評価<彼編>

byむぎさん

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彼女に対する周囲の評価


容姿端麗。頭脳明晰。運動神経抜群。天上天下唯我独尊・・

わがまま、高飛車、勝ち気で強気。





「・・・・でも、あいつの前でだけはちょっと違うらしいぜ・・聞いたか?」

「ああ、聞いた、聞いた。」

「くそお、何であいつの前でだけ・・」

「彼氏の前でだけ可愛い・・って良くねえ?」

「いいよなあ・・かといって、人前でベタベタしてるわけじゃないしなあ・・」

「くそう・・やっぱ、玉砕覚悟でコクっときゃ良かったかな・・」

「だよなあ・・」「うんうん」「もしかしたらなあ・・」





「ねえねえ、こないだの彼女の話、知ってる?」

「え?知らない、何々?」

「可愛かったのよお。彼氏の話になった時にさあ。

真っ赤に頬染めちゃって、スッゴイ照れちゃってて」

「へえ・・なんか想像つかないなあ。」

「でしょでしょ?いつもはあんなに強気だから、堂々と惚気でもかますかと思ったら

おろおろしちゃってて、真っ赤になっちゃってさ。でも嬉しそうに笑ったりしてね・・」

「ふうん・・あの彼女がそんな風になるなんてねえ」

「私、彼女の見方変わったわ。うん、あの子可愛いと思う。」





彼に対する周囲の評価



容姿端麗、成績上の中。運動神経も悪くない。でもなんとなく冴えない・・

穏やかで優しく物静かで大人しい。ちょっと線が細いかな。





「でも、あの彼女があいつと付き合いだしてから変わったからなあ・・」

「もしかして、凄い奴なのかもしれないな・・」

「まあ、あれだけの美人に告白出来るってだけでも凄い事だったかもな・・

お前出来るか?告白・・」

「あれくらいの美人となると鑑賞用だと思ってたからなあ・・

大体、彼女の性格は今だって変わってないじゃんか」

「俺達の前ではな・・・・」





「良く見るといい感じよね・・彼女が付き合ってるだけあるって感じ」

「頼りなさそうだと思ってたけど、芯はしっかりしてるんじゃない・・

あの、彼女と付き合ってるんだから」

「それに優しい・・ってのはポイント高いわよね・・やっぱり。」

「実は・・私、前から彼の事いいと思ってたのよね・・

フリーの内に声かけとけばよかったなあ・・」

「実は、私も・・」

「私も」「私も」「私も」





彼女と彼がカップルである・・ということに対する周囲の声


「「「「「「彼(彼女)がフリーだったらなあ・・!!」」」」」」


・・・・正直だね・・君たち・・(汗)


「今はフリーじゃなくてもいつかチャンスがあるかも・・その時こそ・・」

ああ、そこの人。無駄な抵抗はやめなさい。

この世界を書いてる作者は遺伝子にLASが組み込まれてるんだから(笑)

その野望は永久に叶わない(爆)


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さて、そんなこんなで、公認カップルに納まっている


彼・・碇シンジ

彼女・・惣流・アスカ・ラングレー





人のモノだと思うと良く見えるのか何なのか、ここ最近両名とも人気赤丸急上昇だ。


性格はともかく(と、思われていた)容姿は最上級であるアスカ

以前からその秀麗な容姿に勝手にたぶらかされる輩もいたが、

この所、それに輪がかかってしまった。

それというのも、今までは学校では颯爽と肩で風切って歩いていたアスカだが

シンジと付き合い出して半年が経った今では、学校でもすっかり肩の力を抜いて

自然体になったからだ。


明るく元気で積極的。でもちょっとへっぽこ・・というアスカ本来の姿は

とても魅力的だった。


アスカが魅力を増せば増すほどシンジに対する評価も上がった。


なんせ「あの」アスカがすっかり可愛くなっているのである。

・・おそらくはシンジと付き合いだしたことによって・・


と、言う訳で、シンジも今やしょっちゅう呼び出されては告白を受ける・・という

一中の「付き合いたい男NO.1」になってしまっていた。





今日も今日とてお呼び出しのあったシンジ。

丁重にしかしきっぱりと「ごめんなさい」をする。


うつむいて涙ぐんでしまう女の子を見ると、胸が痛むが

もっと泣かせたくない女の子がいるんだからしょうがない。


せめて、心から謝って、はっきりと断るのが礼儀だろう・・と

シンジは今日も深々と頭を下げて来た。





その態度がまたまたシンジの評価を高めてしまうところが謎といえば謎である。

きっぱり、はっきり断られたのに

「そういう所が男らしいわよね。」

「うん、イメージ変わったわ。」

「やっぱり、あきらめられない・・」

と、さらに人気はうなぎ上りである。


「・・こうなったら既成事実を作ってでも・・」

ああ、そこの人・・そういう無理を言うのは止めなさい。

この世界の作者はそういう話は書けないんだってば!(爆)

そんな事実は絶対に作れない(笑)


