 〜君の爪の上の砂を落とさないようにしよう。〜

 人の数ってことよね、これが。
 落とさないようにする?
 人の数を減らさないようにするってこと?

 〜手が震えたなら、支えてあげる。
  疲れたなら、僕の肩に乗せて休めばいい。〜

 何を指してるのかわからないけど、
 疲れたなら、僕が休ませてあげようって事よね。

 〜もし、零れ落ちても大丈夫だよ、
  僕の手のひらが、それを受け止めるから。
  そして、爪の上にまた、そっと戻してあげる。〜

 つまり、失敗しても大丈夫。
 いつでも、シンジが助けてくれるってことね。

 〜君があるがままでいられるように。
  君が君のままでいられるように…〜

 アタシがアタシらしくいられるように…
 これって、あの時のシンジの言葉…。

 まとめれば…
 人の数を減らさないようにしようよ。
 疲れたら、シンジが休ませてくれる。
 もし、失敗したとしても、シンジが何とかしてくれる。
 アタシがアタシらしくいられるように。

 さすがに、直訳じゃわけわからないわね…
 ふと、気づけば、二人の厭らしい視線がアタシを嘗め回してて…

 「アンタ達はっ! あたしの仕事の邪魔して楽しんでるの!?」

 よほどアタシの顔が怖かったのか、二人は部屋からやっと出て行ったんだけど…
 爪の上の砂ねぇ…
 アタシの頭はすでに仕事なんか放棄することに決定しててたりする。
 結局、この日はコレのせいで仕事に全く手がつかなかった。




 Nervに帰ってきてからのアタシ達の住居は、ジオフロント内に新たに建てられたマンション。
 最初は、二人だけで同居するつもりだったんだけど…
 『その歳で同棲!? んなこと、駄目に決まってるでしょっ!』
 って、ミサトに反対されて出来なかったのよね…
 まぁ、隣だから別にどうでもいいんだけどね。
 実際、家族用ってサイズじゃなくて、単身赴任用ってくらい狭い部屋だから、二人で一部屋だったらアタシが我慢できなかったわね。
 だから、食事はシンジの部屋で二人で一緒にとってるの。
 リビング・ダイニングをシンジの部屋にして。
 アタシの部屋は寝室と私室ってところ。
 つまり、寝るときしかアタシは家に帰ってない。
 だから、あたしの帰る家は問答無用でシンジの部屋。

 「ただいま〜」

 ん? 返事がない?

 「シンジ〜ィ?」

 部屋に明かりは全く点いてなくって、真っ暗なまま。
 ふとみると、テーブルの上に書置きがあった。

 『〜アスカへ
  ごめん、
  急なんだけど、出頭命令で第二東京に行ってきます。
  帰りは遅くなるだろうから、僕の分はいいから。
  それと、先に寝てていいからね。
  戸締りだけはしっかりしてよ?
                          -シンジ-』

 そっか… 今夜はいないのか。
 一人だと、食事を作る気にもならないのよね。
 あ、ちなみに。
 食事の支度はアタシの仕事。
 シンジは、前みたいに余裕がなくって、帰ってくるのが深夜になることもたまにある。
 しょうがないから、アタシが作ってあげてるってわけ。
 まぁ、アイツも昔のミサトと同じ大尉なわけだし。
 暇じゃないのもあたりまえよね。
 なんて思ってたら、シンジはそんなこと予想済みで、ちゃんと用意してあった。
 コンロの上にはシチューがあって、冷蔵庫の中にはサラダがちゃんとある。
 むぅ〜っ
 アタシの行動がこうも先読みされてると、なんか悔しい。
 悔しいのは確かだけど、空腹には勝てないわけで…
 久しぶりにシンジの用意してくれた夕飯を、テレビを見ながら一人で食べてる。
 箱の中では、鈴原みたいなお笑い芸人が、火災避難用の緊急マットの上に3階だか4階から飛び降りて…
 なんてやってるけど、どうでもいいわ、怪我したところでアタシが痛いわけじゃないし。
 ヒカリには悪いけど、どう見ても三流芸人だし。
 頭の片隅では、こうやって冷静に色々考えられるのに、残りの全てはあの詩に占領されてる。
 詩っていうのは、贈る相手や、その時の状態なんかで解釈が180度変わったりするだけにやっかい…
 シンジがアタシに贈ってくれたってのは判るんだけど…
 オーバーヒートしそうなくらい、アタシの頭はあれから回転しっぱなし。

