岐れ道 シンジ編

    作者:でらさん














    西暦二〇八五年 第三新東京市・・・


    自分で最期の時を悟った碇シンジは、泣いて縋るレイを子供達と側近に力ずくで部屋から下が
    らせると、一人になった部屋で静かに目を瞑り、消えようとする意識の中で過去を振り返っていた。
    幼少から思春期に至る僅かな時期を除き、八〇年を超える人生の歩みは順調だった。
    一四歳で戦いと世の現実を知ったことはシンジにとって耐え難い苦痛ではあったけども、それは
    大いなる糧となり、後の人生で彼を成功に導いている。


    (私がネルフ司令とはな・・
    親父も、笑ってるだろうよ)


    心中で自嘲するシンジは、嫌っていた父と同じ職に就いた自分を嗤った。
    大学卒業後にネルフへ就職したのは、望んだからではない。自分には、それしか道がなかったのだ。
    当時、特殊兵器のパイロット職は完全コンピューター制御に取って代わられ、シンジは実質的に解
    職状態。
    が、機密情報を多く知るシンジをネルフが自由にするはずもなく、ネルフへの就職という形で囲い込
    んだのである。 (それはシンジと同じ立場に在ったレイも同じではあるものの、彼女の場合、極めて
    特殊な事情を抱えていた)
    こういった形で就職した人間がやる気になるはずもなく、シンジは数年を事務系の部署で無為に過
    ごした。
    無断欠勤は流石にないものの遅刻は常習で、出勤しても仕事はろくにせず、女性職員にちょっかい
    をだして一日を過ごす。それでも勤務評価は一定以上下がらず、処分されることもない。上司はおろ
    か、彼を昔から知る葛城ミサト司令でさえも、それを黙認していた。
    こんな彼を変えたのは、学生時代から彼と付き合っていたレイの妊娠。
    レイから父親としての自覚を求められたシンジは生活態度を一変させ、レイとも正式に結婚。仕事を
    精力的にこなし、且つ人望も集める有能な人材としてネルフ内での評価を高めていった。
    そして、五〇を前にネルフの頂点へ。
    以来、約二〇年に渡り司令職を務め、内外での評価を不動の物としている。
    私生活でも一男一女の子供に恵まれ、その子供達も幸せな結婚をして家庭を築いた。少し前、シンジ
    が体調を崩して伏せったとの報せで一番に邸宅に集ったのは、子供達と、その家族。子供の頃、親
    の愛に恵まれなかった境遇が嘘のようだ。


    (私は、幸せの内に死ねる。何の悔いもない)


    いよいよ遠くなってくる意識。
    だが、その最後で、シンジを現世に引き留める声が・・


    いいわね。アンタだけ、幸せで。


    それは幻聴なのか。
    いやしかし、シンジにはハッキリと聞こえた。
    それは、懐かしくも哀しい声色。必死に忘れようとしていた声。
    閉じられていたシンジの目が、カッと開かれる。
    そして、絞り出されるような声も。


    「ア、アスカ」


    それは、嘗ての同僚。そして、淡い恋心さえ抱いていた少女。惣流・アスカ・ラングレー。
    生きていれば、レイではなく彼女と人生を共にしていただろう存在。
    だが彼女は戦いの中で心を病み、周りの全てを拒否し、孤独の内に人生を終えてしまった。
    シンジは、彼女を死に追いやった責任の一部が自分に在ると分かっていた。
    いや、その時は分からなかったけども、数年後にそれを理解していた。
    彼女は、ずっと待っていたのだ。助けの手を。他の誰でもない、自分をだ。
    でもシンジは、何もしなかった。荒れる彼女から逃げるばかりで彼女の内面を知ろうともせず、あと
    一歩踏み出せば助けられた彼女を助けられなかった。

    アスカが使徒に心を犯されていたあの時、父の命令など無視して初号機を出撃させていたら・・・
    少なくとも、アスカはあそこまで壊れることはなかったと思う。
    初号機は封印され、起動も制限されてはいたけども、不可能ではなかったはず。
    事実、初号機は幾度も正規のコントロールから外れている。自分の意志一つで出撃は可能だった
    のだ。
    アスカは、そんな自分に絶望したのだろう。彼女を最終的に追い込んだのは、自分だ。


    アタシは、青春も愛も、何も知らないままに死んだわ。
    ガリガリに痩せて、誰も来ない病室で、独りきりで!



