夏の思い出

    アスカ嬢生誕記念

    作者:でらさん












    あの頃、空が蒼いことは知っていたが、それがどんなに美しいものであるか考えたことはなかった。
    輝くほどに白い雲は陽を遮る障壁以上でなく、空気すら染まるような夕日に感傷を抱くこともなく、
    儚げな光を放つ満月に神秘的な畏怖を抱くこともない。自分は、そんなつまらない人間だった。
    今でもさほど変わらないものの、年相応程度の成長はしている・・・と、思う。
    断言できないのは、決定的なキャリア不足を自覚しているから。
    一般的なキャリア、学歴は問題ない。標準より遙かに早く大学に入り、しかも短期間で卒業した。
    職歴は一つしかないけども、正式採用になってからは、特にこれといった失態はないし遅刻もない。
    上司の受けは良くないが、首になるほどではない。まあ、どんな不祥事を起こしても首になることは
    ないだろうが。
    とにかく、そういったキャリアでないことは確かだ。
    で、何かといえば、異性関係。その経験が、全くと言っていいほど、完璧にない。
    興味がないわけではなかった。ロマンスの話で盛り上がり、結婚していく友人達や知り合いを見て、
    焦りみたいなものも感じていた。
    宗教的な理由はないし、ヴァージンを神聖視してもいないし、男嫌いなわけでもない。理由は、一つ。
    あの少年、碇シンジが頭から離れない。ただ、それだけのこと。


    「認めるのが怖かったのよね。
    今となっちゃ、くだらない理由だわ」


    自嘲気味に言葉を吐く惣流・アスカ・ラングレーは、降下を始めた旅客機の座席から地上を見下ろ
    した。
    この地には、様々な感情を混ぜ込んだ思い出と感傷がある。
    自分を狂気に誘い込むトラウマを覆い潰すため、己の能力を必要以上に誇示し、常に他人の上を
    行くことで平穏を保とうとした。
    それが巧くいっている内は良かった。
    作戦上の都合で同居することになった同僚、碇シンジともケンカ友達のような関係となり、それは
    次の段階に発展していくような、暖かい感情の触れ合いとも思えた。
    強制的に通わされた中学校では初めて友人らしい友人もでき、トラウマは、一時的にせよアスカの
    頭から消えていた。
    が、ある時期から事態は暗転していく。
    その後のことは、今でもあまり思い出したくない。
    結論から言うと、心を破綻させた自分が快復するまで二年の時が費やされている。しかも日本のネ
    ルフ本部からドイツ支部へと移送されていた。アスカが自分を取り戻したとき、そこはすでに異境
    の地であったのだ。
    正確には、そこは異境の地ではなく故郷とも言うべき地なのだが、アスカにとってドイツはもう、そ
    れほど愛着の沸く地ではなかった。耳に入るドイツ語も、出される料理も、笑顔で接してくれる優し
    い人々も、遠い異国の外国人に思えたものだ。

    リハビリを終えた頃、アスカは正式なネルフ職員、ドイツ支部参謀顧問の身分を与えられ、勤務す
    ることに。
    参謀顧問とは大層な役職に思われそうだが、支部司令直下で所属部署はなく、部下もいない。要
    は、ネルフの機密を知るアスカを一般社会に放り出すわけにもいかないので、適当な役職を作って
    囲い込んだだけ。当初は大学卒業のキャリアを考慮して研究部門などへの所属も検討されたのだ
    が、二年間の療養は、アスカから聡明な能力をも奪い去ってしまっていた。能力査定のため課せら
    れた各種試験の結果は、昔の彼女を知る者にとっては信じがたい結果で、失望の色を隠せなかっ
    たという。
    アスカのショックもかなりのものと思われたのだが、アスカは試験の結果を冷静に受け容れ、与え
    られた閑職にも不満を言うことなく、真面目に勤務している。上司、つまり支部司令とのソリが合わ
    ないこと以外、この二年は平凡に、平穏に暮らしていた。
    日本語を忘れないように、かつての友人、洞木ヒカリと連絡を取り合ったり、本部との業務連絡を密
    にしたり・・・
    基本的に暇なので、料理に挑戦したりもした。
    今ではプロ並みとまでいかないまでも、人並み程度にはできるようになっている。自宅へ遊びに来た
    支部の友人に出したところ悪くはないと言われたので、普通以下ではないと思う。

