夫婦絶唱・黎明篇

碇アスカの育児日記 12月


作者:三只さん






























12月1日


今年も残すところ1ヶ月になった。

色々あって感慨深いけど、まとめるのはもう少しあとからにしよう。

12月になると、なんとなく心が浮つき出す。

あたしの誕生日を始め、クリスマス、大晦日とイベントが目白押しだからだ。

一年のケジメとかなんとかで大掃除もしなきゃならないだろうけど、引っ越したばかりだからしなくていいし。

育児に没頭できるのはとてもありがたい。

・・・・育児以外してないんじゃないの? というセルフツッコミは全力で却下。













12月4日


今日は、あたしの記念すべき23歳の誕生日。

テーブルいっぱいのシンジの料理に、たくさん招待客も来てくれてもう最高。

加持さんからは真っ赤なバラの花束。

ミサトからはメッセージカードの入った可愛いピンクの瓶のお酒。

ヒカリからは涙滴型の蒼いイヤリング。

渚夫妻が持ってきた松坂牛のブッロク肉は、あたしへのプレゼントにカウントしていいものだろうか。

でも、一番嬉しかったのは、アスマがプレゼントしてくれた絵だ。

あたしもシンジも画才ないんだけど、その血を100%受け継いだかのような絵。

画用紙の真ん中にあたしがいて、その後ろに半分かくれるように、これはシンジだろう。

ついでに小さな三つの子供は自分と弟妹たちらしい。

どれもこれもデフォルメがきいている。まあ、子供が描く絵ってのは、こういうもんかも知れない。

ただ、あたしの頭らへんにある二つの三角は、どうみてもヘッドセットじゃないわよね?

