名探偵の憂鬱




ふじさん








あの悪夢の日から1年。

地軸のずれで常夏だった日本は、そのずれが少しずつ直っているそうです。

春と夏というような季節が、僕らのいなくなる未来まで延々と繰り返されていくんだって。

急激に四季が戻ったら、環境に大きなダメージがあるらしいので

ゆっくり直っていくのは、地球のためにも良いことらしいです。





僕らは、相も変わらずミサトさんのマンションで暮らしている。

世はすべて事も無し。って訳にもいかないけれど。

それでも僕らは、平和に暮らしています。

どんなにエヴァを操縦する力があったって、結局、僕らはただの子供で。

ネルフ、国連、日本、アメリカ、ドイツ。etc。

大人の社会は複雑で、力だけでは解決できない事も多いんだって。

そんなことを学んだのも、一つの収穫。

使徒の来なくなった今でも、エヴァは存在するけれど、もはや動かすことも出来ない

無用の長物。

ちょっと違うかな。もっと冷静なことを言えば、本当は無い方が良い物。

余計な混乱を招くだけから。

ま、世の中うまくいかないこともあるけれど。

僕らは僕らで、のほほーんと暮らしているわけです。

そ、たとえば休日の午前10時に、再放送の探偵ドラマを真剣に見ている君のように――。













『犯人はこの中にいる!』


と、お決まりのセリフがTVから聞こえてくる。

いなかったら面白いのに。

心の中で、番組の根本を覆すような、イケナイ想像をしてみる。

午前10時30分過ぎ。

葛城家の主夫たる僕にとって、一番暇な時間。

洗濯も掃除も終わり、お昼どうしようかな?とか、買い物いかなきゃーとか。

なんとも、悲しい事を何とはなしに考えているわけです。

あまりの暇さに、魂が半分抜けていくなか、どうやらTVでは、いよいよクライマックス。

犯人が泣きながら捕まっている様子。

アスカはと言うと、犯人の過去に同情し泣きそうになってみたり。

それでも、犯罪を犯した犯人に怒ってみたりと。

百面相みたいな事をしているのです。

それはそれは、見ていて飽きないのですが、まぁこれも見慣れた日常。

どうやらエンディングロール。

時間は、もうすぐ11時。

お昼は、オムライスになにかスープでも――。

僕が、そう提案しようとした時、アスカは、おもむろに立ち上がって電話をかけ出した。


「あ、もしもしヒカリ〜?うん、アタシ。今暇?ちょっと行って良い?」


どうやら、大の仲良しの洞木さんに電話している様子。

これは、お昼いらないかな?

