My name is woman

10話
Because I love you 2


written by フォークリフト

「今まで言ってなかったわね…」
「なにを?」
「わたしね」
「うん」
「あんたの事が好きなの…どうしようもなく」
「…」
「あんたがわたしの体目当てでも別にかまわないわ」
「そんなことないよ」
「例え話よ…」
「アスカの事…絶対守るから…僕が守るから」
「…いいわよ」
「今まで出来なかった分も…守るから」
「勘違いしてんじゃないわよ」
「え?」
「男に女が守れるわけないでしょう」
「へ?」
「覚えておきなさい、わたしがあんたを守るの」
「う…うん」
「それから…さっきの言葉…訂正」
「え?」
「あんたの事が“好き”って言うの…訂正」
「ぼ…僕は…アスカのことが」
「うるさいわね…間違えたわ…“好き”じゃないわ」
「…」
「大好き」
「うん」
「“好き”じゃなくて“大好き”…覚えておきなさい」
「うん」
「ねえ」
「ん?」
「熱…計ってあげようか?」
「は?」
「はん…こんなにパンパンにして…さっきから焼けちゃいそうよ…」
「あ…ご…ごめん」
「熱…計るって言ったら、やっぱりお口よね」
「え…」
「じゃあ患者さん?おねつ計りますから、動かないでください?」

告白の照れ隠しがお医者さんごっこなんて…
わたしってかわいらしいと思わない?



わたしはあの日以来
自分に縛られるのを辞めた

やりたいようにやらせてもらう

一度目の自分なんてものがいてもいなくても

シンジを上手く操ってわたしのものに…なんてことはもうやめ
一瞬だって離してやんない
瞬きだってしない


あの日からわたしの生活は劇的に変わった
私が変えた
わたしが変わった

ある意味感謝してるわ
赤木博士

おかげで吹っ切れたわ
100の努力より1回の行動よ

手は繋ぐ
ほかの女に嫉妬する
離れない
堂々と待つ
お弁当も一緒
時々甘える
でも、いっぱい甘えさせてやる

その成果が今

幸せよ
とても幸せ
さっきまでわたしがシンジのお熱計ってたのに
わたしったらシンジにお注射されちゃってる

とても幸せ





ちょうどロッカーを閉めようとしたときだった

「アスカ…」
「なに?」

シンクロテストの帰り
ヒカリに声をかけられた

「…あのね…」

まったく…ヒカリまで?
「気にしないわよ」
「え?」
「どうせ皆言ってんでしょう?『あいつはゼーレのスパイだった』だの『チルドレンのうち二人まで仕組まれてた』だの」
「え…うん」
「気にしてないわ、気にもならない!わたしね、ゼーレでこの世の全てを見てきたわ!世界の始まりから人類の終焉まで!わたしはゼーレのスパイで碇シンジの 手先なの。ヒカリの事もずっと騙してたわ!皆に喋っておいて、あの女からゼーレの秘密を聞き出したって、上手い事やって聞き出したって」
「アスカ…」
「なに?まだ足りない?」
「ちがうの」
「はぁ?」
「私…アスカに何があってゼーレに転んだのか知らないけど…私…アスカの友達だから…それだけ」
「…」
「…」
「…ヒカリ」
「…」
「ありがとう」
「うん」
「ねえ」
「え?」
「たまには付き合いなさいよ」

年頃の女の子同士
マックでおはなし
盛り上がるのよ?
延々と同じはなし繰り返してるだけだけど





次のシンクロテストが終わり
更衣室で着替える
更衣室には私とファースト
ゼーレ同士仲良くやれってとこかしら?

「ねえ」
「なに…」
「あんたは“はじめまして”でいいのかしら?」
「…三度目」
「そう」
「じゃあ…」
「ねえ…今からシンジ呼び出して食事でもしない?」
「別に…いい」
「“いい”のね、了解」


なんだか突然扱いに慣れた感じ
紅茶もケーキもシンジに「食べようよ」って言われるまで興味なさげに見たるだけ
つまりファーストたちはシンジに言われるがまま
自分で何かしようとはしない
シンジに対して以外はね
ケーキだって“おいしそうに食べて”みせてるだけ

「言われてみれば…」
「え?なに?アスカ」
「似てるわね…あんたたち…」

シンジに似てるって言われてファーストの表情が緩む
シンジの表情は…

「わかんないよ…ぼくには…」
「妹みたいにもんじゃないの?…ねえ」
「なんだよ…もう」
「いつでもわたしが確かめてあげるわよ」
「え?」
「シンジがシンジかどうか…いつでもわたしが確かめてあげる…」
「うん…」
「わたしね、あんたが知らないあんたのこと、たくさん知ってるの」
「うん」
「だから心配しなくていいわ…」
「うん」
「おしりのほくろとかね」
「え!?」

