〜 Leaf 〜
written by ハマチュウ
燦燦と照りつける真夏の太陽。
容赦無いその攻撃に地上は陽炎を発して空気を揺らす。
揺れた空気が崩れた街並みを覆う。
崩れた街・・・廃墟・・・度々続く人類と使徒との戦い。
既に何度目だろうか?
対使徒戦用偽装戦闘都市である第三新東京も遂にはその機能の90%近くを失った。
・・・それは皮肉にも使徒から人類を守るべく造られたエヴァンゲリオン零号機の自爆によって・・・。
そんな廃墟を一人の少女が歩いていた。
トボトボ、と表現するのに相応しいであろう。
知る者が見れば第壱中学の制服と一目でわかるだろうその少女の服装。
彼女の髪は赤みがかった豪奢な金髪、そして力の無い視線を送る瞳はブルー。
白磁のような透き通った白色をたたえる細長い手足。
名前を惣流・アスカ・ラングレー。
特務機関ネルフが誇ったセカンドチルドレンだった。
「誇った」・・・過去形である。
今現在の彼女を例えるに相応しい言葉は「敗者」であろう。
肩を落とし視線は虚ろ、形の良い唇は呟く様になにがしらの言葉をぶつぶつと発している。
そんなアスカの脳裏にこれまでの人生が走馬燈の様によぎっていた。
「ママー!アタシ選ばれたの、エヴァンゲリオンのパイロットに選ばれたのっ!」
と嬉しそうに走る幼いアスカ。
(頑張ったんだもん、ママに沢山誉めてもらおっと!)
そんな思いを胸に飛び込んだ病室。
アスカの目に写ったのは、天井から揺れる影・・・・・・。
「・・・・・・・・・・ママ?・・・・・・・・・・・」
―――トラウマの1つ目となった幼い日々。
「おめでとう、セカンドチルドレン
今日の起動試験、君のシンクロ率は見事に起動指数を超えたよ
ドイツ支部としてこれほど鼻の高い事は無いよ」
「はい、ありがとうございます」
プラグスーツ姿で軍服の中年から訓示を受けるアスカ。
エヴァパイロット・・・エリートとしての生活、それは厳しい競争と策謀の世界。
―――彼女がライバル達に勝ち残ってきた日々。
「よぉっ!アスカちゃんだっけ?
俺は今日から君の護衛担当になった加持リョウジ。
よろしくなっ!」
エリートとしての確固たる地位を掴んだ彼女、それに比例して「わがまま」の度合いも増す。
我侭とは言え権力を持つアスカ、既に何度護衛担当者を入れ替えたか判らない。
「・・・そう・・・」
冷たい目で見やるアスカ。
自分に気に入られる事で彼女の権力のおこぼれに預かろうとする者どもとその男が変わらない人間に見えたからだ。
「あれ?つれないなぁ〜
よしっ!自己紹介がてらだ!
