My name is woman

03話
Liar girl but it's all right 3


written by フォークリフト

ヒカリの起動実験
同じ日に使徒が来た

迎え撃ったのはゼーレ
私たちは高みの見物

海から来た使徒はゼーレのエヴァの一撃で砕け散った

ヒカリはようやく起動に成功した

これで私の時間も増える
シンジと遊べる

「アスカ」
「ん?重い?」
「ううん…」
「じゃあ何?」
「綾波のお見舞い」
「…あぁ…きいといてあげる」
「ごめん…」
「いいわよ…」
「ありがとう」
「従姉妹なんでしょう?」
「うん」
「じゃあ…いいわよ」

シンジの部屋
男の子のにおいがする
くだらないものがたくさんあって
別にくだらなくもないものもあるけど

私と撮った写真とか…

それにしても…

「腐るわよ?」
「え?ああ!だいじょうぶ!」
「バカじゃないの?」
「せっかくのお土産だし」
「…ほんと…バカね…」

どこの世界におまんじゅうかざっとくやつがいるのよ…
ほんとにバカね

「ねえ…」
「なに?」
「ファーストの事、聞いてあげるから」
「うん」
「あんたの事…少し私の自由にさせて」
「…うん」

私は乳房をシンジの口元に押し当てた
赤ん坊みたいなシンジ

今日はおばさまは泊りがけで
そんなとき、シンジは私のうちで晩御飯食べてくんだけど
今日は私がシンジの家まで行って、作って
ママには泊まってくって言ってある

「あんまりいじめないのよ?」
だって…

どうかしら?

ご飯作ってあげて
お風呂に一緒にはいって
ちょっとテレビ見て
ちゃんと寝巻き着てベッドへ

寝相の悪いシンジはセミダブルのベッドで寝てる
だから二人で寝てもそんなに狭くはない

別に私たちだって年がら年中してるわけじゃない
今日だってちょっと乗っかったりしていじめたけど

別にそれだけ

ド変態のシンジ曰く
「するよりされるほうが…その…アスカが…その…」

はいはい
わかってるわよ…

あんたがどうしようもない甘えん坊で
私がどうしようもなくあんたの事好きで
私はあんたに頼りきってるのよ

気付いてるかしら?
あんたがしてほしいって言ったこと
私が全部してあげてること…

まあ
いいけど

そうでもしなきゃ私の心が壊れちゃうもの



病室でシンジとファーストは楽しげに話している
ちょっと、してやられたかも

シンジはいい
従姉妹なんだし

ヒカリもいい
仲間だし

でも

「よかったじゃない…生きてて」

何で赤木博士が一緒に来たわけ?
こいつゼーレの人間でしょう?

「リツコさんひどいなぁ」
「あら?そう?…生きてただけよかったじゃない?」

シンジとは普通に喋ってるけど
さっきからファーストとはほとんど会話になってない

まるでファーストと赤木博士の会話をシンジが通訳してるみたい

「食べさせてあげようか!?」

はぁ!?
シンジなにやってんの?
別にファースト手、怪我してるわけじゃないのよ?

ファーストも
「あーん」
じゃないわよ!?

どんだけガキなのよ!あんたたち!!

おしおきよ
そうよ
おしおきしなきゃ…
あとでシンジにおしおきしなきゃ

あん?
赤木博士?
二人を見て…
まるで哀れむみたいに…
少し見下したみたいに…

なんだろう…

いやな女



「アスカ、今日はありがとう」
「…ねえ」
「え?」
「どこから浮気かしら」
「へ?」
「私もあんたの目の前で誰かに“あーん”してもらおうかしら?」
「え!?いや!あれは!ちょっとやってみたかっただけで!」
「だけで?」
「その…ごめん」
「おなかすいた」
「え?」
「マックでいいわよ」
「え?」
「おごんなさい」
「え…うん」

ポテトくらいなら“あーん”出来るわよね



今日は少し機嫌が悪い
急いでたからヘッドセットつけたまま帰ってきちゃった

だいっきらいだ
こんなもの…

私の頭からシンジを搾り出す
私の愛情を
乳を搾るように…

だいっきらい

「それ…にあうね」
「え?」
「その赤いやつ」

シンジが私の頭を指差す

シンジの手はべとべと
ポテトにナゲット、アップルパイにベーコンポテトパイ
“あーん”出来そうなものを片っぱしから

別にいでしょう?
私のシンジなんだし

「はじめてみた」
「そう…」

私はヘッドセットをはずし髪をほどきいつもの姿に戻った

「あ…とっちゃうの?」
「嫌いなのよ…これ…似合わないから」
「そう」

シンジは“そんなもんか”って顔で私の口元にナゲットを運ぶ

ガラスには照れくさそうなシンジと、とても幸せそうな私がうつっていた



使徒襲来
いったいこいつらなんなんだろう?

とりあえずヒカリの初陣
せいぜい楽させてちょうだい

ヒカリが気合一閃、使徒を真っ二つ

と思ったら

二つに分かれて攻撃してきた!
冗談!

