「四」 (Boy meets girl )

written by オサーン






ミサトさんがうれしそうに、からかうような笑顔で話しかけてくる。その様子は保護者というより年上のお姉さんだ。
正直、彼女は美人だ。かわいいところも持ち合わせ、性格も明るく非の打ちどころはない。
いくつかの点を除けば・・・・・お嫁さん候補にも十分なり得る・・・・・
ん?でも、家事が全滅なのはまずいよなぁ・・・・・

「シンちゃーん♪セカンドチルドレンがドイツから来るのよ♪仲良くしてあげてね♪」

写真付きの書類を見せて僕に感想を求める。まるで子供にお見合いを勧める親のような感じである。
僕がミサトさんに返した言葉はしどろもどろだったに違いない。



そう、最高に大事な出会いの一つだろう。彼女は惣流・アスカ・ラングレー・・・・・
最も未来の主人公の近くにいた女性・・・・・
そしてお互いに憎悪し、求めあった、最も深いところまでシンジと見つめ合った彼女・・・・・
また、そこまでに至る過程では心も身体も最も痛めつけられた彼女・・・・・
アスカという固有名詞に合うのは「最も」という形容詞・・・・・

この出会いと彼女との時間の過ごし方は世界を左右するくらいに大事なもの・・・・・

と言うかEOEから・・・はっきり言って・・・・・いいんだよね、アスカ。
最後に生き残ったってのが彼女と僕なわけだし、ハッピーエンドだといいなぁって思ってるんだけど・・・・・
それに原作でもキスまではする予定だし・・・・・


彼女の経歴書を眺める。家族状況がある。大学課程を卒業、数々の特技、そして利発そうで整った顔立ち・・・・・
・・・写真を見つめながら感慨にふける。
横から一際大きいミサトの声
「あらあら、シンちゃんはホの字かなぁ♪」
「アスカは美人だしとってもいいコよん♪」
「シンちゃんも恋に目覚めちゃうかもねー♪」
「彼氏とかはいないと思うわヨン♪」


同居人がビール片手にまくしたてる。多分、僕も意識して顔が赤かったに違いない。
彼女の言葉にも反応しているのかも知れない。
「あら、シンちゃん、耳まで真っ赤よぉ♪」

「到着は一週間後よ♪だからもうチョッチ待ってネン♪」

「ハ、ハイ!」
・・・・・・・・・・・・・・
この感情の昂りはなんだろう・・・・・・・・?



一週間後
「わぁぁ!すごい!本物の国連軍艦隊だ!!」
歓声はケンスケだ。ビデオを回し続けている。横にいるトウジも心なしか興奮している。
ミサトさんの機嫌もいいようだ。
窓の外を眺めながら考え事をしている僕を除いては遠足気分のネルフ御一行様である。

やがてヘリは甲板に着地しそのアイランドに足を踏み出す。
オーバー・ザ・レインボー、国連軍艦隊の誇る最新鋭空母だ。その雄姿は色々なメディアでも取り上げられている。
その今回の任務はエヴァンゲリオン弐号機の護衛任務だった。

降り立つと士官が敬礼をし、上手な日本語で我々をブリッジへと案内してくれた。
馬鹿でかい船、と言うより本当に島みたいだった。こんな所にいるとここが海の上だという事を忘れてしまいそうだ。

ブリッジでは鬚面の艦長と仏頂面の副長が不本意な歓迎をしてくれた。
皮肉たっぷりな歓迎にも冷静に受け流すミサト。ケンスケは相変わらずビデオ片手にはしゃぎ回っている。

歓迎の儀式が終わりに近づいた頃、ピスト(戦闘指揮所)の出入り口に人影が不意に現れる。
「ヨっ!葛城♪」
急におとなしくなるミサト。歓迎の儀式はなし崩し的に終了し、ミサトは何かブツブツ言いながら、彼の案内のもとブリッジを出て甲板に戻る。



夏の眩しい陽光とさわやかな潮風、その先に軍艦の雰囲気に合わない少女の姿があった。
不意に吹いた旋風がトウジの帽子を飛ばす。
トウジは甲板を転がる帽子を無心に追いかけていく。
やがて帽子は少女の靴によって踏まれたままその動きを止める。
ミサトが口を開く。

