前回のあらすじ

ミサトさんがカレーをつくっちゃいました。
となると生贄はアスカとシンジ君です。
さて、いつもならお約束的に二人が一口食した途端、
ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜と救急車がやって来るのですが、
今回は違いました。
「おいしい」
「ん、まあまあね」
そうです、信じられない事にあのミサトさんが、まともなカレーを作っちゃったんです。
「ミサトさんが、ミサトさんが」
感激で涙が止まらないシンジ君。
「うそ、うそ、うそよ〜〜〜〜〜!」
現実を認めないアスカちゃん。
「うっしゃ!」
がっつぽーずのミサトさん。
これだけでも大変な事件なのですが……
「ミサトぉ、うそでしょ」
「へ?」
「あのカレー誰かに作ってもらったのよね」
「はぁ?」
「ワンピース一着でシンジには黙っていて あ・げ・る」
……ブチ
「へん、愛しのシンジ君に手料理も作れないクセに。アスカ、あんた女やめたらぁ」
……ブチ
「決着つけようじゃないの」
「望むところよ」
……どたばたどたばた……

こうして女のプライドを賭けた壮絶で迷惑な戦いが始まったのです。


女の戰

Written by Kaz-A
kaz-a@po7.lunartecs.ne.jp


The 2'nd volume.
"午前11時44分48秒"

 翌日の出来事だったりする。
 その朝、ほうれん草のおひたしにはゴマとかつお節と刺し身醤油がかかっていた。
 その朝、海苔は味付け海苔ではなく、焼き海苔が並んでいた。きっと、買い置きを切らしたことに気づいたシンジの苦肉の策だろう。焼き海苔でも醤油をかければ、問題ない。
 その朝、味噌汁は白味噌のかわりに、赤味噌が使われていた。おまけに味噌を入れすぎて、塩辛くなっていた。味噌を変えると分量を間違えることはよくあることだ。ミサトがお味噌変えたの? と聞くかもしれない。
 その朝、納豆には練りカラシのかわりに生ショウガが乗っかっていた。きっとチューブのキャップの色が同じ為に間違えたのだろう。大きなミスだが主に食うのはミサトだ。気づかないかもしれない。
 その朝、シンジはアスカ専用の卵焼きを作る際に、卵を割り損ねて、殻をボールに半分ほど落っことしてしまった。まあ、それだけならよくあることだが、彼は殻を取り出そうともせず、そのまま、菜箸でかき混ぜ始めた。確かに、アスカが怒りっぽいのはカルシウム不足が原因かもしれないけど、カルシウム不足を卵の殻で補うというのはちょっと聞いたことがないのだが……新しい調理法なのだろうか?
 その朝、ミサトにはおかずが一品多かった。きっと、昨日のカレーへの感謝の現れだろう。しかし、生のイワシ三匹というのは……それってPEN2の餌ではないのか?
 その朝、シンジはアスカ専用の卵焼きをものの見事に焦がした。それにもかかわらず、彼はそのまま真っ黒に焦げた卵焼きを皿に盛りつけてテーブルに出した。致命的なミスだ。文字通り彼の命にかかわるミスだ。どうしたシンジ、人生に疲れたのか?
 アスカがダイニングに現れた。奥歯でも痛いのか、頬を押さえながら黙って椅子に背中をミサトの席へ向けて座った。
 ミサトがダイニングに現れた。奥歯でも痛いのか、頬を押さえながら黙って椅子に背中をアスカの方へ向けて座った。
 PEN2はダイニングに現れなかった。彼はダイニングの光景にオーバーラップして表示された”気まずい雰囲気”という文字を読み取ると、彼専用の冷蔵庫に戻り、くちばしで内側から鍵をかけた。
 エプロンを外したシンジが無言のまま正面を向いて席に着いた。
「いただきます」
 そっぽを向いたままの家長の号令とともに、葛城家の朝食はこうして始まった。

 アスカが片ヒジついて、身体ごとミサトと反対の方を向いたまま、器用に箸を使うと、卵焼きをつまんだ。もちろん殻入りの真っ黒焦げな卵焼きである。この後、運が良ければ、”思いっきり振りかぶってのぐ〜”で一発ノックアウト。悪けりゃ”豪華絢爛な殺戮舞踏”でシンジ瞬殺は間違いな……あ、食ってやがる。バリバリと音を立てて卵の殻をかみ砕きながら文句一つ言わず食ってやがる。
 ミサトが片ヒジついて、身体ごとアスカと反対の方を向いたまま、器用に箸を使うと、イワシをつまんだ。もちろん生のイワシである。日本人には生魚を食す習慣があるといえ、生のイワシを丸ごと食す習慣は……あ、食ってやがる。頭からバリバリ骨をかみ砕きながら文句一つ言わず食ってやがる。
「二人とも──」
 殺伐とした雰囲気の中、いちばん先に口を開いたのはシンジだった。彼の前の二人の動作がぴたっと止まる。アスカは真っ黒焦げの卵焼きをほおばったまま、ミサトは生イワシのしっぽをちろっと口から出したまま、目だけをギロっと動かしてシンジを見た。怖い。めちゃ怖い。夢見そうなくらい怖い。その場でしょんべんちびりそうなくらい怖い。心臓が3分と29秒ほど止まるぐらい怖い。へたれなシンジの根性からすればひとたまりもなく怖じ気づいて自らの殻にこもることは間違いな
「──何が原因でケンカしたんですか」
 ヲ、シンジのくせに逃げてねえ。
「アスカ」
 アスカ、汁椀を取ると、味噌汁に口を付けた。塩っ辛くて、塩っ辛くてこんなの飲めるかぁと思ったが、グッとこらえて飲み込んだ。
「ミサトさん」
 ミサト、汁椀を取ると、味噌汁に口を付けた。ちょっち塩辛いかなと思ったが、何も言わなかった。
「二人とも──」
 シンジ、汁椀を取ると──彼の味噌汁だけ白味噌だったが──冷たい口調で言った。
「──お昼のお弁当ナシですから」
 ゲ、シンジのくせに二人を脅迫してやがる。
 瞬時にアスカはシンジの方に向き直り、姿勢を正した。
 瞬時にミサトはシンジの方に向き直り、姿勢を正した。
 自分一人真っ当な味付けをした朝ご飯を食べるシンジの頭の上で、フォントはDF極太明朝体ではなくマティス-BスーパーボールドEVAカスタマイズバージョン。色はC0%Y0%M80%にK20%。サイズは2048ポイントとスタイル指定された『僕、怒ってますから』という文字が力いっぱい自己主張していた。

 まずぅ。
 やばぁ。
 切れた。
 切れてる。
 シンジたらマジで切れてる。
 シンジ君たら、マジ切れしてる。
 このままだと間食のお菓子が……
 このままだとビールが……
 このままだとシンジのおいしい御飯が……
 このままだとシンジ君のおいしいおつまみが……
 アスカがヒジでミサトを突いた。
 ミサトがヒジでアスカを突いた。
 アスカ、ミサトに横目で合図。
 ミサト、アスカに横目で合図。
 せ〜の、
「シンジごめん」
「ごめんシンジ君」
 タイミング的には0.03secだけアスカが早かった。
 しかし、
「僕に謝ってどうするんですか?」
 もっともな意見だ。
「二人とも謝る相手が違いませんか?」
 ごもっともな意見だ。正論ともいえる。
 シンジの前でうつむき、両手を太ももの上に乗せて、傍目には反省中の二人。

