汚名挽回<保安諜報部Xデーを探る>

byむぎさん

このお話は、前2作を読んでいただけるとわかりやすいかと思われます。

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汚名・・悪い評判。不名誉。「―――をすすぐ」

挽回・・もとへもどしかえすこと。とりかえすこと。回復。「名誉を―――する」


広辞苑より抜粋


.......


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さて、アスカがお馬鹿な兄さんたちに襲われた時、

「これで、汚名挽回できる・・」

と、喜んでしまった、保安諜報部。

この時点で、連中と作者の「あほっぷり」は確定した。

不名誉を取り返してどーする!保安諜報部!!

まあ、確かに悪い評判はばっちり回復されたでしょうね・・・・

正しくは「名誉挽回」もしくは「汚名返上」である。


.........



し!しかーし!!

こんなことでめげる保安諜報部でもなければ、作者でもないのだ!!

恥なんざ、旅先でなくたってかき捨てまくるさ!まくるとも!!

(・・恥を知らない人間ってある意味最強だなあ。たちが悪い)


というわけで、また「保安諜報部」の話なのである。


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ここは、ネルフ内 保安諜報部、チルドレンガード課、。


保安諜報部はいくつかの課に分かれている。

その一つがチルドレンのガード及び監視を担当している。

この課は保安諜報部内でも最精鋭の人間が集まっている。


さらにその精鋭たちを、ファースト・セカンド・サードの各チルドレンの担当ごとに

5班ずつにわけ、日々、チルドレン達を影から見守って・・

というか、付け回しているのである。


1班は言うなれば司令班。

2班から4班は、3交代制で24時間、担当するチルドレンをガードする

実動部隊。


そして、5班・・

これは機密漏洩の阻止を目的として、チルドレンのプライバシーすらも

監視する、盗聴班である。別名デバガメ部隊。


今日も今日とて、保安諜報部は真面目にお仕事をしていた。

そう!あの日、シンジとアスカがお手々繋いで帰った日から早一週間。

彼らは今までにない熱心さで仕事に励んでいた。

何故か?


それは、彼らの内ポケットに入っている1枚の紙が知っている。


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チルドレンガード課内、1班のデスクに一人の黒服が歩み寄った。

(とはいえ、連中は全員黒服だ。あー暑苦しい)

何やら、面突き合わせて話し合っている面々に小声で報告する。


「何!?それは本当か!!」

「確かです。サード担当3班からの報告がありました。」

「となるとXデーは近いと見るべきだろうな・・」

男の言葉に眉をひそめる面々。

顔を見合わせていたが、やがて、1人が口を開く。

「・・1週間か・・あと3日・3日もってくれれば・・」

「いや、何も今日と決まったわけではあるまい?

とりあえず準備して置くだけ・・という可能性もある。」

腕組みをして会話を聞いていた男が、ふー・・と重いため息を吐いた。

「何にせよ、Xデーが秒読みに入った事だけは間違いないわけだな・・

やはり大穴狙いは無謀だったか・・」


「課長!大穴狙いだったんすか!?」


その場にいた黒服の面々が、一斉に声を上げた。


「配当が魅力だったんでなあ・・」

課長と呼ばれた男が懐からガサガサと一枚の紙を出す。

その紙には


「セカンド・サード、初合体日時予想表」


と書かれていた。

・・・・・


「そりゃ90倍の配当は魅力ですけどね、いくら何でも無理っすよお!

一緒に住んでる高校生の男女が結婚まで純情を通すなんて・・」

「君はいつにしたんだ?」

そういった若いのに声をかける課長。

「自分すか?自分はもう外れました。2日目にかけてたんですけどね」

たはは・・な顔をする若いの。

「俺、結構良い線行くかもしれん。今日が7日目だろ?