ヒカリはいいようにやられ
山肌に頭から突っ込まれ
私も二体に増えた使徒に追い詰められる

冗談じゃない!

こんなところで死ぬなんて真っ平ごめんよ!

ヤケクソで使徒に襲い掛かった瞬間
一体の使徒が宙を舞った

ゼーレのエヴァだ

とにかくこれで二対二だ!

やっぱりバットの化け物を振り回すゼーレのエヴァ

でも今回の使徒はやってもやってもすぐに回復して…
どうなってるの!?

気がつけば
私のエヴァはケーブルを引きちぎられ
活動限界をむかえ
沈黙し

危ういところをゼーレのエヴァに助けられ
孤軍奮闘のゼーレのエヴァも次第に追い詰められ

危ういところを自衛隊の戦略N2に救われた

使徒は一時だけど活動を停止し
回復にはいった

マギとその開発者である六文儀ナオコ博士曰く
「2体同時に殲滅しなくては」
だそうだ


私とヒカリは使徒の同時殲滅の特訓に入った

よりにもよってミサトの家に監禁されることになった

まったく…女三人で暮らしてなんになるのよ!?


“ユニゾン特訓?”
「そ」
“なんかかっこいいね”
「はぁ…あんたバカ?女二人が呼吸ぴったりに合わせる訓練よ?悲惨よ!ひ・さ・ん!」
“そーなの?”
「朝起きてから夜寝るまでずーっと一緒にすごすのよ!?しかも同じことやりながら!」
“みにいこうかな?”
「はぁ?」
“いっていい?”
「…まあ…いいけど」
“じゃあちょっと待ってて!”
「はぁ!?今から!」
“ツーツーツー”

はぁ…
部屋
片付けなきゃ



シンジは両手にいっぱいお菓子を持ってきて…
よけいなものまで持ってきた…

「まったく…散々な目にあったよ」

ついでに誘ったって…
さすがゼーレのボンボン…

「まったく…ゼーレの渚様までいらしてくださらなくてもよかったのに」
「はは、相変わらずだね、君は」

めんどくさいやつね

「で?特訓はどうなの?」
満面の笑顔で聞くんじゃないわよ…はぁ…このばかシンジ

「見てみる?」
ミサトも…
なに言ってんだか…

おかげで私はヒカリとのまったく息の合わない姿をさらす羽目に…

「まあ…ご覧の通り…」

うつむくヒカリにため息のミサト

あれ?
なんだかシンジがソワソワ…
「どーしたの?」
「なんだか見てたらちょっと覚えちゃった」
「あんたねぇ…覚えてどーすんのよ?」
「…僕やってみていい!?」
「はぁ!?」
ミサトも無責任に
「いーじゃない!息抜きにやって見なさいよ!もーおねーさんに見せ付けて!」
はぁ…そろいもそろって


「やればいいんでしょう!やれば!」


ミサトが
「おー…」
ヒカリが
「すごい…」
渚が
「まいったね」

当たり前でしょう?
ちっちゃいころからずっと一緒で
私はこいつの事なら何でも知ってる
シンジが自分で気付いてないような事まで
シンジにあわせるなんて…
誰にもいえないけど…
オネショまで一緒にしたのよ?

はぁ…

「見るべきものは見たかな…僕はこれで失礼するよ」

渚はあきれるように出て行った
あん?

「ヒカリ?…あんた…」
「委員長!?どうしたの!?」

うつむいて…
ぼたぼた泣いて…

「碇君は出来るのに…アスカのこと見もしないで出来るのに…私は…必死にアスカの足手まといにならないようにして…アスカは私に合わせようとしてくれてるのにそれも出来なくて…」

ミサトがヒカリをなぐさめた
シンジも必死に声をかけてる

ちがう…ちがうのよヒカリ…
私もシンジも“こんなもんだろう”ってやっただけ
シンジ、途中で何回も間違えてたじゃない…
そんなもんよ
ただ、それを“ああ…またやった”ってくらいで
帳尻を合わせただけ
シンジも同じ“あ、ちがった”っておもいながらやっただけ
ただそれだけ
そろって見えただけ
私もシンジもバラバラだってわかってやってたの
ちがうのよ
息が合ってるってのとは

「ヒカリはヒカリでいいじゃない?ヒカリのほうが合わせやすいわ」
「…ごめんなさい…アスカ…私なんにも出来なくて…足ばっかり引っ張って…」
「ちがうのよ、シンジは…こいつしょっぱなから間違えておたおたして」
「…二人が?」
「二回やんなきゃいけないところ一回しかやらないし…わらって誤魔化してただけよ、シンジは」
「アスカ…」
「あはは、何とか気付かれずにごまかせたとおもったんだけどばれちゃった」
「碇君…」
「二人三脚のときも!調理実習のときも!全部シンジは笑ってごまかしてるだけ!それだけ!」
「…ありがとう…アスカ」
「間違えの数ならヒカリのほうがよっぽどましよ」
「うん…」
「そんなに必死にならないでよ」
「うん…」
「何とかなるわ、まだ時間はあるじゃない?」
「うん…」
「シンジ!」
「あ?はい!」
「さんぽ!行くわよ!」
「え?うん」
「ヒカリ!」
「うん…」
「終わりよければそれでよし…よ」
「ありがとう…アスカ…」
「行くわよ!シンジ!」
「え?あ!ちょ!その格好で!?」