 だけど……

 アタシが謝る必要はない。アタシな〜んにも悪い事してない。バレバレの嘘つくミサトが悪い。出来ないことを出来るふりしてアタシとシンジをだましたミサトが悪い。アタシのことを役立たずと罵ったミサトが悪い。先に手を出したミサトが悪い。先に休戦ってふっていながら、卑怯にも正拳突きをくらわせようとしたミサトが悪い。このアタシの顎によりにもよって掌底くらわせるなんて、絶対、絶対、ぜった〜い、ミサトが悪い。おまけにシンジ切れちゃったし、お昼のお弁当無しって宣言されちゃったし……とにかく、今まで列記したミサトの悪行に比べれば、ちょっとワンピース強請ったぐらい可愛いものじゃない。だ・か・ら、アタシは絶対悪くない!!
 でも、シンジ切れちゃってるんだよねぇ。召使いのくせに、下僕のくせに、アタシの使い魔のくせに……でも、怒って切れちゃってるんだよねぇ。アイツったらこの頃ヘンに自信つけちゃって、怒って切れちゃうと家事やらないぐらいならまだしも、今朝みたいに嫌がらせまでするんだからぁ。今にみてなさいよ、馬鹿シンジぃ。今度、誰がアンタのご主人様か、しっかり、みっちり、再教育してさしあげますわよ、ほぉ〜ほほほほほほほ……って違う!!
 と、ともかく、現状の整理よ。夕べの件、アタシは全然悪くない。悪いのはミサト。リビングの件、シンジが怒ってる。アタシこの件でも悪くない、悪いのはミサト。
 そうだ、今ここで『シンジぃ、聞いてくれる。ミサトったら夕べのカレー、実は自分で作ったんじゃないのに自分で作ったって嘘ついていたのよ。ひどいと思わない。それだけじゃないのよ、わざわざアタシがミサトの為を思って、シンジがお風呂入って居ない間に、ミサトに謝るように説得してたら、逆切れして、殴りかかってきたんだから。だから悪いのは全部ミサトなの。ね、シンジぃ、アタシが悪いの? 悪くないよね(にっこり)』って言えば……ダメか。狡猾なミサトのことだもの、ワンピの件を持ち出してくるのは間違いないわよ。となると、ケンカ両成敗で最低一週間は……嫌。それは絶対嫌。
 だったら……まてよ。あの時ミサト変なこと言ってなかった。確か『土曜日、シンちゃんの前でお料理勝負! 受ける? 降りる?』だっけ。アタシ、勢いで『受けたぁ!』って答えたけど……ちゃ〜んす! ミサトったら自分で墓穴掘ってるじゃない。シンジが褒めてくれたハンバーグでアタシの勝利は確定ずみよ。
 ……ふふふふふ、ミサトぉ、今はアンタに花持たせてあげるけど、土曜日には地獄の底に突き落として、あ・げ・る(にやり)。

 なんで? どうして? 不条理だわ。なぜに私があんな毛唐の小娘に『ごめんなさい』って頭下げなきゃならないの。頭下げるのはアスカの方ぢゃない。私、謝らないから、ぜったい、ずえ〜〜〜ったい、アスカになんか頭なんて下げないからね〜〜〜だ。
 まてよ。今さあ、この場でぇ、『シンちゃ〜ん、聞いてよぅ、アスカったら、アスカったら、私が有休潰してまで愛情込めて作った夕べのカレーのことを、”誰に作ってもらったの?”なんていっていぢめるんだからぁ。それだけじゃないのよぉ”黙っててアゲルからワンピース買って”って恐喝までしたのよ。だ・か・ら、おねいさん、ちょっち大人げないとは思ったけど、つい手が出ちゃってさぁ、あれは体罰なんていいわけしないけど、シンちゃん、私が悪いの? 悪くないよね(にっこり)』ってシンちゃんにバラしたらどうなるかなぁ。
 アスカの事だから『ミサトったら、夕べのカレーをホントは誰かに作らせたのに、自分で作ったって嘘ついてるんだから』って抗弁するわねぇ。まあ、そうなったらそうなったで、この葛城ミサト様が今晩のご飯を作れば、そうね、チンジャオロースに天津丼ってなメニューでシンちゃんの懐柔と名誉挽回汚名返上はOKかなぁ、それでアスカに赤っ恥を……面白くない、ひじゃうに面白くない、シンちゃんに私のお料理の腕を認めさせるのはいつだって出来る事ぢゃない。
 そうよ、思い出した。アスカの一撃のショックで忘れていたけど、思い出した。土曜日よ。土曜日なのよ。私、あの時、『土曜日、シンちゃんの前でお料理勝負! 受ける? 降りる?』って仕掛けたのよ。罠とも知らずにアスカったら『受けたぁ!』って勢いで云っちゃってさ、可愛いったりゃありゃしないわ。
 いい、ミサト。アスカには土曜日に、あの子の口癖ちょっと借りて、傷つけられたプライドは10倍どころか100倍にして、おまけに、といちの利子つけて返してあげましょ。だから今は耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、この場は年長者らしく、下げたくないけど、頭を下げて、シンちゃんの怒りを解いてから、作戦立案状況開始よ。
 ……ふふふふふ、アスカぁ、土曜日まで、真綿で首を絞めるようにジワジワと追いつめた揚げ句、徹底的に再教育して、あ・げ・る(にやり)。

 二人同時にうつむいたまま、上のような思考を経て、口の端を不敵に歪めるまで41秒。
 二人同時に面を上げるのに、1.6秒。
 二人同時に向き合うのに、8.1秒。
 二人同時に深呼吸して、4.9秒。
 二人同時に目と目を合わせてタイミングを計るのに、6.4秒。
 せ〜の、
「ごめん」
「ごめん」
 タイミング的には0.03secだけミサトが早かった。

「この件、これで終わりです。いいですね、二人とも」
「は〜い」
 しぶしぶという感じで、返事をする二人。それを、シンジはまるで彼の父親のような冷たい目で見据える。
「何か不満でも?」
 あわてて、顔を左右に振る二人。それを見て、シンジの表情が変わる。
「それじゃあ、おみそ汁と卵焼き作り直しますから」
 そういって彼はようやく笑顔を見せると、席を立ち、厨房の方へ向かおうと、二人に背を見せた。すると、シンジに見えないことをいいことに、ミサトはアスカに対して、まさに女を捨てたとしか思えないような、あっかんべ〜を決めてみせ、アスカもアスカで、ミサトに対して、中指おっ立て、これまた見事に、百年の恋も冷めるような表情で挑発して見せる。
「ところで、ミサトさん」
「は、はぃい〜」
 唐突にシンジが振り向いた。慌てて作り笑いを浮かべるミサトとアスカ。ミサトの声が裏返っていたのと、アスカは右利きなのに、右手にお茶わん左手に箸が握られていたことに、その時点でシンジが気づいていれば、また、そのことから、彼女らの和解が表面上の、この場を取り繕うものでしかないことに、彼が気づけば、この後の二人の抗争に巻き込まれ、不幸になった人々の運命を変えることができたかもしれないのだけど……
「その、お皿の上のイワシ、PEN2にあげてくれませんか」
「え、あ、は、はぃ、こ、これね。これ、PEN2にあげればいいのね」
 始めは3匹乗っていたのに、今やイワシが2匹しか乗っていない皿をミサトは持ち上げると、その場から、逃げるように、PEN2の冷蔵庫へ向かっていく。その姿を目で追いながら、安堵のため息をつくアスカ。そして、ブチ切れモードからいつものぽややんモードに移行したシンジは、不思議そうにミサトの背中を見つめていた。
「あ、シンジ、シンジ、ナベ、ナベ」
「え、あ、ああ」
 あわてて、火を止めるシンジに、何やってるんだかといった表情のアスカ。そして、鍵のかかったPEN2の冷蔵庫を外から無理やり開こうとするミサト。

