町を飾り立てるイルミネーションが、不必要なほどに夜の闇にきらめき、それは眠らない街『東京』を示唆しているようにも見えた。
 周りを見回して見ると自分と同じように待ち合わせをしていると思われる行き場の無い男たちが、やはり自分と同じように周りを見回しそして一瞬その動きが止まる。
 
 クリスマスツリー
 
 見上げるその先は、5メートルは上になる。そこに見つける事のできる一対の天使の人形。大抵そこには星のイミテーションが飾られているものなのだが、ここにあるものは違った。手のひらほどの大きさの天使の人形、一方はラッパを持ちもう一方は脇にハープを抱える神の御使い。
 「ごめ〜ん、待った?」
 その声に反応して視線をそちらに向ける。が、それは待ち人ではなかった。
 (どうしたんだろう)
 落胆の表情は顔には出さず腕時計を見る。6時30分、待ち合わせの時間から30分がちょうど立ったところだ。
 ふと先ほどから流れている音楽が彼の耳に届く。いつの時代にもあるクリスマスソングだ。
 (どうしてこの時期になるとこういう曲が多くなるんだろう?)
 それはありふれたクリスマスに奏でられるラブソング。
 (みんなそれを聞いて何を思うんだろう・・・)
 「ごめ〜ん、遅れちゃった!」
 思考は中断する。彼女だ。
 「遅いよアスカ〜。30分の遅刻」
 「だから謝ってるじゃない。お詫びに今日の夕食私のおごりでいいからさ」
 「よし、許そう」
 「なによ〜、シンジのくせに偉そうね」
 ふと先ほどの疑問が頭によぎったが、彼女がきてしまえばそんなことはどうでも良かった。彼と彼女は並んで歩き出す。
 

 

 
 

プレゼント  

作者:GUREさん

 
 
 
 

 「なかなかヒカリが離してくれなくてさぁ〜。自分だって予定入ってるのに」
 アスカは先ほどのヒカリの様子を思い出して、少し微笑んだ。
 「あのこったら、髪形変じゃない?とかこの服装で良いわよね?とか、も〜、初々しいったらありゃしない」
 「アスカにはなかった行動だよね」
 急にアスカが立ち止まり、半眼で睨みつけてくる。
 「ゴメン、今の無し!なしったらなし!」
 「・・・ペナルティ1。と言う事で今日の夕食はわりかんよ」
 「え〜、そんなぁ」
 「なに?文句ある?」
 「・・・ないです・・・」
 と、一瞬の間の後2人は同時に吹きだした。
 「もう、バカなんだからあんたは。今日は聖なる夜よ?もうちょっと雰囲気出しなさい」
 「アスカだって」
 と、彼女が見上げている事を急に意識する。
 (僕が彼女を追い越してどのくらい経ったんだろう。彼女とこうやって笑い会えるようになってどのくらい・・・)
 気がつくとアスカは先を歩いていた。
 「何やってんの、バカシンジ!早く行くわよ」
 「わかってるよ、姫様」
 「うむ、よきにはからえ」
 彼らは笑顔をこぼしながらまた並んで歩き出す。

 
 