「紹介するわ。彼女が弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ」
・・・・・・・・
その先にはクリーム色の夏らしいワンピースを身に付け、片手を腰に当て、不敵そうな笑顔で立っている少女。

「弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン。惣流・アスカ・ラングレーよ!」

彼女がはっきりと、自分の存在を誇示するような声で自己紹介を届ける。
その時一陣の風がふわっと吹く。その風はまた、ふわっと彼女のワンピースをまくし上げていった。
彼女のワンピースの中・・・・・白だった・・・・・

途端に彼女が近づいてくる。
「パン!」「パン!」「パン!」三つの音が弾ける。
僕は左の頬に手を当てながら「何、するんだよう!」と言ってみた。

「あら、見物料よ、安いもんでしょ?」とさらっと彼女は言ってみせた。

僕はカチンと来て言い返してやった。
「意外に地味なのはいてるんだね」

「なんですってぇぇ!!」
彼女の顔が怒りで真っ赤になる。

すかさず横にいたトウジも彼女に言い返す。
「そんなもん!・・・・・・・・ワシのだってみせたらぁ!」
ズボンのひもをはずし、ズボンどころかパンツの中まで公開してみせた!!

トウジのは・・・・・僕のより少し大人だった・・・・・

羞恥と怒りで先ほどよりも真っ赤な顔になる彼女。
「キャァァッ!!」という声と共にもう一度「パン!」と音が弾けた。


少し間が合って「サードチルドレンはどこ?」
挑発的な口調で尋ねる。そして足元のトウジを見る。
「この子よ。サードチルドレン、碇シンジ君」

「フン!」と言いながら僕を見据え、彼女が僕に近づいてくる。僕も自然に彼女に近づきミサトさんとの距離が自然にできる。

「よろしく」と相変わらず挑発的な口調で右手を差し出し握手を求めてくる。
僕も右手を差し出して握手に応じる。

「きれいだけど生意気そうな女だな・・・・・」
でも、彼女の手はリアルに温かく、肌触りが良かった。思わずスリスリしたくなる感触。
思わず力を入れて握ってしまう。



「ちょっとぉ、アンタ、いつまで握ってるのよ?」

ここでミサトさんの突っ込みが入る。
「普通は初対面のレディの手をここまで握らないものよ・・・シンちゃん、お気に入り?」


「あ、いや・・・ゴ、ゴメン。なんでだろうね?」と言いながら彼女を見る。
彼女は手を振り払って憤然とした口調で「また後で!」と言いながら踵を返して行った。


やや、間があって、僕らは休憩室に向かう。そのエレベーターは非常に狭く。鮨詰め状態だった。そこに加持さんまで乗っていた。
「グルルルルルル・・・・・」敵を目の前にして加持さんを睨めつけるミサト。
ミサトさんの豊満なバストが僕の頭部を圧迫しているのは御愛敬だ。

休憩室にて席に着き、飲み物が運ばれてくる。僕の向いの席には加持さんが座り、その横にはミサトさんが座っている。
加持さんは僕を見つめながら切り出す。

「君が碇シンジ君か」
「はい」
「葛城と同居してるんだって?」
「ええ、そうですが・・・」

「彼女の寝相、悪いだろ」
「はい」

石化するミサト、後ろでおかしな格好で固まっている3人・・・・・
「ちょ、ちょっとアンタ、何言ってるのよ!!」赤くなってミサトが反駁する。
赤くなっているのは怒りのせいだけではなさそうだ。

ミサトの反撃。
「アンタねぇ・・・・・いくら私が飢えているからって14歳の子供に手ぇ出したりしないわよ」
「ハハハ・・・どうだか・・・気をつけろよ・・・シンジ君♪」
僕も固まってしまった。
ミサトの逆鱗に触れる前に加持さんは退散する。その後を小走りでアスカが追いかけ、腕を絡ませて部屋を出て行った。
複雑な気分、不快な気分を僕は感じる・・・・・

