烏賊してるペエジ 100万ヒット記念

作者:でらさん
















シンジの性欲処理のためだけに、自分は体を彼に投げ出したのではない。
戦闘に巻き込まれた市民の犠牲者に対し、必要以上に自責の念を持つ彼を慰めただけ。

一時の快楽で、少しでもそんな気持ちを和らげる事ができたら・・・

シンジと関係を持ったのはそんな想いからだと、ミサトは自分に言い聞かせていた。
そうでなければ、十四歳の少年と関係を持ち、しかも彼との関係にのめり込んでいるなど、大人の女として
恥ずかしい。

使徒を殲滅したにもかかわらず命令に従わなかったという理由でミサトは彼を叱責し、彼は失踪した。
その時は知らなかった・・鞭状の武器を振り回す使徒に翻弄された初号機が、一つのシェルターを丸ごと潰した事実を。

秘匿されていたその情報を誰がシンジに伝えたのかは知らない。
犠牲者の中に、保安諜報部の関係者かその家族でもいたのかもしれない。

いずれにしろ、事実を知ったシンジは自分を責めた・・ミサトも、自分自身の不用意な言動を責める。
そして、パイロットである事に堪えきれなくなったシンジは逃げた。

そんなシンジを、真相を知ったミサトが必死で引き留めた。
最初は駅の構内で抱きしめ、次に部屋で体を開いたのだ。

以来シンジは、朝も夜も飽くことなくミサトの体を求めていた。
最初は少年の稚拙な技術に物足りなさを感じていたミサトも、あっという間に上達したシンジの手管に翻弄
されるようになっていた。
何より、若さ故の精力が魅力。
体に精液の匂いが染みつくのではないかと思うくらい、シンジはミサトの体のあらゆる部分に精を放出していた。

だがミサトは、そんな生活もそろそろ終わりにしようかと考えていた。
セカンドチルドレン、惣流 アスカ ラングレーが本部に異動となり、ミサトに預けられた。
彼女のガードとして付いてきた加持 リョウジも、そのまま本部勤務となる。
昔付き合っていた男との再会はミサトに結婚願望を思い起こさせ、忘れかけていた想いが蘇ったのである。

加持との付き合いを復活させるのは問題なかった。彼も、それを望んでいたのだから。
ミサトの意思を聞いた彼は歓喜し、三重スパイなどという危険な立場をも放棄。ネルフへ完全な忠誠を誓い、
近々婚約の予定。

しかし問題もある。
シンジの有り余る精力だ。
加持をよりを戻したからには、シンジとの関係は精算しなければならない。
少なくとも婚約が成立する以降は完全にやめようと思っている。
ミサトにとってもシンジとのセックスは甘美な快楽で、捨てがたい。
とはいえ、加持との平穏な生活を送るためには諦めなくてはいけないだろう。彼に知られたら、ただでは済まない。

問題は、その後。
女の味を知った彼がマスターベーションで我慢できるとは思えず、必ず他の女に手を付けようとするはず。
だが彼は、まだ14歳。
加えて、内気な彼に巧く女を口説けるとは思えない。

となれば、誰か適当な女をあてがうしかない。彼の精神安定を考えれば、それは必須と言っていい。
ユニゾンの特訓以来同居するようになったアスカとは良い雰囲気だが、まだ恋とかそういう段階ではない。
キスしたかしないかで大騒ぎするくらいだ。セックスなど問題外。
あと身近な女と言えばレイだが、彼女に対するゲンドウの執着を考えれば現実的ではない。


「・・・という訳で伊吹二尉、あなたに頼む事にしたわ。
依存ないわね?」


「・・・・・」


突然ミサトの執務室に呼び出されたマヤは、いきなり突きつけられた現実に頭痛さえしてくる。
ミサトとシンジの関係自体信じられないのに、ミサトは自分にシンジの女になれという。


