小さな幸せとたくさんの苦労
まぁなんと言うか
そんな感じ

アスカは
なんて言うか
小さい頃に戻ってしまったっていうのか
四六時中僕について回って
ちょっとうっとおしい

でも可愛いところもある
僕の事を呼ぶとき、“おにいちゃん”って言いいかけてから“シンジ”って言いなおすんだ

そういえば…母親の勘?
昨日、かあさんが突然
「別に何しててもいいけど…まだ孫はいいわよ?」
なんて言ってきて

うん

ばれてるね

まぁそうかもね
ここのところ距離を置いていた僕とアスカ

それが突然
アスカが僕の膝の上でアイスかじったりしだしたら
まぁそれくらいは想像つくかもね

そんなこと考えながら愛車にワックスをかける

今日は講義もなく
バイトまで結構時間がある

僕のランクル
14年落ちだけどね

父さんが車買い換えるって言い出したときお願いしたんだ
僕に今の車を譲ってくれって

渋られたよ
そりゃぁ
下取り分があるしね

母さんが
「いいじゃないの」
って父さんを説得してくれて
父さんも
「維持は自分でしろ」
って言ってくれて

そんなわけでこいつは僕の愛車になった

ところがここ数日
こいつに変化が現れ始めた
別にさびが出てきたとかじゃないけど…

車内を見渡す

年季の入ったシート
質実剛健な内装
何気にオートマなのはご愛嬌
安心感のあるメーター
そして…

「こりゃないよなぁ…」

かわいいぬいぐるみ

あの日以来、アスカは容赦なく僕の聖域を侵し始めた
部屋にあるものでアスカの気に入らないものは片っぱしから捨てられ
随分とすっきりとしてしまった

それに
しきりにバイトを辞めろって言ってくる

はぁ

アスカをデートに連れて行くにもお金がいる
車の維持にも

いくらそう言っても聞いちゃくれない

まぁ
そこが可愛いんだけどね

このあいだも
僕が出かけるところに
ちょうどアスカが友達連れて帰ってきて
「じゃあ行って来るよ」
って僕が言うと
アスカは僕のほうに来て
ほっぺにちゅう

なんだかアスカの友達が顔真っ赤にしてたけど…

まぁとにかく
可愛いとこあるよ








シンジ!私の彼氏!
うん!
いい響き!

シンジの右手に光るリングは私との愛の証

だからよけいなものは処分!

どこまでずぼらなの?
シンジは

部屋にはよけいなものがいっぱいだし
その上ほかの女から貰ったものもたくさん!

全部処分!

ついでにラン…クル?
殺風景!
だから私が可愛くコーディネートしてあげたのよ?

おにいちゃんは…シンジは私の彼!
しっかり手綱握らなきゃ!

だからこのあいだ
シンジがあの女のところに“バイト”に行くとき
たまたま私がヒカリを連れて帰ってきて
シンジは
「じゃあ行ってくるよ」
なんて無愛想に言うから
ちょっと解らせてやったの

あなたは誰のものか

シンジてれちゃって

まぁ
その後のヒカリの質問攻めのほうが大変だったけど


あ…
このあいだ
ちょっとママに怒られた
「あんまり…まあいいわ…自分で考えなさい。あと、避妊はしなさい」
だって

何でわかったのかなぁ?


避妊かぁ

何でだろう
おにいちゃん…
わたし…やっぱり子供なのかなぁ
魅力無いのかなぁ

あの後
何回かそういう機会があって
おばさまがお仕事で帰ってこない日はシンジのところに
ママがいてもおにいちゃんのところへ行って
いっぱいちゅうしてもらって
いっぱいおっぱいやあそこに意地悪されて
もちろん私はいやじゃないよ?
だいすきなおにいちゃんだもん
わたしのシンジだもの

おちんちんてね、思ってたみたく、グロくなかった
どっちかって言うとかわいい
だからちゅうしたの
おちんちんに
「いたくしないでね?」
って言いながら

でもおにいちゃんはそれをしないの

いっぱいわたしのこといじめて
わたしのあそこにいっぱいちゅうしてきて
はずかしくって
きもちよくって
気がついたらおしりの…
その…
そんなほうまでちゅうされて

恥ずかしくて悲鳴上げちゃって
でもそれはしてこないの

わたしをたくさんたくさんいじめて
恥ずかしい声をいっぱいださせて
いっぱい抱きしめてくれて

そのまま二人で寝るの

とっても幸せなんだけど

やっぱり…
うん

じゃぁ
はっきりさせなきゃ

おにいちゃんは…シンジはわたしの彼なんだから!