振り返ると、こちらではミサトが「あの野郎!・・・・塩持ってこい!!」などとわめき散らす。
まあ、大人の付き合いってやつなんですよねぇ・・・・・



甲板にて
「よう、サードチルドレンの印象はどうだ?」
「うーん、変な奴。いきなり私の手をぎゅーっと握って。キモチワルイ。」
「それにパッとしないやつだなぁ。なんて」
「そうか、でも彼のシンクロ率はいきなりの実戦で40を軽く越えてるぞ。」
「えー!!嘘!?」
「それにだ・・・・・最近の彼のテストの数値だ。ま、誤差もあるだろうが・・・・・」

加持は数枚の書類をアスカに手渡す。アスカはその数字を目にして、またしても驚愕の表情を見せる。
「えェェ?!・・・・・何これ・・・?すごい・・・・・?」
そこにはアスカの数値を上回る数値の記録も出ていた。彼は日常的に安定してその数値を出しているのだ。
「フッフッフ・・・・・負けないわ・・・・・サードチルドレン・・・・・」
彼女の心に火が点いたらしい。



僕は甲板で潮風に吹かれながら休んでいた。甲板とは言え、ものすごく広い。
そこに吹いてくる潮風は僕の心と身体に元気を与えてくれるようで気持ち良かった。

目をつぶっていると「サードチルドレン!」と誰かに呼ばれていた。
目を開けるとアスカがいた。
「ちょっと用があるの!アタシと一緒に来てちょうだい。」
僕の手を引き半ば強引に案内する。
案内されると、そこは艦隊の中の連絡用のランチ乗り場だった。彼女はパスを見せ担当者と何か話している。
「乗って」と言われるので飛び乗った。


いくつかの扉を彼女のパスで越えるとそこには真っ赤なエヴァンゲリオン弐号機が赤い液体の中に横になっていた。

彼女は高い所に上って、僕を見下ろして言う。
「どう?これがアタシの弐号機よ!」
誇らしげに彼女は弐号機を紹介する。

「弐号機って赤いんだ・・・・・」

「プロトタイプの零号機、テストタイプの初号機、所詮は試作品。」
「アンタなんかに訓練もなしでシンクロしたのがいい例よ。この弐号機は世界初のプロダクションモデル。
この弐号機こそが本物のエヴァンゲリオンなのよ!」
彼女のテンションは高い・・・・・


「アスカさぁん、そこからだと・・・・・見えるよ・・・・・」


数秒の後、彼女は本能的に僕の視線を探り、防御反応をする。
そしてその色白の健康的な顔がすぐに羞恥と怒りで真っ赤に染まる。まるで弐号機そのものだ。
「バカ!!何見てるのよ!アンタ、人の話、聞いてないのっ!!」
上から彼女が叫ぶ・・・その言葉が終るかの内に「ドーン」という音が響く。
すかさずスピーカーから「水中衝撃波」と音声が入る。
真っ赤だった彼女の顔がすぐに冷静な、少し驚きを伴った表情に変わる。
「爆発が近いわ」

甲板に駆け上がると巨大な「何か」が艦隊の中を縦横無尽に泳ぎ回っている。
すごいスピード!どうも反撃は全く効果がないらしい。
人の操る機械などではないことは一目瞭然だった。
それを確認した少女は「チャーンスッ」と横を向き、悪戯っぽい笑顔を見せていた。

やがて彼女は艦内からトランクを持ってきてロックを開けると2着のプラグスーツを取り出して、1着を僕に差出して、着用することを命令した。
僕は甲板ですべての着衣を脱ぎプラグスーツに着替える。彼女は近くの階段の陰で・・・

その女性用プラグスーツはやはり違和感があった。
スイッチを入れてみると、胸のあたりは少しゆるい感じがして、逆に股間は少し締め付ける感じがした。
生憎だったが前の僕はこういう趣味はなかったので性的と言うよりも生理的な違和感を感じていた。
でも・・・・・これで反応したら・・・・・痛いんだろうな・・・・・

連れ合いが遅いようなので様子を見ると
「キャァー!!エッチ!!バカ!!変態!!シンジランナイ!!」と黄色い怒声が響く。

歩いているとやはり股間の感触がおかしくて思わず内股になってしまう。
股間の感触というのもあるが骨盤の形も男女では微妙に違うためプラグスーツもそれを考えて作られているのだろう。

そして共に赤い巨人のもとに向い、準備を始める。

彼女の初陣だ。







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