「まさか、まだ処女ってわけじゃ無いんでしょ?
それに、それなりの手当も出すわ。リツコの許可も取ってあるわよ」


「た、確かに経験はありますけど・・
でも、シンジ君の意思とかも考えないと」


マヤも、経験が皆無というわけではない。
高校生の折り、付き合っていた彼と数回の関係がある。
が、すぐに彼の二股を知り別れ、関係はそれだけで終わった。
経験と言ってもその程度・・女の快楽も知らない。


「彼の意思は関係ないわ。
あなたは彼の女になり、体で彼を支える存在になるの。
女として、私はあなたを羨ましいと思うわ。彼のセックスは最高よ」


「で、でも・・」


「あなたには付き合っている彼もいないし、レズでもない。
お給料はほぼ倍になって、可愛い彼ができる・・・どこに不満が?」


経験豊富であろうミサトが言うのだ。シンジのセックスは素晴らしい快楽なのだろう。
性に興味がないと言えば嘘になる。
自分の体に指を這わすのは日常の一部・・マヤとて二十代半ばになる女で、性欲も当然ある。
更に金が手に入るとなれば・・・


「私は、どうすればいいんですか?」


「簡単よ。
理由をつけてシンジ君をあなたの部屋に行かせるから、そこであなたの好きにすればいいわ」




翌日、マヤはシンジの女になった。





シンジの訪問を受けたマヤは、玄関でそのまま彼に犯された。
その時点で一週間ミサトから拒否されていたシンジは、すでに我慢ならない状態に追い込まれていたのだ。

そんな彼の前に、ミニスカートと透けるような白いTシャツ(ブラ無し)という姿で出たマヤが襲われるのは当然だろう。
シンジは、そのまま夜の更けるまで、マヤの体を貪り続けた。

マヤは朦朧とする意識の中で、体と頭が弾けるような感覚を何度も経験した。
年下・・・それも十四歳の少年に翻弄されるなど、マヤは自分でも信じられない。
ミサトに教え込まれた性技もあるのだろうが、彼自身の探求心みたいなものをマヤは感じる。
たった一晩の睦み合いで、マヤはシンジから離れられなくなっていた。


「じゃあ、僕は学校に行きますから。
マヤさんも、遅刻しないでね」


朝起きてからも数回にわたった激しい行為で、マヤはまだ体全体が怠い状態。
風呂に入ってさっぱりしたシンジが声をかけても、マヤはろくに返事も出来ない。


「ええ・・」


玄関に向かうシンジをうつ伏せの姿勢で見送るマヤは、あらためて若さ故の強さを見る思いである。
彼の底なしとも思える精力に、大人の女である自分が圧倒された。
自分もまだ若いと思っていたが、彼には負ける。


「今夜も来るのかしら・・シンジ君」


今夜の悦楽を想像しただけで、体は下腹部からジワジワと熱みを帯びてくる。
一晩で開発された自分の体に、マヤは酔っていた。








「どこに泊まったのよ、アイツ・・


朝の喧噪で賑わう教室内の空気を否定するように、自分の席で綺麗な顔を不満色に染めるアスカが一言呟く。

昨日の夕方から、用事を言いつけられたと出て行ったきり、シンジは帰ってこなかった。
残業で泊まりだったミサトもいない家で、アスカはまんじりともしない一夜を過ごしていた。

アスカの知る限り、シンジに彼女などいない。
大体、休みの度に何だかんだ理由を付けて彼を引っ張り回すのは自分だ。そんなシンジに彼女が出来るはずもない。
シンジに気のあるらしい女子生徒達が陰でアスカを誹謗するのは、そこに理由がある。
もっと考えを飛躍させる連中は、すでに二人が付き合っているとの噂まで流している。
そんな噂を、アスカは敢えて否定しない。いずれそうなるのではないかと、自分でも思うからだ。

シンジと知り合って数ヶ月・・
すでに自分でも否定しようがないほどに、シンジへの気持ちは確定していた。
意識するきっかけはユニゾンの特訓だったかもしれないし、煮えたぎるマグマから助けられた時かもしれない。
でもそんな事は、もうどうでもいい。
シンジが自分以外の女と肩を並べて歩く姿など、見たくない。


