「おきろ!ばかシンジ!」

うるさいよ…

「もう昼よ!」

夕べはバイトが遅番で…
家に帰ったのが4時…
シャワーを浴びて…
色々やって…
ベッドに入ったのが6時前…

ねむい

「おきろ!」

騒がしいくけたたましい掛け声とともに布団が剥ぎ取られ

「おりゃ!」

枕まで取り上げられる

「おはよう…アスカ」
「早くない!」

あぁ…
小さい頃はかわいかった
“おにいちゃん”って
かわいい声で

「とっとと起きて朝ごはん食べちゃって!片付かないじゃない!」






暖めなおしたスープとふにゃふにゃになったトーストを味わいながら思い出す

僕が10歳のとき
かあさんの職場におばさんがやってきた
おばさんには娘がいて
まだ4歳で
手がかかるから
よく家で預かって
僕が面倒を見てたんだ

元気な子で
くりくりした可愛い青い目で
さらっさらのブロンドで
僕の膝の上に乗っかって

「おにーちゃんのおよめさんはアスカがなるの☆」

って言って

あぁ…
かわいかったなぁ…


入れたときは温かかったコーヒーをすする
苦い…


今でも
「女の子一人じゃあぶない」
って理由でよく預かってるんだけど…

「早く食べちゃいなさいよ!ばかシンジ」

確かに…
アスカから見ればバカだよね

アスカは成績優秀
日本に飛び級制度があればアスカは大学くらい楽勝で卒業って感じで
何かにつけて僕をおちょくってくる

あぁ
昔はよかったなぁ

ん?

アスカが僕のあごを摘まみ
じろじろと僕の顔を見回す

「ねえ」
「ん?」
「ヒゲ、剃って」
「ヒゲ?なんで?」
「剃って」
「いいよ…出かけるわけじゃないから」

無精ひげがおきに召さないお姫様

「出かけるわよ」
「はぁ?」

勘弁してよ…
こっちは眠くて眠くて

「買い物行くから」
「運転手?」
「そ」

はぁ

アスカはよく、僕を連れまわす
そのおかげで僕の短くも儚い恋は終わりを告げた

僕は男子校出身で
当然出会いなんて無く
大学に入り
学業3割、キャンパスライフ7割で努力して
ようやく彼女を手に入れた

楽しかったよ

マナとさ
デートなんかしてさ

久方ぶりのかあさんとアスカ以外の女性

毎日がばら色

でも
やっぱり僕はアスカの面倒見なきゃいけなくて
夜遊びはそこそこしか出来なくて

いつもマナはそこら辺が不満だって文句を言っていた

一年前の今日
僕はアスカと買い物に出て
ばったりマナと会っちゃって
アスカが
「ねえ、この人がシンジが言ってた“体目当て”の女?」
なんていって
僕にベタベタしてきて