 アタシは上の空のまま、後片付けして、戸締りして、お風呂に入って、寝室に戻って、布団の中…
 ・・・・・・・
 いつの間に!?
 我ながら、習慣って恐ろしいわね…

 それにしても、日本語って難しいわよね。
 こういう遠まわしな表現がすっごく多くて、古典文学なんて解らない。
 さらに、日本人は仏教でも、ユダヤ教でも、北欧神話でも何でも詩に組み込んじゃうから、更に難解…
 シンジにそんな才能があったなんてねぇ。
 結構やる気さえ出せば、色んなこと出来るのよねぇ…シンジって、

 ふと、ため息を吐きながら瞬きをしすれば…
 前触れもなく枕元に立ってて、アタシを見て笑ってる奴が一人。

 「クスクス…」

 コイツは…

 「アンタはなんで、そう突然現れるのよ…」

 なんてコイツに言っても、

 「…ずっといたわ」

 はいはい… わかってるわよっ、そんなこと。
 レイはいっつも、突然現れる。
 決まってシンジがいないとき。
 それも、最近は夢じゃなくて、現実にいたりする。
 そして、お約束のように意味不明なことを話して消えていく。
 たまに通じることを言ってると思えば、謎なお願いだったりして、
 食べられないのに、どこそこのケーキを買ってきてほしいとか…
 ビールってどんな味がするの?って訊いてきたり…
 まぁ、数え上げればキリがない。
 お供えでもしろっての? 生きてるのに?
 んで?今日は、なんの用?ってきいたら…

 「…貴女が、羨ましくて、」

 羨ましい?
 なんのこと?

 「…そう、またわかってないのね。」

 またよ… 何がなんだか…
 そのうえ、勝手に心を読んで話を進める。
 アンタ、ちょっとはわかるように話しなさいよ。

 「…貴女も聴いたはずよ?」

 ん? もしかして、詩のこと?

 「…そうよ、詩。 碇君が貴女への想いを綴った詩。」

 そっか、それで羨ましいのね…、
 でもっ、たとえアンタでもシンジはあげないわよっ!
 それにしても、コイツもわかってるのよね…きっと、
 あんだけ、本読んでたんだもん。 わかるわよね。

 「…ちがうわ。 葛城三佐と赤木博士が言ってたもの」

 へ? 言ってた?
 なんで、ミサトとリツコが出てくるのよ?

 「そのうちわかるわ…」

 言葉と共に姿が一瞬にして霞んでいく、
 現れた時と同じように唐突に消えて…
 意味がわかったのも、羨ましがってたってことだけ。
 はぁ〜っ… っとに…
 もう一度、ため息を吐いて瞬きをすれば… 部屋が明るくなってた。
 ………朝?
 何かが違ってる…レイが出てきて、ほんの少し話しただけなのに・・・
 アタシの中では数分の出来事なのに、朝になってるのがすっごく、ムカつく…
 何がムカつくって… 寝た気がしないのよっ!
 こういう時は、シンジに八つ当たりするしかないっ!
 って、部屋を飛び出したんだけど…
 シンジは帰ってきてなかった。
 この鬱憤をどこで晴らすべきか…




 こういう日に限って、リツコもミサトもアタシの部屋に来ない。
 すでに、アタシの機嫌が悪いことは本部内に知れ渡っているのか、誰一人として近寄ってこない。
 アタシは猛獣かぁぁぁぁぁあぁっ!!!!!
 って、初号機みたいに叫んでやりたくなるわね。

 なんてイライラしてても、頭の中はいまだにシンジの詩でいっぱいになってる。
 結局、仕事も手につかないし、何も出来ないままお昼ご飯迎えちゃって。
 っで、食堂でアタシの周りだけ空席なのよね…
 誰一人として近寄ってこない。

 初号機の雄たけびがそんなに聴きたいの?
 ・・・まぁ、いいわ。
 そう思ったとき、冬月司令がやってきた。

 「一緒にとらせてもらってかまわないかね? 惣流君」

 もちろん、断る理由はないから、対面に促した。
 多分、誰かの差し金であることには間違いない。
 『せんぱぁ〜い アスカが怖いんですぅ』なぁんて…
 まぁ、大方の予想はつくし、アタシにはどうでもいいことだし。

 「悩んでるようだが、よければこの老人に聞かせては貰えないかな?」

 あまりにも予想どうりすぎて、呆れちゃいそうだけど…
 ここは甘えるに限る。
 詩の造詣なんて、アタシにはわからない世界だし。
 教えてもらうことにした。

 「ほぉ…案外詩人なのだな。 多分、シンジ君の言う、その爪の上の砂というのは、来世を指しているのだと思うだがね。」

 来世? 生まれ変りってことのはず…
 そういえば、ミサト達もそんなこと言ってた気がするわね。
 それがなんで?

