保養所での10日間
とっても楽しかった!


浜辺で日焼けして
農家のおじさんに貰ったスイカでスイカ割り!
おいしかった!


山で見た蛍
とってもきれい
“おいでおいで”って鳴く代わりに光るの
とってもロマンチック


酔いつぶれていつまでも起きないママとシンジ
テーブルに渦高くつまれた空き缶
一体何時まで飲んでたの?


浴衣で出かけた夏祭り
色んな屋台を楽しんで
ビールばっかり飲んでるシンジを引っ張って盆踊り
面白かった!
飛び入りで金髪の女の人が太鼓を叩いたの!
わたしもやりたかった!
そういえば、飛び入りの女の人を見たシンジが、何でだか困ったように笑ってた


保養所から戻った夜
不思議な夢を見た
夢にあの女が出てきて
「幸せにね」
なんて言ってくるから
「言われなくても!」
って言い返してやったの
あの女、くすくす笑って
「碇君は大変」
なんていってきて
なんか言い返してやろうと思ったんだけど…
消えちゃった
ま、いっか
それより、帰ってきてからも毎日が楽しくて
シンジが“涼しいところがいい”なんていうから
映画を見に行ったの
洋画の吹き替え
だって字幕って言ってることと違うこと書いてあるじゃない?


そんで夏休みの最後は
怒涛の東京三泊四日二人旅!
おばさまのところの“東京研修所”をホテル代わりに借りてもらって
荷物は全部宅急便で送っといて
シンジのバイクでツーリング
シンジが高校生のとき免許とって、おじさんに無理やり買わせたやつ
スクーターのおっきいやつでナンバーはなぜか“1224”
どうせならクリスマスイブじゃなくてわたしの誕生日にすればいいのに
ま、いいや、それに
シンジとおしゃべりできないけど
くっつけるから好き

初日は武道館でライブ
シンジがどーしても見たかったんだって
“研修所”で宿泊の手続きをして
そのままバイクで武道館
平然と靖国神社の駐輪場にバイクを止めて武道館へ向うシンジの神経!
結構図太い!


うるさいだけのライブが終わって
シンジは大興奮
“最高の8ビートロックンロール”
だの
“ファンキーベース”
だの
“セクシーキーボード”
だの
“ダイナマイトドラムス”
だの
ほんっと!
バカじゃないの?!


で、翌日はディズニーシー!
もー!さいこー!
言葉じゃ言い表せない!
ほんと!夢の国!
一番嬉しかったのはシーのクルーの人に「今日はお二人の特別な日ですか?」って聞かれて、もう全力で「はい!」って答えたら記念品くれたの!
かわいいミッキーとミニーのワッペン
「次に来るときは付けて来て下さいね」って言われて
シンジに「また来ようね!」っていったの
そしたらシンジ
ちょっと考えて
わたしにキスしたの
シーの人も見てるのに
「お幸せに」って言われちゃった!


それで三日目は臨海公園…
水族館でマグロ見て…
観覧車
あと、バードウォッチング
シンジのファーストキスの場所なんだって
あの女との
なんか悔しいからその後、渋谷につれてってもらった!


最終日はお台場!
お台場合衆国!
「お二人は恋人ですか?」
なんてインタビューされちゃった☆


なんて自慢話をヒカリにしてたの
楽しい日も
つまんない日も
ごきげんな日も
不機嫌な日も
毎日シンジといっしょで
とっても幸せで
愛されてるって実感できて

そんな話をしてたんだけど
あれ?
なんだかヒカリの様子が…
なんだか言いたげ…

「ねぇヒカリ」
「え?」
「どうしたの?」



ビックリした
ヒカリも夏休みを満喫してたみたいで
鈴原に

告白したんだって

とにかく

毎日あって…

その…

毎日…



してたらしい











アスカの夏休みが終わり
僕は少しだけ自由になった

僕?
大学の夏休みを舐めてもらちゃ困る
講義が再開されるのは10月
まだ一月も先

でもまあ楽しい8月だったかな

海でビール飲んで
アスカに叱られて


相変わらず僕の事を監視している加持さんに貰ったスイカでスイカ割り
なぜかスイカを割った後もアスカは木刀を振り回して
僕はいい年して全力で逃げ回った


二人で見に行った蛍の光
蛍たちの愛の歌
アスカが光にあわせて「おいで…おいで」ってささやいて
可愛い僕のアスカ
………
僕が蛍ってゴキブリに似てるなぁって思ったのは内緒だ