そんな僕の考えをよそに、電話を切ったアスカは速攻で部屋に戻り、ちょっと着がえて出てくる。


「ちょっと、ヒカリんとこ行ってくる!」


そう言って、勢いよく出て行きそうになるアスカに、僕は慌てて聞く。


「アスカ、お昼どうするの?」


僕がそう言うと、アスカはアゴに手を当てて、一瞬悩むと。


「おべんと。作っといて!」


「お弁当?」


「うん。アタシの分とアンタの分!」


「僕のも?」


「そ!」


「アタシが帰ってくるまで、食べちゃダメだよ!」


1時間くらいで戻るね!っと言いつつ、アスカは春の風にのって、出かけていった。

ちなみに、いつ帰ってきたのかわからないミサトさんのことは、忘れ去られているようです。

遅くまで働いていて、今日はたまの休みです。ゆっくり寝てても良いでしょ。

ミサトさんにも、美味しいお弁当を作っておこう。














アスカが出かけてから、30分くらいたった。

時計の針は、そろそろ11時30分をさそうとしている。

お弁当も作らなきゃいけないし、なんだか中途半端な時間。

ミサトさんが寝てるから、チェロの練習もできないし、S-DATで音楽を聴いても良いけど。

こう天気が良いと、なんだかもったいない気もする。

ふと、窓の外に目がいく。

そこでは、洗濯物がパタパタと、気持ちよさそうに揺れている。

まるで誘われるようにして、僕はベランダに出た。

そこは、僕らが初めて知る。春という世界。

日差しは、どこまでも暖かく。

風は、どこまでもやさしい。

そんな季節に守られて、僕らは生きているのです。






そうだ。

お弁当はサンドイッチにしよう。

どこまでも主夫な僕でした。
















「たっだいまー!」


大きな声で、お姫様のご帰宅。

時間は12時10分。

うんしょ、うんしょっと言いながら、重そうにしなった紙袋を両手でもって入ってくる。

僕は、荷物を受け取ろうと、急いでアスカに駆け寄る。

アスカから袋を受け取ると、それはかなりの重さだった。


「どうしたの、これ?」


手に紐が食い込むのを直しながら聞く。


「Danke!ヒカリに借りてきたの!」


袋の中を見てみると、週刊の少年誌で連載されているコミックが、山のように入っていた。

最近では、ドラマでも放映されて結構人気があるらしい。

僕は見てないんだけど、なんとかっていう格好いい男の子が主役らしい。


「うわー沢山借りてきたね」


「うん!この前、ヒカリの家に行ったときに読ませて貰ったの」


名探偵の孫の孫だかが活躍して、事件を解決するの!