明日、じっくり追及してあげましょ、ふふふふ。

プレゼントの山を眺めながら布団の中でこうして日記を書いていると、どうしても頬がニヤけてしまう。

ニヤけついでに隣の布団へ声をかけた。

「ねえ、シンジからのプレゼントはー?」

「え、え〜? ・・・心のこもった料理じゃ、ダメ?」

「だ・め」

というわけで、お楽しみはこれからだー♪














12月7日


本日は、とても珍しい来客が三人。

日向さん、青葉さん、伊吹さん。

「来よう来ようと思ってたんだけど、なかなか忙しくてね・・・・」

代表して日向さんの弁。

確かにみんな出世して忙しくなり、時間もままならなくなったのだろう。

でも、あたしの見たところ、司令を差し置いてこれなかったのが正しい理由だと思う。

シンジがお茶とお菓子を振る舞い、あたしは伊吹さんと子供の相手。

「昔みたいにマヤでいいわよ」

ミコトをあやしながらマヤが言う。

そして、そっとあたしだけに耳打ちしてくれた。

青葉さんと籍を入れること。そして、お腹にはもう子供がいること。

結婚式は挙げないこと・・・・・・。

「だから、今度はアスカに色々教えてもらわなきゃね。よろしく先輩」

ぺこりと頭を下げられた。

考えてみればマヤも30半ばなのよね。

それでいて、まだまだ仕草も笑顔も可愛いって人は本当に珍しい。

あたしもこんな風に歳をとりたいものだ。

3時間くらい色々な話をして三人は帰っていった。

帰りしなにシンジは三人のクリスマスパーティへの出席の約束を取り付けることに成功。

今年のクリスマスは賑やかになりそう。














12月10日


冬の日本の風物詩、こたつを出す。

セカンドインパクト後の日本では無用の長物と化していたらしいけど、四季が戻ってからは飛ぶように売れているらしい。

確かに、こたつに足を突っ込んでみかんを食べるのはこたえられない。

子供たちも大のお気に入りだ。

ただ、隠れんぼごっごに利用するのは勘弁して欲しい。

以前、気づかず足を突っ込んでアスマを思いっきり蹴飛ばしてしまった。

あのときは泣かれたなあ。

それ以来、一度めくって確かめてから入るようにしてるんだけど、今日はビックリ。

なんと子供たちと一緒にシンジまで隠れていたのだ。

なんでも、こたつの中は『秘密基地』に指定されているらしい。

男の子って、こういう遊び好きよね、ほんと。














12月15日


この時期、おむつ交換をして手を洗ってを繰り返すとすぐ手が荒れてしまう。

わかっているんだけど、ミコトのおむつ交換が終わって手にスキンクリーム塗ったと思ったら、そくリュウジもってのはツライ。

使い捨て手袋とかで保護するって手もあるんだけど、なんか違和感があって嫌なのよね。

素手で触れないと、肌の具合とかカブレとか分かりづらいもの。

シンジも協力してくれるけど、炊事やらなにやらも任せきりにしてるから、あたしに輪をかけて手荒れが酷い様子。

それでも、「乾燥機があるからだいぶラクになったよ」とのこと。

ごめんね、シンジ。子供の手がかからなくなったら、あたしもちゃんと炊事、洗濯するからね。

でも、あたしが料理つくると、子供たちから不評買いそう・・・。














12月17日


今日、ミサトがサトミちゃん(文字にするとなんかややこしい)を連れて遊びにきた。

「こんにちわ」

赤いタータンチェックの毛糸のコートを着たサトミちゃんがぺこりと頭を下げた。

ミサトに似て青みがかった髪の毛に、加持さん譲りのやや垂れ目の可愛い娘だ。

あたしにも娘はいるけれど、ちょっとだけ羨ましくなる。

だって、女の子のほうが絶対服の着せがいあるもの。

ま、それは数年後のお楽しみってことね。

どういうわけか、アスマがあたしに背後に隠れて出てこようとしない。

普段は同じ幼稚園に通っているのに。

いっちょまえに照れくさいのかな? と思ってたけどどうやら違うみたい。

理由はミサトとお茶をなんぞして、しばらくしてから判明した。

子供たちはどうやって遊んでいるのかな、と様子を見にいったところ、どうやらおままごとをしている様子。

しかし、なんとなく雰囲気が違う。

黙ってものかげから様子を観察。

フローリングに正座させられたアスマに背を向けて、サトミちゃんがなにやら料理をしている素振りを見せている。

アスマが身じろぎしようとすると、キッとサトミちゃんが後ろを向く。すると、しぶしぶアスマはまた正座。

ひたすらそれを繰り返しているのだ。

・・・だるまさんが転んだの一種なのだろうか。

分からないのでフランクに訊ねてみた。

「ねえ、サトミちゃん? それ、なんて遊び?」

サトミちゃんはにっこりして、

「『かえりがおそくなっておかあさんにせいざさせられてゆるしてもらえないおとうさんごっこ』だよ♪」

「・・・・で、どうすると終わりなわけ?」

好奇心より義務感に襲われてあたしは更に訊ねる。

「おかあさんがうしろみないうちにチューすると、かちなんだよ、えへへ」

そういって、にぱっとサトミちゃんは笑った。

「へ〜、そうなんだ。でも、そういう遊びは、もっと大きくなってからしたほうがいいわよ?」

「?」

きょとんとするサトミちゃん。構わずあたしはアスマにいう。

「ほら、お祖父ちゃんからもらったゲームがあったでしょ? あれででも遊びなさい」

「うん、わかった!!」

元気いっぱいのアスマの返事。そりゃあこの歳であんな昼メロな遊びに付き合わされるのはイヤだろう。

二人が司令のプレゼントしてくれたゲーム『お遍路バトル・幼児版』で遊び始めたのを確認してその場を離れる。

次にあたしがすることは決まっていた。

リビングで、優雅な動作で勝手に紅茶にブランデー(しかも我が家の!!)を垂らしている保護者に大声でいう。

「ミサト!! あんた、子供に一体どんな夫婦関係見せてんのよっ!?」














12月20日


シンジもアスマもお休みに突入。

そんなわけで、ミコトたちを見てもらってあたしが料理を作ってみることにした。

メニューはサラダスティック、キャベツとベーコンのスープ、各種ソーセージの盛り合わせ。

みんな美味しく食べましたとさ。

・・・比較的、比較的簡単にできるものばかりだけど、手抜きじゃないわよね?