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肩を並べて帰り道

2人の影が仲良く伸びる。

お手々繋いで帰り道

夕日が真っ赤に燃えている。


シンジがハア・・と溜め息をついた。

繋いだ手にきゅっと力が込められた。

その手の力にアスカを見れば、心配そうな蒼い瞳。








もちろん、アスカは知っていた。溜め息の訳を知っていた。

お昼休みに中庭の、木陰で頭を下げていた。

最近シンジはもてるから、こっそり隠れて見に行った。

不安になって見に行った。





あの子知ってる、隣のクラス。

長い黒髪、日本美人。結構、人気の女の子

控えめ、淑やか、物静か

そんな言葉の良く似合う、きっと内気な女の子。


その子がシンジを呼び出した。

震える声で、青ざめた顔で、がちがちに緊張して。

ありったけの勇気で。





あたしは・・

あたしは、シンジに言わなかった・・

言おうとしなかった・・

知らない振りをして、気づかない振りをして・・

心地いい関係を壊したくなくて・・

自分を誤魔化していた・・勇気を出そうとしなかった・・


ずるいね・・卑怯者だわ・・

強がっているだけで、少しも強くなかった・・

今だって・・こそこそ見に来たりして・・





アスカがその場から静かに立ち去ろうとした時だった。

「ごめん」

はっきりとしたシンジの声。

「ごめんなさい。僕はアスカが好きなんです。」

揺るぎない言葉。

女の子がうつむく。黒髪が彼女の顔を隠した。

「わかってます・・・わかってました・・・でも・・私も碇君が好きです・・

それだけ、知って欲しかったんです。」

涙声。落ちる涙。

シンジはその姿を見つめている。

「一つだけ・・聞いてもいいですか?」

涙を拭いながら、彼女が言った。

「惣流さんのどこが好きになったんですか?美人だから?」

シンジが少しだけ笑って首を横に振る。

「アスカは、とてもひたむきな人だから・・」

女の子がシンジを見る。





「がんばって、がんばって、それを失った時に心が壊れてしまうくらいに

ひたむきに努力をする人だから・・そういう所が、好きなんです。」





聞こえてきたシンジの言葉に

こっそりと身を隠したまま・・アスカは泣いた。

深々と頭を下げるシンジの背中が涙で霞んで、よく見えなかった。





シンジは優しい人だから、人を傷つければ自分は倍、傷つく人だから・・

きっと、あんな風に、はっきり言うのは辛いでしょう?

それでも、あたしのために・・

その辛さから逃げないでいてくれるのね・・








心配そうに見つめている蒼い瞳にシンジは笑いかける。

繋いだ手にしっかりと力を込めて。

アスカがシンジに微笑みを返してから

真っ赤に燃える夕日に目を向けて言った。


「シンジがあたしを好きになってくれて良かった・・」


小さな呟きに、シンジが思わず足を止める。

アスカも立ち止まり、シンジの正面に立った。

「・・あたしから言ったことなかったよね?」

「何を?」

シンジが首を傾げる。


アスカが息を吸い込んだ。

ちゃんとシンジの目を見つめる。

不思議そうな黒い瞳。けれども優しくアスカを見ている。

真っ赤な夕日よりも赤く頬を燃え上がらせたアスカが口を開いた。

桜色の唇から、一言、紡ぎだされる言葉。

不思議そうな色を浮かべていた黒い瞳が見開かれた。

そして嬉しそうに笑う。

目の前で真っ赤に染まっている女の子を抱き寄せる。

抱きしめる。

ボッ・・と、火を噴かないのが不思議なくらいに赤くなっているアスカも

シンジの腕の中で、胸の中で、幸せそうに笑った。





一つになったままの影法師が赤く染まっている道に長く伸びていた。





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彼に対する彼女の評価

「そ・・そんなの……評価なんて出来ないわよ!!」





そんな真っ赤になって吐き捨てて・・しかも走って逃げなくても・・(汗)





END


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こんにちは、むぎです。

現在進行形で、宿題を片づけまくっております(笑)


いかがですか?このコッテコテのLASは(笑)

私は書いてて砂どころか砂糖を吐いてる気分になりました。

いやー・・参った(書いてる本人が参ってどうする)

久々に書いたんじゃないかなあ?ここまで露骨に甘い話・・つーのは(笑)

まあ、アスカ嬢のバースデーも近い事だし(何の関係が?)

これくらい甘くしといてもいいでしょう(爆)

では。またいつかお会いしましょう。



 むぎさんからまたもや烏賊した小話をいただいてしまいました。

 シンジの評価もこれでますます‥‥どうなったでしょうな。
 マユミ?とおぼしき女の子から告白されて断っているシンジを見て、読者の中には嫉妬のあまりシンジの評価を落としてしまった方‥‥は、ここには来たりしないでしょうな。

 人を傷つけて自分も傷つくのが嫌‥‥だった少年が『断る』ことが出来るようになった。それもアスカのためでせうか?うむ。

 実にいい話でありました。
 みなさんも読後にむぎさんへの感想をお願いします。

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