「惣流先生!やっぱりクリスマスって旦那さんと過ごすんですか!?」
ませたクソガキどもに廊下で話しかけられた
「ええ、もちろん」
「やっぱりプレゼントとかもらうんですか!?」
「いえ、わたしが渡すほうね」
わーとか、きゃーとか騒いで
「気が済んだ?」
まったく…ガキども…
あん?
ちょうどいいとこにちょうどいいのがいるじゃない
「碇!あんたは聞く事ないの?」



クラスメートと話してたらおねえちゃん…惣流先生が通りかかって
季節が季節だから友達が先生にクリスマスの話を振って
僕はコッソリ友達の後ろに隠れてたんだけど…
イジワルなおねえちゃんから逃れるわけもなく…

「あ…いえ…」

友達は“こいつにクリスマスなんて関係あるわけないじゃないですか”なんていって
あぁ…
その通り…
だって…ぼくって…
ああ!
恨んでいいのか!感謝していいのか!
4歳の僕!
助けてよ!



「もういいかしら?」
我ながら冷たく言い放って職員室へ
家でも職場でも旦那様をいじくるのは楽しいものね☆



友達と別れて家路に着く
クリスマスプレゼントかぁ…
三年前のあの日
おねえちゃんに10年越しのバースデープレゼントをアレされて…
「責任とってあげるわよ」
なんていわれて…
おばさんにさんざんあやまられて…
かあさんと父さんにはしこたま怒られて…

一応その日以来おねえちゃんとはしないってことになったんだけど…
おばさんも父さんもかあさんも…
まあそうだよね…
おねえちゃんは大人の目を盗んではぼくと…
それがばれるたんびにおねえちゃんは
「責任取るから」って笑って
仕舞いにゃ、ぼくに指輪を買わせ左手の薬指に…

いつの間にか僕とおねえちゃんは僕の卒業を待って入籍する事になってて!
なに!このマンガみたいな展開!

それにクリスマスの僕は超多忙なのです!

碇家のクリスマスを祝って
両親に冷ややかに送り出され
惣流家でもう一度クリスマスを祝う

しかもおばさんは入れ違いに僕の家へ…

つまり大人に気を使われちゃってる

去年なんか家を出るとき父さんに
「避妊はしろ」
ってすごい顔で言われて…

ああ…とうさん…
それはおねえちゃんに言ってください!



あぁ!楽しみ!
明日から冬休み!
そしてクリスマス!
旦那様の成績がなんともパッとしないのがアレだけど
まあいいわ!
今年もアスカサンタがシンジに幸せ運んじゃう!



親子でクリスマスのご馳走を食べ
両親からプレゼントをもらう
僕も色気着いてきたからちょっと無理言ってブランド物の財布をねだったんだ
「入れる中身もないくせに」
はい、かあさん
おっしゃる通りでございます

段々気まずくなってきた
そろそろおねえちゃんの所に行く時間…
席を立とうとするとかあさんに咳払いされ
時計を見ると父さんに成績の事聞かれ

ザ!生き地獄!

そうこうしてるうちにチャイムが鳴り
いつもより早めにおばさんがやってきた

僕は両親から逃げ出すようにそそくさと席を立ち
将来の伴侶の下へ
出掛けにおばさんに
毎度毎度だけど
「ほんとにごめんなさいね…絶対にあの子に責任取らせるから…」

いえいえ
こちらこそ

とは言える雰囲気ではなく
僕は家を出て石を投げなくても届く距離にある惣流家へ



「遅かったじゃない?」
早速いじめちゃう!
その困った顔がまたなんとも!

「ほら!上がんなさい」
手を引いてリビングへ

さぁ!今年もたぁ〜んとかわいがっちゃお!



今年は…
いくらなんでも目のやり場に…
あぁ…
ドンキで買ったの?そのサンタさんキャミ…
まるでキャバクラでケーキ食べてる気分だよ…
………
わぁ!



ケーキ食べ終わったシンジをソファーに押し倒しちゃった☆
よいしょ!



ななな!
あれ?
おねえちゃん?