12月22日


リュウジはよちよち歩きながら健脚だと思う。

アスマのハイハイの速さにも閉口したが、リュウジの歩き方も相当速い。

以前のマンションに比べ今の家は広さが違うから、速さに磨きがかかったみたい。

だだだっ!!と走って来たかと思うと、何かにぶつかりそうになる寸前で「だー!!」と叫んでピタリと止まる。

最初は危ない危ないと後を追いかけていたシンジも、最近では苦笑して眺めるだけになった。

にしても、本日のは傑作。

走ってきて、お座敷の段差につまずき、あっと思ったときには前方にコロコロ回転して、綺麗に開脚停止。

あたしたちがビックリして、そして安堵して息をつく中、本人は一人きょとんとしている。

悔しそうにしていたのがアスマ。どうやら対抗意識を燃やしたらしい。

真似して走って段差にけっつまずき、こたつの側に座っていたあたしのスカートの中に突撃してくれた。

本日のオシオキ。

釣り天井固め式脇くすぐりの刑。













12月24日


本日は、言わずとしれたクリスマス・イブ。

シンジは先日からねじりはちまきでご馳走作りに大奮闘。

ローストチキン、ローストビーフ、クリームシチューにミートパイ。

手製サンドイッチ、山盛りのサラダにフルーツ、オードブル。

ケーキだってでっかいでっかい手作りだ。

あたしも手伝おうと思ったけど、テイチョウに断られたので、子供たちとチマチマクッキーの生地作りをする。

お昼からはレイやらヒカリやらも交えてリビングの飾り付け。

ミサトがもう出来上がっていて、手伝うより散らかすほうが多くて迷惑千万。

ぞくぞくやってくる来客を数えてみる。

加持夫妻。

渚夫妻。

ヒカリ。

鈴原。

相田。

青葉夫妻(はまだちょっと早いかな?)。

日向さん。

これにそれぞれの子供たちにあたしたちもカウントすると、なんと17人!!

それでも開放されたキッチンとリビングは余裕十分。

ちなみに、リツコ経由で司令と副司令に連絡はしているんだけれど、こちらは欠席。

まあ、一緒に騒いだりくつろげるタイプじゃないけどね、司令は。

夕方6時ぴったりにパーティは開始。

クラッカーをバンバン鳴らしてシャンペンも抜く。

去年はミコトがお腹にいてお酒は厳禁だったので、今年は大奮発してドンペリだ。

と思ったら、鈴原のバカが一気飲みしようとしてたので、とりあえずフライパンで殴っておく。

いつも飲んでいるメンバーだから盛り上がるのに時間はいらない。

初参加の日向さんたちも知らない間柄じゃないから急速にうち解けていく。

気心の知れた面子で騒ぐのは本当に楽しい。

今回、意外な特技を披露したのが相田だ。

ホームバーに陣取ったかと思うと、鮮やかな手際で次々とカクテルを作っていく。

「バイトの成果さ」

と片目をつぶって、あたしにスペシャルカクテルを作ってくれた。

青いグラディエーションのカクテルの上に、チェリーがちょこんと乗っているやつ。

出来たカクテルをお盆に乗せて、キビキビと運ぶのが渚家の旦那のほう。

なんともずいぶんとサマになっている。

シンジにホストを務めてもらい、あたしはお酒をチビチビ飲んで子供たちにご馳走を食べさせるのに忙しい。

「しんしくん、ろれろみふぇっしょ〜?」

もはや意味不明の発語しかしないミサト。安酒ばかり飲み過ぎたものの末路だ。

対して、ホームバーのストゥールに座り、平然と飲み続けるレイの表情は変わらない。

相田にひたすらテキーラを注文してるんだけど、もう何杯目だろう?

鈴原は青葉さんのギターの演奏に合わせて裸踊りを始めてしまった。

ヒカリは耳まで真っ赤になってケラケラ笑っている。完全に酔っているみたいだから、これで誰も止める人はいない。

その時、耳が裂けるようなブザーの音が屋敷中に鳴り響いた。

『何者カガ屋敷ニ侵入シマシタ!! 何者カガ屋敷ニ侵入シマシタ!!』

みんなが顔を見合わせ、次の瞬間シンジが廊下に飛び出す。

その背中にあたしは飛びついて、無理矢理引き倒した。

「・・・いた〜。何するんだよ、アスカ?」

「それはこっちのセリフよ!! そんな無防備に出てってどうする気? 相手が強盗だったらどうするのよ!!?」

「でも・・・」

「いいからっ!!」

警察でも呼ばなきゃ、と叫ぼうとしたとき、機械の声が被さってきた。

『・・・侵入者ノ無力化ニ成功シマシタ』

これがリツコのいっていた防衛機構なのかしら?

