My name is woman

05話
Liar girl but it's all right 5


written by フォークリフト

「つくづく舐められてるわね」

ご機嫌斜めのミサト

「チルドレンはよこさず、自分の息子を代理でよこすなんて」
「いいじゃない?どうせ調べたってファーストと一緒で何もわからないんじゃないの?」
「渚カヲルがここに来るってのはとんでもなく貴重な事なのよ…アスカ…あなたがゼーレに行ったようにね」
「ふーん…今度髪の毛でも持ってきてやろうか?」
「もう手に入れたわ」
「冗談も通じないのね」
「え?…あぁ…ごめんなさい」
「とにかくゼーレの使者はピザが食べたいそうよ」
「はぁ…なんで碇の息子にピザくわさにゃいけないのよ…」
「司令に断ってもらえば?『必要ない』とか言いそうじゃない?あいつ」
「あぁ…言ったんだけどね…司令にも」
「?」
「『かまわん…出迎えてやれ』ですって」
「あいつ…シンジのこと…」
「それわないわ…いくらなんでも…相手はただの子供よ、例え碇の息子でも」
「そうね」
「ねえ、アスカ」
「ん?」
「ちょっとは隠したら?」

そういいながらミサトは私の首筋を見つめ自分の首筋を指で指す
わたしの首筋にはちょっとしたアザ

「別にいいじゃない、どう?ここで脱いであげようか?もっとすごいわよ?」
「はぁ…最近のガキは…」

大げさにため息をつくミサト
いいじゃない?
別に
蹴られたり殴られたりしたわけじゃないんだから

気持ちよかったわよ?
“ほんとにスベスベだ”って言いながら私の肌…楽しんでたし

それに
シンジにも同じくらいつけてやったし





結局、何も知らないシンジはネルフの経費でピザを食べ
施設の中を見学し
記念品をもらい
喫茶室でわたしと一休み

ヒカリは今日はエヴァを使っての実験

「おいしかったね」
満足げなシンジ
「運がいいわね、あんた」
誰もいない喫茶室に私とシンジ
二人っきり

結局ミサトはシンジの面倒をわたしに押し付け、どこかへ行ってしまった

だから、わたしとシンジは適当に時間を潰してるだけ
くだらない話をしながら
少し、寄り添って


シンジが回りを少し気にして…だれもいないのを確認してから私と手を重ねた瞬間

突然、真っ暗になった

「あれ?停電?」
シンジのマヌケな声
「どうせヒカリがドジッタんでしょう…すぐにつくわよ」

いくら待っても予備電源に切り替わる気配もない

「真っ暗だね」
「そうね…」

おかしい…いくらなんでも…
予備電源にすら切り替わらないなんて…
絶対におかしい…

「なんかさ」
「ん?」
「わくわくするね」
「はぁ?」
「停電とか台風とか」
「はぁ…ほんとガキね」
「あははは…ほんとはちょっと怖いかな」
「…ほんとガキね」

しょうがないから手をにぎってっやった



随分時間がたった
いつの間にか、私達は手を握るだけではなくなっていた

寄り添って
お互いを抱きしめていた

こんなときに限って話すことが何もない…

ううん…
一つだけある…

一つだけ…

「シンジ…」
「ん?」

わたしの首筋に顔をうずめ、甘えるように返事をするシンジ

「わたしのこと…好きよね」
「うん」
「自信ある?」
「うん」
「そう…」
「なに?」


じゃあいいわ…話してしまおう


「わたし…おかしいの」
「なにが?」
「頭…」
「え?」
「狂ってるの」
「…そんなことないよ、勉強も出来るしそれに…」
「ちがう…ちがうのよ…」
「どうしたの?」

シンジがわたしを強く抱きしめてきた

「まるで何もかも…一度経験したような…何か覚えてるわけじゃないけど…初めてじゃないの」
「初めてじゃない?」
「そう…まるで…二度目の人生」
「二度目?」
「そう…今だって…ほら」

