「弐拾」少女王国の崩壊








わたしはどうしたらいいの?

小さい頃にママを亡くし、一人で生きると決めた私。でも、何かの支えを求めていた気がする。
そして支えになりそうなものと、自分を両立させることができそうな所を見つけた気がした・・・・・

わたしは人に認めて欲しかった。何のために??
とにかくそうじゃなきゃ我慢できなかったわけで、常に自分を必要以上に強く見せていた。
いや、見せなければならないと思い込んでいた。

そして、その場を求めて「バトルフィールド」である日本に来た。別にわたしが日本人のクウォーターを持っていることがその理由ではなかったはず。
でも、血のなせる業か意外に違和感はなかった。




そこでわたしは運命の出会いをしたのかも知れない。
一見わたしより冴えない男の子。
でも、彼はわたしが今まで必死になって追いかけてきた、強い自分、自分だけしかできないこと、をすでに持っていたりする。
初めは「ホントにヘンな奴」だと思った。でも、そのすぐ後に彼と一緒に戦った時、
「コイツはライバルであり仲間なんだ」と思えた。


彼には嫌悪感は初めから持たなかった。
自分が優れているという事を彼は自分からひけらかすことはなかったし、今まで敵を作ってきたわたしに敵対するようなことはなかったもの。


わたしは次の戦闘で負けた。悔しかった。そしてそのあとの作戦には従わなくてはならない状況になっていた。
正直言って初めは嫌だった。
同い年の、嫌悪感こそないものの「子供」と同居して、彼と同じレベルで行動しなければならないなんてわたしのプライドが許さなかった。
わたしは意のままに振舞ってみた。
当然、ここまで訓練量の絶対的に少ないはずの彼は付いて来れなかった。


でも、この作戦の趣旨をわたしが分かっていなかっただけだった。
赤い眼のわたしのライバルは彼に完全に合わせてみせた。
そして、それこそが今回の作戦の趣旨であることを悟った時、わたしは自己嫌悪と悔しさで外に飛び出した。


今までさんざん罵倒し、侮辱してきた彼が来てくれた時、わたしは使命感が上回っていたけれども嬉しいと思った。
わたしは少し素直になれた気がした。そして、残された期日にわたしは全力を尽くし、彼にも叱咤激励を始めた。
そう、そのとき彼と対等のラインに付く事をわたしは受け入れた。
そして、それが「できる!」と思った瞬間、わたしも無条件に喜んで彼に抱きついた。
・・・単に彼を張ってしまったのは女の子としての羞恥心だったと思う。


その夜、わたしの持っていた、隠したかった弱さが、彼に、全くの無意識のまま吐露されてしまった。
これはわたしにとって本当に二重の意味で恥ずかしいことだった。
自分の弱さを曝け出すこと、そしてわたしのまだ多少なりとも保ってきた優越感を完全に壊すこと、
その二つをわたしは自らしてしまった・・・


彼はわたしを受け止めてくれたらしい。わたしは・・・まだそれを全て隠したかったが、もうそれはできなくなりかけていた。
人の優しさに触れてしまった・・・ような気がした。
その朝はまだ嫌悪感もあった。
でも、せめてもの感謝・・・・・感謝?こんな気持ちは何年も素直にしていなかった。
でも、その気持ちを込めて朝食を作った。ぜんぜんしたことなかったのに・・・・・


戦闘自体は簡単に片付いた。単に覚えている通りに動けば良かったし、彼を信頼して自分のやることをすれば良かったから・・・
・・・信頼?全くの他人を信頼するなんてこれってもしかしたら初めてだったかも知れない。



戦闘のあと、わたしは気になったことをいくつか彼に尋ねてみた。
まずはわたしの肉体を弄んだりしていないかどうか?これはわたしが起きた時の態勢からするとかなり気になる事だった。
でも、そこで彼はわたしをわからないままに受け入れていたことを打ち明けた。



わたしは更に彼に心を開いた。いや、わたしはずるい女だったから、単に自覚していないだけでドアを一つ開いただけだったのかも知れない。
でも、わたしは彼を改めて信頼した。