「店に来たい!?」
「そ!」
「“そ”って…僕のバイト先って大人の店だよ?」
「だから大人のおに…シンジが連れて行ってくれればいいんでしょう?」
「いや…だいたい開店が8時だし…お酒飲むとこだよ?」
「お酒だけってわけじゃないんでしょう?」
「いや…そうだけど」
「いやなの?」
「え?」
「ミサトとか言う女にわたしみたいな子供といるとこ見られるのが」
「なにいってんだよ」
「じゃあつれてって」






はぁ…
アスカって何考えてるんだろう
まさか…
ミサトさんの店までぬいぐるみだらけにする気!?

むかしっからアスカは言い出したらきかないし
僕のバイトが無く、極力暇な日を選んで連れて行くことにした








なんかセンスの無い名前
“音”
だって

シンジが戸を開けてくれた
ふ〜んこんな店なんだ
なんか薄暗い

「いらっしゃい、お姫様」

カウンターの向こうには
やたら胸の大きい女

こいつが

「はじめましてお姫様」

ミサトって女ね

「今日はお姫様のために特別に貸切…っていっても」

カウンターの奥のほうに女の人が二人
可愛い感じの人と金髪の人

「まあ気にしないで、置物みたいなもんだから」

おにいちゃんがイスを引いてくれた
ちょっと高くて座り辛い

「じゃあシンジ君、お姫様に何か出して差し上げて」
「え!僕が?」
「そう!それからリツコたちの相手もお願いね」
「いや、今日は僕は客…」
「お客様はお姫様だけ、次、文句なんていったらお給料抜き」
「はい…」
「じゃあおねがい」

ミサトって女がわたしに微笑み、シンジに向って

「安心して」
「なにがです?」
「お姫様のお相手はちゃんとしとくわ」

“ははは…”なんておにいちゃんは笑いながらカウンターの中に入り
向こうに座る金髪の人に挨拶をした

「気になる?」

この女…ちょっとずうずうしい

「なははは…そんなに睨まないで」

ふん!

「シンジ君がね、いっつもあなたの事ばっかり話してるの」
「え?」
「お?やっとこっち向いたわね」
「ふん」
「あら…嫌われてるわね…まっいっか、会いたかったのよ?」
「わたしに?」
「そ、シンジ君のお姫様に」

さっきからお姫様お姫様って
なんなの?
バカにしてんの?

ミサトとか言う女から視線を外すと
その先では、シンジが氷を削っていた

「どお?シンジ君、なかなかいい男よね」
「知ってます」
「あはは…そうね、ずっと一緒だったんだもんね」
「…」

シンジは削った氷をグラスに入れる
それを見た金髪の女が何か話しかける
おにいちゃんは苦笑いしながらグラスを持ってわたしのところへ

「はい、アイスティー、ミルクいる?」

“うん”

