目が覚めれば思い出せないけど

ぼくは毎晩夢を見る

これより先も…これより前も…

この場面も…
何度も見てきたんだ
今日はどこで目を覚ますんだろう…



着慣れないタキシード
今日はたくさんゲストも来てる
それに…
人生で一度きりの

結婚式

あぁ…緊張する
さっきからスピーチの練習を繰り返して…
どうしてもどもっちゃう

うぅ…
そうだ
使徒って字を手のひらに書いて飲み込むんだ!
よし!

こんこん

「新婦様の御用意が整いました」

いよいよだ!

扉を開けると
そこには
天使がいた

いや
天使なんかじゃない


女神様だ
小さいころ教会で神父様がお話してた

女神様だ

アスカは
「女神様みたいだ」


アスカが真っ赤な顔してうつむいちゃった
「ばか…」
小声でつぶやきながら

ぼくを見上げては
うつむく
アスカは何回もそれを繰り返す

照れてるんだ

かわいいな


ぼくはアスカの手をとった
「さぁ、いこうアスカ…時間だ」


アスカは黙ってうなづいた
しあわせだ
いま、僕は世界でいちばんしあわせだ…



みんなが祝福してくれる


僕とアスカが永遠の愛を誓う


左手に永遠の愛の誓いが輝く


ライスシャワーの中僕たちは進む


いて!

もう
ミサトちゃんがお米、顔めがけて投げつけてきた

もう、いたずらっ子のままなんだから


アスカが僕の顔についたお米を払ってくれた
「もう!あいつは!」
ちょっと怒ってる
ははは
大丈夫
なんともないって


アスカがブーケを高く放り投げた

一瞬、空で止まったように見えた


綾波のいたずらかな?



ブーケは孤を描いて…








「わあ!」

はだか?
なんで!?
どうして?!

「どうしたの!」
りっちゃんがあわてて飛び込んできた
思わずシーツでちんちん隠しちゃった
「なん…でもない…よ…あははは…」
あぶないあぶない…
「そう?ならいけど…」
りっちゃんはそういうと部屋を出ていた


もう!
絶対アスカちゃんだ!
だって寝てるだけで裸になるわけないじゃないか!

「アスカちゃんおきてよ…ねえ、おきてよ」
目をこするアスカちゃん
「んん…どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ…ひどいよぉ」

あれ?アスカちゃんも?
「もう…シンジが先に脱がしたんじゃない…わすれたの?」
「えぇ?」
うそ!
ほんとに!?
覚えてないよ!?

アスカちゃんは裸のままベッドから飛び起きて

「おはよう!えっちなシンジ!」

「もう…」
ほんとはどうなのさ…



ご飯を食べてるとりっちゃんが
「あら、シンジ君虫に刺されたの?」
「え?」
「ほら首筋がまっ赤じゃない」
「え?なんともないけど?」
「ほんとにまっ赤よ」
痒くないけど?

あれ?
さっきまで僕を見ていたりっちゃんがアスカちゃんをにらんでる


「いい加減になさい…」
「はぁーい」


なんだろう?




アスカちゃんは今日からお仕事

僕はどうせやることも無いからついて行くことにした


僕は車の中でおばさんにメールして
ゲームをはじめた

アスカちゃんはりっちゃんと仕事の話


なんとか本部につくとアスカちゃんはメディカルチェック
かっこいい!

一時間くらいでアスカちゃんが戻ってきた
「ねえ!アスカちゃん!」
「なに?」
「みて!隠しキャラ!」
「はぁ…」
「すごいでしょ!」
「すごいすごい」

馬鹿にするみたいに、頭ポンポンなでられた


アスカちゃんは地球防衛軍の人たちと挨拶
僕は付き添いできたりっちゃんが渡してくれた防衛軍のパンフレットを読むことにした

なになに…ようこそネルフ江
どうでもいいや…なんか面白いページないかな?
お?今月のメニュー発見!
A定食500円
B定食400円
特定食650円
軽食 各200円

う〜ん、ぼくは特定食よりA定食のほうが食べたいなぁ
あ!このラーメンってのはなんだろう?
パスタかな?
今日のお昼はこれがいいな
後でアスカちゃんにお願いしよう

えっと
それから?
人気のネルフグッズベスト5?
第5位ニコンD9000(ネルフ仕様限定セット)?
僕がドイツから持ってきたカメラのほうがかっこいいなぁ

「ねえ君」
「はい」
急に声かけられちゃった
「碇シンジ君?」
「あ、はい」
誰だろう?ショートカットの女の人
「ふーん」
なんか僕のことじろじろ見てるけど…
「あ!私、伊吹マヤ。あなたのお姉さんの助手みたいなもんかな?」
「あ、はじめまして」
「よろしくね!」
伊吹さんって人がちらっと、りっちゃんのこと見て
僕の耳元で
「あのね、あなたのお姉さん…ショタコンだから…気をつけてね」

固まる僕にウインクすると、すたすたいっちゃった

いわれてみれば…

りっちゃんて

僕のこと…




ええ!!!!!!!!!