 近くのイタメシ屋に入った彼らは適当に注文を済ませ、おしゃべりに花を咲かせていた。
 「ねぇねぇ、そう言えばさっきのツリーが飾ってあった広場でイベントやるんでしょ?」
 ちょうど注文していた料理がきたので、手をつけようとしたタイミングでアスカが声をかけてきた。
 「イベントって?」
 「ほら、クリスマスカップルを選べって奴。去年もあったじゃない」
 「あぁ、あれね」
 行き場を無くした手は、近くにあったコップへと運ばれたが、何をするわけでもない。
 アスカはシンジの向かい側にすわり、手を組んでその上に顎を置いていた。その姿がとても魅力的で、一瞬見とれてしまう。
 「どうかした?」
 「いや、何でもない。それってクリスマスの特別イベントでしょ。最高のカップルを探せってやつ」
 「そうそう。何を基準に最高を決めてんのかわかんないけどね。あれって、そこに居合わせてれば審査の対象になるんでしょ?」
 「うん。確か、ベストカップルにはあの天使の人形がもらえるんだよね」
 「そうそう!あの人形を貰ったカップルは、必ず幸せが訪れるって話があるのよ」
 ウエイターがアスカの料理を運んできたので、話が一度中断する。こんな日にも働いている人がいるんだと思い、それに当らなかった事を幸運に思う。そうでなければ、こんな素晴らしい時が過ごせなかったのだから。
 手をつけた料理は少しだけ冷めていたが、それでも十分おいしかった。彼女の表情を見るとそれは自分と同じようで、機嫌のランクがまた一つ上がったなと思う。
 「いいわよね〜」
 「うん、おいしいねこの料理。家でも作ってみようか」
 はぁ〜と彼女から溜息が洩れた。その仕草の意味が分からず、首をかしげる。
 「相変わらずボケボケね。天使の人形よ、人形。まったく、色気よりも食い気なんだから」
 アスカだけには言われたくないよ、と言う言葉を無理やり飲み込んで、急場の笑顔を作った。
 「ゴメンゴメン」
 誤魔化すように一つ咳払いをする。
 「でもアスカでもそういうの信じるんだ。なんか意外な感じがするな」
 「それって夢を信じてないみたいじゃない。ま、現実主義なのは確かだけど。でも、良いじゃない。一年に一度くらい、そういうのを信じてみたくなるの」
 そこでシンジは気付いた。これは彼にしてみれば早いほうである。聖夜の奇跡の一つ目と言ったところだろうか。
 「アスカもしかして、あの人形欲しいの?」
 「べ、別に!誰もそんなこと言ってないじゃない」
 が、シンジの目には彼女の頬がピンク色に染まっているのがバレバレだった。
 その視線に気付いたアスカが慌てる。
 「な、なによ?」
 「可愛いな」
 「なっ!」
 ガタンと椅子をけって立ち上がる。当然大声をあげ突然席を立った彼女に店内の視線が集まるわけで、その視線に圧されるようにまた席に身を沈める。
俯いたまま、目だけをシンジの方に向けて睨みつけた。小声で文句を言う。
 「突然何言い出すのよ!おかげで恥かいちゃったじゃない。まったく、家でもあんまり言わないような事を、突然、それもこんな場所で言うんだから・・・」
 真っ赤になった顔の熱をどうにか冷まそうと、両手を当てて冷やしてみる。効果があったのか彼女にはわからなかった。
 「そっか・・・・」
 「なによ!」
 うらめしそうに彼を睨みつけてやる。
 「9時からだよね。だったらこれ食べ終わってからでも十分間に合うね」
 「え?」
 その言葉にビックリした表情を見せた。
 「シンジ、あんたそういうの苦手じゃなかったの?」
 「別に。むしろ僕はアスカの方がそういうの嫌なのかなぁって」
 互いに微笑みあう。
 「よし、そうと決めたらさっさと食べて気合入れていくわよ!」
 「気合入れても変わんないって」
 もう一度、彼らは微笑んだ。

 
 

 並んで歩く彼ら。
 目の前には、巨大なツリーが闇に突き刺さるように立っている。
 「もう結構人が集まってんのね」
 ある程度大きな広場なのだが、すでにカップルと思われる二人組みが十数はあつまって来ていた。そしてその周りにはその何倍ものギャラリーがいる。とは言え、そのギャラリーも審査の対象になるわけで、天使の人形の伝説が生まれる理由も何となく頷ける。
 シンジとアスカは中に入ろうとも思ったのだが、どこにいてもどうせ同じだと、ギャラリーに混ざる事にした。
 クリスマスソングが止まり、変わりに男の声が聞こえる。
 『お集まりの皆さん、大変長らくお待たせしました!今年もやってきました、クリスマスベストカップルコンテスト!』
 そこで歓声が巻き起こる。2人は、思ったよりも人が多い事にビックリしていた。
 『内容はいたって簡単。ここにお集まりの皆さんの中から1組、今年のクリスマスベストカップルを決めるというものであります。審査基準は無し、対象者はここにお集まりのカップルの皆さん全てです』
 「結構多いわね」
 「それにアバウトだし。でも、それくらいがいいんじゃない?」
 「まぁね」
 『先ほども申し上げましたように、審査基準はありません。カップルの皆さん方はここにしばらく居て下さるだけで結構です。愛の語らいをするも良し、イチャつくも良し。ベストカップルはこちらで勝手に選ばせていただきます。時間は30分ほどです。それでは、どうぞ〜〜!!』
 「何がどうぞなんだか」
 アスカは鼻で笑う。
 「別にいいんじゃない。取りあえずその辺に座って話でもしてようよ」
 「他にする事も無いしね」
 適当な場所を見つけるとそこに座り、取り留めの無い話をし始めた。