 「仏教では、生まれ変わっても人に生まれ変わるとは約束されてないのでな、
  他の動物などにも生まれ変わるとされていてね。
  爪の上の砂というのが人の数をさすのならば、
  その確立もその爪の上の砂の数と同じになるのではないのかな?」

 なるほど…
 人に生まれ変われる確立かぁ…
 シンジにしては、ロマンチックよね。

 「こればかりは書いた人間でなければね、誰に宛てて書いた詩かも判らぬのでは、なんとも言えんよ。」

 口ではこう言ってるけど、冬月司令も解ってるみたい。
 誰宛なんて、アタシ宛以外にはないから。
 それに、多分だけど…あの時のことを、この人は全て知ってる。
 だから、最後の言葉の意味も解るはず。
 それに込められた意味も…

 結局、教えてもらえたことは生まれ変わりだけ。
 後は、本人に聞きなさいってことで…
 研究室に戻ってきても、仕事なんか手につかない。
 むぅ〜っ… アタシだけわかんないのも悔しいっ!
 生まれ変わりがどうだっていうのよっ!

 「馬鹿シンジのくせにぃ〜っ!!!」

 「へっ? 僕?なんかした?」

 目の前には“きょとん”って、呆けた面したシンジがいて。
 そうよっ、元はといえば…
 元はと言えばっ!!!!
 アンタが解りにくいこと書くからでしょっ!

 次の瞬間には、アタシは反射的に右手を一閃させてて…
 拳銃みたいに、乾いた音がしっかりと響いてて…
 目の前には、顔を不自然に横に向けたシンジがいて…
 それも、左頬を真っ赤に染めてて…
 なんで、シンジがここにいるかってことをまるっきり考えてなかった。
 
 「ゴメン…」

 アタシはシンジの前に小さくなって座ってる。
 さすがにシンジでもあの一撃には納得してなくって…
 思いっきり、怒ってる… っていうか、拗ねてる。
 前に、アタシの唇が尖るだとか言ってたけど、コイツもいい歳した男なのに唇を尖らせてる。
 それが、なんとなく似合ってるのよね、シンジの場合。
 体は大きくなっても、なんていうか“可愛い”って感じだし。

 「昨日帰れなかったから、急いで謝りにきたのに… いきなりだもんな…」

 そうよっ! 昨夜アンタが帰ってきてれば、こんなに悩まなかったのにっ!
 って、言いたくても…言えないわね。

 「でも、帰ってこなかったからっで、叩かれたわけじゃないでしょ? 理由を聞かせてくれない?」

 言葉だけで見れば優しいんだけど、口調と視線が、ちょっと痛い…
 う〜っ…ってうなったところで、言い返せるわけじゃないし、
 仕方無しに、アタシはゆっくりと昨日からの出来事を話していった。

 「なるほどね… それでか…」

 一人で、納得して何度も頷いて…
 アタシはまだ納得してないのよっ
 なのに、シンジは周りを見渡して、何かを探して、
 また一人で納得して。
 むうぅ…
 っで、アタシが痺れを切らした頃、 

 「んじゃ、教えてあげるね」

 立ち上がったかと思ったら、アタシを抱えて部屋の隅にある机に移動して…
 腰掛けると、アタシを膝の上に乗せる。
 そのまま抱きかかえるように、耳元に顔を寄せてきて…

 「あ…あぁ…きゅっ急にっ、なっ、何すんのよっ」

 まだっ、ひっ昼なのよっ、こっこんなところでっ…
 アタシの思いっきり動揺してる頭に、シンジの囁きが流れてきた。

 「流石にさ、人に聞かれるのは恥ずかしいからさ、ちょっと移動しないとね」

 あっ、盗聴器に聞かれにくい場所っていうのに、移動したんだ…
 べっ別に変なこと想像したとかじゃなくて…、
 ちょっとは期待して…
 なんて、想像してたのが恥ずかしい。
 横目でシンジの様子を伺ってみれば、耳まで真っ赤にしてる。
 恥ずかしいって…何を言う気?
 ドキドキしてくるじゃない…

