評価<彼女編>

byむぎさん

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彼女に対する周囲の評価


容姿端麗。頭脳明晰。運動神経抜群。天上天下唯我独尊・・

わがまま、高飛車、勝ち気で強気。

「まあ、鑑賞用だよなあ・・離れた所から見てる分には最高級でしょ。

彼女にしたいかって?・・ははは・・勘弁してくれって感じだな・・」

同意見多数。

「あの凛とした所が堪らないですよ。女王様って感じで。

ああ、一度でいいからあの長い足で踏んで欲しい・・」

・・・・恐ろしい事に、少数ながらも非常に濃い同意見あり・・


・・・・・・・・ま、まあ、嗜好は人それぞれだけどね・・・・・

・・・・・・・・人様の迷惑にならない分にはいいんじゃない?・・

・・・・・・・・なんといっていいやら・・





・・・・か、閑話休題・・





彼に対する周囲の評価


容姿端麗、成績上の中。運動神経も悪くない。でもなんとなく冴えない・・

穏やかで優しく物静かで大人しい。ちょっと線が細いかな。

「うーん・・いい人だとは思うけどね。見た目も悪くないし優しいし・・

ただ、つまらなそう・・・2人になったら間が持たない感じよねえ・・

なんか頼り無さそうだし・・」

同意見多数

「あの弱々しい所がこう、守ってあげたい!って感じなの!

母性本能刺激されるって言うのかな?お姉様の胸に飛び込んでいらっしゃい!って」

・・・・恐ろしい事に、少数ながらも非常に濃い同意見あり


・・・・・おねえさま・・って、君・・・・

・・何歳って言ったっけ?1年生?中学校の?・・そう・・

・・・確か、今話題になっている彼は先輩だよねえ・・中3だもの・・

・・・・母性本能、刺激されるんだ・・ふうん・・





か・・閑話休題・・(汗)





彼女と彼がカップルである・・ということに対する周囲の声


「ああ・・脅されたんじゃねえの?彼が・・」

「やっぱり、外見に騙されたんでしょ・・彼が・・」

「断れなかったんじゃないの?大人しいから・・彼が」

同意見多数

「やっぱり踏まれザ・・ザザ――・・ザ・・・・」

おや、インタビューのテープに謎のノイズが(爆)





