※この物語はフィクションを基にしたフィクションです。実在の事件ではないので注意してください。
2010年 節分記念LAS SS (ナグナブロ短編作品29作目)
どいておにいちゃんそいつ殺せない!
「プハーーーーーッ!」
目を覚ましたお兄ちゃんはアタシを突き飛ばすと、思いっきり息を吸い込んだ。
アタシはそんなお兄ちゃんの姿をニコニコと見つめているの。
「アスカ、こんな起こし方するなって言ってるだろう?」
「それなら、お兄ちゃんが毎日自分で起きればいいのよ」
アタシがそう言っても、お兄ちゃんは結局自分では起きなかったりする。
……だから、そんな所も大好き。
アタシとお兄ちゃんは小さい頃からずっと一緒だったけど、すっごい小さい頃はお兄ちゃんはアタシのことを構うことはほとんどなかった。
まだアタシがやっと歩けるぐらいになったころ、ママが出かけている間にアタシがトイレの便器に物を詰まらせて部屋を水浸しにしたことがあったの。
帰ってきたママは椅子の上でのんきに本を読んでいたお兄ちゃんにお説教を始めた。
「シンジはお兄ちゃんなんだから、アスカをキチンとみているってお約束したでしょう?」
「うん。だからちゃんとアスカを”見て”いたよ」
お兄ちゃんは涼しい顔でそう答えたから、その時ママはあきれたって言ってたわ。
でも、しばらくしてお兄ちゃんもアタシに馴染んできたみたいで、一緒に遊ぶようになったわ。
レゴブロックで人形劇ゴッコをしたりね。
お兄ちゃんはお城の騎士の役で、アタシは病院の看護婦さんの役なの。
バルタン星人との戦いで傷ついたお兄ちゃんをアタシが治療するってわけ。
もちろん、ケンカになることもあったわ。
木製の定規でチャンバラゴッコになることもあった。
毎日の食事も、もちろん、お風呂だって一緒に入ってた。
でも、この頃はアタシの方も別にお兄ちゃんを恋愛対象としては見てなかったのよ。
アタシがお兄ちゃんを彼氏として見るようになったのは、小学校でアタシがいじめられた時かな。
クラスのリーダー格の女の子に生意気と見られてアタシは、囲まれて暴力を受けることになったの。
殴られて、蹴られて、服はボロボロで、ところどころ傷を負って血が流れてたわ。
そんなアタシの姿を見たお兄ちゃんが、普段はケンカとかした事無い優しいお兄ちゃんが、思いっきり叫んだの。
「アスカをこんな目に合わせやつらを、ぶっ殺してやる!」
お兄ちゃんはそう言って、アタシをいじめたクラスの女子をボコボコに殴っていったわ。
その時からお兄ちゃんはアタシにとっての本物の騎士(ナイト)になった。
お兄ちゃんはそれからずっとクラスの子に『殺してやる〜!の男』だってからかわれ続けたけど、アタシのためのやってくれたんだもん、嬉しかったわ。
「……アスカ、そこに居ると僕が着替えられないんだけど」
お兄ちゃんがあきれた様子でアタシに声をかけてきた。
いけない、妄想が長すぎてしまったようね。
アタシはリビングで、お兄ちゃん用の食事の用意をしてワクワクしながらお兄ちゃんの着替えが終わるのを待った。
お兄ちゃんのお世話は全部アタシがするの!食事も洗濯もママなんかにさせないから!
ママは苦笑を浮かべながらもアタシのやりたいようにさせてくれる。
お兄ちゃんがやってきてテーブルに着く。
今日はアタシ特製のオムライスよ!やっと成功したんだから、味わって食べなさい!
そしてアタシとお兄ちゃんは手を繋ぎながら学校に登校する。
周りの目なんて気にしないわ。
前の方からクラスメイトの二バカがのんきな顔をしてやってくる。
「おーおー、朝から熱い夫婦やな」
「美しい兄弟愛、ここに極まるってね」
いいわ、もっと言って周囲にアタシたちの仲を広めるのよ。
今日は朝から気持ちがいいわ。
「アスカ、手を繋いでいていいのは教室までだからね」
あーあ、うるさいヒカリが来ちゃった。
アタシの親友ってことになってるけど、真面目に風紀委員の仕事なんかしちゃってさ。
学校の中で手を繋ぐぐらいい良いじゃないの。
アタシは教室に着くと、敵の姿を探すために周囲を見回した。
レーダーに反応あり、2体ってところね。
「おはよう、碇君!」
「おはようございます、碇君」
霧島と山岸とか言う女はクラスメイトという関係を利用してお兄ちゃんとアタシの仲を引き裂こうとしているのよ。
アタシが野良犬を追い払うかのように手を激しく振ると、霧島と山岸の二人は早々に散って行ったわ。
まあ、こいつらはまだ雑魚。
問題は毎日予鈴ギリギリに来るあいつらのことなのよ。
「……おはよう」
アタシの席の前に憎たらしいアイツが座った。
「ふん、毎日ギリギリに来てのんきなご挨拶ね」
アタシはそいつの前に立ちはだかる様にして言葉を返した。
「あなたに挨拶をしていない。私は碇君に挨拶をしているの」
クラスの席順は出席番号順。
アタシとお兄ちゃんは同じ名字だから席がアタシが前で、お兄ちゃんが後ろなんだけど、レイのやつは名字が綾波だからアタシの前の席に座ってる。
そしていつもアタシの席を通り越してお兄ちゃんと話そうとするのよ。
アンタなんか自分の前の席に居る相田とでも話して居ればいいのよ!