    体は成長し、化粧を覚え、外見は女そのものになっていく。
    かつて憧れの対象だった加持リョウジが欲していただろう大人の女に、自分は成長した。
    なのに、なぜか男に興味が向かない。
    いくら誘われても、どんなに優しい言葉をかけられても、とりあえずこの男でいいとすら考えられない。
    かといって、同性に興味が向くわけでもない。男とデートすらしないアスカの評判を聞き、その筋の
    女が何人か誘いをかけてきたけども、靡くことはなかった。
    そんなアスカを揺さぶったのが、ヒカリからの定期連絡。
    彼女は、電話で言った。


    『碇君に、彼女ができたみたいなの。
    今度の休み、デートなんだって』


    瞬間、アスカの全身が硬直していた。
    次に、身を震わすほどの怒りが吹き出してくる。
    シンジの近況は、同じ高校に通っているヒカリ、そしてミサトから細々と聞いていた。
    今は一人暮らしで、ネルフに行く時は、綾波レイと連れ立って歩くことが多いという。
    それでも、二人が付き合っているわけではないとも聞いていた。親密さは感じられるが、友人以上
    ではないと。
    今は背も伸び、元々整った顔立ちの彼は女子生徒からの人気が高いらしい。
    性格も少し変わったようで、うじうじした感じは消えたとのことだ。
    それらが、アスカには気に入らなかった。自分の知るシンジが、心の変調の原因ともなったシンジが、
    自分の知らないところで勝手に成長していると思った。
    が、そこでアスカは、ハッと思い直す。
    ここまで彼にこだわるのは、なぜなのか。
    なぜ自分は、男に興味を持てないのか。
    答えは一つしかない。
    あの頃なら決して認めなかっただろう己の気持ちが、今は普通に言える。

    そうだ。自分は、シンジを求めている。

    それを自覚した時点で、アスカは即行動に移った。
    一ヶ月の休暇願を申請し、日本直行便の航空券を取り、荷物を纏め、ネルフの制服は目立つため、
    紺のスーツ&タイトスカートに着替えた。以上全てを約一時間で済ませたアスカは、二時間後には機
    上の人となっている。
    休暇願は、支部司令のオフィスにファックスで送っただけ。確認は取っていない。が、受理されようが
    却下されようが、どうでもいい。航空券が何の問題もなく購入でき、搭乗手続きに引っかかることもな
    かった。自分はもう、それほどの重要人物でないということだ。喜ばしいことなのか哀しいことなのか、
    少々微妙なところではあるが。


    「絶対クビにはならないと思ってたけど、怪しくなってきたか。
    でも、それが何よ。アイツに、シンジにガツンと一言いってやらなきゃ、気が済まないわ。
    このアタシを袖にして、他の女にうつつ抜かすなんて」


    他の女の隣に立ち、他の女に微笑みかけるシンジをアスカは許せない。
    誰が何と言おうと、あれは自分の物だ。四年も前から、そう決まっている。四年前は自分でも気付い
    ていなかったことやシンジの意志など、知ったことではない。
    彼の全てが欲しい。
    手に入らないなら・・・
    何もいらない。
    世の全て、己の命さえも。

    激情に心を支配されたアスカは気付かない。
    総座席数五〇〇以上を誇る大型旅客機内に、自分以外の客が僅か一〇名ほど。しかも全員、黒スーツ
    黒ネクタイ、サングラス着用の異様な連中であることを。
    はっきり言って、とても変だ。