彼には悪態をつきつつ、わたしの気持ちは嘘をつけなくなっていた。
わたしは彼との同居を自ら望んだ。それは居心地が良かったから。
今までとは全く違った生活になってしまったけれど、彼にはわたしの弱さを垣間見せてもいいと判断したから。
いつのまにか、わたしから彼に気付かれないように親愛のサインを送るようになっていた。
それに、保護者も後押ししてくれていたのがわかっていた。


ただ、彼の気持ちは完全にはわからなかった。このころからわたしは彼のわたしに対する気持ちを意識していた。
でも、まだそれはわたしの強さを害するものではなかった。だから、彼をわたしは挑発し始めた。

そう、わたしの初恋の人はわたしの手の届かない場所に行きつつあり、わたしでは元々手が届かない事がわかってきた。
それはわたしが齢相応の自分を持ち始めたことによるのかも知れない。憧れの人ではあるんだけど・・・・・



わたしの初めての単独での作戦はわたしにとって度胸を据え、責任感を持ちさえすれば怖くはなかった。
でも、わたしは戦いの中で傷を負い、命の危険に晒された。
そのときは情けなかった。残念だったけど、呆然としてそれを受け入れるしかなかった。
泣きわめいても良かったが・・・寂しさを感じた・・・・・

誰かが助けてくれたとき、わたしは確かに泣いていた。それこそ身体を張ってわたしを繋ぎとめてくれた。
・・・嬉し泣きなんて物心ついてから初めてだった。

彼は自らを犠牲にしてまでわたしを助けてくれた。もうそれだけでわたしは彼の気持ちを疑わなくなった。

そして、その夜にわたしは彼を「わたしを求めている異性」として捉えた。
彼の気持ちを受け入れ、わたしも彼にわたしを受け入れて欲しいと思った。



それからしばらく、わたし達は幸せだった。わたしもその幸せを受け入れた。
いや、楽しいと思いながらもわたしは彼にまだ扉を残していた。それはわたしの心の中にある扉だった。
一生、それを隠し通して棺に入るまで持って行けたのかも知れないが・・・

わたし達を取り巻く環境は、そのわたし達の進展を、そして心の成長を待ってはくれなかったみたいだった。
それと・・・・・わたしは焦っていたのかも知れなかった。

わたしはそして彼のもとで女になることを選んだ。
いや、単に大人の女性になる事を求めていたのか、いずれにしても彼なら良いんじゃないかと思っていた。
でも、それはわたしを壊して行くきっかけだった。


わたしは誰の力も借りず自分の力だけで大人になる事を望んでいた。これはわたしのトラウマからくる弱さだったのかも知れない。





わたしの家庭では、父はわたしをあまり可愛がりはしていなかったようだ。
家に帰らない日も続いていたし、わたしに格段の愛情を注いでくれたという記憶はない。
父がいるときにどうして家にいないのか訊いたことがある。
仕事が忙しいと彼は言っていたが、わたしは幼いながらも気が付いていた。

父と母の関係は破綻しかけていたようだった。

母は忙しいながらも時間があれば、わたしに愛情を注いでくれた。
技術的にはとにかくとして、少しでも台所に立って目玉焼きとかプリンを作ることができるのはそのおかげだと思う。
でも、そこまでしかできるようにはならなかった。
母はそのほかにも女の子としてのわたしを作ってくれた。そんな母がわたしは大好きだった。
いや、父親も家庭によりつかない状態ではわたしにとって、母がすべてだと思ってもらっても良かった存在だった。
でも、あまりにもその時間は短すぎたと思う。

母が実験の事故により、母じゃなくなって帰ってきた。姿は母だったが母ではなかった。
彼女はわたしと人形を混同していた。いや、もはや母としての、人としてではなかった。

母は家庭の破綻を捉え「パパはママが嫌いになった」と言っていた。
父は積極的な介護を放棄していた。そして私の父親としての義務まで軽く考えていたのかも知れない。
そこにあった母の姿は、一生の伴侶だったはずのわたしの父に裏切られた一人の女だった。
父のその態度はわたしには許されないものだった。
だから、わたしは母親になって子を生み、家庭を作ることを嫌悪した。
その入口のドアも閉めることにした。