 こうして火曜日の朝の葛城家の食卓は、慌ただしい中にも、いつもの平和な空気が、戻ってきたかのように、感じられるようになっていた。
 少なくとも、この家の汎用人型文化女中器(注:はんようひとがたハイヤード・ガールと読みましょう)な碇シンジにとっては。

***

 ここで、驚くべき事実を紹介したいと思う。
 一ヶ月前に行われたNeRV女性スタッフ有志主催による極秘アンケート”こっそり教えて、今つき合ってもいいかなぁって思ってる独身男性職員は誰よ? ベストテン”にて、堂々首位に輝いたのは、作戦部に所属しているオペレータだった。
 日向マコトである。
 なんで? とは聞かないで欲しい。
 アンケート結果がそうなのだから仕方がない。
 もっとも、
「加持さん。悪いんですが、一発、殴らせてください」
「一発でいいのか」
「ええ、一発で彼女のことは忘れます」
といった、古くさいドラマのような展開が、西瓜畑で行われたといううわさ話が、NeRV女性スタッフ陣の心に何か触れるものがあったのかもしれない。

 さて、現在、日向マコトは何をしているかというと、ファミレス『スカイファウンテン』にて、目の前の光景に頭を抱えていた。
 無理もなかろう。
 NeRV人事部からの要請を受けて、たまりにたまった有給休暇の消化のため、彼は上司にたいして本日完全休養宣言して、ここのところ通い詰めてる制服がちょ〜かわいいファミレスにて、少し早めの昼食中。本日のおすすめメニューなクラブサンドイッチを右手に、目の保養あ〜んど命の洗濯をしていたところ、無粋にも着信を振動で伝える携帯電話。
「日向君。いま、ど・こ?」
「今ですか、第三芦ノ湖湖畔のファミレス、スカイファウンテンです。何か?」
「う〜ん、ちょっちね。日向君今日有給だっけ、じゃあ、本部はまずいか。だったら、今から私、そっちに顔出すから、そこで待っててねん」
 一方的な連絡の後、彼の前に現れた上司は、席に着くなりショートカットで見習い中の新人さんで、日向マコトの極秘ファイルによると、5月11日生まれのAB型で、このチェーン店での連続お皿割り記録保持者な、名札に『玉野』と書いてあるウエイトレスに対して、メニューも見ずにめっちゃ早口で注文。メモ取りきれずにおろおろするウエイトレスを一瞥して、泣かせちゃったのだから。
 おまけに現在、テーブルの上には、空っぽになったフルーツパフェが二つ、チキンカレーとポークカレー入っていたはずのカレー皿がそれぞれ一枚、ミートソースと烏賊墨がわずかに残ったパスタ皿がそれぞれ一枚、ピラフにクラブサンドイッチとコーヒーカップが二つ。
「だ、ぞうぞう、あぞでにぇ」
「葛城さん。食べながらしゃべらないでくれませんか」
 ミサトは口の中のものを無理やり飲み込むと、皿に残ったピラフを一気にかっ込んで、乙女のたしなみとばかりに、備え付けのペーパーナフキンで口の汚れを軽くふき取った。
「ごみん、ごみん」
「いえ、仕事ですから。で、なにか」
「うん、ちょっちその前にぃ、日向君、クラブサンド食べないの?」
 ぎんぎんぎらぎら、視線が痛い。きんきんぎらぎら、それホシイ。
 黙ってクラブサンドの入ったカゴをミサトへ差し出す日向マコト。そりゃ食欲失せるわな。
「ところで、葛城さん」
「うえいとれすさ〜ん。そ、そうよ、そこのあなた。コーヒぃ、お・か・わ・り」
 その場を見なかったフリして厨房へ向かっていた、見習い中の新人さんで赤いリボンでくくったツインテールがちょっと可愛らしさと幼さを強調していて、萌え属性不思議な国のアリスってな方面を刺激すること間違いなしだけど、日向マコトの極秘ファイルによると、12月14日生まれのB型、外見極上性格極悪取扱注意な核弾頭娘! と注記のある、『大空寺』という名札をつけたウエイトレスから、飲み放題のコーヒーのお代わりをせしめた後、ようやくミサトは目の前の日向マコトの方へ視線をずらした。
「ごみんごみん。実はさあ、確認なんだけど、チルドレン達の周辺、何か動き無い?」
「動きですか?」
「うん」
「第壱中で学級閉鎖がでてます」
「学級閉鎖? 第壱中でしょ? それが何であの子らと?」
「俗に云うはやり目、流行性結膜炎だそうで。チルドレンとその周辺には、兄弟姉妹が第壱中に通っているのもいますし、第一高の方も十人ほど患者が出てますから、一応注意はしたほうがいいのではないかと。ただ、赤木博士は、この件で動く気は無いようで……」
「リツコは動かないって。『ウイルス性疾患に特効薬なんて無い』って言い訳してんでしょ」
「はあ、まあ、そのとおりでして」
「サボってんのよ。アイツ、結婚して色ぼけしてるみたいだしさ」
 古くからの友人をバッサリ切るミサトに、苦笑する日向マコト。
「ほかには? 特にあの子らの人間関係に変化とか?」
「特にありません。保安部のレポートにも……無かったかと思います」
「そっか、相変わらずNeRV杯サード争奪戦は、本命セカンド対抗ファースト、鋼鉄に眼鏡っ子が半馬身遅れ。おまけにフォースと委員長がほのぼので、フィフスは見境なしの種馬状態かぁ」
 そこで、ふとコーヒーカップを持った手を中に止め、ミサトは考え込むようなしぐさを見せた。
「あとぉ、そうですね。鋼鉄に二人ほど言い寄っている牡馬がいますけど」
「へ、そなの。誰、誰」
「脱走兵二人です。知りませんでしたか?」
「な〜んだ、あの二人か。ち、つまらん」
 本気で残念そうな顔をしてミサトはコーヒーに口を付けた。その姿を見て再び苦笑する日向マコト。
「葛城さん、何かつかんでますね。第二ですか」
 しばらくして不意に日向マコトは少しだけ身を乗り出すと、ささやくような声で言った。
「う〜ん、そうじゃなくて、こっちから仕掛けてみようと思って」と、ミサト。
「あまりそういうのは……まずくありませんか?」
 彼の目は”チルドレンとその周辺は不可侵領域ですよ”と語る。
「わかってるって。ちょいと水面に小石を投げて、波紋が広がるのを観察する感じ。たいしたこと起こさないから。だいいち私があの子達に危ない橋渡らせることしないわよ。ただ、あの子達の生活をちょっとかき回して、第二の方にどんなレポートが上がるかの調査。その結果で……」
「二股(注:二重スパイのこと)狩りですか」
「正解。だから保安部に手を回して、彼らの観察レポートの内容詳細化と週1回から毎日作戦部へ届けてくれるように変更。お願い」
「はぁ、わかりました。で、期間は」
「土曜にはケリがつくから、今週いっぱいで。よろしくぅ」