はは、うろたえてやんの

「碇君の…おしりのほくろ…わたしも知ってる」

シンジの顔色が変わる

わたしは素敵な笑顔で
「どうして知ってるの?綾波さん?」

…どうやら近いうちにシンジにお仕置きする必要がありそうね





マネージャー

いい響きでしょう?
私も部活始めたの
シンジと同じ部活
でも、男子に混じって泥だらけになるのはごめん
だからマネージャー

ネルフ?
赤木博士に頼んだら簡単だったわ

“シンクロ率が安定していれば問題ない”

ですって
じゃあ最初ッからやったってよかったじゃない!

所詮わたしたちのことなんて道具くらいにしか見てないのよ
大人は…

何でシンジと同じ部活かって?

精々楽しむからよ!

大変なのよ?スコアボードだのなんだの…
自分はかっこいいと思い込んでる3年の相手とか
だいいちこのままじゃシンジはギリギリ一軍に入れるかどうか
おしりの一つも叩いてやんなきゃ!





毎週水曜日
わたしたちは駅まで一緒に帰る
シンジは“勉強”しに港へ向い
私はシンクロテストを受けるためにネルフへ向かう
駅のホームで
「じゃあまた後で」
って言って分かれる

もし、シンジと一緒にシンクロテストを受けたら…
受けれたら…

あのガラクタの事もヘッドセットもプラグスーツも嫌いにならなかったかな?





使徒来襲

結局私は信用されてないってことかしら?
圧倒的な力を見せつけ進入して来た使徒に対しネルフはヒカリを迎撃に向わせた
私とファーストはバックアップ

って言うかバックアップとは名ばかり
助けに向おうにも遠すぎ
ミサトって結構意地っ張りね
まぁその被害者はヒカリなわけで
私たちの後方からの火機支援も花火くらいにしか感じない使徒に真っ二つにされちゃって…
結構やばいわね…この状況…

かわいそうなヒカリはおいといて
閃光の一撃でジオフロントの装甲版全部吹き飛ばしちゃうような化け物よ!?

「ファースト…バックアップお願い」
「…了解」

だからって黙ってミサト御一行がこいつにやられるのを眺めてるのもね!

ファーストのバックアップを受け私は使徒に駆け寄る
ファーストの銃撃だってまったく利いてないんだろうけど
目くらましくらいにはなるでしょう

ってのが甘かった

使徒はヒカリを真っ二つにした腕をパタパタと伸ばし
今まさに切りかからんとする私に向け

間一髪

無事ってわけじゃないけど
エヴァの自慢の4つのおめめが3つになっちゃたけど
何とかかわせた

でも

どうしよう…
勝てる気がしない…

吹き飛ばされけつまずく私のエヴァ

邪魔者を見下ろす使徒

ファーストも私を援護しようと近接戦を挑もうとしたんだけど

ばっさり

両足ちょん切られてお仕舞…

私を見下ろす使徒の目に光が集まる
やだなぁ…
やっと人生楽しくなってきたのに…
こんな“女戦士A”みたいな死に方…



ん?
空から何か…

分かってる…
分かってた…かな
私は助かるって

空から降るように現れた隻腕のエヴァ
片手にはバット

シンジは空から舞い降りた勢いそのままに使徒をバットで殴りつけた
ATフィールドごとね

そりゃいたかったと思うわ…使徒も
思いっきり殴られたんだから

シンジはチラッと私のことを見て…
エヴァのおめめが3つになっちゃたのを見て…
ものすごい唸り声をあげながら最初の一撃から立ち直れない使徒に蹴りかかった

後はちゃんばら

使徒の突き出す腕をバットで払いのけ閃光をバットで受け流しながら隙あらばバットでぶん殴る

案外男らしいじゃない
シンジ
その調子ならなれるかもよ?
あんたの大好きな夢の赤ヘル軍団の一員に

動かなくなるまでバットで殴られ続けた使徒
勝ち誇るように吼えるシンジのエヴァ

少し落ち着いたシンジが私のエヴァに歩み寄ってきた

声でもかけりゃいいんだろうけど
通信できないのよね
あのエヴァと

ぜひ改善してもらわないと


あ!
あのバカ!!



いった〜い!
思ってたより痛い!