異性に対してだけではない。他人、同性に対しても無条件にわたしは心を開いて助けてもらうなど考えられなくなった。
人は裏切るものなんだということを間近で見てしまったから、そして、ある意味わたしは捨てられたのだから・・・

「わたしはひとりで生きるの。だから強くならなきゃいけないの。」


そして精神が冒された彼女はわたしと人形をずっと混同していた。
父に捨てられたという悲観からわたしだと思い込んでいた人形の首を絞めて何度も殺していた。

今までわたしのすべてだったと言える母の変貌は、わたしを大きく変えた。
わたしは今まで愛情を注いでくれた母親が、その自らの死とわたしの死によって戻ってくれるなら、死んでも良いと思ったこともある。
あの母が抱いていた人形への愛情がわたしに戻って来てくれるなら・・・・・その歪んだ愛情を受け止めてもいいと思った。

でも、わたしは以前の愛情を注いでくれた母親なら、わたしを殺すはずがないことを知っていた。
だから、そのときの母を憎んでもいた。そして、わたしには母が必要だった。
わたしを無条件に愛してくれる母を求めていた。
母にもっと甘えたかったし、もっと色んなことを教えて欲しかった。
・・・いや、傍にいて愛情を注いでくれればそれで良かった。叶わぬ望みだったけど・・・・・

だからこそ人形をわたしだと思い込み愛情を注いでいる、そして自分の所有物として殺していたママを許せなかった。
そのときのママがわたしにとってのママになって今に至ったのかも知れない。


「わたしはママの人形じゃない。自分で考え、自分で生きるの」

わたしは母が目指したものに、幼くして触れることができる地位を手に入れた。
母の目標を親子で叶えることができるようになった。
ここまでの努力は、人形に奪われた母の愛情を取り戻すため・・・それが支えだった。

でも、それを報告する日、わたしは殺された人形と、笑顔のまま息をしなくなって、不自然にぶらさがっていた母を見てしまった。
形としての母、一縷の希望だった母からの一方的な別れだった。

わたしはそんな母を憎んだ。女として生きることも嫌になった。
そして心を開けなくなった。



でも、女としてのわたしを否定しきれず、大人の女としての入口を開けたわたし・・・・・
そのジレンマがわたしを苛む。

そして心のよりどころだったエヴァパイロットとしてのわたしは壊れかけて行った。
色々なものを犠牲にして掴んだわたしのプライド・・・
それがエヴァパイロットとしてのわたしだった。


でも、その不安定になってしまったわたしの精神、そして行為への失望・・・
これはわたしが自分は大人の女としてこういうことを経験しても当然と思っていた。
けれども、自分は大人の振りをしていたが、やっぱり経験がないお子様だったってことを思い知らされただけだったかも知れない。
自然な恋人同士になり回数を重ねなければ大人の悦楽を得られないとは知識ではわかっていた。

いや、わたしは愛した彼を受け入れ切れていなかっただけかも知れない。

彼がまた積極的にわたしを優しく求めてくるのであれば受け入れても良かった。
わたしは彼を愛していたし、彼もわたしを愛しているのを知っていたから・・・
でも、彼はそのあと求めて来ることはなかった。

戦争の状況も愛を育むような余裕があるものではなかった。
戦況が厳しいものへと変化していたし、精神的な負担も大きくなっていったから・・・・・


彼が戻って来れないような絶望的な状況になった時には折角、手に入れたと思ったわたしの心の拠り所が消えてしまったようだった。

そのわたしの心の行き場所の可能性だった彼も、わたしの他にも彼は命を懸けて守った人がいたわけで、完全に信じることができなくなった気がした。
でも、そのときの彼はわたしを求めていたし、わたしも受け入れることができた。




その次の戦闘ではわたし達はさらに精神的に追い込まれた。
彼も戦争の中で悩み、引きこもってしまった。
彼が精神的なダメージを受けてまで任務を遂行してくれたが、そのときのわたしは何の役にも立ってなかった。
戦闘に負けさっさと任務を放棄して逃げてしまった。

あの時・・・覆いかぶさってきた使徒の姿に、男に無理やり接触される恐怖を重ねていた。
のしかかられ無理やり行為を強要されるような恐怖を抱いた。だから損傷が大きくはなかったがすぐに脱出した。
そう、わたしは逃げたのだった。