マナが見たこともない笑顔で
「あら?シンジ…言ってくれればよかったのに」
って言って

そのままスタスタ


はぁ

アスカのイタズラで
僕の素敵な日々は終わってしまった

その上アスカのおかげで
僕は
影で“ロリコン”って呼ばれることになった

はぁ…

マナのおっぱい…
やわらかかったなぁ…






アスカはいそがしくも楽しげにショッピングモールを走り回る

僕はベンチに腰掛け
携帯をいじくり
ミサトさんにメールを送る

はぁ…

携帯のカレンダー
今日の日付

僕の誕生日

祝ってくれたのはミサトさんだけ

あ…かあさんも“何かほしい?”って昨日聞いてくれた

ミサトさん…
僕のバイト先の人

とうさんの紹介で
ミサトさんのやってるバーでバイトさせてもらってる

従業員は僕とミサトさんの二人だけ

結構忙しい

御絞を出して
おつまみを用意して
お酒はミサトさんの仕事
レコードもお客さんのリクエストに答えないといけない

いい音なんだよ

レコード

すごくお金がかかっててさ
スピーカーだけで自動車が買えちゃうんだ

あ、車といえば…

僕はポケットの中から取り出した車の鍵をながめる
そこには
ミサトさんから貰ったプレゼント

シルバーアクセサリー

キーホルダー代わりにつけたんだ
銀で出来たミニチュアの“ダブルエッジソード”
かっこいい

センスいいよな
ミサトさん

ミサトさん…
おっぱい
やわらかいんだよなぁ…


「なににやけてんの?」
「え?別に」

いつの間にかアスカが戻ってきてて

「じゃあこれ車まで運んで」
「はいはい」



アスカの荷物をアスカの部屋まで運ばされ
ようやく開放されるかと思っていると

「後で誕生日祝ってあげるから」
「あ?うん」
「プレゼントも有るから」
「うん」

背中を向けたまま
なんだろう?
アスカ…
機嫌悪いってわけでもないんだけど…


アスカのプレゼントか…
去年は最悪だったなぁ…


アスカの家を出て自宅へ向う
わずか8歩の距離

つまりお隣





今日は土曜
しかも誕生日

なのに
かあさんは仕事
とうさんは相変わらず出張

あぁ…

さみしいなぁ







なんだか変な感じのアスカ

出来合いだけど
結構な料理とケーキが食卓を彩る

さっきの買い物はこれだったのか

うん

可愛いとこあるよ

でも
なんか変だ?

「ねえ」
「ん?」
「シンジはいくつになったの?」
「二十歳」
「大人ね」
「うん」
「…」

変だ…





少し豪華な晩餐が終わり
アスカはかたずけをはじめる

僕はする事も無いから

「シャワー浴びてる」

シャワーから出る頃にはアスカはテレビを眺めてて

テーブルの上に
プレゼントがのってるはずだ








あれ?
シャワーから戻って
テーブルを見ても

何も無い

アスカはテレビを眺めてる

あれ?
プレゼントあるって言ってなかったっけ?


忘れてきたのか

まぁ明日でもいいか
なんか機嫌もよくないみたいだし


僕はそのまま部屋に戻り
ベッドで横になった

この歳になると
誕生日もただの一日だなぁ

なんて思っているうちに
だんだん眠くなり


……
………






ベッドがきしむ

んん

ちょっと寝ちゃったみたい

ん?

シャンプーの香りと
ベッドがきしむ音がして

振り向こうとしたら

「…こっち見ないで」
「アスカ?」
「…」
「寝るなら…かあさんの部屋で…」
「…」
「アスカ?」

アスカの手が僕の背中にそっと添えられる

「アスカ?」
「…シン…おにいちゃん」
「ん?」
「おにいちゃん…だんだん遠くに行くんだね」
「遠く?」
「昔は…ついこのあいだまでは…私のそばに…いつもそばにいてくれたのに」
「アスカも…もう大人だから」
「じゃあ子供でいい」
「アスカ?」
「シンジが…おにいちゃんがそばにいてくれるなら…子供でいい」
「どうしたの?」
「振り向かないで!」
「あ…ごめん」
「シンジが…おにいちゃんが大人になるたんびに…私だけのおにいちゃんだったのに…知らない女にへらへらして…」
「は…はは…ぼくもさ…おにちゃんも男だから…恋人とかほしくて…アスカ…寂しがらせちゃってたのかな?…ごめん」

アスカの顔が僕の背中に…

「なによ…ばかシンジのくせに…私の奴隷なんだから…ほかの女にやるくらいなら…」


背中越しでもはっきりわかる


僕にしがみつくように抱きついてきたアスカは


裸だ


「アスカ…どうしたの?」
「勝手に大人になって…何が“女がほしい”よ!」
「アスカ…」
「許さないんだから…私をおいていこうなんて…ゆるさない…ゆるさない」

アスカは涙声で
その声は
小さい頃のアスカの声で

ちょっとした事で泣き出す
アスカの声で

アスカが泣くたんびに僕は
「僕がいるから、大丈夫だよ」
って
なぐさめて
そのたんびにアスカは
「ほんと?おにいちゃんずっとアスカといっしょ?」
って

アスカは

いつの間にか僕が避けるようになってしまっていたアスカは

天才少女で
運動神経も抜群で
なにをやらせても失敗なんかしないアスカは

アスカの心の中は
小さい頃の
さみしがり屋のままだった


「ごめん…おにいちゃんはどこにも行かないよ」
「うそ…またほかの女のところに行くくせに…」
「ミサトさんのこと?」
「出来るもん」
「ん?」
「あいつとおんなじこと…わたしだって…」
「アスカ…」
「ねぇ…おにいちゃん?」
「ん?」
「イヤなの…」
「なにが?」
「おにちゃんからほかの女のにおいがするのが…」
「…うん」
「イヤ…」
「うん」
「だから」
「うん」
「わたしだけのおにいちゃんにもどって」
「アスカ…」

