「ねえ君、チュウしていい?」

はい?
なななな!
なに!?
突然!?

えっと…
今日はホワイトデーで
もらってもいないバレンタインのお返しをおねえちゃんにしなきゃいけなくて…
それでおねえちゃんにデートに連れ出されて
公園のベンチでおねえちゃんに
「ソフトクリーム買ってきてあげるからここで待ってて」
って言われて
ベンチに腰掛けて「この寒空の下でソフトクリームかぁ…」とか思って空を見上げたら人の気配がして
首をもどすと、なんだか知らないけど同い年くらいの赤いメガネかけた女の子が僕のこと覗き込んでて
「あ…あのぉ…」
って言ったら

「ねえ君、チュウしていい?」

て、突然…
うん
僕も自分でなに言ってんだかわかんないけど
とにかく今起こったことをありのまま話したんだよ?

まぁ、それはともかく

「え…あの…困ります…」

我ながら情けない返事
でもしょうがないよ…
いきなり知らない女の人にキスさせろなんて言われたら
他になんて言えばいいのさ!

そしたらその子が突然笑い出して

「ごめんごめん!冗談だよ!先輩のわんこ君」

わんこ?
先輩?

「君にお願いがあって…」

そういいながら赤いメガネの子はポケットをゴソゴソ

「これ、先輩に返しといて」

そういうとポケットの中身を僕に押し付けてきた

「あの…先輩って?」

「ん?君…碇シンジ君だよね?」

「はい」

「君は金髪のお姉さんとデート中、そうでしょう?」

「え…え…はい」

「じゃあそういうこと」

「え?何が?どういうこと?」

「渡しといて」

「はぁ…」

「そんじゃあね!」

あ…行っちゃった

なんだろう?
これ…
白い棒?
ボールペンかな?
“02”って書いてある
なんだろう?

変な子に渡された変な白い棒を眺めてると、おねえちゃんが両手にソフトクリームを持って戻ってきて

「どーしたの?」

そういいながら僕にソフトクリームを差し出してきて

僕はソフトクリームを受け取って
とにかくおねえちゃんに聞いてみることにした

「いま知らない人にこれ渡されて『先輩に返しといて』って言われたんだ。お姉ちゃん知ってる?」

そういって白い棒をお姉ちゃんに渡してみた

「プラグ…」

「え?おねえちゃんなんか言った?」
「へ?…あ!あぁ!これ?ペン!かしてたの後輩に」
そう言うなりおねえちゃんは白い棒をかばんに放り込んでしまった






いまさらこんなもの…返してくれなくてもいいのに…
もう全部忘れて
何も覚えちゃいないわよ

ま、いっか!

返してくれるってんなら受け取っとこう!


それより!

「ねえシンジ!」







おねえちゃんは今日の予定を延々説明
とにかく今日一日連れ回されれば“バレンタイン”の“お返し”は済むらしい

うぅ〜ん

“バレンタイン”にチョコ渡すのはいっつも僕なんだけどなぁ…







シンジと結ばれてから初めてのホワイトデー
バレンタインデーも悩んだのよね…
何か上げようかどうか…

でも私があげちゃうと、今までのルールがおかしくなって
自動的にママがシンジからチョコもらえなくなるわけで

それはそれで可哀想じゃない?

だから今日にしたの

シンジはまだ勘違いしてるみたいだけど
今年は私からシンジへのホワイトデーなのよ?






午前中は動物園でお昼ごはんの後が映画

これってデートだよね…

なんだか照れちゃって
どうでもいいこと聞いたり話したりしちゃうよ

今も

「ねえ、おねえちゃん」
「ん?」
「さっきの子…何の後輩なの?」
「ん〜…なんだっけ?」
「なにそれ?」
「忘れちゃった」
「ふーん」

ね?

それに改めて手とか繋ぐと…
今まで冗談めかして繋いでたのとは違うし…

なんていうか…
はずかしい





もう!
照れちゃって!
きゃわゆい!

思わず抱きしめちゃう!
あら?
檻の中のトラが照れくさそうに目を覆ちゃって
ごめんなさいね!
熱々で!




いいいいい今まだ
ふふふふ冬なのに
ああああああ暑い
みみみみ耳が燃えそうだし
ししししし心臓がドドドドドドって
そそそそそそれに
きききき気がつくと
さささささっきの子が
おおおおお檻の
むむむむ向こう側から
「おお!」って表情でこっち見てて

これがおねえちゃんの愛情ってやつなら
僕を殺しかねないよ!




耳まで真っ赤にして
ほんとにかわゆい!

これからもっともっといじめてあげるからね☆







動物園を出るとお昼ごはん
チェーン店の焼肉やさん
安いので有名だけど
やっぱりお肉は嬉しい!おいしい!