「私は碇君の彼女だもの。碇君もいい加減に妹離れした方がいいわ」
レイは許せないことに勝手にお兄ちゃんの彼女を名乗っている。
お兄ちゃんもやめてって言ってるのに、もっと徹底的に言わないとこの女には通用しないのよ、きっと!
「おんや〜さっそくシュラバですかい?」
アタシとレイがにらみあっていると、遅刻常習犯の担任、ミサトまでやってきたわ。
ミサトが毎日時間通りにやってくれば、レイは遅刻ばかりになるって言うのに、ホントタイミングが悪い女よね!
おまけにこいつもシンジのことを弟だとか言ってたまに家に遊びに来る。
パパの知り合いだからって、アタシはアンタを姉としては認めないわ!
シンジに手を出した瞬間からミサトはアタシの敵に決定しているんだから!
その日はアタシだけ図書委員の集まりがあったから、お兄ちゃんと一緒に帰れなかった。
お兄ちゃんはアタシに見せたいものがあるって先に帰ったわ。
アタシが楽しみにして家の玄関に入ると、お兄ちゃんの靴の他に、女物の靴があったの!
しかも2人分もよ!
耳を澄ますと、お兄ちゃんの部屋から女の声が聞こえる……。
レイと霧島のやつじゃないの!あいつら、アタシの居ない間に何をやっているのよ!
お兄ちゃんの部屋のドアに近づくと中から声が聞こえてくる。
「……この棒を穴に入れればいいのね」
「そう、そして溜った物がすっきりするととても気持ちいいのよ、ねえ、碇君?」
レイとマナの声を聞いたアタシは顔が青ざめるのを感じた。
「……今まで受け一方だったレイがついに攻めに回ったわね!ふふっ、慌ててる碇君、かわいい!」
そのマナの言葉があたしにとって引き金になった。
アタシは自分の部屋に戻って、部屋の中にあった金属バットを握りしめ、ボロボロになったウサギとゴリラのぬいぐるみをにらみつける。
ウサギのぬいぐるみにはレイと、ゴリラのぬいぐるみには霧島と名前をつけていた。
「アタシが魔女たちから助けてあげるわ、待っててお兄ちゃん!」
アタシはお兄ちゃんの部屋のドアを乱暴に開けて侵入した。
驚いたお兄ちゃんはアタシに覆いかぶさるように金属バットをレイに振りおろそうとするアタシを止めようとする。
「どいておにいちゃんそいつ殺せない!」
アタシがそう叫ぶと、驚いたレイがテレビのリモコンスイッチを踏んで、テレビの音量が大きくなる。
そしてアタシの耳に聞こえてきたのはロシア民謡の「トロイカ」と呼ばれる曲だった。
アタシはテレビの画面を見て驚いた。
「テ……ト……リ……ス……ですって!?」
アタシは重大な勘違いをしていたことに気がついて、思わず固まってしまった。
ぼう然としたアタシにマナのラリアットが決まって、アタシは気を失ってしまった。
「……アスカ、目が覚めた?」
気がつくと、アタシはお兄ちゃんに膝枕をしてもらっていた。
「アタシ……気を失って……あの二人は?」
「心配しなくていいよ」
お兄ちゃんは二人に必死に謝って、レイと霧島にアタシのことを許してもらうように頼み込んだみたい。
さすがのアタシもやり過ぎたと反省して、次の日学校でレイと霧島に謝ったんだけど……。
二人はあれから怖がって、アタシとお兄ちゃんに近づくことは無くなった。
そんな二人の様子から何か感じ取ったのか、それから学校でアタシとお兄ちゃんの邪魔をするやつは居なくなった。
これでアタシたちが結婚する予定の三年後まで一安心ね。
そうよ、アタシとシンジお兄ちゃんはキョウコママとゲンドウパパの連れ子同士だったのよ。だから血は繋がっていないわけ。
お兄ちゃんをシンジって呼べる日が来るのが楽しみだわ。
fin.
ナグナブロさんから節分記念作品をいただきました。
これはまたカンチガイこわいアスカですね。アウアウ。でもLASだから皆さん許してしまいますよね(笑
素敵な記念の日のお話を送ってくださったナグナブロさんに、是非読後の感想メールを!