遊びに行こう、アスカ!」
と無遠慮にも強引にアスカを街に引っ張り出して行った男。
ドイツ支部の人間がアスカを半ばエヴァの為の「実験体」として扱うのに男はアスカを「レディー」として扱ってくれた。初めて知る女の子らしい喜び、街を歩きウインドーショッピングをし、カフェでケーキを食べる。
―――胸を今でも締め付ける初恋の日。
「ふ〜ん冴えないわね」
「まさか!?使徒?」
「使徒?アレが・・・・チャァァァァ〜ンス!」
「でも武器が無いよ」
「プラグナイフで十分よ!」
「ちょっと何処触ってんのよっ!」
「「開けっ!開けっ!開けっ!開けっ!開けっ!開けっ!開けっ!」」
―――初めて見る使徒、初めて見る日本、そして初めて会う他のチルドレン。
マグマの中上昇中の力が途切れ、下降へ移る一瞬のGの切れ目・・・アスカにとっての死の先刻。
「・・・せっかくやったのに・・・」
そして足もとの地獄の釜が開く・・・灼熱と高圧の深海に落ちていくと言う確実な死。
「・・・やだな・・・ここまでなの・・・」
そんな中アスカの腕を掴んだ力強い手・・・灼熱の中の暖かさ。
マグマの中に映る初号機のシルエット。
「・・・無理しちゃって・・・」
―――新たに心に芽生えた何か・・・
「ミサトさん!今のテストどうでした?」
「ハーイ、ユーアーナンバーワンっ!」
自分以外に使われるNO1の言葉、ライバルに勝ちつづけたアスカの初めての敗北。
壊れ始めたアスカ。
―――唯一の拠り所NO1を奪われた日。
「・・・初号機の封印を現時刻を持って廃棄・・・零号機の救出に向かわせろ・・・」
「発進っ!」
リニアレールで打ち出される初号機。
替わりに戻される弐号機。
シンクロ率が起動指数を下回り動かない弐号機を気遣うものは誰も居なかった。
「なによ・・・アタシのときは・・・出さなかったくせに・・・」
もはや見捨てられている、と自覚するアスカ。
―――アスカがエヴァンゲリオンを降りた日。
頭をよぎる映像が途切れ、再び真夏のむっとする暑さがアスカを正気に戻す。
しかし虚ろな目は変わらない。
「9年間・・・頑張ってきた結果がコレか・・・」
すべて失った・・・まるで同居の少年のように手を握り締め、そして離す。
その掌がからっぽだと言うように。
「・・・才能・・・無かったのかな?・・・」
いや誰よりも努力したはずだと自負はしている。
それでもそう思わないと自身が惨めだった。
座りこんでうつむくアスカ。
そんな時異変は起こった!
「やったぁっ!
エヴァンゲリオンのパイロットに選ばれたぞっ!」
との大声で我に帰るアスカ。
声の方向を見やるとそこには良く見知った顔・・・碇シンジが居た。
何故か裸。
いや裸ではない、葉っぱを股間につけて妙に誇らしげなポーズで貧弱な体を見せ付ける様に立っていた。
「・・・・・・シンジ!?」
あっけに取られたアスカが発した言葉はそれだけ。
「やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!」
と踊り狂うシンジの姿になにがしらの宗教儀式か?とアスカ様が思うよりも早くまたしても大声が聞こえた。
「やったぁ!
俺もエヴァンゲリオンのパイロットに選ばれたでぇっ!」
と現れたるは鈴原トウジ。
「・・・鈴原・・・アンタ右足無くしたんじゃ・・・・」
唖然としたアスカ様の言葉など届かない。
シンジと向かい合った鈴原。
妙に元気な声で話し合う。
「やぁ君もかい!?」
「うん!」
「じゃぁご一緒に!」
「「やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!」」
両手を上げてやはりなにかしらの宗教儀式にしか見えない振りで踊り狂う二人。
「なにやってんのよっ二人とも!
アタシはもうエヴァパイロット降ろされたんだから、アンタ達とは関係無いのよっ!
アタシの目の前に現れないで!」
とヒステリー気味の声で一蹴しようとするアスカだが、二人の反応は冷静だった。
・・・いや余裕たっぷりににっこりとしているシンジと鈴原にアスカは不気味なものを感じる。
もっともその裸に葉っぱと言う格好に十分すぎるほど不気味さは感じているのだが・・・。
「君は自由だっ!」
「えっ?」
シンジの高らかな宣言にアスカは虚を突かれてしまう。
「もうシンクロ率で悩む事は無いんだっ!」
「えっ?」
「使徒と戦って傷つく事も無いんやでっ!」
「えっ?」
そして現れる新たな葉っぱ人間。
「もう普通の女の子として生活できるんだっ!」
眼鏡は付けてるがやっぱり裸で葉っぱの相田ケンスケ。
「リリンとして幸せを追い求める事も出来るのさ!」
美少年だがやっぱり裸で葉っぱの渚カオル。
一拍置く事で「溜め」を作る葉っぱの4人。
「「「「うっまっらっやしぃ〜」」」」
その余りの間抜けさに声の出ないアスカ。
それはそうだ、約1名を除いてアスカからエヴァパイロットの特権、エリートの名をを奪い去った者ばかりだから。
そんな奴が裸で葉っぱ!しかも自身満万の笑みで間抜けなポーズを取っている。
「「「「ヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ」」」」
とお互いを突つき合っていた葉っぱ人間が集合し、再び声を発した時異変が起こった。
「「「「それじゃぁ一曲歌わせて・・・「歌うんじゃないわよっ!」
力の無かった惣流アスカラングレーが持ち前の力強い強制力を含む声で葉っぱ人間を一蹴する。
「「「「どーして?」」」」
と怪訝に質問する葉っぱ人間を再び一蹴するアスカ。
「アンタ馬鹿ぁ?版権って厳しいの知らないの!?