結局、ナルシスフォモを盾に廊下を進む。

「・・・なんで僕が先頭なんだい?」

「あんたは殺しても死なないでしょ!?」

そして、玄関ホールで、“それ”を発見したのだ。

赤い衣装を着た不審人物を見たシンジの第一声。

「父さん!?」

なんか分かんない白い粉をふりかけられ、細い網に絡め取られて空中に浮いている人物は呻くようにいった。

「むう・・・、私はサンタだ」

・・・どこの世界にサングラスをかけたサンタクロースがいるんだろう。

男手総出で司令をネットから降ろす。

みんな笑いをこらえる顔して必死だった。

「・・・こほん」

自由になった司令、もとい粉まみれのサンタは咳払いをし、目を丸くしている子供たちに向き直る。
 
「よよよよよい子のみんなに、クリスマスプレゼントを持ってきてあげたぞぅ・・・・」

みんなの注目する中、ドモりながらそう言ってのけたのはむしろアッパレだった。

呆気にとられる子供たちに、バカデカイ包装紙の塊を渡すと、顔を伏せくるりと背を向ける。

そのままソソクサと玄関のドアに手をかける。

ドアを閉める寸前、「メリークリスマス・・・」と蚊の鳴くような声が聞こえた。

真っ先に我に返ったのも子供たちだった。

身体より大きなプレゼントを放り出し、玄関のドアを開けて外へ飛び出す。

「ありがとう、サンタさ〜ん!!」

出るなり叫ぶアスマだったが、後を追って出てきたあたしたちもビックリしてしまった。

夜空に、ソリに乗った光るサンタクロースが駆け上っていく。

後になって冷静に考えてみれば、イルミネーション技術かなにかだろう。

でも子供たちにとってはすこぶる感動的だったらしい。

あたしも一緒になにか感動してしまった。

その後、家の中で飲み直し。

でも、誰も司令の話で笑おうとしなかったのは印象的だった。

ぐでんぐでんの酔っぱらいたちを客室へ運搬、他のお客たちも全員我が家へお泊まり。

ようやくシンジと二人きりになれたのは2時も廻ったころ。

あたしはミコトのおっぱいとおしめ交換を済ませ、シンジは料理の皿を全自動洗浄機に放り込んだばかり。

「・・・お風呂へ行こうか?」

二人だけで浴室へと向かう。

静かで広い浴室で、久しぶりの夫婦水入らず。

「良かったわね・・・」

あたしがシンジの髪を洗ってあげながらいうと、涙っぽい声が返ってきた。

「うん・・・」

言葉を重ねなくても、シンジの言いたいこと、気持ちが分かる。

なんとなく胸が熱くなって背中から抱きついてやった。

ついで久々に濃厚なチューでもしようかと思ったら、湯船から声が聞こえたのだ。

「風呂はいいねぇ〜」

そりゃ固まったわよ、思いっきり。

「・・・お熱いわね」

と、これはその妻のほう。

「なななな、なんであんたたちがここにいるのよ!?」

「そんなこと言われても、先に入ってたのは僕たちの方だし・・・・」

「碇くん、一緒に入りましょ・・・」

モテまくるシンジの首を引っ張って浴室を出る。

まったく、せっかくの気分が台無しだ。

服を着ながらふと気づいた。

もしかして、邪魔者はあたしたちだったのかもしれない。

仕方なく、シンジの手を引っ張って二階へ行ってベランダへ。

少し寒いけど、星がよく見える。

ぴったり寄り添ってえへへと顔を見上げれば、今度は隣からミサトの声。

「あらー? お邪魔だったかしら・・・?」

気まずそうにミサトは手を振っていた。

ガロン単位で飲んで酔いつぶれたと思ったら、ケロリと今度はビール片手に星空見物ってわけ? 