「おはよう、アスカ」


と、その当人が何食わぬ顔で挨拶してきた。
近頃はどこか余裕のない感じだったが、今日は妙にすっきりした顔。
その顔がシャクに障って、アスカはただ無言でシンジを睨みつけた。


「・・・・」


「ど、どうしたの?アスカ」


「一晩、どこで何してたのよ」


「ネルフだよ。
用事ってのはネルフの用事でさ、帰ろうとしたら終電もないから、そのまま泊まってきたんだ。
何なら、ミサトさんに確認してよ」


シンジは、寝物語にマヤから事情は聞いていた。
加持とヨリを戻したミサトが自分の代わりにマヤをシンジに差し出した・・・となれば、アリバイ作りにも協力してくれるはず。
そう考えたシンジは昨夜の内にミサトへ電話し、アスカから問い合わせがあった場合の口裏合わせを頼んでいたのだ。
アスカに事実を知られたらパイロットとしての信頼関係は破綻するし、彼女から決定的に嫌われるだろう。

肉欲とは別に、シンジの心はアスカを求めている。
ミサトとの関係も体だけと言ってよかった。それが証拠に、ミサトが加持とヨリを戻した事に対して嫉妬も何もない。
ただ、女を知った自分の体がもはやマスターベーションでは満足できなくなってしまったのが辛いところ。
アスカと付き合うようになり、体の関係にまで発展すれば問題はないのだろうが、彼女は自分を子供扱いするだけ・・
付き合うことすら難しい。


「それならそれで、電話くらいしなさいよ。
何のために携帯持ってるわけ?」


「アスカが寝てたら悪いと思って。
僕の帰りなんか待ってるはずがないし・・・って、まさか!」


「そのまさかよ。
心優しいアスカ様は、アンタの帰りをいじらしく待ってたの。
おかげで寝不足だわ」


目も多少充血しているようだし、アスカの言葉に嘘はないようだ。
シンジは反射的に謝った。


「ご、ごめん・・気が利かなくて」


「まあ、いいわ。
謝る気があるなら、お昼、アタシに付き合いなさい。いいわね?」


「わ、分かったよ、アスカ」


シンジは何も反論できず、アスカに頭を垂れた。
アスカも言葉はキツイが顔の表情は穏やかで、怒っている感じではない。
端から見れば、彼女が彼氏に愚痴をこぼして甘えている光景にしか見えない。
それは、二人の様子を窺っていたクラスメート達の共通認識と言っていい。

この少年少女達にとっても、焦れったい限り。


「まるで夫婦の会話や。あいつら、自分達で気づいてへんのかいな」


「まったく、おかしなカップルだわ。
はい鈴原、今日のお弁当」


「おう、すまんの」


洞木ヒカリが鈴原トウジに弁当の包みを渡し、トウジは当たり前のようにそれを受け取って自分の鞄にしまった。
ヒカリが父子家庭のトウジを気遣い、彼の弁当を持ってくるようになって一ヶ月以上。
すでにこの光景は当たり前になり、当初は照れていたトウジも完全に慣れた。休みの日には、お礼と称して
トウジがヒカリを誘って出かける事もあるらしい・・つまりはデート。
それを知る相田ケンスケは、溜息しか出ない。


「人のこと言えんのかよ、お前ら・・」


表向き、世は順調に推移している。








ネルフでの訓練は、シンジにとって楽なものではない。
特に戦技を習得する格闘訓練などは、今まで格闘技の経験などなかったシンジには辛い。
かといって、肉体の疲労が性欲を消し去ってくれるわけではない。
訓練が終わり風呂で汗を流すと、食欲と共に性欲も沸き上がってくる。

今日も予定していた訓練を終え風呂にも入って、後は帰るばかり。
シンジは、一緒に帰るから待っていろというアスカの言葉に従い、休憩所でジュースを飲みながら学校の宿題を片付けていた。
アスカの身支度は長いので、一時間くらいの時間はある。

そんなシンジは、仕事を終えて帰るらしいマヤの姿を目にとめた。
私服に着替えたマヤは、普通のOLみたいな恰好・・白いブラウスに紺のタイトスカートという軽装だ。
シンジは、思わず彼女に声をかけていた。