やっぱり大学生はうらやましい!
だってバイトが出来る
おねえちゃんなんてコンビニのレジで立ってるだけでお給料もらえるんだ

うん
そのおかげでこうやって僕が焼肉食べれるんだけどね







はぁ
男の子ってどこにこんなに入るのかしら?
見てるだけで不思議な気分

まぁ…育ち盛りだしね

たまに私のバイト先に廃棄品ねだりに来るくらいだしね

オーナーもシンジが来るたんびに「あら?惣流さん!弟さんがおねだりに来たわよ!」ってからかって
オーナーも外人の“おねえちゃん”に日本人の“弟”ってのがおもしろいらしく
よく、私が上がる時間まで事務所でシンジを廃棄品漁らせながら待たせてる

まぁ、オーナーは“外人に日本人…何か特別な事情がある”って勝手に勘違いしてるんだけどね

うん、同じ時間によくシフトに入るリンさんに至っては
「あすか、エライヨー!アンナオオキナコソダテテ!」
って一人で感心してるのよね

まぁ!“育てる”ってのは間違っちゃいないかな?

それにしてもシンジ…噛んでるのかしら?…







目いっぱい食べて

おねえちゃん呆れ顔で
「私の5時間がシンジのおなかに消えたのね」
だって

これでも遠慮したんだよ?






まぁいいわ
シンジも遠慮してたみたいだし
それに正直もう少しかかるかなって思ってたから

うん!
いいわ!
これで私の「焼肉デート」って項目に完了のチェックがついたし!

いしししし!

これでまた大人に一歩近づいたわね!
シンジ!






恋愛映画は死ぬほどつまらない…

そう思っていた時期が僕にもありました…





まぁ!シンジったら!
映画館入るときは「ええ!これぇ!?」とかいってたくせに

もう!
私の手なんか握り締めちゃってぇ!
目に涙目いっぱい溜めちゃって!

純情君なんだから!





あぁ…
僕はなんて幸せ者なんだ…
大好きな人が傍にいてくれる…

映画に影響されたわけじゃないよ?






ふふふ
いい感じじゃない?

じゃあそろそろホワイトデーのプレゼントの時間ね!

「シンジ」
「ん?」
「“休憩”…しようか」

「…うん」

まぁ!顔赤くして!
わかっちゃった!?
わかっちゃったの?
わかっちゃったのね!


じゃぁ!“休憩”しましょう!





おねえちゃんに手を引かれ“休憩”へ

空いてる部屋を選んで
おねえちゃんが「なんなの?スペシャルデープライスって!」って怒ってる

部屋に入ると今回はお風呂が丸見えじゃない
もう初めてじゃないんだけど…
なんだかやっぱり照れくさくて…






シンジってばさっきから恥ずかしそう
うん!
かわいい!

「ねえシンジ」
「え?」
「お風呂入ろう」
「…うん」
「じゃあ脱がして」
「え?」
「おねえちゃん、脱がして」
「う…うん」

ソファーにシンジを座らせて私はその膝の上に
シンジが不器用に私の服を脱がす
ほんとに不器用
へへへ…
シンジってば上ばっかり脱がせて
それにブラを見たら手が止まっちゃって

「うしろ」
「わ…わかってる」

いきがっちゃって
必死にホック外して

それに私だって恥ずかしい
だって部屋の明かり点いたままなのよ?

だからってわけじゃないけどシンジに抱きついたの
だって仕方ないじゃない?
こうしないとシンジが私の下
脱がせられないじゃない?








おねえちゃんに抱きつかれて
おっぱいが目の前に

ととととにかく
おねえちゃんのスカートを脱がして
あぁ…何でこんなにストッキングって脱がしづらいの!?





裸に…されちゃった
へへへ

「じゃあお風呂にはいろう?」

シンジは緊張してるのかな?
黙ってうなづいて

ふふふ
だいすきよ






正直…どうしたらいいのか…
よくわかんないから
学校の事とか
友達の事とか話してたんだ
お風呂で

おねえちゃんは「ふぅーん」って面白そうに聞いてくれてるけど…
僕が話すの止めたら…
その
始まっちゃいそうで…








シンジはお風呂場で喋ってばっかり
もう緊張しっぱなし

見てるだけでかわいくなっちゃう

でもそろそろ…

「シンジ、お風呂…でようか?」

シンジってば急に黙り込んじゃって…

いいのよ?