アスカが寝た後、おばさんに誘われて晩酌
ケース買いしたビールがみるみる減っていく
無敵の肝臓を持つおばさん
ノックアウト寸前の僕
おばさんはここぞとばかりに僕を攻め立てる
「ねぇ?避妊はしてるの?」
「ねぇ?ちゃんとアスカのこと面倒見てくれる?」
「ねぇ?アスカのことずっと好きでいてくれる?」
「ねぇ?シンジ君、アスカのことおねがいね」
一人でアスカを育てたおばさんの気持ちはわかる
でも
さすがにきつい
アルコールの力を借りておばさんの質問攻めから逃れ迎えた朝
小鳥の鳴き声すら拷問のようだった
ましてや朝から元気なアスカの声なんか…


別に格好なんてどうでもいいって言ったんだけど
無理やりアスカに浴衣を着せられて、二人で出かけた夏祭り
屋台の食べ物ってビールと合うよね
うん、焼き鳥も悪くない
ほろ酔い気分でアスカに手を引かれて盆踊りの輪に加わって
なんだか僕まで楽しくなっちゃって
いい思い出だね
…それと
盆踊りの太鼓を叩きたいってアスカが言い出して
「叩かせてくれるのは小さい子供だけだよ」って言ったら
「大丈夫!大人も叩いてる!」っていって櫓を指差して
…いやぁ、さすがに焦った
リツコさん…
似合いすぎだよ…

保養所から帰ると、とうさんも“出張”から戻っていた
夕食を食べながら保養所での出来事を母さんに話しすと、かあさんは楽しそうに僕ととうさんに向って
「そう、二人とも夏休みを満喫できたのね」
笑顔のかあさんと凍りついたとうさん
ご愁傷様


あぁ…そういえばこの夜
綾波の夢を見た
海に立つ綾波と波打ち際に立つ僕
「碇君…ありがとう」
僕が頷くと綾波はとっても幸せそうな笑顔で
瞬きをすると
綾波は消えてしまった
不思議と悲しくはなかった
目が覚めてもなぜかとっても清々しく
綾波は最後まで綾波らしい

寝坊して少し遅い朝食を取っていると、かあさんが洗濯物を取り込みながら話しかけてきた
「夕べね、夢にレイが出てきたのよ、おかしいのよ?笑いながら“ふられちゃった”って言って」
かあさんは楽しそう
だから僕は綾波のまねをして
「ばあさんは用済み」
僕たち二人は声を出して笑った
本当におかしくて
滝のような汗を流しながら庭の雑草をむしるとうさんが怪訝な顔でこっちを見ていて
それがまたいっそう僕らの笑いを誘った




分かってはいたけど
あらためてアスカって頭良いんだなぁって思い知らされた
アスカが出かけたいって言うから外はイヤだって言ったんだ
僕の小さな抵抗
そしたらアスカが映画を見にこうって言って
見に行ったんだけど…
「字幕はイヤ!わけわかんないもん!」
…アスカに言わせると俳優が喋る英語と字幕の日本語が全然違うらしく、それがイヤだそうだ
…アスカが中学の英語の教科書を見て「なんで中学生にもなって絵本なんか読むわけ!?」って言ったのを思い出す
はぁ…
将来が不安だ
もちろん自分の学力についてだ




八月最後の一週間
ついにこの日が来た!
ミサトさんから貰ったバイト代を握り締め
姑息にも法律を盾に有給まで申請して
「しっかしシンジ君もいい趣味してるじゃない」
なんて苦笑いされながらライブのチケットを受け取った

あんまり人に言うような事じゃないんだけど
僕は昔、人生の一部をくれてやった
思い出そうとは思わない
もうどうでもいい
綾波も“ありがとう”って言ってくれた
だからどうでもいい

それと引き換えに僕は一つの権利を手に入れた
年に一度だけ何でも欲しいものをもらえる
どんな高価なものでも

まぁ、高価なものを貰った事はない
今年はライブのチケット
アスカに見せてあげたいんだ
最高の8ビートロックンロールを
日本にしかないビートロックを

アスカを誘って東京への小旅行
宿泊先は…“あの”組織の研修所
寝るだけだからどうでもいい
アスカは二つ返事で旅行の準備を始めた
おばさんは苦笑いだったけど

アスカからのリクエストで夢の国やら大砲置き場やら国営放送局がある丘の下のほうの繁華街やらも巡ることになった

そしてリクエストはもう一つ
「バイクで行きたい」

バイクか…
思い出す
高校に入って、免許を取って
かあさんに言ったんだ“バイクを買ってくれ”って
そしたらかあさん、綾波みたいな表情でしばらく悩んで
“おとうさんに直接いいなさい”って言ってきたんだ