 3、2、1、はい。ちょっち解説。
 この時点で日向マコトは第二こと、第二新東京市の戦略自衛隊情報部もしくは首相直属内閣調査室が、チルドレン達とその周辺にちょっかい出してくるのではと、ミサトからの呼び出しその他もろもろから推測したわけ。
 今までの二人の会話ちょいと読み直して欲しいけど、ほら、ミサトと日向君、チルドレン達の本名いっさい言ってないでしょ。一応、誰が聞いているか解らない状況での配慮なんだけど、わざわざ業界の有名人、その世界では知らない者のいないチルドレン達の名前を伏せてるってことは、何か厄介な状況が彼らチルドレンの周辺で、起こりつつあるんじゃないかと暗にミサトが語ってるのかなって、日向君は推測しちゃったのよ。何しろ、平和になったとは言え、腹にイチモツどころが二つ三つは当たり前、ひょっとしたら、10や20は隠していそうなバイザーでサイバーな議長とか、嫌われてなんぼ、軽蔑されてなんぼ、信念というより私情のためなら、たとえ女を泣かそうが、息子をほっぽり出そうが、手段は選ばず、即実行。フ、問題ない(断言)のヒゲの総司令や、碇め、面倒ごとはすべて私に押し付けおってと愚痴りながらも、淡々と事務処理をこなす有能な副司令が、色々暗躍していることを彼は知りえる立場だしね。まあ、そういうわけで、彼の判断は職務ならびに立場としては正常。
 だけど、彼の上司である彼女の本心はちょっとどころか大いに違っていたりする。
 何しろ現在葛城ミサトはアスカにスイッチ入れられちゃってディアブロ(魔王)モード。そんな彼女が日向マコトに振り分けた役割は、情報収集担当者。第二とか二股狩りといったもっともらしい大嘘で彼を動かし、保安部へ断りを入れて、アスカならびにその周辺の行動を徹底的に収集するのが目的なわけ。
 孔子曰く、敵を知り、己を知ればナントやらをきちんと実践するところは、さすがは現場指揮官様というべきなんだけど、行き当たりばったりな作戦立ててもごり押しと生まれついた強運で何とかしちまうのが常な作戦部の責任者にしては、戦術的に珍しくマトモな行動とは思えるのだが、これって……うっさいわね! 総力戦よ、総力戦。アスカをへこます為なら、他人のメイワクなんて知ったこっちゃないわ。使えるものは何でも使うの、もち、地位も権力も部下だって、動かせる手駒は全部戦力。公私混同? そんな四文字熟語ごみ箱に捨てて焼却済みよ。けけけけけけけ……

 テーブルの上に両肘ついて、口の前で指を組み、何やら剣呑でアヤシイ思考にのめり込むミサトの前で、早速保安部の班長レベルの知り合いに、NeRV職員専用携帯電話で日向マコトは連絡を取った。
「葛城さん。問題が」
「なに?」
「保安部としては作戦部の正式な依頼書が必要と」
 そこまで聞いて、即座にミサトは彼の手から携帯電話を奪い取ると、電話の向こうの相手めがけ、唾飛ばしながら、言葉の速射砲を発射。一方、日向マコトはいつもの事とあきらめモードでNeRV上級職員専用ノートパソコン──技術部セキュリティ班設計+カスタマイズド by りっちゃん。イザとなったら自爆してでもひみちゅの情報守ります仕様──を取り出して、カタカタカタと依頼書作成開始。
「あ〜もう、あの石頭わぁ!」
 18分と26秒後、交渉決裂。ミサト白旗、官僚的な保安部の勝ち。この○○野郎、ぶっ飛ばすぞな感じで携帯のボタンを押して再通話を試みるミサトに、日向マコトはたった今作成した、液晶モニター上に表示中の依頼書を見せた。
「電子署名お願いします」
「OKぃ」
 パソコンを手元に引き寄せるミサト。日向マコト、君は部下(注:げぼくと読む事)の鏡だよ。
「あのさ、こいつで、セカンドやサードにe-mailを出せたっけ?」
「え〜と、たしか」
 唐突に問われてちょっと考え込むが、
「メールアプリからは無理ですけど、Terminalを起動後、本部のMAGIを呼出して、葛城さんのアカウントからなら出来ますよ」
「げ、めんど〜」
 ブツブツいいながら、ミサトは署名を終え、依頼書を保安部へ転送すると、日ごろの癖で、いったんアプリケーションウィンドウを閉じた。
 ほ〜ぉ、こりわこりわ。
 液晶モニター上に現れた壁紙は、デジカメで隠し撮りしたと思われる、異なった制服のウエイトレスさん達、計6人。
 ちらっと日向マコトを見るミサト。いまだ自爆した事に気づいていない彼の視線は、何気なさを装いながらも、この店の新人ウエイトレスさん、それも玉野ちゃん方面をちらちらと。
 こりゃ、中身よりコスチュームの方だわよねぇ、なかなかイイ趣味ぢゃな〜い。……よっしゃ、もらい。アレンジくわえて、この手でいきましょ。日向君。ネタ感謝。
 顔を隠して、く、く、く、と、タチの悪そうな笑いを浮かべながら、本部のMAGIを呼出して、ミサトはメールを一通作成した。
「ところでぇ、ひゅ・う・が・く・ん」
 ミサト、猫なで声の後、ファミレスの伝票とともに、彼の方へ開いたままのノートパソコンを向けた。
「口止め料、よろしくぅ」
 その一言とともに、さっさと席を立つミサト。自爆したことに気づいた日向マコトは、真っ白になった。

 だが、彼の災難はこれで終わらない。
 この日から3週間後に行われたNeRV女性スタッフ有志主催による極秘アンケート”こっそり教えて、今、つきあうぐらいなら死んだほうがマシって思ってる独身男性職員は誰よ? ベストテン”にて、堂々2位に輝いたのは、作戦部に所属しているオペレータだった。
 日向マコトである。
 なんで? とは聞かないで欲しい。
 アンケート結果がそうなのだから仕方がない。もっとも、女の戰の後、色々ストレスをため込んだミサトが、話のネタについこの事を漏らして、女子職員の噂になったのが原因なのかもしれない。
 なお、ちなみに首位は……いずれこの話で語る予定だから、今はちょい内緒とさせてもらおう。