    「・・わ、わ・た・・しは」


    アタシを見捨てて、自分だけ幸せになるなんて・・
    アタシは、必死に手を伸ばしてたのに!



    「許・・して・く」


    許すもんですか。
    早くこっちに来なさいよ。七〇年分の借り、きっちり返してやる。その内レイも来るだろうから、二人
    まとめて可愛がってあげるわ。
    愉しいわよ、ここは。あはははははははは!



    「アス カ!」


    最期の力を振り絞ったシンジは、何かを掴むように空へ右手を突き出すと、そのままの格好で体
    を硬直させた。
    大声を聞いて驚いた家族達が部屋に入ったときシンジはすでに事切れ、レイは放心したしたよう
    にその場にへたり込むのだった。
    レイは、愛する夫が今際の際に何を見たのか、知っていたのかもしれない。










    西暦二〇一五年・・


    「アス カ!」


    ベッドから跳ね起きたシンジは、暫く辺りを見回し、次に額の汗を手の甲で拭った。
    全く覚えていないが、とんでもなく嫌な夢だったらしい。シャツから下着からベッドのシーツから、
    全てが汗に濡れている。


    「まいったな。
    最近、ろくなことないや」


    シンジは、やれやれといった感じでベッドを降りると、タンスから替えの下着とシャツを取り出して
    バスルームへ向かう。
    途中、下手な字で書かれたプレートをかけてある部屋の前を過ぎるが、そこに部屋の主・・アスカ
    はいない。ネルフか友人宅へ泊まっているのだろう。
    学校へは登校しているし、ネルフでも顔は合わせる。でも、口は利かない。いや、こちらから話しか
    けても無視される。少し前から彼女とギクシャクしてはいたが、ここまでくるとどうしようもない。第一、
    シンジには、アスカから冷たくされる理由が分からない。
    自分が彼女のシンクロ率を抜いた頃からおかしくなったのは覚えているものの、そのあとすぐの戦
    闘後に入院したときは見舞いに来てくれたし、普通に会話もしていた。酷くなったのは、初号機から
    サルベージされて還ってきた以降のこと。
    起き際にアスカと叫んだことから、夢は彼女に関係しているようだ。夢の中でも喧嘩していたのだ
    ろうか。


    (ミサトさんは、あんまり帰ってこなくなっちゃったし。
    加持さんは、連絡つかない。他に相談できる人って・・)


    シンジは、シャワーを浴びながら、人を介して何とかアスカと仲直りできないものかと考えるが、加持
    の他にアスカを宥められるような人間はいないし、特にいい考えも浮かばない。
    元々、人付き合いは苦手の範疇に入る。それに、相手はアスカだ。感情の起伏が激しく、ただでさえ
    厄介な少女。
    でも、彼女と決定的な仲違いはしたくない。
    ネルフの都合で始まった同居生活の中でシンジは、当初アスカに持っていたネガティブなイメージを
    徐々に薄れさせていった。
    天才と呼ばれる彼女が時折見せる年相応の素顔。
    それを可愛いと思うようになり、そんな彼女に惹かれる自分を自覚していた。
    一言で表現すれば、それは恋。
    しかし・・


    (口も利いてくれないんじゃ、話にならないよ。
    ユニゾンの時みたいに話せたらいいんだけど)


    深みに嵌ろうとする思考は、居間で響く電話の音で断ち切られた。
    それは、新たな敵の来襲を知らせる響きだった。










    今度の使徒は、衛星軌道付近から動かないという。
    こちらに侵攻してこなければ先制攻撃するしかないが、エヴァに衛星軌道上の敵を殲滅できるような
    装備はないそうだ。シンジは、初号機に乗り込むとき、整備員達がヒソヒソと話をするのを聞いていた。
    出撃した弐号機と零号機は大出力陽電子砲を使うらしいが、分厚い大気にパワーを減衰され、効果
    は期待できないとのこと。