っと、聞いているこっちまで読みたくなるような笑顔で説明してくれる。


「へー面白そうだね。でも意外かも。洞木さんも、こういう漫画読むんだ」


「え!? アー・・・ソウカシラ?」


明らかに何か隠してる。

最近のアスカは、嘘が下手。

すぐ顔に出るし、何かたくらんでるときの顔は、人様には見せられない。

もっとも、僕以外の人にはわからないかもしれないなっと、少しだけ優越感。

それにしても、洞木さんて、少女漫画が好きそうなイメージがあるのに、なんだか意外。

そう言えば、トウジやケンスケがこの漫画の話題で盛り上がってたっけ。

ドラマの撮影が、この近くであるとか無いとか、ケンスケの怪しい情報で

クラスの女の子達も騒いでたし。


「アスカ、この漫画好きなの?」


「最近はまってるの。漢字の勉強にもなるし」


「ふーん。僕は読んだこと無いから、わかんないなぁ」


「あ!じゃ一緒によも?」


「いっ、、いっしょに?」


「うん。アタシ、読んでると、わからない漢字もあるし、シンジ教えて?」


「う、、、うん」


あまりにも無邪気に聞いてくるアスカに、僕の心臓は高鳴りっぱなし。

最近のアスカは素直って言うか、トゲが無くなったと言うか。

僕に心を許してくれてるのかな?なんて自惚れてみたり…。

なんだか、洞木さんに感謝です。
















「お昼、お弁当作ってあるけど?」


これから漫画を読むのに、何でお弁当なんだろう。

いくら早く漫画を読みたいからって言っても、急ぎすぎだと思う。

そりゃ、アスカと一緒なら嬉しいけど……。

ゴホンッ。


「Es ist herrlich!」


「???」


アスカの突然の不可思議な言葉。

当然、僕には言葉の意味はわからない。

それ以前に、何を言ったのかも聞き取れないし、何語かもわからない。


「え?今なんて言ったの?」


「こんなのもわかんないの?いいわ!今度、ドイツ語教えてあげる!」


その変わり、ちゃんと漢字、教えてね?っと無邪気に微笑むアスカ。

何で僕が、行ったこともないドイツの言葉を覚えなきゃいけないんだろう。

とか、さっきのはドイツ語だったのか、とか色々と思う事はある。

思うことはあるんだけど、何も言えない。

だって一緒にいられる理由を断ることなんか、僕には出来ないから。


「お弁当どうするの?」


なんだか胸のあたりにあるモヤモヤを誤魔化すように、ちょっと早口で言う。


「お弁当なんだから、もちろん外に持ってくの!」


「もしかして、僕も一緒?」


少し嫌そうに聞いてみる。

絶対に、連れて行かれるって、わかってるくせに。

ううん、違う。本当は、僕も一緒に行きたい。

だから、アスカにアンタも一緒に決まってるでしょ!って言って欲しいだけ。

もしも、アスカが一人でどこかに行ってしまったら、と思うと苦しい。

こんな情けない思いは、絶対に人には言えない。

そんな、イタイケナ少年の気持ちを、照れ隠しのつもりで聞いたんだけど

アスカの眉は危険な角度まで上がっていたわけです。


「な、、なーんちゃって…」


絶対に、誤魔化し切れてない自信がある。


「・・・・・」


「お、、お弁当、サンドイッチにしたんだ。アスカと一緒に食べたら美味しいかなぁ…なんて」


自分が馬鹿なことを言っている自信があります…。

アスカは、僕が持っていた紙袋を奪い取ると、ドスン ドスンと言う音をたてながら

自分の部屋に持って行ってしまった。

あぁ僕の馬鹿。

とぼとぼとアスカの部屋の前までいくと、大きな音と共に閉められた襖越しに話しかける。


「あ、、あの、、ごめん」


昔、アスカの部屋に掛かっていた『入ったら殺す』というボードは、今はもう無い。


「ホントはさ、僕もアスカと一緒に出かけたかったんだ…」


だけど、ここにある壁は、今もなお高い。

素直になったアスカに、素直になりきれない僕。

前を向いて歩き出したアスカと、それに甘えてしまった僕。


「だからさ、今から一緒に、出かけない?」


外、良い天気だしっと言い訳じみたことも言ってしまう。

それでも、ほんの少しだけ、勇気を出した僕に、アスカは答えてくれた。

閉めたときとは逆に、スッと言う音共に仏頂面のアスカが、可愛い顔を見せてくれた。


「……電話」


「え?」


「電話持ってきて」


「あっ、うん」


僕は、言われるがままに、コードレスフォンを持ってくる。

アスカは電話を受け取ると、番号を確認もせずにボタンを押していく。

すごいなと思う。よく電話番号覚えてられるなと。

誰にかけてるのかは、知らないけど。

呼び出し音が受話器から漏れてくる中、奇妙な沈黙が僕らを支配する。

僕は、何もすることが無くて、居づらい。

アスカのまつげって長いんだなぁ。

なんて、今更ながらアスカの顔をまじまじと、見てしまったりもする。


「あっ、もしもしリツコ?」


突然のアスカの声に、アスカを見つめるのに夢中になっていた僕は、ビックリする。

しかも、かけている相手がリツコさんだとは思わなかった。


「ちょっと、お願いがあるんだけど。部署が違うのは、わかってるんだけどさ

保安部に連絡して欲しいの」


予想外の予想外。

アスカがリツコさんに、お願いをしている。

この辺が、昔とは変わったところなのかな。

張りつめていた物が切れてしまった、あの時とは。













僕らには、今でも保安部の人たちが、ガードとしてついている。

昔に比べれば、その人数はだいぶ減ったみたいだけど。

まだまだ、絶対に安全だって言い切れないから、らしい。

それでも昔とは違って、純粋に僕らを守るためなんだって。

父さんが、すまなそうに言ってた。


「うん。今、ミサト寝てて。ゴメンネ。アタシとシンジ、今からちょっと、ひとけのないところに行くから

ガードを増やして欲しいの。ううん。危ないこと、するわけじゃないわ」


電話をしているときに、僕と目が合うのが恥ずかしいのか、

あらぬ方向に目線をさまよわせながら、リツコさんに説明をしているアスカ。

アスカの会話の、あまりにも突拍子もない話しに、どこにつっこんで良いのかわからない。

リツコさんに、お願いしてるだけでもビックリなのに、そのうえ謝罪の言葉。

さらに奥さん!!ひ、、、ひとけのない場所に…行くって。

そんな、僕らには、まだ早いよ。アスカ!