***

 4時間目が始まって27分と22秒が経過した時の事だった。

 さて、ここ、第三新東京市立第一高等学校1−Aの教壇では、漢文担当の非常勤講師、ヨボヨボのヨボ岡こと吉岡が、黒板に向かって、年齢から来る手の震えを押さえようともせずに、漢字とも象形文字ともとれる何かを描きながら授業を進めていた。
 窓際から4列目の最後尾で鈴原トウジは早弁をかましていた。儂、梅干しが嫌いナンやけど、オカンに云ったらシバかれるやろなあ。と思いながら大量のご飯と一緒に梅干しを、口の中に入れた。その直後、アゴが梅干しになっていた。
 その一つ前の席で相田ケンスケは、いつものように内職と決め込み、机の上で堂々と、ノートパソコンを広げ、ブツブツとつぶやきながら作業にいそしんでいた。これもいつもの事なのだけど、液晶モニター上に映る映像が昨日DVDでレンタル開始されたばかりの某巨乳系グラビアアイドルのプロモーションビデオなのは、ちょっち内緒。おまけに、今やっているコラージュと編集を終えた後に放課後こっそり商売するのは、めっちゃ秘密だったりする。
 渚カヲルは指揮をしていた。頭にヘッドホンを掛けて指揮をしていた。両手を振って、上半身を上下左右に動かして、右手人さし指を指揮棒代わりに、指揮をしていた。ベルリンフィルで第九でも指揮をしているつもりなのだろう。窓際から3列目の一番前の特等席で、これだけの事をやってのけるとは、さすがは使徒である。神経の太さが我々とはどこか違う。
 山岸マユミは戦っていた。睡魔とも、退屈とも異なる何かと戦っていた。
 後3章なんです。後3章書けば完成なんです。<完>の文字が打てるんです。おとしたらめーなんです。どこかのだれかの未来のために本を出そう──なんです。それが、世界の選択なんです。わたしが決めたんです。碇君は受けです。メガネっ漢でなくても受けです。総受けなんです。碇君はマワされてマワされてマワされまくるんです。わたしがきめたの。
 ……な、イヤソな内容はともかく……がんぱれ。第三新東京市でのイベントは今週の土曜日からだ。腐女子向けは今週の日曜日だ。ちなみに入稿は明日の午後5時がタイムリミットだ。今日中に原稿上げて、作者校正、DTPでのレイアウトを徹夜でこなせば、まだ、まだ、間に合うぞ!
 窓側の席で彼女は身動きもせず黒板を見つめていた。まばたきもせず、黒板のある一点から視点を動かそうとはいっさいしなかった。別に熱心に授業を聞いている訳ではない。今、彼女の特徴的な赤い瞳は、黒板の隅の本日の日直の名前欄にくぎ付けだった。そこには彼女と、彼女の思い人の名前が書かれてあり、おまけに彼女がこっそり書いた相合い傘がまだ赤毛猿にも鋼鉄娘にも眼鏡にも気づかれていなかった。だから、今、彼女──最終兵器綾波──はここに絶対書けないようなと〜てもイケナイ白昼夢に浸る事が出来て、とてもとても幸せだった。
 窓際から2列目の後ろから3列目の席で、洞木ヒカリは時より響き渡るイビキの音源を気にしながらも、黒板に描かれる象形文字を必死になって解読しながらノートを作成していた。とはいうものの、彼女だって眠い。3時間目は体育、それもお約束的に水泳だったのだ。体力的に化け物なアスカにマナ、体調不良を口実に保健室に逃げ込んだマユミ、何があっても涼しい顔なレイと違って、ふつ〜の女の子なヒカリには、この時間はめちゃつらい。あ、頭がカクンと動いた。慌ててシャープペンシルを握り直して、再びノートに立ち向かった。あ、頭が今度は左右に揺れ動く。頑張れヒカリ。睡魔に負けるな! アスカとマナとレイに三馬鹿トリヲ+1の漢文の試験結果は君の努力に掛かっているのを忘れたのかぁ!
 霧島マナはだら〜と机の上に両手を投げ出し突っ伏したまま、ピクリとも動こうともしなかった。目は閉じているようだが、寝ている訳ではない。彼女は落ち込んでいた。正確には、3時間目の水泳が始まるちょっと前から、ずっと、ずっと、ずっ〜〜〜〜〜〜と落ち込んでいた。
 AAなのだ。彼女はAAなのだ。強力なライバルの一人はDでもう一人はほぼD、最後の一人もBだというのに、彼女はAAなのだ。このクラスではB未満が少数派なのに彼女はAAなのだ。もしかしたらこのクラスで彼女だけがAAなのかも知れなかった。
 なによ、アスカったら更衣室で『肩こっちゃうのよねぇ』だって。ケッ!
 レイちゃんはレイちゃんで『胸……キツイ』だとよ。ケッ!
 アスカったら『谷間や下に汗疹ができて困るのよねえ』だとよ。ケッ!
 レイちゃんも胸を指さして『……邪魔……』だとよ。ケッ!
 二人そろって『マナがうらやまし〜』だとよ、ケッ! タレちゃえ!!
 おまけにヒカリさんもワンサイズ大きくなったってボソッと言ってたし、マユミちゃんはAだと信じていたのに、一緒に行ったランジェリーショップでBだと……もしかして、もしかして、私だけ? 私だけなの? ……ぐぞ〜、失敗だぁ、失敗したぁ。悔しいぃ、めっちゃくやじい! Aだったのに、あと1.5cmでBだったのにぃ。何でダイエットに成功したらウエストが減らなくてバストが減るのよぉ!! 毎日牛乳飲んでいるのよ、毎日バストアップの体操だってかかした事ないのよ。なのになんで、なんで私だけ毎朝毎朝、よせて、あげて、脇の肉を押し込んで、パットを二つ入れなきゃなんないのよぅ。お願い、お願いですから、神様ぁ、Dなんてゼイタクいいません。でも、せめてB、Bで結構ですから、決戦に備えて買った 勝負下着にパットを入れずにすむように、神様、神様ぁ、何とかしてくださ〜〜い!!!
 まあ、男の立場から言えば、大きければいいという訳ではないのだが、今は何も言うまい。ただ、いくら Washboard で大草原の小さな胸だからといって、夜中に『きょほほほほほほ〜〜』と奇声を上げながら、奇妙なこすちゅうむを身にまとい、靴下もとい乳拓を狩る『きょにゅうはんたぁ』にはなるな。NeRVの巨乳なサーテイペアじゃなかったダーティペアと乳をめぐって抗争を繰り広げるキャラには……頼むからなるな。
 碇シンジは爆眠していた。
 昨夜、暴力ざたを起こした二人に対して一人ブチ切れ、今朝、アスカとミサトに対して嫌がらせという名の実力行使を発動。その結果として、何とか表面上は和解──裏で二人が何を考えているかには、さすがに気づけなかったけど──に持ち込むことにできたけども、しょせんシンジはシンジであって、結局のところ小心者であることには、変わらない。
 だから、彼は朝、玄関から出た瞬間から、何で、僕あんな事しちゃったんだろうと悩み始めて、悪い癖である自閉モードへ一直線。そのせいで、通学途中にはアスカに話しかけられても即座に答える事が出来ず、結局鞄で3回もはたかれ、おまけに頬に大きな紅葉を貼り付けるはめに──この件は切れたシンジに対するアスカの逆襲ってな意味もあるのだけど──なったし、朝のホームルームが始まる前には、席について、うじうじと悩んでいたところを、ばっちり後ろから、カヲル君に抱きつかれ、
「何を悩んでいるのかな、愛しのシンジ君」
「か、カヲル君。な、なにを」
といった会話と同時に、頬と頬の一時的接触まで許してしまい、煮詰まっていた山岸マユミに女神の啓示を与え、洞木ヒカリのお約束的言動
「ふ、ふ、不潔よ〜〜!」(でも、目がナゼかはぁと)
を発動させ、同時に、自称”碇君の恋人”3人と他称”碇シンジのご主人様”のうち武闘派な霧島マナと惣流・アスカ・ラングレーによる使徒殲滅行動に巻き込まれ、鼻の穴にちり紙を詰めて1時間目の授業を受ける羽目になった。おまけに、3時間目の体育はこのくそ暑い中、脳みそ筋肉な体育教師、福本の気まぐれのせいで、蝉の泣き声のうるさい校庭の隅にて、炎天下の中バスケットボールを追い掛け回す羽目になった。となれば、彼は、心身ともに疲れ切っているわけで、4時間目開始の号令がかかって着席した途端、襲われた睡魔に耐えきれずに沈没、今に至るのも無理はないのかもしれないけど……机の上によだれの海を広げていくその姿は、彼の苦悩を知らぬ皆から見れば、ちょっとどころかメチャメチャ恥ずかしいと思われ。
 最後に、惣流・アスカ・ラングレーは爆眠し続けるシンジの左横の席で、舞い上がっていた。メチャメチャ舞い上がっていた。舞い上がって舞い上がって、そのため彼女の優秀な思考能力は、疾走するサラブレッドのように、前方の一点以外には注意を払っていなかった。彼女の全能力が集中する前方の一点とは、完璧な勝利の後にミサトに何を買わせるかだった。
 なぜって、それは……だってぇ、アタシの勝利は確定よ。あのミサトに料理なんて出来るわけないのよ。仮に出来たとしても、レンジでチンがせいいっぱいでしょ。その点アタシは一品だけど、好きこそモノの上手なれって云うでしょ、ハンバーグだけはできるもんね〜だ。あとは、シンジをたぶらかして裏で協力させて、そ〜だ、ノーブラで後ろから抱きついてちょいと耳元で『シンジぃ、お・ね・が・い・があるんだけどぉ〜』って囁いてあげればイチコロってもんよ。楽勝、楽勝、勝ったも同然。あとは、ミサトに何を買わせるかだけよね。という事らしい。
 今、彼女の机の上には教科書ではなく、ファッション系の雑誌が数冊。開かれたページには、赤やオレンジ、グリーン、ブルーのマーカペンで、丸やら三角やらペケに花丸まで描かれ、その横には『デザインふる〜!』とか『悪趣味ぃ!』とか『地味すぎ、オバン用!』とか『ま、そこそこ』とか『許容範囲ぎりぎり』とかが彼女の手によってコメントされている。それだけではなく、本来、学習補助用として一人に一台ずつ与えられた、端末=ノートパソコン上では、教育上の配慮ということで、FireWallにて80番ポートをふさがれ、外部のWebServerとは接続できないはずにもかかわらず、なぜか、最新ファッションの動向とかのニュース系や、雑誌系、通販系といったWebサイトのページが開かれていたりする。
 だれか彼女に”とらぬ狸のなんとやら”という格言を……無理だろなあ、天上天下唯我独尊な惣流・アスカ・ラングレー様だものなぁ。