イヤだった
出来れば一生口をきかずにいようって思ってたくらいだ
でもここまで来てバイクが手に入らないんじゃって思って
とうさんに言ったんだ
意を結して

「バイクを買って欲しい」

あの日依頼、初めてとうさんに口を聞いた
とうさんは一瞬驚いて
でも、すぐにいつもの顔に戻って
「ああ」

僕らの親子関係はこの日から修復が始まった

納車される日
アスカを載せてあげる約束をした
免許取得から一年未満の僕じゃ道交法違反だけどね

でもその日は朝から雨で
ああ、運が悪いなぁなんて思いながら、雨に濡れる真新しいマジェスティを眺めていたら
「おにいちゃん!」
アスカの声が聞こえて
今日は止めとこうって言おうと思いながら振り向くと
カッパを着込んだアスカが嬉しそうに立っていて
僕の始めてのツーリングは雨の降る素敵な日曜だった



念願の武道館ライブ
このアーティストはアスカと同じで片親の家庭に育って
アスカとは逆に四分の一だけ外国の血がはいっている
だからアスカに来て欲しかった

「うぅ〜ん!うるさかった!」
ベッドに転がるアスカ
「そお?」
僕もアスカの横に寝転がる
「背のおっきいギター弾く人が足パタパタさせてただけじゃない」
アスカの腕が僕の胸にまわる
「ははは、そうだね」
僕はアスカを抱き寄せ髪を撫でる
「でもよかった」
「ん?」
「シンジ、楽しそうだった」
「うん」
「わたしね、ずっとシンジのこと見てた」
「え?」
「“ほてーほてー”って叫ぶシンジ見てた」
「うん」
「楽しそうなおにいちゃん…」
アスカが僕の頬をなで
しばらく見詰め合って
後は秘密




翌日はねずみの国の海の方
イクスピアリにバイクを止めると、なぜだかアスカが呆れ顔
なんでだ?
結構面白いんだよね
うん、魔法の国をちょっと舐めてた
それと気がついたんだ
アスカは僕の事をよく見つめている
きっと今までもそうだったんだと思う
きっとアスカは僕の事を僕よりも知っているんだろう
だから少しアスカの事喜ばせてあげたんだ

はたから見てたらベタベタしてるように見えたんだと思う
いや…多分…してるんだろうけど
とにかく、従業員の人に「今日はお二人の特別な日ですか?」ってきかれて
アスカは大喜びで「はい!」って答えたら従業員さんがワッペンをくれたんだ、「次に来るときはつけてきてくださいね」って
アスカはすごく嬉しそうに「また来ようね!」って
だから、ただ返事するだけじゃ詰まんないから
キスしたんだ
アスカの喜んでるんだか照れてるんだか
そんな顔がとても可愛かった



翌日、僕はアスカを誘って臨海公園へ…
もちろん理由もちゃんと話した

精一杯背伸びして綾波を誘った思いでの場所

綾波がだいすきだった水族館

綾波は僕の手を握り、何時間も回遊するマグロを眺めていた

観覧車の中でしたキス

緊張する僕を、綾波はそっと抱き寄せてくれた

野鳥園で偶然見た狩をする猛禽、それを哀れむように見つめる綾波

それを見て僕はなぜ綾波が肉を食べないか、少しわかった

それをアスカに全部話した
そうしたほうがいいと思って
一つ一つ話すたびにアスカは“シャクだわ!”って顔をして

水族館で僕に寄り添いながらマグロを眺め
「トロってどこら辺?」
って真剣に聞いてきて

観覧車のなかで僕の胸に耳を当て、鼓動を聞きながら
「絶対にキスなんかしてやんないんだから」
そういってから僕にキス

野鳥園でカイツブリの親鳥の背中に群がる雛鳥をみて
「みて!おかあさん溺れちゃいそう!」
楽しそうに笑っていた

やさしい僕のアスカ
わかってるよ
君は僕に思い出より楽しい一日を作ってくれたんだね
僕とアスカがいれば、想い出はいくらでも作れるんだって

だからって渋谷で僕のお財布を軽くしてくれなくてもよかったんだけどね




最終日はお台場に出かけた
テレビ局主催の奇怪なお祭り
理解不能な食品を売る屋台
体育館より狭い遊園地
そのどれもがとても楽しく

わかってる

いま、僕は人生を取り返してる
んん〜ちがうなぁ…

僕は我ながら暗く楽しくない人生を送ってきた
特に14から、ついこの前まで…

でも今は違う
僕には太陽がいる
僕を照らし
僕を精一杯包んでくれる素敵な太陽

僕は今が楽しい
アスカとなら、2時間ならんだ挙句、死ぬほど不味かったラーメン屋だって楽しい

だから日向さんがテレビ局のスタッフのふりをしてアスカにインタビューしたのだって気にもならない
“君の事はしっかり監視してるよ”っていう僕へのアピールなんだろうけど、知ったこっちゃない
僕がどこへも逃げ出せないように、僕とアスカのインタビューを全国放送のバラエティー番組で流したのもどうとも思わない