「マヤさん!」


「あら、シンジ君」


「お帰りですか?」


「ええ、最近は残業少ないから。
シンジ君も終わりでしょ?」


「はい。今は、宿題をやりながらアスカを待ってるんです」


「そう、アスカちゃんを・・
じゃあ、今夜は」


シンジにはアスカがいる・・
その事実をマヤはあらためて知り、今夜の逢瀬は消えたと理解した。
続けての外泊では、いくらミサトでもアリバイ工作の構築は難しいだろう。休みの日にでもシンジを自宅に呼ぶしかない
かもしれない。

アスカがシンジに気持ちを向けている様子は職員の間で常識と化していて、シンジも満更でない様子から、いずれ付き
合い出すのではないかと噂になっていた。
マヤもそんな二人を微笑ましく見守っていた一人だった・・・つい昨日までは。

歳も歳だし、マヤはアスカとシンジの関係に割り込むつもりはなく、適当な時期が来たらシンジとの関係は清算するつもり。
アスカと付き合い始めれば、体の関係にも発展するだろう。そうすれば、自分の役目も終わるだろうから。
それまでは、自分も愉しみたい・・目覚めた女の性が、マヤの体を支配している。


「えと、その・・
マヤさん、こっちへ」


「え?ちょ、ちょっとシンジ君」


二人の間に流れる気まずい空気を吹き払うかのように、突然シンジがマヤの手を取って歩き出した。
マヤは戸惑いながらも手を振り切るような事はせず、シンジの後を付いていく。

シンジが行き着いたのは、パイロット用の仮眠室。
中から鍵がかけられるようになっており、非常時でなければ外からは開けられない。
その上、ネルフ内には珍しく盗聴器やら監視カメラも無い。他に盗聴器の類の無い部屋を探せば、トイレとか風呂くらい
しかない。

シンジは自分のIDカードでドアを開けると、マヤを引き込んでドアを閉めた。そしてロック。
二人が慌ただしく部屋を出たのは、約一時間の後であった。







使徒戦が始まって半年が過ぎた。
薄氷の勝利も何度かあったが戦いは順調に推移し、パイロット間や職員間の人間関係も概ね巧くいっていた。
加持とミサトは無事婚約して、使徒戦終了後に式を挙げる事が決定。
アスカとシンジも、ごく自然に付き合いが始まった。
同居する二人の関係はすぐにでも発展するものと誰もが予想し、リツコなどはアスカにピルを渡すなどして対策を講じた
程である。
しかし予想に反し、二人の関係は付き合う前とさして変わらない。
変わったところと言えば、アスカが少し穏やかになり、シンジが少しだけしっかりしてきて、キスが何度か目撃されたこと
くらいか。


「それが不満だと言うの?あなたは」


「あったりまえじゃん!アタシ達付き合ってんのよ。それに同居だってしてる。
おまけにキスは飽きるほどしてるし、アタシはいつでもいいってサインをこれでもかって出してるのに・・
なんでアイツは手を出してこないわけ?」


アスカは、正式に付き合い始めたにもかかわらずキス以上を求めてこないシンジに不満が鬱積していた。
その不満を今日、リツコにぶつけたのである。ご丁寧にも、リツコの執務室に押しかけて。
少女の欲求不満、或いは惚気を聞かされるリツコはいい迷惑・・・よって、適当に受け流しておく。
要はアスカが惚気たいだけと、リツコは判断したわけ


「私は、年相応の付き合いでいいと思うけど。
ミサトには相談したの?」


「したわよ、一応」


「で、何だって?」


「アスカが襲っちゃえば?・・だって。
そんな事、出来るはずないじゃない。恥ずかしい」


「ミサトらしいわね」


ミサトなら、そう言うだろうとリツコが予想していた通り。伊達に十年以上も友人をやっているわけではない。
アスカの反応は予想外だ。彼女ならアプローチだけではなく、積極的に行動するものだとリツコは考えていたから。
それ故に、事前にピルを渡してもいる。