    (どうするんだ・・
    使徒がとんでもない光線か何かで攻撃してきたら、アスカと綾波が危ない。
    武器がないんじゃ、初号機が出ても仕方ないけど)


    初号機は先の暴走を上部組織から問題視されて、封印。シンジは非常事態に備えて待機している状態。
    だがシンジは、それが形式に過ぎないと楽観していた。弐号機と零号機が危機に陥れば、すぐに出撃
    を命じられると思う。それが証拠にエントリープラグ内の通信回線は解放されており、発令所と常に連
    絡が取れるようになっている。一応禁止されてはいるものの、その気になれば、弐号機や零号機と直接
    会話すら可能なのだ。


    <アスカ!命令を聞きなさい!>


    ・・と、ミサトの大声が、スピーカーから響いてくる。
    アスカが独断で何かやらかしているらしい。あまり、いい状況ではなさそうだ。


    <イヤー!!
    アタシの心に入ってこないで!!>


    「アスカ!」


    いつの間に繋がれていたのか分からないが、弐号機に乗るアスカの声がダイレクトにシンジの耳に飛び
    込む。
    シンジは、疑問よりもアスカの悲鳴に反応した。
    そして次に、シンジの頭に何かのイメージが流れ込んでくる。
    それは、心の外皮を一枚一枚、無理矢理剥ぎ取っていく無数の触手。
    剥ぎ取られた外皮は記憶であり、隠されたアスカの想いが露わにされていく。

    喜び、哀しみ、快楽、苦痛、妬み、嫉妬、虚栄・・・

    誰にも知られたくないであろうアスカの内面を、シンジは知るともなしに知る。
    これは、心へのレイプ。使徒がアスカの心を侵食しているのだ。
    レイプの被害者に快楽はない。ただ、苦痛があるのみ。
    アスカもまた、例外ではなかった。


    <なん で、アンタがそこにいるのよ!!>


    アスカが否定しようとしてもできなかった存在。
    それが自分だということを、シンジは知ってしまった。彼女の心の奥底に自分がいたのだ。彼女が絶対的
    に信頼する加持と同等の存在として。
    そしてシンジは、今の彼女を形作る根元を見て・・・
    彼女を受け容れた。

    なぜ彼女の心が見えるのか分からないし、これが幻覚だとも思わない。
    今アスカは、苦痛の中にいる。それが、断言できる。
    彼女を助けたい。


    「父さん!初号機を出して下さい!弐号機が危ない!」


    <初号機は封印中だ。出すわけにはいかん>


    「アスカが、どうなってもいいんですか!」


    <今回の使徒は、パイロットの精神を攻撃するタイプだ。弐号機に損傷はない。パイロットの代わりなら、
    いくらでもいる。お前は、黙って見ていればいい。
    レイ、ドグマを降りて槍を使え。私が許可する>


    「父さん・・」


    シンジの中に父に対する怒りが渦巻き、それが出口を求めて暴れ回る。
    出口が開かれたとき何が起こるのか、シンジには何となく分かっていた。
    初号機は、自分の感情とリンクしている。前回もそうだった。これは、初号機が力を解放する前兆なのだ。
    何かきっかけがあれば、扉は簡単に開かれるだろう。そしてそのきっかけは、すぐに訪れた。


    <イヤよ・・
    助けて、加持さん・・・・・・
    シン ジ>


    後から思えば、それは幻聴だったのかもしれない。のちにアスカ本人が否定したし、MAGIにも弐号機の
    エントリープラグに装備された補助コンピューターにも記録されていなかったのだから。
    だがシンジは、確かにそれを聞いた気がした。