 
 

 話す事などいくらでもあった。そう、いくらでもあったのだ。が、しかし、アスカの話にシンジは途中から適当な相槌しか返さなくなっていた。
 「・・・・ねえシンジ、聞いてる?」
 「え?あ、うん。・・・・なんだっけ?」
 どう見ても心ここにあらずといった感じだ。
 「どうしたのシンジ?なんか考え事?」
 「どうしたって、別に何でもないよ」
 「それが何でもなかったら、あんたは本当のボケボケ君よ。・・・何年あんたの隣にいると思ってるの。大体今日のあんたな〜んか変なのよね。やけに、その、上手を取ったり・・・、かと思えば今みたいに黙り込んじゃうし。なんか悩んでるんでしょ」
 「まぁ・・・悩んでるって言うか、困ってるって言うか・・」
 その態度がアスカを少しいらつかせる。
 「なんか悩み事なら相談乗るわよ」
 「いや・・」
 「なによ、私にもいえないことなの」
 「そうわけじゃなくて、その・・・アスカが張本人って言うか何ていうか・・・」
 「あたしの事?それならてっとりばやいじゃない、なに、なんなの?」
 「・・・・」
 アスカが切れた。
 「あ〜もう!あんたのそういうとこが悪いところなのよ!わかった、別れ話ね!いいわよ、別れてやるわよ!」
 「な、何でそう言う話になるの!」
 「あたしに言いづらい話なんてそれくらいしかないじゃない!違う子を好きになったんでしょ!さっさとそういいなさいよね!」
 「違うよ!僕はアスカしか好きにならない!僕はアスカしか考えられない!」
 「あたしだってシンジが好きよ!ううん、愛してる!でもね、そんなあんたが隠し事するなんて、頭くるじゃない!」
 「それは・・・・」
 と、そこではじめて気付く。回りを見ると思いっきり注目を浴びていた。どうやら声のセーブも何も無く、お互いに立ち上がって大声で喚いていたらしい。
 「アスカ・・」
 「何よ!」
 注目浴びてると言おうとしたところで、ライトが落とされた。
 突然の暗闇、そしてファンファーレ。
 『皆様、大変お待たせしました!今年のクリスマスベストカップルが選ばれました!さて、今年のベストカップルはぁ・・・・』
ドラムロール、ジャンと言う後のスポットライト。
 「「え」」
 『彼らに決定です!!』
 そこには間抜け面をしたアスカとシンジがいた。

 
 

 並んで立つ二人。
 気がつくと、すぐそばに司会者であろう人物が立っていた。
 『さて、お二人のお名前は?』
 「ぼ、僕?い、碇シンジです」
 「惣流・アスカ・ラングレー・・・」
 『今年のベストカップルは、シンジ君とアスカさんに決まりました〜!』
 湧き上がる歓声と拍手。
 『いや〜、私も毎年このイベントの司会をさせていただいておりますが、いきなり痴話げんかをされたのは初めての経験です』
 ハッハッハと笑いながら、シンジの背中をバンバン叩く。
 『それも、これだけの観衆の視線を受けながら「好きだ」だの「愛してる」だの。いや〜、いいものを見させていただきました』
 ハッする。先ほど自分たちが言い合っていた言葉を思い出し、それをここにいた人たち全てに聞かれていた事を認識すると、2人同時に顔を真っ赤にした。
 そんな二人を見てニッコリする司会者。そして毎年恒例の記念品を授与する。
 『では、毎年ベストカップルの2人に送られるこちらをお受け取り下さい』
 「はぁ・・・」
 手渡されたのは、一対の天使の人形。その天使達の顔は、満面の笑みを浮かべていた。
 『皆様、もう一度彼らに拍手をお送り下さい!彼らのこれからの祝福を祈って!』
 盛大な歓声を受けて、シンジとアスカは2人顔を見合して、ただただ困った顔をするだけだった。

 
 