「そんな事より、アイツをその気にさせるにはどうすればいいの?
経験豊富なんでしょ?アンタ」


「あなた、私をどういう目で見てるの?」


「どういう目って・・」


濃いめの化粧と金色に染めた髪の毛で、ネルフ内での自分の評価は分かっているつもりのリツコではあったが、アスカに
までそういう感じに言われるといい気分はしない。しないが・・・
彼らの立場を考えると、それも許容範囲かと思うのだ。


「それはいいわ。
で、相談の答えなんだけど、ミサトの言う通り、アスカがシンジ君を襲うのが一番手っ取り早いわ。
前に渡したピルをちゃんと飲んで、既成事実作っちゃいなさい」


「無責任な答えねえ」


「要は、好きにしろって事よ。
特殊な立場にあるあなた達に通常の倫理を押しつけるつもりはないし、それなりの便宜も図ってあげる。
特権は、使えるだけ使わないと損よ」


「だから、具体的にね・・・」





結局アスカは、リツコから明確な答えを引き出せずに終わった。
そんな彼女は無駄と知りつつ、自分の親友に相談することにした。つい最近、鈴原トウジと付き合いだした
洞木ヒカリにである。
性に関しては奥手と思われるヒカリにこんな相談するのは無謀と分かってはいるが、誰かに話さずにはい
られないのだ。


『焦ること無いわ。
シンジ君の年頃の男の子の性欲って発情してるのと同じだから、その内我慢できなくなるわよ。
その内、辺り構わず求めきて、しつこくて困るなんて思うようになるわ』


「な〜んて、リツコは言ってたけど・・
最近のアイツの落ち着きぶり見てると、どっか不安なのよね。性欲が無いんじゃないかって思っちゃうわ。
ヒカリはどう思う?」


「わ、わたしにそういう相談されても・・
鈴原とは、付き合い始めたばかりだし」


担任から授業に使う資料運びを頼まれたヒカリを手伝うアスカは、彼女達の他に誰もいない廊下を歩きながら声を潜めて
話しかけるが・・・
アスカの開けっぴろげな話に、ヒカリは正直付いていけない。
性に関心が無いというわけではなく、現実的な問題として直視出来ないのだ。
トウジと付き合いだしたと言ってもキスどころか手を繋ぐだけで精一杯の現状では、彼氏の性欲が云々と言われても困る。
アメリカ生まれドイツ育ちのアスカは、自分と感覚が違うとしか思えない。
彼氏と同居している時点で、かなり感覚は麻痺するだろうとは思うが。


「二人きりになった時とか、鈴原は何もしてこないの?」


「まだ、そんな状況になった事ないわよ。デートだって何回もしてないのに。
四六時中一緒にいるアスカ達とは違うわ」


「あら、アタシ達だって、いつもひっついてるわけじゃないわよ」


「え?そうなの?」


「訓練のスケジュールだって、まるっきり違うしさ。ネルフじゃ、ほとんど別行動だもん。
たまに一緒の訓練もあるんだけど、訓練中に甘えられないじゃない。
その分、学校や家で甘えてるのよね」


「・・・そういう事か」


ベタベタしているように見えるアスカ達が意外にさっぱりした関係なのかと一瞬考えたヒカリだが、それはやはり甘かった
ようだ。

しかし相手がシンジとはいえ、彼氏に甘えるアスカというものが未だヒカリには信じがたい。
アスカは、自分より遙かに大人びていると思っていた。
たとえ男性と付き合う事になっても彼女は凛とした姿勢を崩さず、彼女から甘えるなど論外。
全て彼女の意のままに事を運ぶような、そんな関係をイメージしていたのだ。
それがどうだ・・
ヒカリの見る限り、アスカはシンジに甘えきっている。
それは見る人が見ないと分からないような微妙な仕草だったりするが、ヒカリには分かる。
体の関係にまで至っていない現状でこうなら、一線を越えたらどういうことになるのか・・
ヒカリは、それ以上考えるのをやめた。