 4時間目が始まって27分と22秒が経過した時の事だった。
 4時間目が始まって27分と22秒が経過した時の事だった。
 再度云おう。4時間目が始まって27分と22秒が経過した時の事だった。

 "You Gat a Mail !"
 メッセージと同時に米国の郵便箱を模したアイコンに赤い旗が立った。
 だれよ、邪魔しないでね、もう。
 露骨に嫌な顔をした後、アスカはちょんとアイコンをクリックした。

  From: "Misato Katuragi" <misato@NeRV.org>
  Date: 2017.XX.XX  11:17:12 Asia/Tokyo-3
  To: asuka-1-a@tokyo-3-dai1-h.ed.jp
  Subject: 土曜日の件について(重要)
  Reply-To: misato@NeRV.org
  X-Mailer: Files version 4.0.2 (MagiSystem/Casper|Balthasar|Melchior/3.3.3)
  Mime-Version: 1.0
  Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP"
  Content-Transfer-Encoding: 7bit
  X-Husband: Kaji ryouji (Love Love !)
  X-Brother: Sinji Ikari
  X-Husband-Info: See http://www.asuka.net/~paladin/x-husband/ for detail.
  X-Brother-Info: See http://www.asuka.net/~paladin/x-brother/ for detail.

  拝啓 惣流・アスカ・ラングレー様
  残暑きびしき今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
  さて、昨日の『私の作ったカレー』の件におきまして、大変ご迷惑を御かけいた
  しました。あなた様に私が心を込めて作成したモノである事を納得させる事が出
  来無かった点は、すべて私の未熟さゆえの事であったと反省しております。
  しかしながら、あなた様の私が作ったカレーに対する発言ならびに、私に対して
  の『役立たず』発言には、いささか納得できぬものがございます。
  そこで、昨日リビングにて、拳で話し合いましたように、今週の土曜日この件に
  つきまして、以下のような方法にて決着をつけたいと考えております。
  まことに身勝手でありますが、ご了承の程よろしくお願いいたします。
                                    敬具

                 記

     1. 場所               葛城邸ダイニングルーム。
     2. 時刻               AM 6:30(朝食)
     3. メニュー             指定無(何でも可)
     4. 決着の付け方           下記の通り。

       ダイニングテーブル上に両者の作品を並べておき、
       先にシンジ君が完食した方を勝者とする。

     万が一私が負けたら、ワンピでも、スーツでも何でも買ってあげるわよ。
     そのかわり、アスカ、アンタが負けたら、1週間私の下僕ね。
                                     以上。

   追伸
   こっちで保安部押えて24時間監視体制を敷いたから、シンちゃんたぶらかそうと
   したってダメだかんね。もっともプライドだけは高いアスカ様がそんなセコイ真
   似に走るとは、これ〜〜〜〜〜〜っぽっちも思ってないけどぉ。いちお〜ねんの
   ためってことでぇ、釘刺しとくからそこのとこよろしくぅ。

   追伸^2
   アンタの泣きっ面が楽しみだわ!
---------------------------------------------------------------------------------|
  "Misato Katuragi" <葛城ミサト>
   misato@NeRV.org

 62秒経過した。
 ぺきっと100円ショップで売っていそうなシャープペンシルの破壊音がした。
 液晶モニターの保護ガラスには赤鬼と化したアスカが映り込んだ。
「負けらんないのよっ、アタシは!」
 アスカが叫んだ。
 120デシベルを楽に越えていた。ちなみに120デシベルは約1.5m離れたときの道路工事の電気ドリルの音の大きさに等しい。
 スレッショルド・オブ・ペイン(注:人間が聞き取ることの出来る最大音、痛みの境界線)をもしかしたら越えていたかもしれなかった。