そう答えようとして
目を奪われた
グラスの中には綺麗なバラの花
氷で出来たバラの花

「はいはい、シンジ君はリツコの相手でもしてきて、あ!あと何か美味しいものお姫様に出してあげて」

“はいはい”
そんなこと言いながらおにいちゃんはまた奥の方に追いやられてしまった

「ラビアンローズ」
「え?」
「その氷の名前」
「へぇ」
「特別なのよ?」
「え?」
「普段はシンジ君が気がむかなきゃやらないんだから」

ミサトって女がアイスティーのグラスを指で弾く

「ほんとに、シンジ君てば嬉しそうね」
「そうなんですか?」
「張り切っちゃって」
「へぇ」
「その氷の名前の意味、知ってる?」
「…ローズ…バラ?」

ミサトとか言う女は少し嬉しそうに笑い

「“ばら色の人生”」
「へぇ」

わたしはグラスを持って眺める
とても綺麗

「ま、私はもう一つの呼び方がすきなんだけどね」
「もう一つ?」
「“危険な退屈”…両方ともラビアンローズって言うのよ」
「ふぅ〜ん」


シンジが持ってきてくれたアイスとホイップクリームがたっぷり乗ったアップルパイ
それを突っつきながらミサトの話を聞いた

このお店に来るお客さんはほとんど女の人で
シンジはお客さんに“王子様”って呼ばれていて
シンジ目当ての女もいるらしい

とても気持ちのいい音楽が流れる

シンジは、楽しくなさそうにお酒を飲んでいる人にラビアンローズを作ってあげるそうだ
“今夜いいことがありますように”って言いながら

「だから気に入られてるのよ、お客さんに」

ミサトは楽しげに話す

「でも、シンジ君は誰の誘いも受けないの…何でかしらね?」

楽しそうにわたしの顔を覗き込む

「まぁしょうがないわね、王子様のお相手は姫様って昔から決まってるものね」

シンジはいっつも言っていたらしい

まだちょっと小さいけど
可愛いお姫様がいるんです

って

なによ
わたしにはそんなこと一回も言ってくれなかったのに
もし言ってくれてたら…
あんな恥ずかしい事しなくてすんだのに

「うらやましいわ…」
「…」
「それと…安心して」
「安心?」
「ちがうわ…」
「ちがう?」
「わたしとシンジ君…あなたが思ってるような関係だったことなんか無いわ」

胃がきゅっとなった

「そりゃ…そういう事…じゃないんだけど…なんて言えばいいのかな?…そういう事じゃない事は何度か…」
「…知ってます」
「そうね…でもちがうの…お互い好きだとかそういうのじゃないから」
「…」
「代わりだったの」
「代わり?」
「そう…だからわたしとは一回もしてないわ…」

なんだか複雑な表情のミサト
でも私はこの女をにらみつけ、言った

「…あなたの」
「わたし?」
「あなたの匂いがする日がありました…何度も」

いつの間にか私は唇を噛み締めていた

「私はあなたのこともあなたの匂いも大ッ嫌いです」
「ふふ…そう、でもちがうわ」
「…」
「私はあなたの代わりだったのよ」
「わたし?」
「“抱きしめていいですか?”って…それだけ」
「やっぱり…」
「だから違うわ、ほんとに抱きしめるだけ」
「…」
「私のこと抱きしめて、シンジ君…あなたの事話すの」
「私のこと?」
「“最近冷たいんです”ってね」
「え?」
「だから私はあなたの代わり、おっぱいつきの抱き枕。寂しかったのよシンジ君も」

そんな…
一言いってくれれば…
私はいつだって…

「でも最近…それもなくなったわ、何でかしら?」

ミサトは意地悪な顔で私の事を覗き込み
わたしのにおいをかいだ

「あら?」
「なんですか?」
「最近、シンジ君からする香りとよく似た香り」

何でだか
顔が熱く…

ばか
やっぱりこの女キライ





結局、謎は解けなかった
おにいちゃんはミサトとしてたわけじゃなく
わたしの予想は外れ
わたしの“私はミサトって女と比べられてる”って予想は外れていた

何でだろう
なんでシンジは…おにいちゃんはわたしと、そういう事しないんだろう?









帰り道
アスカは縁石の上を歩く
ミサトさんと何はなしてたんだろう?

はぁ…
「歓迎してあげるわよん☆」
なんてミサトさんが言うから
どうせろくな事しないだろうと思ったけど…
結局僕はほとんどリツコさんの相手をさせられて

苦手なんだよなぁ…リツコさん

だってさぁ
父さんの…
ねぇ?