「早くしないと、先生にお小言もらうわ。
急ぎましょ、アスカ」


「あん、待ってよ、ヒカリ」


小走りに教室へ向かう二人の少女は、まだ男を知らない無垢な花。その会話は、まだ可愛らしい。
が、数ヶ月もした頃には、かなり生々しいやり取りに変わっていた。








「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


後ろからのしかかるようにして果てたシンジの重みを背に感じながら、マヤはこのような場所で行う行為に
背徳的な快感を感じる。
出来るだけ物音も立てず、ほとんど声も出せない・・・ここは、ネルフ内にある男子トイレ。その個室。

一口にトイレと言っても威容を誇るネルフ本部には数多くのトイレがあり、使用頻度も場所によってかなり異なる。
パイロット専用の更衣室など周囲にパイロット関係の部屋が多いこのトイレは実質上パイロット専用のような感じで、使用
する人間はあまりいない。
シンジはマヤとあまり会えない時など、ここを利用して彼女を抱くケースが多くなった。
仮眠室が使えれば理想なのだが、前に一度、部屋を出るときにアスカと鉢合わせしそうになってから、何となく使いづらい。
男子トイレならアスカと会う事もないし、マヤが出るときには自分が先に出て様子を窺えばいいだけだ。


「もう、終わりなの?まだ二回よ」


互いの体液で汚れた自分自身とマヤの秘部をティッシュで拭き取ったシンジが下着を穿いて身支度を整えるのを見たマヤ
は、これで終わりなのかと拍子抜けしたような感じで話しかけた。
いつもは二回くらいで満足なぞしないシンジにしては珍しい。しかも今日は、マヤの生理が終わって久しぶりの行為にもなる。


「今日は、時間が無いんです。その・・・」


「・・・そっか、アスカちゃんと約束があるのね」


今日のアスカはシンクロテスト中にも笑みを絶やさなかった事から、この後に二人で何かイベントでもあるのだろうとマヤは
察した。。
となれば、今日はシンジもマヤの残り香をシャワーで消す必要がある・・いつもより念入りに。
女の嗅覚は敏感だ。実際、マヤもシンジからキスで移ったらしいアスカの匂いを感じることがあるから。


「すみません」


「いいのよ。気にしないで」


自分と目を合わせず済まなそうに謝るシンジに軽く笑って応えたマヤは、自分もバッグから新しい下着を出して身に着けた。
このような事にもすっかり慣れ、替えの下着を用意するなど、準備も怠らない。
冷静に考えれば恥ずかしい事とも思うが、こんな状況を愉しんでいる自分が確かにいる。

好きだとか愛だとかではなく、体がすでにシンジ以外を受け付けなくなってしまった。
シンジがアスカと付き合い始めても関係はまだ続いているし、できるだけ続けたいとも思うようになった。だから、彼らの邪魔
はしない。


「はい、準備完了。外、見てくれる?」


「分かりました。待ってて下さい」


身支度の終わったマヤがシンジに出入り口の確認を頼み、シンジが周りを窺いながら個室を出て行った。
そして彼からOKのサインが出ると、マヤは素早くトイレから出ていくのだった。
この間僅か数秒・・
用心に用心を重ね、これまで目撃される事はなかったし、今回も完璧に警戒したはずだった。
しかし今回は一人の目撃者がいた。それも最悪の人物。
それは・・


「マヤとシンジが?・・・どうして?」


女子トイレから出ようとして様子のおかしなシンジに気づき、咄嗟に身を隠したアスカだった。

二人の関係がただならぬ物だと分かったが、嫉妬より疑問の方が大きい。
自分には手を出さないのに、他の女は抱く・・・シンジの考えが分からない。


「そういえば・・
前に一度、家出したって言ってたわね、アイツ。それと関係がありそうだわ。
ミサトに聞いてみるか」


アスカは携帯を取りだして、シンジの携帯にメールで少し遅れると連絡し、シャワーを浴びる前にミサトに会う事にした。
どんな事実に直面してもアスカはシンジを離すつもりなど無いし、自分から離れるつもりもない。
マヤと関係があろうと他にも女がいようと、自分はそんな女達を乗り越えてみせるとの自信がある。