あっ早いのは僕か…。



僕の卑猥な妄想をよそに、アスカは淡々と話を進めていく。

じゃっ、お願いねっという言葉を残し、電話を切った。

アスカは、じろっと僕の顔を見ると。


「シンジ。今、えっちなこと考えてたでしょ?」


大正解。

思わずそう言いそうになるけど、言えるわけもなく。


「今から着がえるから、10分、、、ううん。15分したら出掛けるわよ!」


たじたじとしているだけの僕を見て、楽しそうに笑うと、そう言ってまた襖を閉じた。

でも、変なの。

さっき、洞木さんの家に行くときにも、着がえてたのに。













ミサトさんに書き置きとサンドイッチのお弁当を残して、僕らは出掛けた。

相変わらず、僕はどこに行くのか知らなかったけど。

連れてこられたのは、復興に取り残された、廃工場。

季節は春なのに、この辺り一帯は、どこか暗い。

そらにはカラスが飛びかい。

どこからともなく、真っ黒な猫が飛び出してくる。

怪しすぎます。


「こ、、こんな所でなにすんの?」


少なくとも、楽しいピクニックではないと思います。

遠くでは、ゴーンゴーンっと工事をする音が響いているし。


「こんな所だから、来たんじゃない!」


いかにも!でしょ?っと腰に手を当てながら嬉しそうに言う。

何で、そんなに嬉しそうなの?

もしかして、黒猫が好き?


「…何で?」


聞かなくたって、ここまでの話の流れでわかる。

でもね?聞かなきゃいられないのが人の性。

もしかしたら楽しいピクニックかも…。


「事件よ!」


「……」


「じ・け・ん」


僕が何も言わなかったことを、聞こえなかったと勘違いしたのか、丁寧に言い直す。

いや、聞こえてるの、わかってて言ってるのかもしれない。

たぶん後者だ。


「そんなの、あるわけ無いじゃないか…」

僕は、あきれたように言う。

確かに、雰囲気はそれっぽいけどさ。


「なによ!漫画じゃ、こういう所には、死体がいっぱいあるじゃないの!」


アスカは、絶対に僕をからかってる。

文句言う顔が、すごく楽しそうなんだもん。

確かに漫画では、こういう場所では、必ず死体が見つかるけど…。

なんで、会話に『死体』何て言葉を使わなきゃいけないのか。


「本気で死体、探しに来たの?」


そう聞く僕に、アスカはスッと目をそらしてしまった。

心なしか、頬が赤いように見えるのは、本気だったから?


「そ、、そんなわけないじゃん」


頬を赤く染めて、どもってしまったアスカを見て。

もしかしたら、僕と一緒に出かけたかったから?