    感情の赴くまま、勢い込んで第三新東京市まで来てしまったものの、それから先のことは考えていな
    かった。
    アスカは市中心部近くのホテルにとりあえずチェックインすると、市街をぶらついて適当な喫茶店を見
    つけ、そこで思案に暮れた。
    窓から見る街は、近づくクリスマスを歓迎するかのように飾り付けに精を出している。
    ところが、それはどうも常夏の街並みに似合わない。日本らしいと言えばらしいが。
    そう言えば、この時期には別のイベントが何かあったように思うが、アスカはそれが何か思い出せない。
    どうでもいいような気はするし、とても大切な物のような気もする。
    しかし、今はそんなことより身近な問題を解決しなければならない。これから、どうするかだ。
    ネルフ本部に顔を出せば、昔の馴染みで色々と便宜を図ってくれる・・・
    とは思えない。無断でドイツを発ってきたことは既に知られているだろうから、ゲートをくぐろうとした時
    点で身柄を拘束され、ドイツへ強制送還される可能性が高い。
    引退した冬月に代わって副司令に就任したミサトとは昔からの知り合いだし、業務を通じての付き合い
    もある。回線を通じたバーチャル会議で、私的に歓談することも多い。
    が、ミサトは仕事に私情を持ち込むほど甘い人間ではない。
    昔は私情を挟みすぎのきらいがあったものの、現在はその失敗から学んだのか、仕事とプライベート
    のより分けは厳格だ。
    よって、ミサトの助力はあてにできない。
    他の人間はどうか。
    司令のゲンドウを始め、ネルフ関係者で親しい者はいない。思えば、本部での人間関係は希薄だった。
    リツコやマヤとの接触は多かったものの、親しかったとはとても言えない。日向や青葉に至っては、ろく
    に口を利いたこともない。
    レイは・・・
    考えるまでもない。
    恋敵に縋るほど、堕ちてはいないつもりだ。
    残る人物となると


    「やっぱ、ヒカリしかいないか。
    迷惑かもしれないけど、仕方ないわね」


    携帯の番号は聞いているし、何度かかけたこともある。
    とはいえ、セカンドインパクト前から独自の進化を遂げていた日本の携帯電話システムは現在でも健在
    で、ドイツから持参した携帯は使えない。店内を見渡しても、据え置きの電話は見えない。
    よってアスカは、公衆電話を探そうと店を出た。
    と、その時、


    「ごめ〜ん、碇君。待ったでしょ?」


    「そんなことないよ。来たばかりなんだ」


    媚びるような女の声と、それに応える男の声がアスカの気を引いた。
    女の声にも男の声にも聞き覚えはない。
    が、碇君という単語がアスカを引き付けた。アスカの体が反射的に声のした方角へ向き、目が目標を捉
    える。
    男の腕を抱え込もうとしている女は知らない。
    知らないが、排除すべき存在だということは分かった。
    胸元が大きく開き、肩まで露出したシャツにミニスカート、可愛らしく束ねられたポニーテール、そして欲望
    を隠さない物腰と誘うような紅い口紅、その全てがアスカの癇に障る。
    それを受け容れるかのような、隣に立つ男も腹立たしい。
    背が伸びたにもかかわらず、顔つきはあまり変わってない。
    昔は、自分と同じか低いくらいだったのに。
    記憶にある声とは違う。けども間違いない、シンジだ。
    アスカの足は、自然と動いていた。


    「待たせたわね、シンジ。
    今日は、どこに連れて行ってくれるの?」








    呆然唖然とするポニーテールの女など構わず、女が抱え込んでいたシンジの腕を奪い取ったアスカは、
    そのまま喫茶店の店内にとって返した。
    そして、何事かといった顔で応対したウェイトレスをも無視。さっきまで座っていた席までシンジを引っ張っ
    ていき有無を言わさず座らせ、自分は対面に座る。
    半分くらい席の埋まっていた店内は僅かにざわついたものの、痴話喧嘩の類と思ったのか、すぐに収まっ
    た。収まったところでウェイトレスが注文を取りに現れ、これまたアスカが勝手にコーヒーを二つ注文。シ
    ンジはずっと、押し黙ったまま。互いに目を逸らさず睨み合う構図が、暫く続いた。
    が、その均衡は、コーヒーの到着で瓦解する。


    「なんで、邪魔したんだよ。初めてのデートだったのに」


    再会を喜ぶ会話の始まりにしては相応しくない仏頂面で、シンジは恨みがましく言った。
    無理もない。彼にとっては、人生始まって以来初めてのデート。それをぶち壊されたとあっては、恨みたく
    もなる。シンジは、この日のため、相談できる人間全てにあたって服装やらデートの手順やらを教わってい
    た。それが全て無駄になってしまった。突如現れた、昔馴染みによって。


