ソノ参
作者:でらさん












「あなた〜」


可愛い奥さんの声で俺は目を覚ます。
実に気持ちの良い朝だ。

ミサトと別れて良かった・・

今だから言えるが、あいつは体だけだったからな・・
体は確かに一級品。
出るところは出てるし、引っ込むところも引っ込んでる。
そして・・・


自主規制


しかし料理は出来ない、掃除もダメ、しかも大酒飲み・・

中身が着いてこなかったんだな。
いいやつではあるんだが。

それに引き替え今の奥さんは若くてぴちぴち、更に家事が万能ときた。
確かに年は離れちゃいるが、そんなものは関係ない。
俺達は愛し合ってる。

知り合ったのは彼女が中学の時。
まだ俺はミサトに夢中で、彼女は同級生に恋する普通の少女だった。

その時は当然のごとく、俺は彼女に対して大人として接していたさ。
女として見られるわけないからな。

その関係が変化したのは彼女が高校三年の時。

長年付き合ってた男が浮気して、彼女落ち込んでた。
悪いことに、彼女の親友は婚約を両親に報告するために里帰りしてたんだな。
誰にも相談出来ずにいた彼女を慰めたのが俺って訳さ。

俺はすぐにその男と別れさせたね。
勿論下心なんかなかった・・彼女のことを考えての事。

まあ、その後で俺が彼女と付き合うなんて思ってもみなかったけどな。

ミサトとは修羅場の末別れた。
俺も今の奥さんと付き合ってから大きな事言えなかったんだが、あいつも浮気してやがったんだ。
しかも相手は・・

ふっ、やめておくか、過去を振り返るのは。

さ〜て、お目覚めのキスでも・・それとも朝から・・・・・
朝って結構燃えるんだよな。





「おいヒカリ、こっち来いよ」


ドガッ!


「痛て!な、なんだ・・ここはどこだ!」


「良い夢、見てたようね・・」


「ミ、ミサト、なぜお前が」


「何でですって?ここどこだと思ってんのよ」


はっと部屋の中を見渡す加持は、そこが見慣れた自分の部屋でない事に気付いた。
かと言ってラブホテルでもない。
という事は・・・


「そうか、昨日酔っぱらってミサトのとこに泊まったんだ」


「やっと思い出したようね。
ところでヒカリって誰よ・・アスカの友達に同じ名前の子がいるけど、まさかその子じゃ
ないでしょうね?」


「バ、バカなこと言うなよ。
俺はロリコンじゃないぜ」


はっきり言って図星なのだが、正直に言う訳にもいかない。
そんなことしたら身の破滅を招く。
例え夢とはいえ何を言われるか分からない。

最悪、ロリコンのレッテルを貼られる。


「じゃ、どっかのお店の子ね・・ったく、ちょっとでも目を離すと女作ってんだから」


「そんなんじゃないって。
お前とよりを戻してからは誰とも寝てないんだぜ」


「どうだか・・」


「拗ねるなよ・・ほら、機嫌直せ」


「やめてよ・・」


朝にもかかわらずミサトにじゃれつく加持。
ミサトも満更ではないようだ。
しかし・・


「ちょ、ちょっと、今はダメよ」


「今月はまだだろ?」


「バカ!そっちじゃないわよ。
今日は日曜日なのよ。まだアスカとシンジ君が家にいるの。
声でも聞かれたらどうするのよ!」


「向こうだってよろしくやってるさ。こっちはこっちで楽しもうぜ」


アスカとシンジの関係は加持も知っている。
ミサトが見せつけられるようで、よく愚痴をこぼすのだ。

若い彼らの事、休みの前の晩をどう過ごすかなど知れてる。
多分今も・・・


「そういう問題じゃない!!」


ドサッ


一瞬流されそうになったミサトは気を取り直し加持をベッドに放り出すと、足音も荒々しく
部屋を出ていく。
加持の服を持って・・

どうやら洗濯らしい。
家事オンチだったミサトも、彼女なりに努力はしているようだ。


「いいもんじゃないか現実は・・
しっかし、何であんな夢見たんだ俺は」


ロリコンではないと断言出来る加持だが、アスカの友人洞木ヒカリが家事に精通しているとは
聞いたことがある。
それが影響したのかもしれない。


「誰にも言わない事にしよう・・」


自分自身の名誉と平和の為に、口を噤む事にした加持であった。






同時刻 シンジの部屋


「もうシンジったら、朝から何回するのよ・・」


「我慢出来ないんだ、いいだろ?」


「仕方ないわねぇ」


加持の予想は見事的中していたようだ。
相変わらず好きだな、お前ら・・






同日夜 葛城宅・・・


洗濯された自分の服が乾いた時点で帰ろうとした加持は、ミサトの掃除に付き合わされ
結局夕飯まで共にする事になった。
加持との結婚を半年後に控えたミサトは本格的に料理にも取り組み、今ではかなりまともな物も
作れるようになっている。

ここまでなるには、失敗に伴う多くの犠牲者がいた事は言うまでもない。


「どう?私も上手くなったでしょ?」


「まあな、正直驚いたよ」


「奇跡よね・・ミサトが人の食べられる物作るなんてさ」


「ア、アスカ、まずいよ本当の事言っちゃ」


「あんたらね・・」


確信犯のアスカとボケのシンジ。
この二人の無意識によるユニゾン攻撃は強力だ。

しかし結婚が決まった事で大人の忍耐力と余裕を手に入れつつあるミサトはなんとか堪え
ごく普通の態度をとり続ける。
ただ、アルコールは進む。


「明日は大した仕事ないし・・ちょっと深酒しようかな」


「俺は程々にしとくぜ。朝一で会議だからな」


「付き合い悪いわね・・あんたらしくもない」


「・・・付き合えばいいんだろ」


酒を飲み続ける大人二人に呆れアスカとシンジは退散することにした。
いつもならミサトが寝静まった後、どちらかの部屋で共に一夜を過ごすのだが、今日はそうも
いかないので別々に寝ることになった。