ふふ!
倒れこんだシンジの横に座って膝枕!
かわいい…
家でも外でも人目があるから…
ほんとはこういうこといっぱいしてあげたいんだけど
学校のクソガキにでも見られたら…
私はいいんだけど…
シンジがかわいそうだし…
ごめんね…
ダメなおねえちゃんで…



おねえちゃんにほっぺたや頭撫でられて…
気持ちがいいのとちょっと疲れてるので…
ねむ…い…



あらあら?
シンジ寝ちゃった
くーくー言って
やっぱりかわゆい!
ふふ…
そっとしとこう…



…んぁ
寝ちゃった…
あ…
おねえちゃん…



「おきた?」
かわいいなぁ…
ちょっと居眠りしただけなのに…
かわいいなぁ
うん
かわいい
「お風呂、はいっといで」
もぞもぞしちゃって

「いっといで!」

ふふ!
じゃあ私はその間に…



入ってくる気配はない…
今日はお風呂場で…じゃないんだ…
うぅ〜ん
じゃあ上がってからか…

さっきのおねえちゃん…
きれいだったなぁ…
僕のこと見て…
笑ってて…
きれいだったなぁ…
ほんとに僕…
おねえちゃんと結婚しちゃうのかなぁ?
僕でいいのかなぁ?

ねぇ…4歳のときの僕…お前はどう思う?



ふふふ!
準備万全!
用意万端!
さぁ!シンジ!
早く上がってらっしゃい!



お風呂から出ると
いつの間にか寝巻きが用意されてて
それに着替えてリビングへ戻って
リビングには誰もいなくて
とりあえず勝手に冷蔵庫開けてポカリ飲んで

「上がったんなら早くいらっしゃい!」

おねえちゃんの部屋から声が…

さっきのおねえちゃんの顔を思い出すと
なんだか恥ずかしくて…

「はいるよ?」
って!
えぇぇえええええええええ!!



きゃー!もう最高!
その顔!
それが見たかったのよ!
もう!期待以上!



……
はい…
今のおねえちゃんの…惣流アスカさんの格好をご説明いたします…
私、碇シンジは若干混乱しており
わかりづらいところもあるかと思いますが、どうかご容赦ください…

まず、全体的に言いますと
全身黒ずくめで、頭にかわいく乗っけたサンタキャップの赤が映えております

次におみ足ですが、その、冗談みたいに長い足が細かめのアミタイツで包まれております
無論、黒でございます
それをガーターで吊っており
それもまた、黒です
ショーツですが
おそらく黒のレースかと…
なぜ推測かといいますと、ブラジャーが黒のレースなことと
挑発するような黒いショートパンツをはいておりまして、まだ、ショーツ自体が確認できないからです

なお、現在の私の状況は
優しくキスされており
このままベットへ向かうものと思われます



大好き!
もう本当に大好き!
だから…
「シンジ…ここ…」

私が自分の胸を指差すときょとんとして
もう…しょうがないなぁ
「ここよ!はやく!」



電気を消して
おねえちゃんにベッドに引き込まれて
そしたらおねえちゃん自分の胸指差して…
なんだかわかんないなぁ…

とりあえず言われるまま、左胸の乳房に手を当ててみよう

むにゅ

あれ?
“あん”とか言っちゃうのはいいんだけど…

むにゅむにゅ

あれ?

ブラのカップの中になんかはいってる?



あん…
もう…
ようやく気付いて…あん…
私の胸の中まさぐって
あん…
やっと見つけたわね…
どう?
暗がりでもよく見えるでしょう?



…指輪?
眺めてたらおねえちゃんが
「…おねえちゃんからシンジへ…クリスマスプレゼント」
あ…うん…
「ありがとう」
なんだろう?
ちょっとはおしゃれでもしろってことかなぁ?
「してみて」
え?あ…はいはい…
「ちがう…左手!」
え?…はいはい…
「ちがう!薬指!」
え?はいはい…

え?

薬指!



ほんとににぶちん!
もう!
せっかくムード盛り上げたのに!

でもそこがシンジなのよね

そこが好き



ちょっと緩めだけど…
これって…
えっと…
「シンジ」
「え!な、なに?」
「今日から私といるときはその指輪しなさい」
「う、うん」
「それと」
「なに?おねえちゃん?」
「それ!」
「え?」
「そ・れ!『おねえちゃん』!」
「え?」
「今日から禁止!」
「え?」
「あと16ヶ月しかないのよ!?」
「は?」
「はぁ…いい!私たちの結婚まであと16ヶ月しかないの!」
「え?あ!…うん」
「『おねえちゃん』のまんまじゃ変でしょう!」
「え…うん」
「だから禁止!今から!」
「今から?」
「『アスカ』って…呼びなさい」



あー!もう!
ちょっとてれちゃったじゃない!