「でもまあ、お似合いなんじゃないの?」

「だよな・・」

「彼女なら、あれだけ大人しい彼氏の方がいいわよ、わがまま言い放題だし」

「彼女が主導権持てるだろうし」

「あいつなら文句も言わないだろうしな・・ああ見えて面食いなんだろ」


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てなわけで、公認カップルに納まっている

彼女・・惣流・アスカ・ラングレー

彼・・・碇シンジ


2人は現在、中学3年生だ。

中学2年の時は、訳のわからない組織の

訳のわからない兵器にのって、訳のわからないものと戦っていた。

で、もって訳のわからない事が起こって

訳のわからないままに全ては元に戻っていた。


今回この辺は書くつもりナッシングなのできっぱり省略させて頂く・・が、


訳のわからないままに全てが元に戻っていた世界で

何がどうした事か、彼は少しだけ変わっていた。





もう一度、逢いたいと思った・・その気持ちは本当だから・・





誤解に曲解、すれ違い。どーせ、わかっちゃもらえない。

そんな考え、ほっぽり投げた。

言ってみなけりゃわからない・・

宝くじだって、買わなきゃ絶対当たらないんだし・・と。


何だか変な理屈の元に告白したのが2ヶ月前だ。


そう!大方の予想を裏切って、

穏やかで優しい、でも気弱で頼りなさそうなシンジの方から

勝ち気でわがまま、無駄に積極的で、行動力のあり余っているアスカに

告白したのである。


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時は夕暮れ、所は公園。

いつも通りの帰り道。

その日1日様子のおかしかったシンジがぎゅっと拳を握り締めた。

「あ。あのあの・・アアアアス・アスアスカ!!」

「・・誰の名前よ・・それ・・」

アスカの言葉がちょっと冷たいが、シンジは勇気を振り絞る。

「あ、あのさ・・天気がいいから、こ・・公園寄ってかない・・?」

「・・・寄ってかない?って・・」

アスカが周りを見まわした。ブランコが風にキ・・と揺れた。

「・・あたし達、公園突っ切って帰ろうとしてる所じゃん。ここ公園よ?」

「あ、あはは・・そ、そうだね・・」

振り絞った勇気が萎えそうになる・・が、

そこはバージョンアップしたシンジだ。さらに勇気を振り絞る。

「あ!あのさ!」

「なーにー?」

一世一代の告白をしようとしているのに、

当の相手はシンジに背中を見せたまま1歩先を歩いて気の抜けた返事だ。

またしても弱気が顔を出しかける・・が、

シンジも伊達にバージョンアップしていなかった。

弱気の虫をもぐら叩きのようにピコピコ叩いて引っ込める。

「アスカ!」

「だから何よ?さっきから・・」

振り返るアスカの髪がふわりと揺れた。

夕日に透けて光る。


綺麗だなあ・・


ついうっかり見とれる・・

アスカがボケ面になったシンジを見て呆れた表情になった。

「・・なんなの?シンジ?」

声まで呆れ返っている。

シンジがはた・・と我に返った。


アスカが目の前で首を傾げている。

サラリ・・と音を立てそうな蜂蜜色の髪

吸い込まれそうな蒼い瞳。





その瞳の中に、どれほどの痛みを隠しているかを

僕は知ってる・・


君がこらえてきた涙の量を・・

君が隠してきた寂しい気持ちを・・

君の弱さを・・


いつも、いつでも強がって

歯を食いしばって顔を上げている君の

そんな姿を・・・・


僕はもう知っているから・・


シンジはぎゅっと手を握り締める。

心臓は緊張で爆発しそうだ。

『がんばれ・・僕!!』

シンジは心の中で自分にエールを送って口を開いた。





ロケーションは最高だ。

人気の無い公園を真っ赤な夕日が照らしている。

時折、風が梢や、彼女のスカートを揺らす。

なびく髪を片手で押さえた少女が

真っ赤な顔の少年に向き直った。

少年の顔が赤いのは夕日のせいだけではないだろう。

少年が口を開く。

その口からはいつもの彼からは考えられないほどにしっかりとした

はっきりとした言葉が紡ぎだされた。

少女が目を見開く。

みるみるうちに赤くなる少女の頬。

少女が赤くなったのは、少年の顔の赤さがうつった訳ではないだろう。

もちろん夕日のせいでもない。





真っ赤な顔して、少し首を傾げて考えて、

ぷい・・と少年に背を向けて





彼女は、こくん・・とうなずいたものだった。

少年の顔に最高の笑顔。


その笑顔をちら・・と見やって、彼女はまたぷい・・と目をそらす。

湯気が出そうにほっぺを赤くしたままで、いつものように元気良く歩き出す。


その後をにこにこと笑いながら追いかけた少年は

やがて彼女に追いつき、肩を並べて歩き出した。








それが2ヶ月前の話だ。





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さて、それから何かが変わったのか?といえば、別に何も変わらない

彼女は相変わらず勝ち気で強気で生意気だし、

無駄に積極的で行動力が有り余っている。

彼は相変わらず穏やかで優しくて、どこか冴えないし

元気な彼女に振り回されっぱなしに見える姿は頼りなさそうだ。


・・・・・・と、皆は思っているけれどね・・(笑)