 「なんかよく分からないけど、貰っちゃった」
 手に持つハープを抱えた人形を見て、アスカはぽつりと呟いた。
 「良かったんじゃない?結果オーライって奴かな」
 「ちっともよくない気がするんだけど。あれだけの人の前で痴話げんか始めちゃった訳だし」
 すでに広場にいた人たちは散り始めており、自分たちも家路につこうかなどと思い始めていた。
 「ま、でもそうよね。幸せの天使をもらえちゃったしね」
 「本当に欲しかったんだ」
 「い、いいじゃない別に」
 顔を少しだけ赤らめる。
 「アスカ、嬉しそうだね」
 「当たり前でしょ。これで幸せを掴んだも同然なのよ。家に帰ったら神棚にでも飾ろうかしら」
 「アスカ、それやると効果が半減しそうなんだけど・・」
 「何言ってるの、縁起物よ。それくらいはしなきゃ」
 (アスカって、日に日に日本に毒されているような・・・)
 「さて、とにかく帰りましょうか?」
 「そうだね・・・」
 そう言いかけて、ふと視線の先に2人の男の子と女の子がいるのに気付いた。
 「ん?どうしたの?」
 アスカも彼の視線に気付き、そちらに目をやる。
 「も〜、シンちゃんがボケボケしてるから天使のお人形もらえなかったじゃない!」
 「え〜僕のせいなの〜」
 「シンちゃんのせい!」
 「そんな〜。ごめんねあっちゃん、許して〜」
 「だ〜め、許してあげないもん」
 「あっちゃ〜ん」
 最後のほうは、シンちゃんと呼ばれた男の子の方は涙声になっていた。女の子の方はすでにその場を去り、少し離れた母親のところに向かっている。
 その二人を見て、何となく自分たちの影を重ねたアスカ。ピッタリだと思った。その事をシンジに言おうと思ってそちらを見やると、彼の黒い目がじっとこちらを見ていた。
 彼の言いたい事など目を見ればわかる。ただ、正直惜しいと思った。日本に来て、毎年このイベントをやっているとしった時から欲しかったのだ。長年の夢がかなったと言ってもいい。
 が、少し思い直す。
 (私はこれ以上、どんな幸せを望むの?隣にシンジがいる・・・・それだけでいいじゃない)
 やれやれと言った顔つきで手に持っていた天使の人形を、半ば突き出すようにシンジに渡す。
 「ごめん」
 駆けていった。
 「こういう時は普通謝らないもんよ」
 薄い微笑を浮かべた彼女の表情は、『慈愛』と言うことばがまさに当てはまっていた。私見だが、彼女は良い母親になることだろう。

 
 

 「おに〜ちゃ〜ん、おね〜ちゃ〜ん、ありがと〜〜!」
 遠くで手を振る2人とその母親たちが見えなくなるまで、そこで見送っていた。
 「ねぇ、最後何って言われたの?」
 「ん?シンくんに?」
 「そう」
 「ハハ・・、『もう喧嘩しないでね』って」
 「まったく・・・・、恥ずかしいったらありゃしない!」
 また怒りがぶり返してきそうなアスカを見て、即決断する。
 「僕達も、そろそろいこっか」
 「そうね、ここにいること自体、恥をさらしてるようなものだからね」

 
 