本当に酒に関しては化け物だわ。

・・・・結局、あたしたちが落ち着けるのは子供たちの側ってことかしら。

巡り巡って戻ってきたのは現在主寝室にしているリビング脇の和室。

プレゼントを抱きかかえるようにして無邪気に眠る子供たちの前ではさすがにイカガワシイ気分にはなれない。

とかなんとかしてるうちに、シンジも眠ってしまった。

しょうがない、先日から働きっぱなしだもんね。

ホッペタに軽くキスをしてあたしも寝ることにした。

お疲れ様、シンジ・・・。














12月25日


世間的にも本日が正統なクリスマスなんだろうけど、なんかだらだらと過ごす。

食事は昨日の残りものを食べて、午後から飾りなどの後片づけ。

子供たちはプレゼントを開けて朝から遊び転げている。

さっきから廊下でガラガラうるさいのは、アスマがもらった足で漕ぐタイプの車のオモチャ。

ベンツ製ってのは凄いゼイタク。

あと、司令の顔を模した黒ヒゲ危機一髪って悪趣味の一言に尽きる。

来年のクリスマスプレゼントは、ぜひ希望を出すようにしよう。














12月28日


ようやくクリスマス気分が抜けたと思ったら、今度は年越しだ。

まったくもって日本は忙しい。

でも、このセカセカした雰囲気も嫌いじゃない。

余裕があるからそう思えるのかもしれないけどね。

お昼過ぎ、散歩がてら街へと繰り出す。

商店街ではお正月用品が山のように売られていた。

日本に来て長いけれども、未だに意味の分からないものが多い。

中でも、あの熊手ってやつ?

孫の手のオバケみたいな。

なんであんなものをありがたがるのかしら?

それでも、せっかくだから小さなのを買ってみた。

以前のマンションじゃ、せいぜい鏡モチくらいしか買ったことがなかったし。

お店のおじさんが、おまけだって一回り大きいのをくれた。ラッキー。

さっそく家に帰ってシンジに見せたら、なんとも言えない表情をしてくれた。

その視線の先を追うと、広い玄関の左手の壁一面にある、あたしの背丈ほどある巨大な熊手。

「さっき、父さんが来てね・・・」

しどろもどろに説明するシンジ。

別にシンジが悪いわけじゃないんだけど。

ただ、あたしの買ってきた熊手は無駄になっちゃったかなあ。

と思ってたら、アスマが物欲しそうにしてたからあげちゃった。

遊び道具ではないんだろうけど、何が楽しいのかシンジから背中に括り付けてもらってハシャギまわっている。

しかも、そのままシンジと一緒に散歩にいってしまった。

しばらくして帰ってきたアスマの背中を見て驚く。

その熊手の先端に、山のようなお菓子をぶら下げていたからだ。

ご近所の人や、行き交った人からもらったという。

後でシンジから教えてもらったんだけど、この熊手、もともと幸せをかき集めるという意味があるんだそうな。

さっそくアスマには幸せが来たってことかな?

ちなみに、あたしもより実用的に使ってみた。

逃げるアスマの首筋に引っかけるのに丁度いいのだ、これは。














12月31日


今年も今日でおしまい。

日中、各部屋の空気を入れ換え、軽く掃除機もかけた。

夕方、シンジがお餅とお蕎麦を買って帰ってくる。

さすがにシンジも蕎麦は打てないみたい。

夕食を軽く済ませ、お風呂も早めにみんなで入り、のんびりと過ごした。

お蕎麦を食べ終え、除夜の鐘を聞きながら、今、この日記を書いている。

こたつの脇に並べた布団に眠る子供たちを眺め、なんともいえない幸せな気分に浸る。

去年はお腹にミコトを抱えての年越しだった。

新しい子供は男の子かな、女の子かな? なんてシンジと話してたものだ。

あのときも期待と充実感はあったが、産んでしまって、その子供の寝顔を眺める充足感もまたこたえられない。

「初詣はどうしよう?」

しみじみ幸せを噛みしめていると、お代わりのみかんをもってシンジが戻ってきた。

「う〜ん、お昼になってからゆっくりでいいんじゃない?」

近場に小さな神社があるんだけど、さすがに夜中は混みまくる。

子供たちも連れていくとなると危険だ。

シンジも頷いてあたしの隣に腰を降ろす。

なんとなく嬉しくなって、ぴったりと寄り添ってみた。

「ど、どうしたの・・・?」

頬を赤くするのが可愛い。

と、丁度TVが歳が明けたことを告げた。

「今年もよろしくね、シンジ」

挨拶代わりにキスをして、筆を置くことにした。





















三只さんから碇アスカの育児日記12月編をいただきました。

掲載遅れてもうしわけない(汗)

それにしても……年末はクリスマスとか、イベントがたくさんあって楽しいですね(笑)

年始もきっと楽しいことでしょうね。

みなさん素敵なお話を書いてくださった三只さんにぜひ感想メールをお願いします。

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