シンジの手を左胸に押し当てた

「まるで緊張してない…この暗闇を知ってるのよ…わたし…」
「アスカ?」
「言ったでしょう?狂ってるって…」
「うん」
「ちっちゃい頃から…ずっと…ううん…ちっちゃい頃はなんとも思わなかった…」
「うん」
「ただ…ちっちゃい頃から…どうしてもあんたを手に入れたかった」
「…」

ええい…言ってしまえ…
シンジはきっと受け入れてくれる

「考えた…何度も何度も…それで…思うの…もし…私が二度目のわたしなら何でシンジが欲しいのか」
「うん」
「きっと一度目の私は…欲しいものが何も手に入らず…無様に引き裂かれて死んだのよ…」
「うん」
「肩肘張って…とりつくろて…笑顔振りまいて…誰よりも強くて…それで…きっと…上辺しか手に入らなかったのよ…」
「うん」
「きっとシンジも…ええ…きっとそうだわ…あんたを手に入れようとして拒絶されて…一人ぼっちで意地張って死んだのよ…八つ裂きにでもされて」
「…」
「どう?おかしいでしょう?そんなことばっかり考えて生きてきたの…おかしいでしょう?」

「おかしくない」

「狂ってるわよ?わたし」

「そんなことない」

「自己嫌悪と自己満足の塊よ…わたし」

「もし、アスカが二度目の人生で…僕を欲しくて…それで二度目なら…僕はうれしい」
「え?」
「僕のために何度も人生をやり直してくれたんなら…僕は嬉しい…」
「…ちがう…ちがうのよ…きっと私は無様な人生をなかったことにしたくて…」

痛みが走るほど抱きしめられた
言葉も出ない
体が悲鳴を上げるほど強く
優しく抱きしめられた

「もし本当にアスカが人生をやり直すんなら僕はかまわない!ずっと一緒に行く!僕はアスカを見捨てない!八つ裂きになるなら僕がなる!」
「きっと…わたしはあんたをおもちゃにするわよ…きっと…見捨てられた一回目の人生の仕返しに…きっと…」
「一生はなさない!アスカが僕のことおもちゃにしようとしてもはなさない!離れない!」
「ばか…後悔するわよ?」
「いい…僕だってアスカに秘密にしてる事がある…ぼくは!」

シンジの唇を塞いだ
あたたかい

「いいじゃない…男には秘密の一つや二つあったほうが」
「ぼくは…アスカ…ぼくば」
「いいわ…秘密にしときなさいよ…そのうち気付いて…ビックリしてやるから」
「…ぼくは」
「いいのよ…シンジになにがあっても…」
「うう…」
「きっとそうやってあんたが泣くところが見たかったのよ…私は…」
「うん…」

暗闇の中で私はシンジの涙を舐めた

シンジに跨りながら

きっと、まだこの暗闇は続く…
だから私はシンジに跨った…

もし、一度めの人生があったのなら
少しそれに感謝したい

そんな気分…



暗闇の中現れた使徒
偶然行われていたヒカリの実験を中止し迎撃に向かわせる
ゼーレへの救援要請は黙殺された

ヒカリは単独で使徒を撃退した

まあ、これからはせいぜい楽させてもらうわ


電力が戻り
明かりがともってすぐにミサトがやってきた

「…心配してきてみれば…最近のガキは…」

わたしの胸の中で眠るシンジ
私は肘をつきそっぽを向く

「遅かったじゃない?大切なチルドレンなんだからちゃんとしてよ…」

「へーへーわるうござんした」

別にどうでもいいわ…
正直どうでもいいのよ…ネルフなんて…

シンジの秘密もどうでもいい…
どうせファーストとやったとか…そんなことでしょう?
いいわよ…べつに
あんたはわたしのものなんだから…
あんたは全部わたしのものなんだから…いいわ…

今、こうしてると
私はあんたでいっぱいで
とてもしあわせなの
だから、いいわ
わたしをシンジで溢れさせて…溺れさせてくれれば…それでいいわ


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