 くどいけど、4時間目が始まって27分と22秒が経過した時の事だった。

 パニックが訪れた。

 まず、ヨボ岡が倒れた。ぺきっと白いチョークを折って、震える右手で黒板上に奇妙な曲線を描き、左手の爪で黒板をこすり、アノ歯に染み入るようなイヤな音を立てながら、崩れるように倒れた。床に倒れた後、彼はあの時と一緒だと、セカンドインパクトの時と一緒だと、サードインパクトだと、あの悲劇が繰り返されるのだと、何度も何度も、騒ぎを聞いて駆けつけた隣のクラスで授業中だった物理の安部先生に運び出されるまで呟いていた。
 霧島マナはとっさに教室の床に伏せた。その時両手で両耳を押さえ、口を開けていたのは、さすがに少女だけど元少年兵である。戦自の訓練キャンプで身体に刻みつけられた教育の成果は消えていなかったようだった。だけど、悲しいものでもある。いくら教育の成果とはいえ、スカートをメイいっぱいまくれ上がらせて、カモシカのような足を、胸と背中が区別不能なスレンダー体形なのに、意外と肉好きが良くてぷにぷにな太ももとお尻を、ウサギさんプリントのパンツと一緒に大公開してしまうのは、兵士としては合格であっても恋する乙女なじょしこーせーとしては失格と思われ。
 相田ケンスケは両手で両耳を押さえるのが精いっぱいだった。床で爆撃を受けた際の基本姿勢をきちんと取ってる霧島マナを見て、まだまだ修業が足りない、週末は山にこもって自主キャンプだと堅く心に誓った。だけど、ジャーナリストの卵としてもまだまだ修業が足りない。相田ケンスケよ、なぜ今カメラを手にしない。なぜ今そこにあるスクープを無視する。なぜ、床に伏せる霧島マナを見つめたままなのだ。行動を起こせ、相田ケンスケ。後先考えずウサギさんパンツを撮影しろ。それが君の義務ではないのか。鼻血出してる場合じゃないぞ!
 山岸マユミは真っ白になった。頭の中が真っ白になった。SとQなのだ。SとQを間違えたのだ。ショートカットキーの組み合わせでSなら保存、Qなら終了なのだ。気づいた時には後の祭り。朝、腐女子の女神様からの啓示を受けて、これです、これこそ私の求めていた世界ですと、一気に書きも書いたり400字詰め原稿用紙換算で126枚、約72KByteのうち、もっとも濃厚で鬼畜で入魂な漢同士のえっちぃ描写が未セーブだったために消えたのだ。真っ白だ。真っ白だ。完全に真っ白だ。冬のアラスカの平原並に頭の中が真っ白だ。おまけに冬のシベリアみたいにブリザートまで吹いてやがる。起動しろ、再起動だ。
 山岸マユミよ、それが世界の選択なのか。山岸マユミよ、どこかのだれかの未来のために本を出そう──じゃなかったのか。呼吸するようには〜どやおいな文章を書く絢爛舞踏──腐女子の決戦存在──を目指すのではなかったのか。おとしたらめーだぞ。
 お、山岸マユミが再起動した。彼女の眼鏡がキラリと光った。だけど、何かが違う、いつもの彼女と何かが違う。何か彼女から邪悪な何かが発せられているような気が……お、彼女、何かつぶやいている。ブツブツ何かつぶやいている。いったい何を
「……落としてしまえばいいのに……」
 山岸マユミよ、その一言はシャレにならんぞ。だから、風も無いのに自慢の黒髪をぶわっと広げて見せるのは止めなさい。
「だからみんな落としてしまえばいいのに……」
 山岸マユミよ、気持ちはわかるが……それはちょっとシャレにならんぞ。だから、自慢の黒髪をワサワサと動かすのは止めなさい。
「だからみんな原稿なんて落としてしまえばいいのにぃぃ……!」
 山岸マユミよ、わかった、わかった。君の魂の叫びはじゅ〜ぶん理解した。だから、自慢の黒髪を広げて見せたり、ワサワサと動か……マテ、ちょっとマテ、髪の毛って自分の意志で広げられたっけ、髪の毛って自分の意志で動かせたっけ……
 山岸マユミさん? あ、あのぉ、ひ、非常にお聞ききしにくいことなんですけどぉ……も、もしかして貴女って……腐女子どころか人外キャラなの……で……すか?
 鈴原トウジは嫌いな梅干しを大量のご飯とともに飲み込もうとしていた。お約束である。しっかりお約束である。お約束どうりにメシが咽につかえて彼の顔が青くなった。
 アセった。めちゃアセった。青くなったままバタバタと両手を動かした。すると彼の顔色が青からやばい色に変わった。これで死んだらシャレにならンとマジに思った。一発首の後ろの付け根を手のひらで思いっきり叩いてみた。少し楽になった。そこでもう一発叩こうとした拍子に彼はバランスを崩して椅子ごと後ろに倒れかかった。おぼれるものはワラをもつかむ。箸と弁当投げ捨てて、鈴原トウジは机をつかむ。されどニュートンは許さない。F=maである。この状況下において万有引力の法則は絶対の正義だ。
 そのまま倒れた。後頭部に痛みが走った。追い討ちが来た。運悪く倒れてきた机の角が彼の鳩尾に入った。胃の中身が逆流した。そのおかげで咽に詰まっていたものがとれた。口の中がめちゃ酸っぱくなった。鼻からご飯粒がいくつか出ていた。鈴原トウジは唐突に思った。メシ咽に詰まらせて死ぬんと、ゲロでおぼれて死ぬんとどっちが恥ずかしいんやろかと。
 渚カヲルの頭の上に何かが当たった。それは彼の頭ではねて、彼の机の上に転がった。同時に彼の動きが止まった。白い棒だった。その棒は長さ23センチ、もっとも太い根元で直径7ミリほど、プラスチックで出来ており、根元から先端に向けて細くなっていた。
 指揮棒だね。彼はそう思った。だから彼はそれを拾い上げると、再び音楽に合わせて指揮をとり始めた。幸せだった。彼は幸せだった。その白い棒が先程まで、鈴原トウジが手にしていた箸のかたわれだと知らされても、たぶん彼は幸せだったろう。
 綾波レイはあいも変わらず黒板の一角を見つめていた。関係ないかもしれないが、先程倒れたヨボ岡の背広の袖がチョークで汚れているのが、ちょっと気になる。彼女の形の良い唇の片端がひくひくと上下してるのが、少しだけ気になる。彼女が見つめている黒板の一角におきた変化が、気になる。チョークで書かれた日直欄の名前が何かに擦られたごとく、薄く、読みにくくなっていたのが、とても気になる。彼女が2時間目と3時間目の間にこっそり書いた相合い傘が残っていて、その下の綾波レイの名前はかろうじて読めるけど、その横にあったはずの名前が完全に消え去っているのが、とっても気になる。同時刻に、NeRV本部の発令所で、ロン毛のオペレータが何を叫んだのがひじょ〜に気になる。髭の司令がオペレータの声に被せるように『誤報だ。第二には誤報と伝えろ!』と命令したのがマジに気になる。