むしろ愉快なくらいだ
あんたたちが僕から取り上げたものをアスカはいとも簡単に与えてくれる

だから僕は見せ付けてやった
僕の事を恐れて
僕を監視しているやつらに


アスカに抱きつかれ、困ったような僕の笑顔を





ちなみに後日、この放送を見た大学の奴等から
“お前って本当にロリコンだったんだな”
ってメールが次々に…

また登校拒否しちゃおうかな…

なんて事を考えていると
ドアの開く音が聞こえ
“ただいま”
僕の可愛い太陽の声が聞こえた

うぅ〜ん
なんか声に元気がない

着替えが終わって、いつもなら僕の膝の上に飛び乗ってくるのに
今日は時々僕の事を見ながら部屋をうろうろ
なんだろう?

「アスカ?」

僕が声をかけると
アスカはちょっと躊躇い、そして何かを決心し、口を開く

「つれてって」

慣れてる
アスカのお姫様語
まずは要求
“何を”かは後回し

「いいけど、どこへ?」
「ホテル」
「ホテル?」
「ラブホテル!」

はぃい!?






シンジはしどろもどろで“そんなところに行ってもアスカを女性として扱えない、アスカ…そうじゃない…そんなんじゃない”って言い出して

わかってる
わかってるわよ!
別にそこに行けばシンジが…おにいちゃんがそれをしてくれるわけじゃないって…わかってるわよ!

おにいちゃんは私の事とても大切にしてくれて
だから心の中でわたしに対する気持ちが整理できてなくて
おにいちゃんの心の中で、わたしを抱きたいって欲望は常にわたしを守りたいって気持とわたしへの純粋な愛情に負けちゃう
だから、この夏だって何度もそんな夜はあったのに
いっぱい色んな意地悪されたのに
わたしのその声を聞いたシンジはいつの間にかおにいちゃんの顔に戻ってしまう

私は誰よりもおにいちゃんに愛されてる
その自信もあるし実感もあるし
そんなおにいちゃんに不満なんかこれぽっちもない
それにいつか絶対に…その自信もある


でも!それとこれとは別!


ヒカリに聞かされた自慢話!
鈴原としたアレやコレやソレやあんな事やこんな事やそんな事!
べつに全然悔しくなんかないけど!
なんか…絶対にイヤ!

私はこの歳で“愛される”って事の本当の意味をわかっちゃったちょーしあわせものなの!

だけどそんな事わかっちゃいないヒカリは物凄くいろんな事自慢げに

だったら私は、まだヒカリが行った事ないとこ行ってやる!







結局アスカのわけの分からない迫力に押し切られ
今日も家族は誰も居ないのに、なんだかコソコソしながらアスカをつれ、目的地に向った

ホテルはフロントを通さないで済む所を選ぶ
そうしないと一発で追い返されかねない
いくらアスカが大人の振りしてても14歳は14歳
だからホテルの出入りにも物凄く気を使う

さっと部屋を選びすぐに部屋へ
中に入った途端アスカは上機嫌
携帯を取り出してそこらじゅうシャメを撮り始めた

「じゃぁお風呂!」

お湯を湯船にはる
アスカは恥ずかしそうに服を脱ぐ
「はずかしぃ」
かわいい照れ笑い

裸のアスカが僕の服を脱がす
「なんだか恥ずかしいね」
「うん」
やっぱりアスカは少し恥ずかしそう

僕のぱんつを脱がしたアスカが僕のあいつにご挨拶
「こんにちは」
かわいい声

うん
アスカはいつも僕のこいつを見ては“かわいい”っていう
自覚はあった
そんな自慢できるようなもんじゃないのはわかってた
でもさ
アスカに“かわいい”って言われるたびに僕の心はマリアナ海溝よりも深くえぐられる


全文を掲載すると“小さくてかわいい”だから






二人で湯船
やっぱりこういうところの湯船は広くていい
アスカは携帯を持ち込むと、湯船の中で僕に抱きつき携帯で自分撮りをして
満足のいく出来の一枚が出来たのか、携帯を脱衣所にもどし、すぐに僕の胸の中に舞い戻ってきた


洗いっこをして浴室を出る
アスカは軽く髪を乾かし冷蔵庫をあさりジュースを飲むと、照れもせず僕の手を引いてベッドイン
また僕の胸にしがみついてシャメを撮る
何してんだろう?