何もしなかったわたしは彼を詰問してしまった。
本当は自分もやらなきゃならなかったのに、彼にそれを押しつけてしまったのに・・・彼も辛いのをわかっていたはずなのに・・・・・

わたしは後悔した。
彼はもう、わたしの慰めすらも拒否した。
わたしはそのとき、彼がわたしを受け入れてくれるなら、彼に抱かれても良かった。いや、わたし自身もそうして欲しかった。
でも、彼はそんなわたしを拒絶した。それにわたしも臆病だったからそれ以上踏み込めなかった。



さらに次の戦闘ではわたしは何もできずにまた完敗した。
フィードバックの痛みではなく心が痛い・・・
わたしに残された唯一の拠り所も壊されて行くのだから・・・
また、最終的にはわたしを拒絶したアイツが任務を果たした。

彼はまた失われた人になってしまった。戻って来れるかわからない状況だった。
わたしは努めて冷静を装った。できるだけ彼のことを考えないように、忘れるようにしようとした。
少なくとも自分以外の人間の前では・・・・・

一人になった時・・・後悔と寂しさが襲って来るとわたしは、まだ耐えられなかった。
わたしは一人で泣く夜を何度も過ごした。どうしていいかもわからず、涙が溢れて、嗚咽が止まらなかった。

ただ「もう一度会いたい・・・」

それでも素直に認められなかった。
彼と決別しなければわたしがどんどん弱くなっていくのがわかったから・・・だからいなくなって清々したと思い込むようにした。
そして何日かすると自分で洗脳してしまったようになり、彼のいない風景にも慣れたはずだった。

彼が戻って来て、病院のベッド眠っている時、当然様子を見に行った。
ファーストと一緒に出かけた。病室で彼は安らかに眠っていた。
彼女は躊躇なくベッドの近くの椅子に腰かけると自然な様子で、わたしを一瞥もせずに彼の髪を優しく撫でた。
わたしはそれを見て複雑な感情を持った。

彼に、本当は一番先に触れたいのはわたしなのに・・・これって嫉妬?
彼に素直に優しくしている彼女へはっきりと嫉妬している。
この目の前の赤い眼の女がなんでコイツに優しく触っているのよ?
それも心なしかコイツもより安らかな表情になってる気がする・・・・・
もうわたしはどうでもいいのかな・・・・・

彼女は満足したのか無言のまま立ち上がり、病室を後にした。そこにはわたしと彼の二人だけが残された。
わたしはさっきまでファーストが腰かけていた椅子に座って、物言わぬ彼を見つめていた。
見つめているうちにわたしは泣き始めてしまった。わたしの涙が白いシーツをポツポツと濡らしていく。
いつの間にかわたしは彼の手を取り、彼の手に涙を流していた。

「この涙が彼に届いて欲しい・・・・・そして目を開けて欲しい。」
そう思っていた。

泣きながら、わたしは童話の白雪姫を思い出した。キスで目覚めてくれれば・・・
今まで何回もしてきたキスだけど・・・こんなギクシャクした関係になってからは初めてのキス。
特別な意味のキスだったら彼は目覚めるかも・・・・・

わたしは彼に静かに口づけた。長い時間、唇を重ねていた。

彼はそのまま眠っていた。わたしは彼が目覚めなかったことよりも自分のばからしい発想に苦笑して部屋を出た。
その日の深夜に彼の意識が戻った旨の連絡があった。



翌日は彼も交えて、彼は病院から直接でシンクロテストだった。彼と会話もする間がなくテストは始まった。
最近のわたしの結果は思わしくない状態が続いていたし、月のものが始まったせいか精神的にも安定していなかった。
そのせいでわたしだけ帰りが少し遅くなった。

電車のホームで彼と、あのファーストが楽しそうに談笑していた。
本当に楽しそうな顔だった。わたし以外の異性にあんな顔見せたことなかったのに・・・

「彼の心に届いていたのはアイツの気持ちだったってことね・・・・・」

「女としても・・・アタシ、負けたんだ・・・・・」

わたしはまた彼に心を開けなくなった。わたしから彼への接触を避けるようにしていった。




わたしのシンクロの数値はますます低下していった。
エヴァに乗る事しか価値のない自分なのに、それすらも思い通りにいかない。
「わたしは単なるお荷物ってわけよね・・・・・」
「いや、まだ終わるわけには行かないわよっ!わたしは強いはずなの。誰にも負けるわけには行かないのよ!」