二人に見られないところでお休みのキスは交わしたのだが・・


「こんな時間まで居座るとは思わなかったわ」


「ミサトさん幸せそうだから、邪魔するのも悪いよ」


「ここはミサトの家だしね・・おやすみ、シンジ」


「おやすみ、アスカ」








「そろそろ起きなよ、ミサト」


「ん・・・もう少し寝かせて・・」


旦那様の声が聞こえるけど、私の体は言うことを聞かない。
なぜって・・

一晩中なんだから、あの人。

いくら若いっていったって限度があるわ。

あの人と関係が出来てからほぼ毎日のように私は責められてる。
本当に体が壊れそうなくらい。
でも私は幸せ。

病的な浮気魔だった加持とは違って、彼は私一筋だから・・

同居してた彼の前の恋人はそのプライドの高さ故、彼に無理ばかり言って・・
結果、彼に捨てられた。

反動で女に走るなんて無様ね。

彼も相当悩んだみたい。
自分が我慢すればそれで済むって・・そうすれば彼女と別れずに済むって考えてたらしいけど。
彼は結局我慢出来なかった。

私もその頃は加持との関係に疑問持ってて、もう顔を見るのも嫌になってた。

そんなある日、私は彼に組み伏せられたわ。
私も悪かった・・
彼と出会った頃の感覚で、無防備な格好して部屋の中うろついてたから。

でも彼はとっくに男になってたのよね。
付き合ってた彼女と毎晩のようにしてたの忘れてた。

久しぶりに男に抱かれた私の体は意志とは無関係に反応して・・

違うわね。
私はずっと待ってた・・彼に抱かれるのを。

そして一晩中私を抱いた彼が翌朝言ってくれた言葉を私は忘れない。


『好きだ』


年甲斐もなく泣いちゃったわ。
以来、トントン拍子に話は進んで彼が18になったと同時に結婚・・・

年の差カップルなんてさんざん言われたけど、幸せだからいい。


あん、またなの・・
朝から元気ね〜

でも、あなたならいいわ♪




「シンジく〜ん・・」


「おい、ミサト!どういうことだ!」


「・・・え?加持?何であんたがいるのよ」


「俺がいちゃ悪いか、俺が!」


「・・・・・・・・あっ、夢か」


深酒が過ぎてまた加持が泊まったらしい。
先に起きた加持がミサトに悪戯していたというわけだ。

しかしミサトの夢って・・


「シンジ君とどういう関係なんだ・・はっきり言ってもらおうか!」


「夢って言ったじゃない。あんたこそ昨日、うわごとで女の名前言ってたわよね!?」


「あ、あれは本当に夢なんだよ」


「どうかしら・・実は願望があるんじゃないの?
あの年頃の女の子抱きたいっていう」


「バ、バ、バ、バカな事言うな!確かにヒカリちゃんは可愛いとは思うが決してそんな・・・
しまった!


勢いから見事ミサトの奸計に引っかかった加持。
攻守逆転だ。
しかも悪いことに、ミサトはそういう倫理観にかなりうるさい。
ロリコンに人権は無いとまで考えている。

それを知っている加持の顔から瞬く間に血が引いていく。


「い、今のは・・単なる夢であってその・・・」


「成る程、アスカに近づいたのもそういう理由だった訳ね」


「お前だってそこんとこの事情は知ってるだろ!
俺はアスカの心の安定をだな・・」


当然ミサトはアスカに加持があてがわれた事情など知っている。
しかし、もはや冷静さを失ったミサトには何も聞こえてはいない。
加持に残された手は・・


「話にならん、俺は帰るぞ・・・って、ドアが開かないじゃないか!」


「お生憎様、鍵はここよん」


にこやかに鍵をふらふらさせるミサトの顔に一見邪気はないと思われる。
が、彼女と付き合いの長い加持にはそれがまやかしであると知っていた。


「お、お手柔らかに頼む・・」


「安心しなさい・・・殺しはしないわ」







ダイニングキッチン・・・


「朝からすっごいわね。
加持さん大丈夫かしら・・今日、朝から会議だって言ってたのに」


「またさぼりなんじゃない?
それより・・」


「また?学校どうするのよ」


「どうせ今日は授業もないんだ、休んじゃおうよ」


「もう」


食事を終えたあと仲良く洗い物をしていた二人は、着替えも済んでいるというのに再びシンジの
部屋へ姿を消す。

そして学校へ行く時間になっても姿を表す事は無かった。

絶え間なくミサトの部屋から聞こえる、獣のような叫び声とベッドの軋む音が二人を刺激した
らしい。




保護者が保護者なら・・・



 でらさんからのいただきものです。

 今回は加持とミサトでしたね。ミサトの家庭婦人になろうと必死なところがなかなか良かったのです。

 加持がロリコンで浮気者ってのはわかってましたが、ミサトまでもが‥‥ああ、彼女はショタでしたね(笑)

 でも、すぐ仲直りできる大人な二人(爆)やはり大人は人付き合いがうまくなるものです(笑)

 なかなか素晴らしい話でありました。ぜひ、読後にでらさんへの感想をお願いします。

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