そんな妄想が頭をよぎる。

僕の馬鹿な妄想を余所に、アスカは、逃げるように歩き出した。


「あ〜あ〜♪しーたーいーないかなぁ〜♪」


なんだか、とんでもないことを言ってる。

歌ってれば、ごまかせるような歌詞ではない気がする。

死体がないかと、唄う歌なんか春の日差しの中では聞きたくないよ。

いや、まぁ。いつだって聞きたくはないけれど。

僕は、憂鬱な気分のまま、とぼとぼとアスカの横を歩く。

死体がなかったらどうするんだろう。

いや、そもそもあった場合の方が大変か…。


「もーつまんないわね!」


その文句は、不条理だ。


「ったく!ガードは、どうせ暇なんだから、死体の役ぐらいやりなさいよ!!」


気が利かないわね!とかいってるけど、絶対に不条理だ。

僕の非難のこもった視線をモノともせずに、縦横無尽に突き進む。

でも、この時、僕らはまだ知らなかったんだ。

世界の真実を。

いや、世界の不条理を――。



















いくつめの建物を覗いたときだろう。

いい加減、お腹もすいてきて、そろそろお昼にしようかと言う時。

建物から出た僕らの目の前には――。


「シンジ」



「・・・」



「シンジ」



「・・・」



「死体ね」


不条理があった。


「……死体だね」


はぁ。

ため息をしながら答える。

そこには…。

真っ黒の、おろしたてのようなスーツで。

本当に、死体の役をやっている保安部員の姿が。


「アタシ、どうしたらいいのかしら」


道ばたで、うつ伏せになっている死体。

その姿は、なぜだか泣いているように見えた。


「とりあえず、彼のスーツのクリーニング代と、お給料が上がるように、ミサトさんにお願いしてみたら?」


あまりの馬鹿さ加減に、事件だよアスカ!というセリフも忘れて、馬鹿みたいな事を言ってしまった。


「そうね…。シンジ、アタシやってみる!」


何かを覚悟したかのように、アスカは僕の手を握りしめて言った。

そう言うと、アスカは、おもむろに僕の手を引き、死体(役)と 反 対 の方向に歩き出した。

なんだか、色々と可哀想だ。




















「シーンジ!おべんとー♪」


僕らは、廃工場の周りに適当な場所を見つけて、お昼にすることにした。

結局死体(役)を見つけたアスカではあったけど、何事もなかったかのように、無視してしまった。

僕は、比較的平らな場所に、用意しておいたレジャーシートを敷いて

サンドイッチと冷たい紅茶を入れた魔法瓶を出した。


「お腹空いたー♪」


レジャーシートの上に伸ばした足をバタバタさせて、お昼の催促。

有言実行。

お腹がすいていたのは、本当らしくパクパクと小さなお口でよく食べる。


「ねぇ。アスカ」


「ん?」


サンドイッチを、口いっぱいに頬ばりながらのお返事。

行儀悪いですよ。


「あっ、食べてからで良いよ」


そう言うとアスカは、もぐもぐと急いで食べると、紅茶で流し込む。


「なに?シンジ」


「あのさ。さっきのガードの人いたじゃない?」


「あぁ、あの死体ね」


食事中だからと、気を利かせた僕の心遣いは見事に台無し。

あわれな彼を死体よばわり。


「そ、、そう。あの人。あの役やるの、どうやって決めたんだろうね」


まさか、本当に死体の役をやってくれるとは、思っていなかったけれど。

彼らは、どうしてあんなことをしたんだろうか。




上司の命令か?




…父さん?


「………じゃんけん、、かしら?」


じゃんけん…。


「ジャンケン?黒服が集まって?」


黒服達が集まって、ジャンケンをする。

その姿を想像して怖くなった。

負けた人の顔を想像して、可哀想にもなったけれど。


「でも、声とか聞こえなかったけど?」


まさか、黙々とジャンケン?三回勝負だとか、ごねたり?


「それは、、、あれよ。以心電心」


ちょーのーりょくよ。ちょーのーりょく。

っと、わけのわからないとを呟いてる。

絶対に、アスカの頭の中で想像している漢字は間違っていると――。

そんなことは過去のことと、一心不乱に、サンドイッチを食べているアスカを見ていると思う。


「なんにしても、平和だね」


僕らを守るガードの人たちも、決して気を抜いているわけではないだろう。

僕たちが、自由になれないことを、もしかしたら気にかけているのかもしれない。

そして、僕は思いつく。


「家に帰ったら、洗濯物が取り込んであって、アイロンとかもかけておいて、くれないかなぁ」


「だめよ!アタシの下着だって干してあるんだから!」


食べていたサンドイッチを口から飛ばしながら、慌てて猛抗議。

さっきから行儀が悪いよ?