    「アタシに断りもなく、デートなんかするからよ」


    「はい?」


    シンジには、意味が掴めない。デートするのに、なぜアスカの許しが必要なのか。これまで連絡の一つも
    寄越さなかったのに。
    アスカは、あくまで病気療養の目的で一時的にドイツ支部へ預けられているだけで、基本的な所属は本
    部に在るとミサトは言っていた。事実、アスカとの電話等に制限はなく、ヒカリなどは定期的に連絡を取り
    合っていた。ミサトも業務でアスカとよく話をしているのだが、彼女が自分に直接接触してくることはなかっ
    たのだ。
    本音を言えば、寂しさを感じていたのは事実。
    あの戦いは結局、上部組織の委員会が内部抗争で自滅して有耶無耶の内に終わり、アスカは傷ついた
    心を癒すためにドイツへと送られていった。
    そして事態がある程度落ち着いた頃、シンジは、リツコからアスカのカウンセリング記録と分析結果を見
    せられた。
    そこには、彼女の壊れていった経緯と自分に対する期待と失望、憎悪が記されてあった。
    彼女の悩みに気付かず、気持ちに応えることができず、自分のことしか考えていなかったと自分を責め
    たシンジは、あらゆる意味でもっと強くなろうと意を決したのだった。いつか帰ってくるアスカを、しっかりと
    受け止められる男になろうと・・・
    ところがミサトから聞いた近況によれば、アスカには親しい付き合いをする男ができ、近々同棲を始める
    のではないかということだった。
    ミサトの言うことだ。嘘ではないだろうし、ヒカリに確認したところで、自分をおもんばかり、はっきりとは言
    わないだろう。アスカのためにと思ってしてきたことは、無駄骨に終わったのだ。
    思えば、ドイツで育ったアスカには向こうに知り合いが多いだろうし、中には親しい昔馴染みもいるだろう。
    その中の一人と深い関係になっても不思議ではない。ましてや、アスカと互いの気持ちを確認し合ったわ
    けではない。治療記録を見せられただけだ。
    全てが終わったと受け取ったシンジは、ケンスケを介して女の子を紹介してもらい、これからは自分なりに
    愉しく生きようと考えを変えていた。その始まりが今日であったはずなのに、よりにもよってアスカに邪魔さ
    れるなど、頭が混乱しそうだ。
    そんな悩めるシンジを置いてけぼりにしたアスカは、更に責め立ててくる。


    「あの女、アンタとどういう関係なわけ?」


    「関係も何も、直接会うのは、今日が初めてだよ。
    ケンスケに紹介してもらったのは一週間前だけど、ここのところネルフの方で色々あって、メールとかでしか
    やり取りしてなかったから」


    「相田に?アタシの知ってる女?
    顔に見覚えはないわね」


    「ケンスケが部長やってた、写真部の後輩でね。
    前々から話には聞いてたんだ、可愛い後輩がいるって。
    僕はてっきり、ケンスケがその娘と付き合うと思ってたんだけどさ」


    「ホントはその娘のことが好きなんだけど、彼女の幸せを思ったらアンタを紹介した方がいいって考えたん
    じゃないの?相田のヤツ」


    「それが本当だとしたら、ケンスケに都合のいいことになりそうだね。
    君のおかげってわけだ」


    「アタシは、自分にとって正しいと思うことをしたまでよ。
    相田の都合なんて、関係ないわ」


    「・・・君らしいよ」


    シンジは、時の空白を感じさせない会話の進みに楽しさを感じつつも、アスカが今この場にいる不思議の
    真相を知りたい。彼女得意の単なる気まぐれなのか、或いは昔馴染みに結婚報告でもしに来たのか。
    対面のアスカから薫る香水は大人の雰囲気に満ちていて、男としての生理が厭でも彼女を女として求め
    てしまう。さきほどチラと見た、タイトスカートからのびる脚は美しく魅力的だった。あれを好きに弄ぶ男を
    羨ましいと思う。どんな男なのだろうか、その男は。


    「ところで、何で急に日本に来たんだい?
    ミサトさんは、何も言ってなかったけど」


    「アンタのせいでしょうが」


    「僕の?」


    「アンタが他の女とデートするってヒカリから聞いたから、アタシは」


    「だからさ、僕がデートするくらいで」


    シンジの言葉は、最後まで続かない。
    いや、続けられなかった。
    なぜならば、アスカの唇がシンジの口を塞いでいたから。
    そして約一分の静寂の後、唇は離れる。
    次に、アスカは言った。