「だから、わたしを見て!」

そしてわたしはさらに壊れて行ったと思う。
女としての母への嫌悪、自分が母となるために扉を開けてしまった事への嫌悪・・・・・
そして女性として男性に比べて戦う事に肉体的な不利を持ってしまっていることへの嫌悪・・・・・
どうしていいかわからない自分への嫌悪、これを誰にも伝えることができない嫌悪・・・・・

とにかくこんな自分が今は大嫌い。

「今はわたしをひとりにして・・・・・」

「わたしは何をしたいの?どうなりたいの?」



エヴァにも心を開けない自分の出来上がりだった。エヴァパイロットの中でも完全に落ちこぼれになっていく。

「わたしの行き場所はない・・・・・」

「エヴァパイロットとしても失格とはね・・・・・」

なにもできない、なにもない自分は、本当に大嫌い・・・・・



「そしてわたしは捨てられるのね・・・・・」

母に捨てられ、残った父にも捨てられ、継母にも捨てられ、作戦部長のミサトにも捨てられ、リツコにも捨てられ、ネルフからも捨てられ・・・・・
そして・・・・・アイツだって・・・・・
わたしはいない方がいいのかも知れない。

「もっと素直になれたら・・・・・もしかしたら・・・・・」

もう今更遅いし、誰にも伝えられないし、誰にも受け止めてもらえない。





「この戦いに負けたらエヴァを降ろされる・・・負けられないのよ・・・アスカ」

こんな惨めな、隠したかった自分の弱さを・・・
何で使徒なんかが、奥にしまって置きたかったものを全部無理やり引きずり出してわたしに再確認させてくれるのよ・・・・・
どうしてわざわざえぐり出してわたしに突き付けるのよ・・・・・

唯一、まだ信じていた彼も結局、助けてはくれなかった。
彼だったら、素直に受け入れられるくらいまで、そのときのわたしは追い込まれていたのに・・・・・

何で来てくれなかったの?
もうあなたも・・・パパがママを捨てたみたいにわたしを見てくれないのね。

あのときみたいにたすけてよぉ!!わたしはこんなに辛いのに・・・・・

たすけてよぉ!たすけてよぉ!たすけてよぉ!・・・・・


それに何で、あの大嫌いな人形女、他人の言いなりの飼い馴らされている、自分の感情も押し殺してるのか、もともとないのか、そんな人形に助けられるのよ?
そして、そいつはわたしの大切だったものまで奪いかけているし、溝を更に深くしているようなあの女に・・・・・
彼女の助けなんか、ここで死んだとしても借りたくなかったわよ・・・・・
でも、すべての面において負けたわたしは一体なんなのよ・・・・・
情けなくて、今の自分が一番、大嫌い・・・・・



誰にも望まれないわたし・・・・・絆だと思ったものすら信じられないわたし・・・・・

「もう、わたしの価値なんかどこにもないわ・・・・・」


自分が全てを注いできたエヴァにも見放されたわたしはもう自分の存在価値などないに等しかった。
それ以外に何も価値を見出せなかった、いや、それ以外のものを認めようとして認められなかった自分がもう嫌になった・・・・・

「もう、疲れたわ・・・・・」

初恋の人まで・・・いなくなってしまうなんて。こんな時代、もっとゆるやかに流れてくれたのなら・・・・・



このまま自分が消えて欲しかった。死にたかったのとは少し違う。単に自分を消し去って欲しかった。
自分で命を絶つのは・・・ママが最後に行ってしまったラストイグジットみたいで嫌だっただけ。結果は同じなのかも知れないけど・・・・・

「だけど、わたしを捨てないで・・・・・」







(筋肉少女帯です。この曲は楽器のみで普段のイメージとは異なります。だまされたと思って聞いてみてください。このアスカの絶望にはかなり合ってます。)






















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