確かに、下着は自分で洗ってるみたいだし、女の子だからいやがるのもわかるけど。

それなら、僕からも隠してほしい。

いつもは、自分の部屋で干しているみたいだけど、やっぱり乾きにくいのか

今日みたいに、たまにベランダで干してる。

同級生の女の子。しかも気になるこの下着が目の前にあったら…。

はぁ。

膨張してしまいますよ。


「じゃ、せめてミサトさんの部屋、掃除してくれないかな…」


これ以上考えてると、本当に熱暴走をおこしそうなので話を変える。

実際、ミサトさんの部屋は汚いし。

あの部屋のことを考えれば、膨張も収まるくらいに。

いつかは、掃除しなきゃいけないんだろうけど、それを考えると憂鬱になる。


「そんなこと、ガードに頼むんじゃないわよ…」


言っている途中で、アスカの声も流石に小さくなっていく。

それでも言い切ったアスカに、僕は半眼にしてジトメ。

アスカは、頬を染めて目をそらしていた。

















結局、僕らはお昼を食べた後、たわいもない話をしながら、工場の中を歩き回った。

日は、まだ高いけれど、きっと家ではミサトさんも待ってる。

ペンペンのお昼を用意するの忘れてたし。

そろそろ帰ろうかな。


「あーあー。結局、事件はなかったわねー」


いや、いろいろあったと思うけど。

そう、心の中でだけ思う。

きっと死体役の彼は、今日、辛いお酒を飲むんだろう。

世の不条理を呪いながら。


「漫画みたいには、いかないよ」


ある意味、漫画以上のことは、あったと思うけど。


「ちぇ」


そんなに可愛くしたって、駄目なものは駄目。


「大体おかしいのよ!あーいう漫画では、たいてい男の子が主役で、事件を解決するじゃない。

女の子は、いっつも好きな男の子を支えてるだけ。ど ん か ん な男の子は気がつきもしないし!」


なぜだか、アスカは僕の方を睨みながら、心なしか『鈍感』を強調して叫ぶ。


「女の子が主人公でも良いと思わない?バシバシ事件を解決していくのよ!」


アタシが主人公よ!っと胸を張って言う。


「じゃさ。僕は?」


何気ない疑問。

そう言う僕の問いに、アスカはボンッ言う音が聞こえそうな程、顔を赤くすると。

僕に、まるで子供のように、べーッと舌を出すと、走り出した。





「バカシンジ!帰るわよ!」





振り返りながら、僕にそう言うアスカは、なぜだか、とても嬉しそうだった。





僕は、主人公に恋する少年?




でも。



でもね、アスカ。




物語では。




主人公は、鈍感かもしれないけれど。




思いを伝えられないだけで。




両思いだよ?





ねぇアスカ。





君が主人公なら、僕は――。














僕も走り出す。



アスカを追って。

明日も良い日になりそうだ――。

そんな未来を、思い描きながら。




















どうも、ふじさんです。

6作目です。目標の10作まで、ようやく半分を切りました。
目標達成は非常に厳しくはありますが、何とかがんばりたいと思います。

さて、作品の方ですが。幼なじみ物が多かったので、書いている物を
なげだして、アフターものを先に書き上げました。
ただ、特別変わったことが出来なかったのが残念です。
自分の色がない。本当にそう思います。
他にも色々と書きたいことはありますが、伝えきれないのは
私の文才のなさのせい。すみません。
一つだけ。もしかしたら女の子がバシバシ活躍して事件を解決する
探偵漫画?もあるかもしれません。私が知らないだけで。
アスカやシンジも知らなかったと言うことにしてください・・。
大目に見て頂けると嬉しいです。すみません。
地球環境がどうのとか言うのは・・・。ゴホン

メールをくれる方。本当にありがとうございます。
厳しいメールもいただきますが、本当に嬉しいです。
お一人ずつ、お礼のメールを書いていますが
ここでもお礼を言いたくて、書かせて頂きました。

自分の中で最初に決めた目標の10作まで、あと4作です。
つたない文章ではありますが、それまでおつきあい頂けると嬉しいです。
それでは、今回も最後まで読んで頂いて本当にありがとうございました。

「Es ist herrlich!」は『ナイス』と言う意味だと思います。


ふじさんからアスカとシンジのいい感じのお話をいただきました。
ゲンドウの親馬鹿ぶりも楽しいですね(笑)
ぜひ、ふじさんまで感想メールをお願いします。

寄贈インデックスにもどる

烏賊のホウムにもどる