「アタシから逃げるなんて、許さないんだから!」


ミサトの執務室へ向かうアスカの足取りは力強く、自信に満ちていた。







訓練が遅くなった時の夕食はネルフの食堂で済ます事の多いアスカとシンジであるが、たまには外で食べる
のもいいと事前に二人で相談し、今日は街のレストランで食事を摂った。
何て事無い普通のレストランではあったが、私服に着替えた二人はそこそこの雰囲気を味わう事が出来た。
いつもは手を繋いで歩く二人が腕を組んで家路に着いたくらいに、いい雰囲気が二人を包んでいた。
途中、人影が途絶えた時などはキスしたりもして、雰囲気は最高に盛り上がっていたと言っていい。
今日こそは・・・
と、アスカが不安と期待に胸を躍らせたのも無理はないだろう。

しかしシンジは、家に帰るとすぐに風呂の用意をしたり家事に専念・・いい雰囲気は消えてしまった。
そして彼は、風呂に入った後さっさと寝ようとまでする。
アスカは、その時点で感情を爆発させた。


「ちょっと待ちなさいよ、シンジ」


青いパジャマを着たシンジが自分の部屋へ向かおうとするのを、アスカはきつい口調で呼び止めた。
いつもと違う彼女の様子に、シンジの表情も強ばる。


「な、何だよ」


「何でアタシから逃げるの?
何で抱いてくれないのよ!どうして!」


「・・・僕達には、まだ」


「早いなんて言わせないわ。ミサトやマヤは抱いてるくせに」


「な、何でそれを!?」


一番知られたくない人間に知られていた・・・
シンジのショックは大きい。
アスカとの関係もこれで終わりだとシンジは諦め、首を項垂れてしまった。

アスカはそんなシンジに構わず、向き合ったまま話を続ける。
薄赤色したシンジとお揃いのパジャマが、どこか哀しい。


「ミサトから聞いたのよ。
始めはしらばくれてたけど、泣き真似したら簡単に教えてくれたわ。意外に甘いわね、ミサトも。
要は、家出したアンタを体で繋ぎ止めただけじゃない。マヤはそれを引き継いだだけ。そこに愛情なんか無いわ。
アタシに気を遣ってくれるアンタの気持ちは嬉しいけど、アタシとしては不満よ。アタシを好きなら抱いて」


罵倒はおろか殴り殺されるのではないかとまで覚悟していたシンジは、意外なアスカの冷静さに、思わず項垂れた頭を上
げていた。


「ただ性欲を満足させるためにミサトさんやマヤさんと関係を持った僕に、アスカを抱く資格なんて無いと思ってた。君を汚
すだけだって・・」


女を知り、女体を見慣れたシンジでもアスカは魅力的。
ミサトやマヤにない若さ故の瑞々しい肌や、歳に似合わないメリハリの利いた体など、今すぐにでも押し倒したいくらいだ。
しかし他の女を抱いた後でアスカと関係を持つなど、自分で自分が許せない。
アスカを想っても抑えきれない自分の性欲が、シンジには恨めしかった。
もっと淡泊な男であったらと・・心の底から思う。


「アンタに抱かれて汚れるなんて思わないわ。
ミサトやマヤにしたように・・いえ、それ以上にアタシを味わって。
アタシが一番だって言って!


アスカはその場で着ている物全てを脱ぎ捨て、シンジの目前に魅力的な裸体を晒した。
シンジの目は、アスカの体を凝視したまま離れない。そして・・・


「え?こ、こんな所で・・
ベッドに行き」


「我慢できない!」




この夜からアスカとシンジの関係は、可愛らしい恋人達から濃密な男女の関係に発展した。
その変化に、周囲は敏感に反応するのだった。







翌日・・


シンジを学校に送り出した後、アスカは股間から響く痛みに耐えてネルフに向かった。
激痛という程ではないが、学校で耐えうる痛みではないと判断したアスカは体調不良を理由に学校は休む事にした。