向こうでりっちゃんがみんなにアスカちゃんを紹介してる
伊吹さんが僕が見てるの気づいてウインクしてきた


突然りっちゃんがこっち振り向くから思わずパンフレット読むふりしちゃった

「そしてあそこで物思いにふけっているのが私の弟でアスカちゃんのフィアンセ、碇シンジ君」
え?
何の話!?
みんな笑ってる
なに?
ちょっとまって!

アスカちゃんもビックリしちゃってる

「まっ、そんなわけで、将来この子は私の妹になるのでくれぐれも失礼の無い様に頼むわね」


なんかみんな、通りすがりに握手してくるけど
ぼく…
あの…
まだ…
アスカちゃんにちゃんと言ってないっていうか…
あの…


もう!
りちゃんの年増!

あれ?
声に出してないのに
りっちゃんがこち振り向いた…
まさか…

ニュータイプ!?






「お昼ご飯なんだけどさぁ」
僕がアスカちゃんに話しかけたその時
警報が鳴り出した


みんなが大慌てで走り出す
アスカちゃんとりっちゃんが何か言い合ってる


僕はシェルターみたいなところへ行く事になった
怪獣が出たんだ
アスカちゃんが戦うんだ


「さぁシンジ君、行きましょう」
女の人がシェルターに連れて行ってくれる

「シンジ!」

振り向くとアスカちゃんがあの格好に着替えて立っていた

「シンジ、おまじないしようか…」

「え?」

ここで?

みんな見てるよ…



アスカちゃんが震えたり怖いことが待ってたりするとき…

僕がだきしめる

それが「おまじない」

小さいとき、何かの実験の前につめを噛んで壁をにらんでるアスカちゃんを見て
「がんばって、アスカちゃん」
って言いながら抱きついたんだ

しばらく“ぽかん”ってかおしてたけど

「もう大丈夫!シンジのおもじないで怖くなくなった!」
って言いながらアスカちゃんが喜んでくれたんだ



それ以来
アスカちゃんに
「おもじない」
って言われたら、それを繰り返すようになった


「はい!」
アスカちゃんが何だか嬉しそうな顔で僕にくっついてくる
パットで膨らんだ胸がぼくに押し付けられた

もう!
しらないよ!?
みんな見てるからね!

ぎゅぅ


でも、今日は…
本物の怪獣と…

「がんばってね…あすかちゃん」


僕の声が震えてる

アスカちゃんが笑顔で僕のこと見つめてた



途端
アスカちゃんは、羽が生えてるんじゃないかって勢いで駆け出した

何度も僕を振り返り

ウインクをしてくれた



「もおいい?さ、行きましょう」
いつの間にか女の人が僕の横に立っていた





シェルターに入った僕はとりあえずゲームをする事にした
一緒についてきたお姉さんがジュースをくれた

結構時間がたったころ
たくさんの人が入ってきた

「あれ?終わったんですか?」
僕は入ってきた女の人に声をかけた
アスカちゃんが怪獣をやっつけたのかと思って

「いいえ、シンジ君…これから始まるのよ」

僕の周りに大人の人がたくさん立っていた
さっきまでいた女の人はどこにもいない

何だか不安になった

「シンジ君…あなた…アスカの事たすけたい?」
「え?」
「アスカこまってるの」
「負けちゃったんですか!?」
「いいえ…」
「じゃあ…なに…うわぁ!」

大人の人に方を押さえつけられた」

「シンジ君、あなた、戦ってみない?英雄になれるわ」

「え・え・え・?…むり…です」
一生懸命首を振った

「できるわよ、だって一回できたじゃない?知ってるのよ」
「なんのことですか!?勘違いです!やめてください!」

大人たちが無理やり僕を立ち上がらせる


「ばかな事はやめて!」
「りっちゃん!」
助かった…
何だかわからないけど
あの女の人怖いんだ

「なにをやってるの!?ミサト!」

「リツコ、この件に関しては全権限が私にあるの…お呼びじゃないのよ?」

「ばかいってないで!シンジ君!」

りっちゃんが僕の手を引いて部屋から連れ出そうとしてくれた

どか!

りっちゃんが壁に押さえつけられる

「さあシンジ君、行きましょう」

女の人が怖いくらいの笑顔で僕に近づいてきた

「シンジ君!逃げなさい!早く!」

りっちゃんが叫んでる

「早く!走って!」

僕は言われたとおり駆け出そうとした
大人の人を振りほどこうとしてボタンが取れてしまう

首に何かが刺さる
急に立てなくなった
目も…

耳だけは聞こえる

りっちゃんが何度も僕のことを呼んでる
でも
一番近くで聞こえたのは

「さぁ、行きましょう」

怖い女の人の声だった






僕は少し狭いところにいた
どこだろう?
ここ?

頭が痛い

まるで…

自分がおおきな

大きなロボットになったみたいだ




なんだろう?

声が聞こえたような?

アスカちゃんだったような?



あ!


また注射だ…


あぁ

あぁあああああ

ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!

うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!


声だ!