ばか

「着替えるに決まってるでしょうが!」



公園のブランコで二人乗り

私は腰掛けて
シンジは立って

「ほんとにおせっかいなやつね」
「はは、ごめん」
「もうちょっと上手く出来ないの?」
「う〜ん、失敗してもそれはそれで笑えるかなっておもって」
「まあいいわ…ありがとう」
「うん」
「ねえ」
「なに?」
「今夜泊まってく?」
「ええ!ままままずいって!」

ばか

「冗談よ」
「ははは…」
「ばんごはんくらい食べてきなさい」
「うん」
「ねえ」
「ん?」
「なんでもない」
「うん」

ばか
こんなとこで抱きしめて
誰か見てたらどうすんのよ


ミサトの家に戻ると
4人分の夕食が用意されていて
シンジの分のオムライスにはケチャップでハートマークが書かれていた

私が書いたんだけどね



決戦の日!
まあ、やるだけやった

退路はゼロ!
戦術は深追いのみ!

やるだけやってやるわよ!

私とヒカリのエヴァ
バックアップはゼーレのエヴァが受け持つ
前回のざまが随分とお気に召さなかったらしく
赤木博士直々の申し出

「いいヒカリ、気楽に行くわよ」
「わかってる」
「硬いわねぇ…もうちょっと気楽にしないとやってらんないわよ?」
「ありがとう…碇君にも感謝しなきゃ…」
「いいわよ、あんなやつ」
「うらやましい…」
「どうも」

「二人とも!おしゃべりはそこまで!…行くわよ!」

「「了解!」」


私とヒカリは使徒を圧倒した

でも
常に悪魔は最悪の瞬間を演出してくれる
絶妙のタイミングで

ここから盛り上がる
そんなところで
ヒカリは足をとられた

一瞬私が先走る形に
ここに来て取り返しの聞かないミス
まずいと思うほどの時間もない

その時

私の影が紫色に変わった

紫色で隻腕の影はまるでもう一人の私のように動き使徒を翻弄する

「ばかシンジじゃあるまいし…」

ヒカリが復帰するまでのほんの一瞬
ゼーレのエヴァは見事にバックアップの役割を果たしてくれた

私の影が紫色から銀色に変わる

さあ!
止めだ!



ゼーレのエヴァは挨拶もなく引き上げた
まぁ、赤木博士の素敵なお言葉はいただけましたけど

“ご苦労様…まがい物の皆さん…ごきげんよう”

わたしのすてきなお返事

「じゃーねおばさん」


エヴァに乗って
エヴァで戦って
初めて気持ちよく待機時間をすごした
なんだろう?
今日はシンジを穢された気がしない

私は私の脳から緩やかに分泌される快楽を楽しんだ
シンジへの愛情をなめるように楽しみながらヒカリをからかった

「ねえヒカリ」
「なに?」
「誰思いながらエヴァに乗ってるの?」
「え!?」
「私はシンジ…あいつグズだから、それくらい役に立ってもらわないと」

ヒカリったら…散々悩んで照れて

「…誰にも言わない?」
「たぶん」
「碇君にも?」
まさか…
「あ!ちがうちがう!碇君じゃないよ!」
なんだ…
「で?だれ?」
「……ら」
「はい?」
「…ず…ら」
「ズラ?カツラ!?そいつはげてんの?」
「鈴原!」

おどろいた
シンジの遊び仲間じゃない
私のきらいな要素集めて動き出したような男
まあキングオブ・ヘイトの相田に比べりゃましだけど…

「鈴原ってあの“でんがなまんがな”の鈴原!?」

うわぁ
顔真っ赤にして…
うつむいちゃって…

「ま…まぁ…人それぞれよね…」

ほんとびっくり…


そーだ

「ねえ」
「え?」
「シンジに誘わせよっか?」
「え?」
「鈴原のこと誘わせよっか?」
「え!」
「どうせなら現物のほうがいいでしょう?頭の中だけより?」
「え!え!え!」
「あいつらバカだからなんかエサ釣るしゃ、ほいほい釣れるわよ?きっと」
「あ!え!あ!」
「帰ったらシンジにどっか遊びに連れ出させるわよ」
「な!が!ぬ!」
「ミサトに言えば遊園地か映画のチケットくらい手配してくれるでしょう?私それで散々遊びまくってるし」
「いや!でも!妹とか!」
「一緒に連れてけば?」
「あ!ば!」
「きまりね」
「あ…でも…服とか…」
「裸じゃなきゃ何でもいいわよ…まあ男なんて裸のほうが喜びそうだけど」
「じゃぁ…アスカがそこまで言うんなら…一回だけ…」
「はいはい…そうね…一回だけね」


もちろん私はシンジをつれて途中で消えるけどね


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