    だから、願った。

    初号機よ、動けと。









    「初号機、起動します!こちらのコントロールを受け付けません!エントリープラグ内もモニター不能!
    暴走です!」


    声を張り上げて状況を報告する日向の顔に、ミサトは混乱も恐怖も見いだせない。それどころか、どこか
    安堵しているような感じすら受ける。恐らくそれは、発令所にいる職員全てに通じるものだとミサトは思う。
    過去の戦いで、ネルフは何度も初号機の暴走に助けられた。
    そう・・
    初号機の暴走は、ネルフにとって不幸を意味しない。吉兆なのだ。
    正直言うと、ミサト自身、初号機が暴走でもしてくれないかと密かに期待していたくらい。前回の戦いで暴走
    した初号機が見せた圧倒的なパワー。あれを見せられて、期待しない方がおかしい。
    しかし、ミサトの立場でそれを口にするわけにはいかない。ミサトは、少しの動揺を装いつつ、日向に言葉を
    返した。


    「レイは?」


    「まだ、下層に達していません!」


    「こんな時に・・
    リツコ!一体全体、初号機は、どうなってんのよ!」


    「私だって、分からないわよ!」


    リツコは、初号機のコアにいるユイに聞けと叫びたくなったが、その言葉を呑み込む。まだ知られてはなら
    ない事実だし、ミサトの顔に、どこか余裕のようなものを見たからだ。ミサトは、本気で言っているわけでは
    ないとリツコには分かった。
    だが、ミサトには、いずれ自分の知る全てを話さなければならないだろう。初号機がこのような状態になって
    しまっては、ゼーレと袂を分かつしかない。この後に予想されるゼーレとの闘争において、ミサトは大きな戦
    力の一人となる。ミサトが欲する情報を全て明かし、協力を仰ぐしかない。


    「S2機関が解放されます!
    今までにない強力なATフィールドの反応が」


    日向が報告を終える間もなく、初号機は一二枚から成る光り輝く翼を広げ、ケージを破壊しながら地上へ飛
    び立っていった。そして、そのまま宇宙へ向い、使徒を容易く殲滅して戻ってくるに違いない。

    ケージとその周辺にいた人員は、破壊された構造物の隙間に取り残されるなどしたが、命を失った者はいな
    い。施設の惨状からすれば、まさに奇蹟。
    ただ、ケージとその上部構造物は大破。前回の発令所大破に続き、ネルフの損害は目を覆うばかり。
    とはいうものの、司令室に陣取る最高責任者の二人に、以前ほどの悲壮感はない。


    「あの翼なら、衛星軌道だろうがなんだろうが問題はないな。
    これも予定の内か?碇」


    「皮肉は、やめていただきたい、冬月先生。
    暴走は暴走。それ以上でも以下でもありませんよ」


    「息子をけしかけたな。
    槍は、保険だろう?」


    「さあ・・
    私には、なんの事やら」


    「ふっ、計画の変更か。
    まあ、普通の老後を生きるのも、悪くなかろう」


    冬月が美味そうに湯飲みの茶を啜った時、ミサトから使徒殲滅の報告がゲンドウの端末に映像付きで送られ
    てきた。
    そこには、地上へ帰還し、弐号機から救出されたアスカとドラマのようなやり取りをするシンジの姿が・・
    それを見るゲンドウが僅かに頬を緩める様を、冬月は確かに見るのだった。









    西暦二〇一九年・・


    戦いの疵痕もすっかり癒えた第三新東京市。
    この街で今日、一組のカップルが人生の門出を迎える。使徒戦役終盤から付き会い続けてきたシンジとアス
    カが、華燭の典に臨むのである。