歌詞を文字にするとお金かかっちゃうじゃないのよっ!」
そんな噛み付かんとするアスカの迫力にも押される事無く、平然とにっこり笑う葉っぱ人間たち。
「もう大丈夫みたいだね?」
「えっ?」
葉っぱ人間のリーダーらしきシンジの優しい声に虚を突かれてしまうアスカ。
「ア・・・アンタ達・・・
もしかしてアタシの事を心配してこんな馬鹿な事してるの?」
とつい心震えるアスカの想いは五十歩百歩の精度で正解ではあった。
「その突っ込みパワー!
うん、これまでのアスカ通りだよ。
いやぁ〜葉っぱ隊結成したのはイイケド、基本的に全員ボケだろ!?
突っ込みが居なくて困ってたんだよ
良かった、良かった、アスカが復活してくれてぇ〜」
プチンっ!
アスカの頭からなにかが弾け飛ぶ音が聞こえ、その場は真っ赤に染まった。
ひとしきり鈍い肉のぶつかり合う音が聞こえ、動くものが一体となった時、鉄のような鼻を差す匂いがあたりを支配した。
その残った一体の物体は赤みがかった金髪を完全な真紅に変え、野獣のような咆哮をあげて周囲を威嚇していたと言う。
その後エヴァンゲリオン搭乗者がどうなったか。
使徒との戦いがどうなったか。
世界がどうなったかは誰も知らない・・・。
さて、その頃NERV本部の奥深くターミナルドグマでは。
まるで錆びれた医療施設を思わせる部屋。
簡素で飾り気の全く無いパイプベット、そして錠剤の並ぶテーブル。
「・・・・・・どうしたらいいの・・・・・・・」
その部屋には悲嘆に暮れる蒼銀の髪を持つ少女が居た。
「・・・・これじゃ・・・裸のほうが恥ずかしくない・・・」
と言ってウロウロとする少女。
その少女の視線の先には三枚の葉っぱがあったという。
「・・・でも碇君が望むなら・・・」
無理しなくてもイイってばさ綾波さん。
終わり
こんばんわ、ハマチュウです。
えええっと・・・完全に時期を失した様ですが・・・TV「笑う犬の冒険」で有名だった「葉っぱ隊」ネタです。
すんません、大好きなんですあのコント。
ご存知じゃないヒトには全然判らないネタですね、コレ。
TV放映はすっかりと終わったみたいだし、他には小須田部長ネタにセンターマンネタ考えてたのに廃盤!
ちなみに綾波さんの場面の元ネタはEEJUMP(?)のソニン(?)です。
相方の男のコが葉っぱ隊に入ったときのソニンの「3枚なら・・・」って台詞がベース。
ハマチュウさんから不思議な話をいただきました‥‥コレが烏賊系であることは間違いないですね(笑)
シンジ君もアスカのためとはいえなんて格好をするのでしょう。愛があればどんな恥ずかしいことも出来るのですね(違)
ま、読んだ後はハマチュウさんにアイの感想をお願いします。