何度か、かあさんとリツコさんが話してるところに居合わせた事あるけど…

まぁ…ねぇ…

それにマヤさん
はぁ…
絶対僕のこと狙ってるよなぁ

何度も断ってるんだけどなぁ




帰り道
公園に寄った
“なつかしい”ってアスカが言って

うん
なつかしい
よくこの公園でアスカと遊んだ
友達と遊ぶアスカを迎にも行った

ブランコに腰掛けて
アスカは僕の膝の上に
アスカの髪の毛が鼻をくすぐってちょっとむずがゆい

アスカの手が僕の手に重なる

「ねぇ…シンジ」
「ん?」
「シンジは…おにいちゃんは子供は嫌い?」
「子供?…うぅ〜ん…どうかなぁ?」
「ねぇ」
「ん?」
「わたし…子供?」
「アスカ?」

僕の手に重なるアスカの手に力がこもる

「わたしね、おにいちゃんになら何されてもいい」
「…」










おにいちゃんはわたしをそっと抱きしめ
耳元で優しい声で囁く
「どうしたの?」

わたしを抱きしめる暖かい腕
それを握りしめ
言った

むずかしい言葉は出てこなく
それがもどかしいけど
でも
言った

「ずっとそばにいて欲しくて…おにいちゃんのことが欲しくて…わたしだけのおにいちゃんで…だから…」
「うん」
「なんで?」
「ん?」
「どうして?」
「なに?」
「わたしの事いっぱいいじめて…たくさんちゅうもしてくれて…とっても嬉しくて…でも…なんで?」
「なに?どうしたの?」
「おにいちゃん…どうして?…わたし…できるよ?…わたし…えっち出来るよ?」


抱きしめられた
力いっぱい
痛いくらい

「ちがうよ…アスカ」
「なにが?」
「ぼくは…さ」
「うん」
「ダメなんだ」
「子供だから?出来るよ?わたし出来るよ?」
「ちがう…アスカ?」
「なに?」
「おにいちゃんも…僕もほんとはそのつもりでアスカの事…」
「ほんと?」
「ほんと…でもね」
「うん」
「僕の手の動きとか…あそこにちゅうしたりとかした時の…そのときのアスカの…」
「わたし?」
「うん…その…アスカの…喘ぐ声を聞いてると」
「うん」
「なんだか…アスカをいじめてるみたいで…」
「私のこと?」
「顔を見ると…今にも泣きそうに見えて」
「顔?」
「そうなると…その…したい…とかより…」
「うん」
「あぁ…アスカのこと…大切にしなきゃって…泣かしちゃダメだって…おもっちゃって…それで…」









ベッドの上
二人は裸で寄り添う
それがわたしたちの愛のかたち

おもいっきりおにいちゃんに甘える
いっぱい抱きしめてもらう
で、ちょっといじめてもらう

いいんだ
これで十分!
そういうことは、おにいちゃんが安心して出来る様になってからでいいの!

笑顔でおにいちゃんを迎え入れれるようになってからでいいの!
その時はそれまでも分も愛してもらうから!

「ねぇシンジ!」
「ん?」
「明日、浴衣姿見せてあげる」
「ゆかた?」
「そ!七夕祭り」
「あぁ…屋台もたくさん出るしね」
「うん!それで短冊書いてこよ!」
「はは、なつかしいね。アスカはいっつも変な事書いてたね」
「そうだっけ?」
「うん、僕より背が伸びませんように、とか」
「そんなこと書いたっけ?」
「昔ね」
「ふぅ〜ん」
「で、何をおねがいするの?」

「早くシンジといっぱいえっち出来ますように☆」

「はい?…ははは…はぁ…」

溜息まじりのキスも素敵☆








僕のアスカは可愛い笑顔で
それを見ているととても幸せで

抱きしめて
キスをした


「だいすきだよ」
「うん!」







あ…
そうそう
七夕祭りでケンスケにばったり会って
当然僕の腕にはアスカがからまっていて
それをまじまじと見られて

それが瞬く間にみんなに広まり

はい

僕はついに影で言われるだけでなく
あだ名が“ロリ”になってしまった


それと
僕も短冊を書いたんだ
それを見たアスカが
「なにそれ?」
て、まさにそんな顔しながら言ってきて

そうだろうね
僕は短冊に
“日本で暮らしたい”
って書いたからね

はは
アスカにあの夢の事、話したら笑うだろうな

どこか外国に住んでいる大人の僕
仕事から帰り家に入る
家の中ではきれいな奥さんが待っていて
僕の愚痴を聞いてくれる

“あぁ、日本が恋しいよ”

さらさらの金髪がよく似合う奥さんはあきれたように

“観念なさい、バカシンジ”

青い瞳を微笑ませながら言うんだ
そして

“わたしを愛したのが運の尽きよ?おにいちゃん”

その一言に降参した僕は
大きく膨らんだ奥さんのおなかに頬を寄せるんだ
幸せそうに



うん
せめてあの夢の舞台が日本になるよう
それなりに努力しとかなきゃ

それに
いまさらドイツ語の授業を受ける気もないし

たのむよ?
彦星さん



フォークリフトさんから妹アスカもの「ハニードリッパー」の続きをいただきました。

素敵なお話でした。ぜひフォークリフトさんへの感想をforklift2355@gmail.comま でお願いします。

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