今度ははっきり聞こえる!

「いい、シンジ君、今見えているのがアスカちゃんをいじめる悪いやつ」

向こうに君の悪いお化けみたいなやつが立ってる
あいつか…

「アスカ…ちゃんを…いじめる」

「そう、だからシンジ君、あなたがあいつをやっつけるのよ」
アスカちゃんをいじめる!?
ほんとうだ! 
アスカちゃんが
アスカちゃんが!


「うぅ…いじめるな…アスカちゃんを…いじめるなぁ!はなせ!はなせ!今すぐはなせぇ!」


すぐに体が軽くなった

アスカチャンをいじめて泣かすお化けに僕は殴りかかった

お化けもやり返してくる
まるで体に何かつきたてられたみたいにイタイ
縛の腕を折ろうとしてくる

アスカちゃんが泣いてる!
アスカちゃんをいじめるな!


僕もお化けの腕を握り締めた



誰かに蹴飛ばされた

赤い巨人
アスカちゃん?

赤い巨人は僕を抱きかかえるとアスカちゃんの声で
「大丈夫だからね」
って言ってきた

途端、僕は放り投げられ

後は
遠くから
赤い巨人が

アスカちゃんが

お化けをやっつけるのをボーっと見ていた


お化けはバラバラにされてやっつけられた

僕は地面ごと地下に向かう

あぅ!

また注射だ

眠くなってきた…

アスカちゃん…
ごめんね…
ぼく…







誰かが僕の手を優しく握ってくれた
かあさん?
かあさんだ…

だって
かあさんの匂いがする

かあさん
ただいま


かあさんが僕の体をなでてくれる

まって
今起きるから

かあさん


ゆっくりだけど
まぶたが開いた

やっぱり

かあさんだ

かあさん
「ジュース、飲みたい」

“なに?もう一回”

かあさんが僕の顔を覗き込む

「ジュース…のみたい」

かあさんが僕にキスしてくれた

“買ってきてあげる”

かあさんは立ち上がってジュースを買いに行く


あれ?

またかあさんが僕のこと覗き込んでる?


「おかえりなさい、碇君」


へんなの
かあさん、僕のこと“碇君”だって


あれ?
かあさんじゃない?
あれ?
あれ?

ここどこ?

アスカちゃん?

あれ?
かあさんは?

どこ行ったの?
かあさんは?

アスカちゃん?

それに今の人…

だれだっけ…
絶対知ってる
誰だっけ…


あれ?
ぼく
誰に起こされたんだっけ?
んん〜
アスカちゃん…だよな…
うん
そうだ…

あれ?
なんか大切な事忘れたような…
なんだっけ?

あ!
アスカちゃんがさっきの人のこと聞いてきた

「えっと…誰だっけ?うぅ〜ん知ってる人なんだけど」

ここまで出かかってるんだけど…

「ま、いいわ。今買ってくるから」




アスカちゃんがたくさんジュースを買ってきて
「どれがいい?」
って

なんか嬉しそう

「これ」
ピンク色のパッケージのジュースを指差すと、アスカちゃんはストローをさして

「はい、あーん」

もう…持てるよ
別にけがしてるわけじゃないよ…

あれ?
何で僕病院みたいなところにいるんだっけ?

あれ?…
体…なんか…思うように…動かない

あ…そうだ…
僕は怪獣と…
こわいひとに…
むりやり…


アスカちゃんが僕の顔覗き込んできた
心配そうな顔で


僕はアスカちゃんの首筋に顔をうずめた

アスカちゃんが僕の髪に顔をうずめる

アスカちゃんの髪の毛が僕の鼻をくすぐった

「アスカちゃんのにおいだ」








メール受信

忙しいの?

本文
やさしいシンジ、今日はまだメールができないのですね
また、アスカにつれまわされてるんですか?
ごめんね、アスカ、わがままで。
おばさんは今日、神父様にシンジとアスカの無事をお祈りしてもらいました
きっとあなたたちを神様が苦難から救ってくださいます
それから、日本にも教会はあるそうです
日本人はみんな仏教徒で皇帝に忠誠を誓ってるそうですが、シンジはクリスチャンなんですから毎日神様においのりをしてください。
日本では皇帝の命令でカミカゼアタックをする事があるそうです
もしシンジがそんな事させられそうになったら、ちゃんとクリスチャンだって言って断るんですよ
良いですね
昨日、アスカから“シンジにおこられた”って電話がありました
少し嬉しそうだったから大丈夫だと思います
アスカはシンジの事は何でも話してくれます
アスカはシンジのことが大すきです
だから、かってなおねいだけど、アスカの事をお願いします

それから
たまにはおばさんに声を聞かせてください

長いメールでごめんなさい
おやすみなさいシンジ

フォークリフトさんの「いつもと同じ夢」シリーズのシンジサイドのお話でしょうか?「もうちょっとだけ」第3話です。
本編アスカ編とパラレルに読むといいんでしょうか。どのシーンのお話か見比べてみましょう〜。

感想はアドレスforklift2355@gmail.comにどうぞ〜。

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