振り向いた視線の先にいるアスカは
涙で目を腫らし
その目は
すがるように僕を見つめていた

「大人になんかならないで」
「アスカ…」
「大人になるんなら…おにいちゃんが大人になるんなら…」
「うん」
「わたしもなる」


小さい頃


なぐさめてあげる度に
アスカは僕にちゅうをしてくれた



僕の唇にあの頃の感触が



やっぱりアスカはあの頃のままだ



大人になんかなっちゃいない
僕の膝の上にいた
あの頃のまま


「ねぇおにいちゃん」
「ん?」
「わたしを大人にして?」
「…」
「あたしを置いてかないで?」
「大丈夫だよ…おいてかない」
「じゃぁ…」









うん
立派な犯罪者だ

僕は

罪状は
少女に対する性的暴行

うん
取り返しはつかないね

アスカは楽しそうに僕の腕の中で僕の指を持て遊ぶ

「悪い指、えいえい」

楽しそうに僕の指をいじめる
僕の指の罪状は
いたいけな少女のをいじめた事

まぁ
アスカが股間をぐちゃぐちゃにして喜んでたのは考慮されないんだろうなぁ

アスカの手のひらが僕の股間に伸びる

「痛かったんだぞ?」

アスカは僕の股間を意地悪にいじめる

こいつの罪状はアスカに対する傷害罪
こいつはアスカに深々と突き刺さって
そのせいで、アスカはしばらくは股間に違和感を感じるんだ

まぁ
僕の背中についた爪の跡は正当防衛ってヤツなのかな?
それに

“おにいちゃん…おねがい”

っていいながら
恥らうアスカの顔も見れたし

うん
もうすぐアスカは僕に対する刑を言い渡す

「あのね…もうはなれないで…おにいちゃん」

あぁ!
なんて重い罰だ!

「浮気も駄目」

可愛い顔の裁判長が僕を見つめる

「今日からおにいちゃんはわたしの彼」
「うん」
「ずっと一緒にいて」
「うん」

僕はおとなしく刑を受け入れ
アスカにキスをした

「きゃ!」

アスカのかわいい股間のつぼみをなでる

「はずかしぃ…」

かわいく僕を睨むアスカにもう一度キスを

「ねぇ…おにいちゃん」
「ん?」
「あのね…」
「うん」
「キスも…その…おててのほうも」
「うん」
「もうちょっと乱暴でもいいよ」


アスカのかわいい悲鳴が響く

かわいいぼくのアスカ
うん
君は小さい頃のままだ

わがままでうるさくておせっかいで

かわいくて
甘えん坊で
だいすきな

僕のアスカ

「アスカ?」
「なに」
「だいすきだよ」
「うん!」


かわいいキス

うん
だいすきだよ






ちょっと気になる

さっきからチラチラ見えるかわいい小袋

多分あれ…
僕へのプレゼントだよな

中身
なんだろう?



「おにいちゃん!」
「ん?」
「…もう“おにいちゃん”は言わない」
「なんで?」
「だっておにいちゃんわたしの彼だもん」
「そっか」
「彼氏なんだから、これからは“シンジ”って呼ぶ」
「今までも呼んでたよ?」
「ばか」
「はは…じゃあ“シンジ”って呼んで」
「うん!それでね…これ」

アスカはかわいい小袋をぼくに差し出す

「開けていい?」
「どーぞ」

満面の微笑みのアスカ
袋の中には小さな箱

箱を開けると…


「ありがとう、アスカ…大切にする」
「うん☆」

はは!

なるほど!
もう逃がさないよってことか!

いいよ
ずっとそばにいるさ!





ペアリングなんて
がらじゃないけど

うん!
こんな手錠も悪くない!



フォークリフトさんからシンジ誕生日記念をいただきました。
姐アスカもいいですが妹アスカもいいですね。もちろん同級生アスカもですが…。

素敵なお話でした。ぜひフォークリフトさんへの感想をforklift2355@gmail.comまでお願いします。

寄贈インデックスにもどる

烏賊のホウムにもどる