 十二月末はさすがに冷える。周りの喧騒が無くなり、人の気配がしなくなったので、それは益々強く感じられた。
 「シンジって暖かいわね」
 「アスカだって暖かいよ?」
 寄り添って歩く二人。
 「ねぇ、本当にあげてよかったの?」
 「人形の事?いいのよ。私には有り余るくらいの幸せがあるんだから。これ以上増えたら、持ちきれなくなるわ。だから、お裾分けしたの」
 「アスカ・・・、でも本当は」
 「ストップ。私が良いって言ったら良いの」
 「・・・うん」
 公園の前に差し掛かったところだった。コツンという音と共に、街灯の下に何かが落ちたようだった。
 「なんだろ」
 駆け寄るシンジ。
 「あ・・・・」
 そこに落ちていたのは、2つの天使の人形。石でできており、3cmほどの大きさしかないが、精巧で、そして何より見ているだけで心が温まるような感じがした。
 「なに、シン・・・・・あ」
 アスカも同じ物を見つけた。シンジはそれを拾い上げ、一つをアスカに渡してやる。
 「どこっから落ちてきたんだろうね?」
 シンジが見上げたので、つられた形でアスカも空を見上げた見るが、それらしい建物はこの辺りにはない。が、確かに街灯の高さ以上のところから、垂直に落ちてきたことだけは確かだ。
 「ねぇアスカ、これってもしかしたらサンタさんのプレゼントじゃない?」
 「はぁ?」
 素っ頓狂な声をあげたアスカ。がしかし、シンジがあまりにもニコニコとしているので、反撃しようとしていた気もうせていった。
 「・・・・そうかもね」
 「そうだよきっと。僕達のこと、見ててくれたんだね」
 「でも、大分スケールが小さくなってるわよ。元の三分の一くらいかな?」
 「ダメだよ、そんなこと言っちゃ。もらえるだけで感謝しなくちゃ」
 「来年は、もう少し大きなのねだろうかしら」
 2人ともだんだんと、本当にサンタからの贈り物ではないかと思えてきた。先ほどのベストカップルに選ばれたのを2つ目の奇跡とするならば、これは今宵3つ目の奇跡という事になろうか。
 「知ってるアスカ、サンタさんはいい子にしかプレゼントくれないんだよ?」
 「ちょっと、それどういう意味よ!」
 「冗談だよ」
 が、アスカは許さない。
 「待ちなさい!粛清してやる〜」
 「うわ〜、止めて〜やめって〜。・・・・・・・あ」
 アスカに捕まったところで空を仰ぐと、白いものが見えた。アスカも空を見上げる。
 「あ〜、雪!ねぇシンジ、雪よゆき・・・・・」
 視線を下ろしたその先には、こちらを向いたシンジと、突き出された手と、その上に乗っている小さな四角い箱。アスカは熱いものがこみ上げてきた。
 「なんなのよこれ」
 「アスカさぁ、さっき僕が何も言わなくてもあの子達に天使の人形あげたいって事わかったよね」
 「何なのって聞いてるの」
 「大事な事なんだ、答えて」
 「そんなの・・・・・、何年あんたの隣にいると思ってるのよ。目を見れば何となくわかっちゃうわよ」
 「そう、僕の隣にはいつもアスカがいてくれたよね。嬉しい時も悲しい時も、楽しい時も寂しい時も。それで・・・、この先もずっと、僕の隣にはアスカがいて欲しいんだ・・・・。だめ、かな?」
 蓋をそっと開ける。当然のように、そこにはリングが収まっていた。
 「こんなのしか買えなかったんだけど、もうちょっとしたら、もっといいのを買うから」
 沈黙。次第に雪は量を増し、少しずつ世界を白色に塗り替えていった。吐く息は白い。が、シンジは息を止めているのか、白い息は吐いてはいない。
 「・・・・・・貰っといてあげるわよ」
 彼女は泣きながら笑っていた。
 「あんたには私しかいないからね。感謝しなさいよ?」
 「・・・・・・うん」
 安堵と一緒に吐き出された息は、すぐに白色へと変わった。
 「でも、こんな予約、すぐに取り消せるんだからね!」
 「わかってる。努力するよ」
 その箱を大事そうに懐にしまう。
 「あの・・・・、つけてくれないの?」
 「ばかねぇ、こんなところでつけたらありがたみないでしょ!それに・・・・、こういうものは男がつけるもんなのよ」
 頬に感じた、彼女の唇の感触。
 「さて、膳は急げね。早速教会にいくわよ!」
 「え、教会?!」
 「そこでこれをあんたが私にはめるの」
 「でも、クリスマスイブだからミサとかやってるんじゃ・・・・」
 「手間が省けていいじゃない。立会人と神父さん、両方いるってことでしょ?」
 引っ張っていかれるシンジ。
 「ねぇ、予約じゃなかったの〜?」
 「言葉のあやみたいなもんよ!」
 シンシンと降り積もる雪の中を、嬉しそうにかけていく二人を屋根の上から見ていた真っ赤な出で立ちのおじいさんが、愉快そうに笑ったのが、このお話の最後の奇跡。
 今宵、彼らに訪れた、幸せと言う名の『プレゼント』

 
 
 
 

 
 
 
 


 
 


後書きのような物

 少し(かなり?)早いですが、クリスマス物で作ってみました。かなり頑張ったほうですが、製作時間は3日とそんなでもありません。天使の人形は、完全な思いつきですが、もしかしたら同じような設定の話がどこかにあったかもしれません。その場合は、ごめんなさい(汗)
 ラブラブのつもりで作ったのですが、どうでしょう?いや、これがラブラブではないとすると、自分にはもうそれは作れません。これがラブラブ限界点でしょうか(爆)
 では、またどこかで・・・・


GUREさんからクリスマス投稿をいただきました。

結構前からもえらっていたのですが(笑)時期をXmasにあわせて公開です。

‥‥アスカとシンジの周囲を省みない恥知らず(爆)ならぶらぶがいいですね。

良いお話でありました!是非GUREさんに感想メールを出しましょう!