とにかく
「わかった!?」




「うん」
わかったけど…
どうしてもひとつだけ聞きたい…

「ねえ…おねえ…アスカ…」
「なに?」
アスカって呼んだら嬉しそうな顔
でも僕はどうしても聞きたい

「何で僕なの?」



私のかわいいシンジが
少し不安な顔して

いいわ
特別におしえてあげる

「最初にうちに来た日…覚えてる?」
かわいく首を振るシンジ
「そう…じゃあいきなりオネショしたのは?」
「覚えてないけど…何回も聞かされたから…」
「そ…めちゃくちゃかわいかったの」
「え?」
「オネショしたシンジ…かわいかったの」
「え?」
「困ったような顔して、だからママには私がしたって言ったの」
「それも…何回も聞いた」
「もちろんママもわかってたんだろうけど…『あっそう』って言って」
「うん」
「本当にかわいかったの」
「うん」
「それからずっとかわいい」
「…」
「今もね」
「…」
「それに」
「それに?」
「あんたがかわいいせいで私…恋のひとつも出来なかったのよ?」
「僕が?おねえちゃ…アスカの?」
「そ!あんた見てるだけでかわいくて、他の男なんかどうでもよくなっちゃうのよ」
「ぼくが…」
「だから…その責任取って」
「え?」
「いい!?私はお隣のおもらし君に心奪われちゃってるの、じゃあどうすれば私は幸せになれる?」
「…」
「だから責任取りなさい…私もとるから」

そのまま唇押し付けてやった



目が覚めると少しさむい
窓から外を覗くと雪が積もっていた

僕の傍らで寝息をたてる裸のサンタクロース

部屋を見渡すと脱ぎ散らかした黒い下着たち

僕の左手には…
黒いサンタからの贈り物

あ…ちがうか…
サンタからの贈り物は僕の隣で寝息をたてている

「さむいから」

誰への言い訳?
とにかく僕はもう一度ベッドにもぐりこんだ

やわらかくてあったかい



あきれた
まだ寝てる
ほんとにお子ちゃまね
外は雪景色だってのに

夕べも何回言っても「おねえちゃん」だもんね…

ま、いいか…
すぐには無理か…
うん…
いいじゃない!
楽しみが増えて!
へへ…わるくない!

「シンジ!おきろ!雪だぞ!」



んん〜
んぁ
二度寝しちゃった…

「ほら、外、真っ白よ!」

言われて覗いた
朝一人で眺めたときより少し汚れたけど
二人で眺めると…
うん
いいね


ちょ!
おねえ…じゃなくて
「アスカ!?」



やっぱりかわいい!
もう!
えいえい!


あら?

「おかえんなさい、ママ」



僕がおねえ…アスカに思いっ切り抱きしめられて
胸の谷間でもがいてるところへおばさんが音もなく帰ってきて
…いや
たぶん、ちゃんと「ただいま」って言ったんだろうけど
聞こえませんでした…はい



またしてもママッたら私たちを見て中指を立てて
まぁ色々あってシーツをめくるのは勘弁ね!
見たくないでしょう?愛娘のアレなんか?
それより

「ねえママ!みてみて!」



呆れ顔…って言うかやるせない顔のおばさんにむかって僕の左手を掴んでみせるおねえ…アスカ
僕の手の指輪を見たおばさんが

「もういいわ…」



もう!
ママッたら照れちゃって!



僕のオネショに始まる恋物語
その始まりを僕は知らない
でも
サンキュー

よくやった!
4歳で天才だよ!



16ヵ月後
職員室で、私は校長と教頭に挨拶状を渡した

“私たち結婚しました”

受け取った同僚や校長がぽかーんとしてる

“碇 シンジ アスカ(旧姓 惣流)”

「碇シンジって…あの碇?」
「ええ」
「ようやく三流大学に滑り込んだあの?」
「ええ」
「いったいどうして?…なんで?」
「なんでかしら?忘れました」
「いやしかし…生徒とは…」
「先月卒業してますが?」
「いや…そうですが…」
「そういうわけで、今日から“碇”です、どうぞよろしく」
「あ…いえ…それは…おめでとうございます…」

いやー!最高!
この瞬間のためにシンジに対してツンケンしてたみたいなもんよ!
どうだ!
うらやましいか!



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