 あ、綾波レイがうつむいた。うつむいたまま、机をパンと両手で叩いて、立ち上がった。彼女の形のいいまゆ毛が神経質そうにピクピク上下してるのが気になって気になって仕方がない。立ち上がった彼女の背中、特に肩甲骨の辺りが服の上からわかるくらい膨らみ、脈打っているのがヤバイくらい気になる。布の裂ける音とともに彼女の背中に白い羽が……
 止めろ、綾波レイ。マジ止めろ。
「碇君が……呼んで……る」
 呼んでない、呼んでない。碇君は君の事をまだ呼んでいないぞぉ!
 洞木ヒカリは反射的に耳を両手で押さえたが、間に合わなかった。おかげで耳がキーンとして痛い。非常に痛い。涙目になるほど痛い。鼓膜大丈夫かなと心配になるぐらい痛い。
 その時ノートの上に何かが落ちてきた。ピンポイントクラッシュだった。偶然なのに狙ったかのように、それは彼女のノートに、中身を少しまき散らしてから帽子のようにかぶさった。不審に思った彼女は、手を伸ばし、ノートにかぶさったものをとった。悲劇だった。彼女にとっては悲劇だったが、周囲から見れば喜劇だった。
 白いご飯が、肉ジャガが、甘辛く煮た肉団子が、夕べの残りの王将の餃子が、黄色い沢庵が机の上に散乱した。思考が遅延していた。視神経からの情報は大脳の前脳葉に届いていたけれど、あまりにも非現実過ぎて、処理を数秒間拒否していた。『なんじゃこりゃ?』状態だった。
 偶然だった。でき過ぎているかもしれないけど偶然だった。メシを咽に詰まらせ、もがいた鈴原トウジが思わず投げた弁当箱が、そのまま彼女の漢文のノートに乗っかったのだ。それが鈴原の弁当箱である事に──弁当箱の蓋に名前が書いてあった──そして自分の身に何が起きたかを7.9秒かかって理解した彼女は、『ス・ズ・ハ・ラー!!』と自前の音響兵器を炸裂させながら立ち上がると、弁当箱を持ち主へ投げつけた。
 大魔神だ。大魔神怒るだ。大魔神逆襲だ。伊福部音楽にのって洞木大魔神がのっしのっしと歩いていく。もう止められない。悪徳領主鈴原の命はもはやこれまでか。
 そう思われた時、洞木ヒカリは突如、歩みを止めた。ヒクヒクと痙攣する鈴原トウジの足。助けを求めるかのように彼女へ向かって延ばされる左腕。何度も自らの首を指さす右腕。土色と化した彼の顔。『すずはらー!』と今度は悲鳴をあげて彼の元へ。
 あ、鈴原トウジが白目を向いた。やばい、やばいぞ。呼吸が、心臓が、停止状態だ。フラットラインを描いているぞ。マジで命が危ないぞ。さあ、洞木ヒカリ、ちゅーだ。でぃーぷなちゅーで彼の口の中のものを吸い出せ。ちょっち抵抗があるなら手で口の中のものを掻き出せ。急げ、洞木ヒカリ。自発呼吸が無い時は気道確保の後、マウスツウマウスだ。ちゅーだ。でぃーぷなちゅーだ。心臓マッサージも忘れるな。心停止時は五分間が生死の分かれ目、勝負の時だ。ためらうな。ちゅうちょするな。たとえ、ファーストキスでも、一生クラス会で『ゲロが取り持った仲』とからかわることになっても、行け行け! GOGO! 洞木ヒカリ。ついでに一生分の責任とらせてやれ!!
 最後に碇シンジが机から頭を持ち上げた。これだけの騒ぎの中、しっかり曝眠していた彼も、ようやく何かが起こったことに気づいたらしい。
 教壇を見た。いるべき先生が、いなかった。
「はれ? 先生どうしたの」
 半分以上まだ夢の中な調子でそういいながら彼は左を向いた。アスカは席にいなかった。彼女は窓のガラスを背に、教室の方を向いて立ち尽くしていた。
 あれ? と思って後ろを振り向いた。
 一発で目が覚めた。
 霧島マナが、山岸マユミが、綾波レイが、いまだに指揮棒振ってる渚カヲルと、ゲロにまみれた鈴原トウジとその横で立ちすくむ洞木ヒカリ、教室の隅でカメラを持ったまま血まみれになって倒れている相田ケンスケを除いたクラスメイトが、アスカを非難するような視線を注きながら、彼女を包囲しようとしていた。
 思わず碇シンジは立ち上がると、アスカへ声をかけた。
「な、何があったの、アスカ」
「アタシのせ……い……じゃないと……思……ぅ」
 アンタだよ原因は!
 クラスの皆が視線でつっこんだ。
「し、シンジぃ、こ、こういう時って、ど、どんな顔をすれば……いいの?」
「……笑えば……っ」
 碇シンジがそこまで口にした時、彼の右頬を何かがかすめ、同時に鋭い痛みが走った。指でその場所を触れると、うっすらと血がついていた。
 綾波レイが碇シンジを指差していた。目の錯覚だろうか、小さな六角形の赤く輝く光が彼女の指先に生じているように見えるのは。
 A.T.フィールド? A.T.フィールドを飛ばして武器にしてるの?……僕が何をしたんだよ、綾波。
 それは絆……そのセリフと私の笑顔は碇君との絆。私と碇君だけの記憶の絆。赤毛猿が現れる前の、眼鏡女が現れる前の、あ〜ぱ〜女スパイが現れる前の、とてもとても美しい美しい二人だけの記憶の絆。それを汚すの碇君? たとえ碇君でもその行為は万死に値するわ……クス、クスクス、クスクスクスクス……
 今度は碇シンジの左頬を何かがかすめた。再び頬に鋭い痛みが走った。
 碇シンジの膝が恐怖で笑い出していた。
「……」
 一方、アスカはシンジの答えを待っていた。彼女は瞳をうるうるさせ、両手を胸の前で絡み合わせ、まるで神の掲示を待つ巫女のように振る舞って見せていた。
「……に……逃げればいいと思うよ」
 その一言が彼の運命を決めた。
「ダンケ、シンジ。アタシの盾になってくれて」
 アスカがウインクを決める。次に、へ? という顔をした碇シンジの背中を、ただならぬ雰囲気のクラスメイトの方へ思いっきり蹴飛ばした。
「あ、あ、アスカぁ!」
 皆がひるんだその隙に、アスカは窓を開け、2Fの教室からグラウンドへ飛び降りた。
 白と水色のストライプが一瞬見えた。
「逃げたぞ!」
「惣流許すまじ!」
「碇君、大丈夫?」
「アスカ、逃げるな!」
「追え!」

 この時、教室の時計は11時44分48秒を指していた。



前後編あきらめました。しばらく続きますこの話……次回、”彼女達の事情(仮題)”
ヒカリちゃんです。ヒカリちゃんがこの争いに巻き込まれます。
おまけは正しくないPerlなWebChatの設置法です。


Kaz-aさんからの投稿作品の続きであります。

中編の1、まだまだ先を楽しませてくれそうです。今回意外だったのはマナがマナ板にも関わらず、下半身の発育が良かったことでしょうか。いや、そんなことより彼女が一番まともなキャラだったことが意外でした。

この種の話でも比較的壊れない日向マコトも、なんか駄目(笑)っぽくアレンジしてあるのが面白いですね。

続きも楽しみですね。是非読後には感想メールを書いて送ってください。

寄贈インデックスにもどる

烏賊のホウムにもどる