 「んじゃ、詩の意味を教えてあげるね。
  僕はあの詩で、こう言いたかったんだよ。

  『何度生まれ変わっても、僕はアスカの隣にいるよ、
   たとえ、他の生き物に生まれ変わっても、アスカの隣にいるよ、
   でもね、アスカにはアスカでいてほしいから、
   アスカが人に生まれ変われるように、僕が支えてあげる。
   そして、何度生まれ変わっても僕と出会うんだ。
   だから、何があっても守ってあげる。
   だから、僕はアスカの隣にずっといる。
   世界を作り変えても…』

  ってさ、そういう意味なんだ、」

 ずっと、生まれ変わっても?
 これって…へ? えっ? 
 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!

 「バっ、バカぁっ! アンタはなんてモノ、端末に残してたのよっ!」

 こっ、こっ告白してんじゃないわよぉ…
 みんなに見られてたのにぃ…
 恥ずかしいなんて、通り越すくらい恥ずかしいじゃないっ!
 あぁもぉっ! なんて言っていいか意味わかんないしっ!

 「ん〜 なんかさ、アスカに僕の気持ちを知ってもらいたくてさ、」

 今は首まで真っ赤にしてるのに、表情はそっけない感じ。
 無理しちゃって…
 って、アタシもきっと真っ赤なんてもんじゃない。
 心臓の音でシンジの声以外は聞こえないし。

 「けどさ、やっぱり直接…伝えたかったし、」

 うん… だって、あの時のシンジってば、カッコよかったもん。

 「だから解りにくいように…ってさ、ゴメン」

 そういって、すっごい優しい顔でアタシの顔を覗き込んでる。
 嬉しいんだけど、恥ずかしくって…
 そんな顔見せたくないから、アタシはシンジの首筋に顔を埋めて…
 そしたら、シンジの匂いで、頭がボーって…

 「もう、いいのだから…このまま…ね?」

 結論、アスカ心理内委員会は満場一致で二日連続職務放棄することを採択いたしました。




 翌週、アタシに対する視線が、変わった…
 なんって言っていいのか、羨望の眼差しっていうのかしら?
 女子職員がうっとりしてあたしを見てるのよね。
 もちろんリツコみたいな趣味もないし、
 二日もロスしたツケがあるから、そうそうサボってもいれない。
 だから、そういうのは視線はまるっきり無視してたんだけど。
 それに、ミサト達も今週は静かだから、って安心してたのがマズかった。

 「アスカっ! ミサトさんは!?」

 シンジが部屋に入るなり、今までないほどに怒って訊いてきた。
 きてないわよって言ったら、すぐに初号機のみたいに走り去っていって…
 その時は、シンジの憤激の理由はわからなかったんだけど。
 答えはマヤがお茶とお菓子を土産に運んできてくれた。

 「アスカはいいわねぇ… あんなプロポーズ、私もして貰いたいなぁ」

 ため息混じりに話すマヤの姿って、夢見るホント女の子って感じ。

 「マヤの場合は、その前に相… へ?」

 プロポーズ? って、え?
 いつ誰が?アタシにプロポーズしたってのよ?
 シンジ以外、受ける気なんかないけど、そのシンジだってまだなのに…
 多分、アタシの表情を見て察したのか、Nervの機関紙をだして。

 「これ、知らないの? ここよ!ここ!」

 覗いてみれば… シンジの詩が載っていた。
 サードチルドレンが、セカンドチルドレンに贈った詩って、それも解説付で。

 なるほど…レイ、こういうことね…
 ミサトとリツコね…

 ミサトとリツコの姿は、ここから数週間確認されなかった事だけを明記しておく。




 シンジの詩は、国連の他の機関紙にも流れ、絶賛された。
 『世界を作り変えても…』って、部分は解説されないけどね。

 気づけば、アタシとシンジの婚約が勝手に決められていて…
 翌年、アタシの名前は見事に変更された。
 あの詩がプロポーズの言葉として。

 でも、ホントのプロポーズの言葉は…内緒






またまたしふぉんさんからいただいてしまいました。

シンジ君の詩ですか。
シンジ君は音楽もしているし芸術的な感性があるので詩も書くのでしょうね。

アスカのためならなおさら。

良いお話でありました。皆様もしふぉんさんに感想をお願いします。