ネルフに向かった理由は、幾つかある
リツコを介して医療部でメディカルチェックを受ける事と、ミサトへの事後報告・・・
それと同時に、言っておきたい事もあるから。

ネルフに着いたアスカはまずリツコの元を訪れ、医療部での検査を依頼。
使徒戦は、まだ終わっていない。こんな状態で戦いに赴くのは、アスカの本意ではない。
痛み止めの注射くらい打ってもらおうと思ったのだ。
そして要望通り痛み止めを注射してもらったアスカは、楽になった下半身に感謝しなからミサトの執務室へと向かった。


「ふ〜ん・・
アスカも女になったのね。
おめでとうと言っておくわ」


気のせいか幾分大人びた感じに見えるアスカを前にミサトは、とうとうここまで来たかと胸をなで下ろした。
シンジがいつまでも自分やマヤに固執するなら、それはまた危険な兆候だとミサトは考えていた。
性欲だけが先行しているならまだいいが、精神面までも自分達に縋るようなら、シンジをパイロットから外す事も考えてい
たのである。
精神面の脆さは、エヴァの特性を考えれば致命的になりうるとリツコから聞いていたから。
だがそれは、アスカの出現によって杞憂と化したようだ。


「アンタにお祝いされても嬉しくないわ、ミサト」


「シンジ君に女を教えたのが私だから?」


「分かってるなら、言わないで」


自分に気にしないと言い聞かせシンジにも強気で通したが、実際問題、全く気にならないと言えば嘘になる。
目の前に座る女の体をシンジが裸に剥いて抱いたと考えると、怒りの感情が込み上げてくるのを抑えられない。


「あの時のシンジ君には必要だと思ったから、私は体を開いたのよ。愛なんて無かったわ。
シンジ君だって同じ。私やマヤは性欲の捌け口でしかなかったはずよ。
でもアスカは違う。愛された上に抱かれてる。過ぎたことなんか、気にしない方がいいわ」


「仕事の一環だったとでも言うの?本当にそれだけ?」


「ん〜〜〜、百%そうかと聞かれると自信ないわね。
シンジ君は、そっちの道の達人よ。女なら、誰でも虜になるわ。
女になったばかりのアスカには、まだ分からないでしょうけど」


「・・・わ、分かるわよ、それくらい」


挑発とも思えるミサトの台詞にアスカが反応し、顔を赤くして俯いてしまう。

普通は、ある程度経験を積まなければ得られないと思われる女の悦楽。
が、しかし・・
アスカの反応からして、彼女はすでにそれを知っているらしい。


「あなた、まさかもう・・」


「と、ともかく!過去のことは忘れてあげるから、今後一切シンジには手を触れないで!
マヤにも言っといて!いいわね!」



顔を真っ赤にしたまま、捨て台詞を残して、アスカは部屋を出て行く。
後には、呆れたような・・羨ましいような複雑な顔をした女が一人、残されていた。







アスカの要望をミサトとマヤが聞き入れたかどうか・・・
それは当人達以外、誰も知らない。

ただ数十年後、老境に入ったシンジがアスカに先だって入滅した時、彼の子供と称する弔問客が二桁近く現れている。
その中にはミサトとマヤの子供は勿論、生涯の親友として付き合った女性の子供や、嘗ての同僚パイロットの子供も含まれ
ていて、激怒したアスカは亡き夫の収まる棺桶を蹴り上げた。
当然ながら葬儀は大変な混乱に見舞われ、集まった親族は、歳を経ても変わらないアスカの激しさに驚嘆したのだった。

そんな彼女も葬儀を終えた後は仏壇の前で塞ぎ込む日々が続き、一ヶ月後には夫の後を追うように息を引き取ってしまった。
二人の知人、親族達は常世でアスカに絞られるシンジを想像し、しみじみと亡き二人を偲んだという。





でらさんから100万ヒット記念をいただきました(ありがとうございます)

それにしてもシンジ、アスカで出来てさらに結婚しても手当たり次第に手を出したんですねぇ・・・

凄いですねシンジ、流石は卑下の息子?それ以上かもしれませんが(w

素敵な小説を書いてくださったでらさんにどうか皆様感想メールをお願いします。