明日になってくれれば、大当たりだぜ。」

「まじかよ。配当いくらだ?」

「2・8倍・・まあまあだろ?2回分くらいは飲み代が浮く」

「やっぱ、俺もかたいとこ狙っときゃよかったな。

おい、当たったらおごれよ!」

あっちでがさがさ、こっちでごそごそと紙を開く連中

そんな中、課長の声が飛んだ。


「おい!5班に連絡しろよ!サードが「避妊具」を入手したって!!」


・・あほか お前ら・・

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連絡を受けた5班のメンツは色めきたった。

Xデーは近い。

この結果一つで、懐具合が決まるのだ。

給料日まであと10日。

当たれば昼食はネルフの食堂でAランチが食べられる。

ついでに、帰り道で一杯ひっかけてもいける。

外れれば・・コンビニのおにぎりだな。当然飲みにも行けない。

さみしいことになってしまう。

それに・・

今まで「やってられるか!!」と思う以外どーしろってんだ!!

ってな、会話を、ずっと聞かされてきたのである。

そろそろ、ちょっとは楽しい声の一つも聞かせてもらいたいもんである。





「1週間か・・よく我慢したよなサードは・・一緒に住んでてさ」

器材のチェックをしながらつぶやくサード担当5班のG(31歳)

「まあなあ、でも、葛城三佐が結婚して、2人暮らしになってから

もう1年以上なーんもなかったからな、あの2人・・

結構タイミングはずしてたんじゃないか?」

同じく、チェックをしながら答えるセカンド担当5班のH(32歳)