油断しきってたシンジ
死んだふりしてた使徒
それにきづいたわたし

わたしの所にのこのこ歩いてるシンジのエヴァに向けて、使徒は鋭利な腕を伸ばす
しょうがないから…
守るって…約束したし
だからわたしはとっさに飛び出し使徒とシンジのエヴァの間に
気がついたら私のエヴァのおなかに使徒の腕が
受け止めようとしたときにとっさに掴もうとして指も全部吹き飛んで

でもわたしは守った
女だから守った
どんな事をしてもシンジを守るって決めたから
だから守った

一度目の自分に見せ付けてやった

女には耐えられる痛みってのがあるってのを
新生の…命を産み落とす痛み
それに
愛する人を守るための痛み

なめんじゃないわよ!
私は楽しむの!
シンジとの人生をね!



その後はすごかったわよ
怒り狂ったシンジに失敗したピザみたいになるまで殴られ続けて
多分途中で死んでたんだろうけど
まあ、シンジの怒りが収まるまで延々とね




エヴァが収容されると、私はすぐにミサトに赤木博士を呼び出してもらった

「あなたの保護者になった覚えはないんだけど」

ディスプレイの向こうに映る赤木博士はめんどくさそうにわたしの相手をする

「ゼーレの人間…あんたしか知らないんだからしょうがないでしょう?それより」
「わかってるわ…シンジ君でしょう?」
シンジのエヴァはゼーレが回収し港に向っている
「いいたいことが山ほどあるの」
「少し興奮してるわ…落ち着いたら合わせる…それでいい?」
「ええ…」
「じゃあこっちへ来てちょうだい」
シンジはゼーレの虎の子
間違ってもネルフにはさわらせない
だから私がゼーレへ出向く
「じゃあわたしの待機を今すぐ解除して…出来るんでしょう?それから」

一回深呼吸


「あんた…私が着くまでシンジにさわるんじゃないわよ…」


ディスプレイの向こうの赤木博士は肩をすくめてみせた





待機室って同じ様なつくりなのね
休憩用のベッドにテーブル
軽食の入った冷蔵庫とレンジ
それにシャワールーム
まったく同じじゃない

それにしても…
似合わないわね
ほんとに似合わない

「マヌケな格好してんじゃないわよ」

わたしにそういわれ照れくさそうなプラグスーツ姿のシンジ

わたしの待機は鶴の一声で解除され
私がゼーレに到着すると、赤木博士はわたしのところにシンジを連れてきて
そのままどこかえ消えていった

「あのさ…ありがとう」

両手を組んで指をクルクル回しながら照れくさそうにシンジがささやいた
だからわたしは言ってやった

「言ったでしょう『わたしがあんたを守る』って」
「うん」
「わかった?女はいつでも大切な人のために生きてるのよ!覚悟が違うの!」

シンジは照れくさそうに
「大切…」ってつぶやくと
嬉しそうにうつむいたまま黙り込んでしまった

それに私がここに来たのにはもう一つ理由がある

今まで、エヴァに乗った後
待機時間はわたしの脳から溢れだすシンジへの思いを…空想のシンジと戯れ…一人で悶々としていた

多分シンジもそれは一緒で…
まあ、ババアにいたずらされたりしてたんだろうけど…

とにかく
私はその事に対して一つの解決策を…

シンジの頭に手を伸ばし撫でるようにヘッドセットを外し
そのままそっと抱きついて耳元でささやいてやった

「ばか」

シンジからはLCLのにおいがする
そのままシンジの手首に指を這わせスイッチを押し
シンジのプラグスーツがはだけた

「におうわ…あんた」

視界の隅に映るシンジの顔が少し赤くなる

「シャワー浴びてきなさいよ…」
「うん」

シンジはわたしから離れると、だらしなくはだけたプラグスーツを途中まで脱いで
はっとなって

「アスカ…ちょっと…あっち向いてて…よ」

股間をさらすのがアレなのね…
今まで散々見せといて…
まあしょうがないか…
今までは薄暗かったし…ね

「これでいい?」

横を向いてやるとプラグスーツを脱ぎ捨てる音が聞こえて
すぐにバタンって音とシャワーの音が聞こえてきた

あら?
何でわたしまで脱いでるのかしら?
脱いじゃったものはしょうがないわね
シャワーでも浴びようかしら

そーっと入って後ろから抱き付いてやろう

要はこれからいちゃつくのよ
二人で
わるい?


フォークリフトさんの『My name is woman』09〜10話、後編Because I love you編2話公開です。

よかったですね、シンジに後に残る傷がなくって…。
雨降って地固まるというか、ますますらぶらぶになって良かったのです。

ぜひフォークリフトさんへの感想メールはアドレスforklift2355@gmail.comまでどうぞー。

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