今日はとびっきりのプレゼントがあるの







腰掛けたんだ
ベッドに…
二人で

情けないんだけど
僕の股間はさっきから期待で膨らんじゃってる…

隣に腰掛けたおねえちゃんの手が、そっと僕の股間に伸びた

「ねぇシンジ」
「…なに」

情けないくらい小さな声しか出ない

「シンジは毎年私にチョコくれるのね」
「…うん」

いいたいことは山ほどあるのに…
返事をするのが精一杯

「本当に…私のシンジ…」
「…」

おねえちゃんが優しく寄り添ってくる
手は股間に添えたまま

「碇シンジ育成計画成功かな?」
「ん?」
「おねえちゃんの好みにシンジが育ってくれたの」
「…そ…そうかな…」

なんだか知らないけど…
照れる

「だからね」
「うん」
「これからは」
「うん」
「おねえちゃんをシンジ好みのアスカにして」
「え?」






ははは
やっぱり照れる

「シンジはおねえちゃんの大好きなシンジになってくれたの」
「うん」
「だからこれからはおねえちゃんがシンジの大好きなアスカになる」

「…」

「ん?」

「…だよ」

「なに?」

「大好き…だよ」





押し倒されちゃった
おねえちゃん
何度も何度も
「私も」
って言いながら





もう!
台無しね!
ほんとに台無し!

ばかでまぬけでおちょこちょいで
空気なんてこれっぽっちも読めなくて

やさしくてかわいくて
だいすきで


ほんとに…
「これじゃあ“おねえちゃん”じゃなくて“どれいちゃん”ね」
「え?」
「ふふふ、勘違いするな?」
「え?」
「いま、えっちな“どれい”を想像したでしょう?」
「え!?…そんなこと…」
「ふふん」

私はそれでもいいんだけど

「これじゃね、おねえちゃんはシンジの恋の奴隷ねって意味!」
「わ…わかってるよ」
「ほんとぉ?」
「ほんと…だよ」

ふ〜ん

「じゃあ確かめてみようかな?」










やっぱり“休憩”は疲れる…
でも今日は早めに部屋を出た

「ちょっと寄り道しようか」

おねえちゃんは明るい
とても今、パンツをはいてないとは思えない

え?
何ではいてないかって?

言うわけないだろ?
そんなこと

ん?
ここって有名なディスカウントストアだ

はっ!
まさか!

僕のどれいちゃんは満面の笑みで僕を見つめている
背筋が凍る

僕は今日、一円も使っていない
だからお財布の中には僕にとっては大金が入っている
お年玉もまだ残ってた
新型のPSPを買おうと思って…
街に出かけるって言うからついでに買おうと思って…

僕はまだまだ甘い…

所詮おねえちゃんの手のひらの上で踊ってるってわけ









家に帰ると相変わらずママが

「こんな時間まで何してたの!」

まったく騒がしい!

だから私はシンジの肩を抱き寄せて
左手で握りこぶしを作ってママに突き出してやった

ままの目がぱちくり

「婚約指輪もらっちゃった」







高かった…
いや…わかってるよ?
安物なのは…
あぁ…
僕のPSPは結局おねえちゃんへのホワイトデーのプレゼントになっちゃった…

「永遠の恋のどれいちゃんの印し!」

って言われるとちょっと嬉しいけど…
あぁ…

ぼくってどれいちゃんのどれいちゃん?







「もうどうでもいいから…とにかく上がって晩御飯にしましょう」

私がそういうと未来の息子はすごすごと手を洗いに
そして不肖の娘が私に寄り添ってきて

「ねぇママ…」

子供みたいな声を出す

「ホワイトデーとかクリスマスのたんびにせっまいホテルに高いお金払うのばかばかしいからさぁ」
「ママにでてっけって言うの?」
「別にそうは言わないけど…」
「ここはママの買った家よ?」
「じゃあ耳栓買って上げるからさぁ」
「はぁ…」
「ちゃんと避妊するって!ね!」

ほんとに…
うちの娘は…







手を洗ってリビングに向うとおねえちゃんが満面の笑み

「さぁシンジ!食べよう!」

僕を座らせる

「それと食べ終わったら“どれいちゃん”の続きしようね☆」

それを聞いたおばさんは天を仰ぐしぐさをしてから
おねえちゃんに向って中指を立てて見せた

それでもおねえちゃんはご機嫌で
僕が晩御飯を食べている間中おばさんに指輪を自慢している

僕はホワイトシチューをぐるぐるかき混ぜる

ははは…
ちょっとにやけちゃうな

僕は生まれて初めておねえちゃんからホワイトデーのプレゼントをもらった
“恋の奴隷”
ってやつを

うん!
高くなんかないね!
だってそうだろう?
PSP一台分の指輪でおねえちゃんを僕の愛で縛り付けられるんだから!

なんだか上手い事騙された気がするけどね!






さて!
これで私の恋の第二章が始まるのね!
もう!
股間がスースーしてしょうがないわ!
早くダーリンにあっためてもらわなきゃ!

「シンジ!」
「ん?」
「早く食べちゃいなさい☆」


なんたって今夜は私も食べられちゃうんだから!



フォークリフトさんからアスカ姐様シリーズの6作目です。
アスカはシンジを完全に思いのままにしているようですね。なるほどさすがはアスカです。


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