「それにしたって、相手はセカンドだろ?俺だったら即日押し倒すね」

「お前だったらな。サードはお前じゃないからな。」

「・・・・どういう意味だよ・・」

「俺は人格者で通ってるんだ。これ以上はさすがに言えないさ」

「お前が人格者だったら、俺なんか聖者だぜ」

「・・そりゃ、すげえや・・」


「よお、なんか手伝うか?」

陰険漫才を繰り広げていたGとHに声をかけたのは

ファースト担当5班のI(32歳)だった。

「いや、もう終わる・・って、何でファースト班がいるんだよ。」

GがIに言った。

「何で・・って皆来てるぜ。」

Iが背後を親指で示す。

わらわらと黒服連中、そろいぶみだ。

「ちょ・・ちょっと課長!!いいんすか!?これ!!」

Hが、黒服の中に埋まっている課長を見つけて駆け寄った。

「ファーストのガード班まで・・何かあったらどうするんです!?」

「いや、まあここの所、情勢は穏やかなもんだしな。

ファーストは今日は定期検診で、本部に泊りだし・・

ファーストが本部に無事着いたのは確認済みだし・・大丈夫だろう」

「はあ・・知りませんよ・・」

Hはちょっと保安諜報部に入った事を後悔していた。


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マンションのベランダに洗濯物を取り込みに行ったシンジは

異様な光景に目を丸くした。

物影に黒服の男達が何十人もいるのである。

身を隠しているつもりなのだろうが、上からだと丸見えだ。


「いつも、ご苦労様だなあ・・にしても、今日はずいぶん多いな

何かあるのかな?」

「シンジ?どうしたの?」

「ん?ああ、諜報部の人たちが仕事してるからさ」

トコトコとアスカもシンジの横に立つと下に目をやった。

「あいつら、諜報術ってのをもう一度勉強した方が良いわね・・」

わらわらと動いている黒服にあきれた目を向けるアスカ

「盗聴機の付け方も甘かったし・・」

「こないだ掃除した時、全部はずした奴ね」

シンジが笑った。

「はずされてる事にいつ気づくかと思ってたけど、いつまでたっても気づかないし」

アスカは肩を竦めた。

「ミサトさんのところに、つけちゃったんだっけ?アスカ」

「うん、ミサトもミサトよね。盗聴機つけても全然気づかないんだから」

「気づいてて面白がってるのかもよ?加持さんが気づかないわけないだろうし」

シンジが洗濯物を部屋の中に運びながら言った。

「それもそうね」

アスカも部屋に入ると2人で洗濯物をたたみはじめた。

「ミサトさんて言えばさ・・」

シンジがため息をつく。

「いいかげん、僕に買い物頼むのやめてくれないかなあ。

今日なんてさ・・」

「何か買いに行かされたの?」

アスカがシンジに蒼い瞳を向けた。

ちょこんと首をかしげてシンジを見ているアスカ。

妙にかわいい仕種

シンジは一瞬天井を仰ぐ。


い・言えない。言ったら意識しちゃうよ・・

また、何だってあんなに可愛い顔するかな・・アスカは・・

でも、あんなに黒服な人たちがうろうろしてると、

盗聴機外したとはいえ、ちょっとなあ・・


「ねえ?何買わされたの?」

「あ・ああ・うん。ちょっとね」

口篭もるシンジをじっと見つめるアスカ。

「ふーん?」

「ア・アスカ!?今日何食べたい?アスカの食べたいものでいいよ!!」

シンジが話題をそらそうと、必死に言う。

「ま、ごまかされてあげるわ。」

アスカが笑った。


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その夜も、不毛な盗聴行為を行った保安諜報部

なんで気づかないんだろう?盗聴している家がすりかわってるのに・・


朝、シンジとアスカが学校に向かうのを確認して、ため息を吐く面々。

「7日目でもなかったか・・」

「でも、Xデーが近い事は確かなんですから!!」

どうやら、こいつは7日目に賭けてなかったらしい。


と、そこへ、呼び出しのコールがなった。

「はい・・は!?いえ、あの・・はい。はい。

わかりました。すぐにそちらに向かいます。」

「どうした?」

のんきに問い掛ける課長に、電話をとった若いのが青ざめた顔を向ける。

「あ・あの、昨夜、ファーストの部屋に泥棒が入ったらしく・・

諜報部は何をやっていたのか・・と・・

とにかくファースト担当5班の記録を持ってこいって・・

い、碇司令が・・」


ザ―――


いっきに青ざめる黒服の男達。

ファースト担当5班だってここにいるのだ。

当然昨夜の盗聴記録なんざあるわけない。





その後

保安諜報部チルドレンガード課1班のメンツが

総司令室へと雁首並べて連行された。





かなり怒られたんでしょうね。

出てきた時には絞られすぎて、水の出なくなった雑巾みたいな顔してたから・・

まあ、当然ですが・・


そんなこんなで汚名を挽回し続けている保安諜報部。


それでもがんばれ!諜報部!

明日もファイトだ!保安部員!!

作者は君たちを応援しているぞ!!

・・・・いや、ほんとだって・・







司令室にて

「碇・・その紙はなんだ?・・」

「あ・いや・その・・息子の成長具合を知りたいという親心ですよ・・」


・・・どうやら賭けに一口のったらしい・・

上がこれだもん。どーにもこーにも。





END


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こんにちは、むぎです。

なんか、壊れてんのか 私・・て具合ですが、

このお話は冒頭にあったように、前回のお話で

大間違いをした事を指摘していただきまして

出来上がってしまった話です。


お教えくださった皆様。ありがとうございました。

おかげさまで一つお利口になった上、

お話も一つ出来上がりました。

(なんで、こんな下世話な話が・・)

セカンド サード両名がXデーを経過しているのか

そうでないかはご想像にお任せします。

(どっちにも読める書き方をしたと思うんですが

どうでしょう?)

さあ、今度はどんな話がわいて出てくるか、

私にもわかりません。

というわけで、また、何処かでお会いしましょう。

では



むぎさんから、また、また投稿作品を頂いてしまいました。

汚名挽回ですか‥‥見事に汚名を挽回してますねぇ。


せめて、名誉返上だと良かったですのにねぇ(笑)‥‥返上するような名誉は最初から持ってないようですけど。

‥‥もしXデーを経験していても、この人たちではわかりそうにないですな‥‥ゲンドウも人選には気を使ってもらいたいですね<少し違う

それにしても、シンちゃんとアスカちゃん‥‥こんなに大勢の人たちに見守られて迷惑良かったですね!

素敵なお話を書いていただいたむぎさんに、ぜひみなさんの熱い声援を寄せてください。

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