「ねぇシンジ」
「ん?」
「アレなに?」

アスカの指差す先には

「大人のおもちゃの自販機」
「ふぅ〜ん」
「興味ある?」
「ない」





かわいい僕の太陽は遊びつかれて寝てしまった
まぁ朝帰りでもいいか
それに結局僕とアスカは“おもちゃ”で遊んじゃって
そのせいでアスカはお疲れ
普段はきかんぼうなアスカだけど、僕の腕の中ではびっくりするほど無抵抗
流石にキスマークつけたのは不味かったかな
それにしてもなんでラブホなんて来たかったんだろう?
やたらシャメ撮ってたし

「…ぉにぃちゃん」

眠るアスカが夢の中で僕を呼ぶ
じゃあ僕も行かなきゃ
アスカのいるところが僕の居場所なんだから

僕はそっとアスカに寄り添い
ちょっとだけお尻をつねってから眠りに落ちた





目が覚めるとアスカも寝ぼけまなこで僕の事を見つめていた
「おはよぉ」
アスカの寝ぼけた声
僕は返事の変わりに夢の続きを
アスカのかわいい悲鳴
僕は悪いおにいちゃん




室内に設置された清算機を使い支払いを済ませ部屋を出る
廊下でタイミング悪く他のカップルと鉢合わせ
こういうときはお互い無視するのがマナーなんだけど…

ホテルの廊下で出会った相手の顔を見てビックリするアスカ
僕は笑顔で手を差し出し

「口止め料」

開き直ってアスカに手を振るリツコさんと
人生最大の失敗でもやらかしたような顔のとうさん
とうさんは札入を取り出し僕の手のひらに一枚

「二人分」

僕はチラッとアスカを見る
どうしていいもんかわからないアスカは困ったような顔で取り合えず頷き
とうさんは“あの時”以来の苦々しい顔でそれをみる
そして僕の手のひらの上にもう一枚お札が追加された





ファミレスで朝食
アスカは困ったようにとうさんから渡されたお札を眺め

「いいのかなぁ」

あまいなぁアスカは
これがかあさんなら身ぐるみ剥ぐくらいは平然とやってのける
コレくらいで済ましたのは僕なりの優しさ
まだまだ僕は碇家の免許皆伝には程遠い

「いいからもらっときなよ」
「ママに怒られないかな…」
「とうさんにお小遣いもらったって言えばいいんだよ」
「いいのかなぁ…」
「いいから貰っときな」
「うん」

困った顔のままお財布にお札を仕舞うアスカ
かわいいポーチにお財布を仕舞うその時
僕の目に飛び込むものが

「もってきたの!?」
「え?あ、これ?」
「これ…って、そんな…」
「記念☆」

アスカは嬉しそうにポーチをぽんぽん
はぁ…
何も“おもちゃ”を持って帰ることないのに…







放課後
ヒカリは食い入るように私の携帯を見入る
液晶に次々と展開されるホテルの写真
そしてお風呂の中でよりそう私とシンジ
それとベッドの仲の二人

「ねぇアスカ!やっぱりああいうホテルって!」

ヒカリの質問攻め
きもちいい!
んふふ


「ねえヒカリそれよりもさ、すごいもの見せてあげよっか?」
「なになに!?」
「ふふ〜ん♪お・も・ちゃ☆」
「?」
「とにかく家に来て!」










昼寝
綾波の夢を見た
夢の中で寝転んでいる僕をかがみこむように覗き込みながら

「碇君も大変」

綾波は苦笑い
僕は

「結構楽しいよ」

綾波は“はいはい”って顔で僕のおでこをぺちぺち叩くと消えてしまった


そこで目が覚めた
起き上がり、庭に出て空を眺める
ちょうどアスカが帰ってきたみたいでアスカと友達の声が聞こえた

「心配しなくていいよ」

僕は夏の青空につぶやく

まぁしかし
ロリコン呼ばわりされる覚悟はしてたけど…
アスカの友達に変態お兄さん扱いされることになるとは、このときはまだ知る由もなかった

綾波!
知ってたんなら教えてよ!



フォークリフトさんから妹アスカもの「She's gone」の続きをいただきまし た。

これは素敵な夏の思い出ですね。

しかしシンジ、ロリ疑惑ですか…年齢の差ができてしまうとそうなってしまうのか…。

いいお話でした。ぜひフォークリフトさんへの感想をforklift2355@gmail.comま でお願いします。

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