    あの後、ゼーレとネルフの政治闘争など多少の紆余曲折を経つつも世の中は概ね安定し、二人は愛を育て
    てきた。
    その歩みは、それほど順調だったわけではない。
    類い希な美少女ではあるが性格に難があるとされたアスカが落ち着きを見せるようになると、回りの男達は
    以前にも増して彼女に関心を寄せるようになった。その頃のシンジは自分に自信を持てず、いずれ自分以
    上にアスカと気の合う男が彼女の前に現れるのではないかとの不安が彼を支配していた。
    アスカはアスカで、常に彼の傍にいる最大の脅威が心の棘だった。
    最大の脅威とは、同僚のレイ。
    彼女がシンジに寄せる想いは、周囲の誰もが知る事実。そして彼女の出生にまつわる真実を知ったアスカ
    は、シンジとレイの絆に嫉妬。血の繋がりがあるにしても、それは薄く、従妹程度の物だとリツコから聞いたと
    き、アスカはレイへの警戒度を最大に引き上げたものだ。
    レイ以外の女なら、アスカはそれほど心配しない。自分の女としての魅力には自信を持っていたし、シンジと
    は、普通に恋して恋された単純な関係ではない。心の奥深くで互いを求め合った結果の関係。自分達の間
    に干渉できる人間など、いないと断言できる。
    だが、レイは別。
    レイは、シンジにとって特別な存在。レイにとっても、シンジは特別なのだ。
    二人の抱えるそれらの悩みが誤解を生み、誤解が猜疑心へと変わり、猜疑心が互いの想いを押しつぶして・・・
    とまでは流石にいかず、誤解は誤解で収まり、二人の間に割り込もうとした男女数名の思惑は無に帰している。
    が、それらも既に過去。
    今や、この二人にちょっかいを出そうと考える人間は、約一名を除いていない。


    「碇君、考え直すなら、今の内よ。私の方が、いい奥さんになれるわ」


    予定されている時間も間近に迫った新郎新婦控え室で、白のタキシードできめたシンジを前に、レイは尚も食い
    下がっていた。隣にウェディング姿のアスカがいようとお構いなしに。
    彼女らしい水色のドレスが、豊かに成長した体の線を艶めかしく演出し、シンジが目のやり場に困るほど。

    シンジは戸惑い気味だが、アスカは余裕を崩さない。結婚という既成事実が、絶対的な自信に繋がってい
    るようだ。


    「悪あがきは見苦しいわよ、レイ。潔く負けを認めなさい」


    「おかしいわ。夢では、私が碇君と結婚したのに」


    「夢?」


    「そう、夢。
    私は、二人の子供を産むの」


    「アンタね、夢なんかで」


    アスカとレイが姦しく会話を続ける中、シンジは、夢と聞いて昔よく見た嫌な夢のことを思い出した。最初の頃
    は、目が覚めると何も覚えていなかったのだが、その内、記憶に残るようになっていた。
    自分がアスカを使徒の精神攻撃から救えず、心を壊した彼女が早期に死んでしまう夢。
    自分はレイと結婚しネルフの司令にもなって、幸せの内に歳を取って死んでいくというものだ。
    最悪だったのは、臨終の時。
    そこで自分は、アスカの亡霊に罵倒される。罵倒されながら、自らの罪を自覚して死んでいく最悪の状況。
    今思えば、その通りになる可能性はあった。あの時、父の命令に逆らわなかったら・・・


    (あれは、夢さ。可能性ですらない夢。そうに決まってる)
    「そのくらいにしようよ、二人とも。
    もうすぐ、本番なんだからさ」


    「え?もう、そんな時間?
    シンジ、お化粧、崩れてない?」


    「大丈夫。綺麗だよ」


    「ありがと。
    ほら、レイ。アンタは、式場にいきなさい。
    邪魔よ、邪魔」


    「私は、いつでも待ってるわ、碇君」


    「早く行け!」


    レイを追い出したアスカは、シンジに近寄ると身を寄せ、両腕をシンジの背に回して顔を胸に埋めてくる。
    シンジはアスカを抱きしめ返し、彼女の体温と綿のように柔らかい感触、そして甘い芳香で、これが現実であ
    ることを再確認するのだった。
    そして、この日以降、シンジの悪夢はピタリと止まったという。






    でらさんから素敵なお話をいただきました。

    アスカを手に入れるためにもシンジ君はやはり頑張るべきでしたね。

    そうしてちょっと格好よくなったシンジ君、アスカと一緒になれて良かったです。

    是非読み終えた後にはでらさんへの感想メールをお願いします。

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