    「これが、アタシの答えよ。
    まだ言うことある?」


    「え〜っと・・・」


    何か言わなくてはいけない。こんな場合、普段はとても言わないキザな言葉でもいいのに。
    そう分かっていても、シンジの口は巧く動いてくれない。それでも、ここまで来てくれたアスカの想いに応
    えるために、何か一言・・・
    その時、焦りまくるシンジの目は、店内に掲げてあるカレンダーに。
    シンジは、答えを見つけた。
    当日にはまだ数日早いが、許される範囲だろう。


    「ちょっと早いけど、誕生日おめでとう、アスカ」


    自分でも忘れていた誕生日。それを、シンジは覚えていてくれた。
    思いがけない答えを返されたアスカの目は潤み、それはすぐに決壊して大粒の涙が頬を伝う。
    シンジは席から立ち、そんな彼女を包み込むように優しく抱きしめた。









    おまけ


    「
    作戦成功に、かんぱ〜い!
    我ながら、見事な戦術だったわ。
    ダミー情報の流布、シンジ君と相田君の心理及び行動予測、洞木さんを通しての情報操作、MAGIを使った
    監視体制の攪乱、旅客機丸ごと一機抑えた大胆さ。 全てが完璧。
    まあ、可愛い後輩から愛想尽かされるのは確実の相田君と、アスカにシンジ君横取りされた女の子には悪
    いことしたけど、アスカには、最高の誕生日プレゼントよね!
    いや〜、ほんと、いいことした後の気分て最高!」


    「喜ぶのはいいんだけど、ミサト。
    航空会社からの請求書の決済、大丈夫なの?
    それと、MAGIの介入でアスカの出国を手助けしたけど、ドイツ支部に根回しなんてしてないわよ。向こうは、
    本部がアスカを唆したと思うでしょうね。下手すると、政府も巻き込んだ政治問題に発展しかねないわ」


    「心配性ね、リツコは。
    旅客機一機のチャーター料なんて、知れてるわ。私は今、副司令なのよ。そのくらいの決済、軽い軽い。
    経費でなんとかするわ よ。
    ドイツ支部は、加持に何とかしてもらうし」


    「え?俺が?
    今回の件、俺は何もタッチしてないぞ。
    何をどうしろと言うんだ、ミサト!」


    「怒れるドイツ支部を宥めて、アスカの身分を確定して、向こうに残ってるアスカの荷物を日本へ送ってもら
    うのよ。 簡単でしょ?」


    「簡単と思うか!?えぇ!?
    リっちゃん!君からも言ってやってくれ!」


    「あなたなら出来るわ、リョウちゃん。
    何しろ、三重スパイをこなした凄腕ですもの」


    「お前らなあ・・・」


    アスカ誕生日プレゼント大作戦の成功を祝い、普通の居酒屋で宴を開いた三人。
    たまには金のなかった学生時代を思い出すのもいいと考え、場をセッティングした加持だが、とんだ結末
    が待っていた。
    ネルフ支部随一の政治力を誇るドイツ支部は、とても一筋縄ではいかない相手。全精力を振り向けたとし
    ても、数ヶ月はかかるだろう。想像もつかない激務が確実に待っているのだ。
    シンジとの愛を成就させたアスカの幸せには、無条件で拍手を送りたい。妹のように思っている彼女の幸
    せは、自分の幸せでもある。
    が、しかし、加持には、ミサトの楽天さとリツコの突き放しぶりが魔女に思えるのだった。









    でらさんからアスカ誕生日記念をいただきました。
    これはまた素敵な誕生日プレゼントでありました。

    ミサトさんリツコさんヒカリケンスケそれからこの場にいない大勢の人たちの、アスカとシンジ二人への愛と幸せへの願いのようなものが感じられます。

    それに加持のようなクズ‥もとい、ハッタリ屋‥もとい、加齢じゃなくって華麗なエージェント(元)にも役に立てることがあったのですね。素敵です(笑

    素敵な話を書いてくださった読後にはぜひでらさんに感想メールをお願いします。

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