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日曜日の午後。

今日は2人でデートに出かけた。


クラスメートの目の無い所では、アスカは自分を作る必要が無い。

だから、素のままのアスカがシンジの隣にいた。


明るく元気で活発で、好奇心の固まりで、

小さな子供みたいに興味のある事に向かって目をきらきらさせて走って行く。


振り返ってシンジに笑いかける。

きらめく笑顔で。


シンジもそんなアスカに微笑みかけて、アスカの元に歩み寄る。

急がず慌てず歩み寄る。

アスカの隣に立って、そっと手を繋いだ。

彼女が飛んでいかないように。


アスカがちょっとはにかんで、赤い顔してうつむいた。

シンジはそんなアスカに目を細めると、手を繋いだまま歩き出す。

軽くアスカを引っ張って、ゆっくりのんびり歩き出す。


楽しげにしゃべりながら歩いている初々しいカップル。

繋いだ手が気恥ずかしいやら嬉しいやら。


アスカがシンジをちら・・と見る。

シンジがそれに気づいて、にこ・・と笑った。

「えへへ・・」

アスカも嬉しそうに笑いかえす。ぽわんとほっぺを赤くして。


クラスメートの前じゃどういう訳だか「颯爽」としてなきゃいけない・・と

思い込んでいるアスカ。

だから必要以上に積極的で、ややもすれば攻撃的なほどの活発さだが

シンジとカップルになって、2人でデート・・となれば

「颯爽」としている必要が無い。


肩の力を抜いたアスカは、ちょっと子供っぽくて、かなり「うぶ」かった。

手を繋ぐだけで真っ赤になってるのがいい証拠である。

それでも、嬉しくて。


にこにこと、はにかみつつもシンジの手を振り解こうとしない。


シンジも蕩けそうな笑顔でアスカを見ていたりして・・・・

端で見ていると微笑ましいやら馬鹿馬鹿しいやら。


中3になって背も伸びたシンジと初々しく頬を染めた笑顔のアスカは

それはそれはお似合いのカップルだった。

見知らぬ人が照れくさそうに繋がれている手に微笑んでしまうくらいに・・





「おい・・あれ、碇と惣流じゃないか?」

偶然通りかかった数人のクラスメートがそんな2人を発見する。

「・・惣流・・だよな?あれ・・」

その中の1人が首を傾げた。

そこにはいつもの高飛車な態度は欠片もなく、天上天下唯我独尊でもなく、

可愛らしく頬を染めて、シンジに手を引かれているアスカがいた。





「・・・・・惣流って・・あんな可愛かったか・・?」

ぽつりとつぶやくクラスメート。


甘いな、君たち。

アスカがしおらしいのはシンジにだけだよ。








後日、しおらしいアスカを目撃した面々が

果敢にもアスカに「こなをかけて」みたらしいが・・・・

結果は言うまでもないだろう。





「あんたバカア!?」

バッシ――ン!!


綺麗なもみじ・・紅葉のシーズンですねえ(笑)





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彼女に対する彼の評価。


「可愛いんですよ。はい。大好きです。」


そうですか。ごちそうさま・・(汗)





END

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こんにちは、むぎです。

なんだか最近ちょっと重い話が続いていたので軽くて甘い話が書きにくい(笑)

リハビリ作ですね・・どんなもんでしょ?

お礼にリハビリ作を送るとはいい根性だな・・私(爆)

えーと、一応<彼編>とセットになってますけど、書いてもいいですか?

書いていいって言われたら、そのうち書きます(爆)

なんせ、計画性が無い物ですから、あちこちに送るはずの

お約束の品を滞らせまくっているので・・ははは・・(笑い事じゃない)

気長にお待ち頂けるとありがたいんですが(笑)

では、またお会いしましょう。


 むぎさんからまたもや素敵な小話をいただいてしまいました。

 傲慢で尊大な娘‥‥はっきりそうしか見えないアスカにも(爆)女の子らしい一面があった‥‥烏賊にもまったく、そのとおりでありますなぁ。
 そしてアスカが『女の子』になるのも、シンジの前だけ‥‥うむ、当然そうでありましょう。

 次のお話しでぜひシンジの評価の修正をお願いしたいとこであります〜。

 ほっとするようないい話でありました。
 みなさんも読後にむぎさんへの感想をお願いします。

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