アスカなら、本当に妊娠している可能性が高い。
いや、彼女のことだ。確実に妊娠しているだろう。状況的に疑いようがない。
そしてその認識は、シンジも同様だった。
ネルフで新開発されたという男性用避妊薬を支給されてはいたが、最近は飲み忘れることが多く
なっていた。アスカにも薬が支給されていると知っていたので、彼女が飲み忘れることはあるまい
と楽観もしていたし。
平和に慣れすぎ、アスカとの関係に溺れ、気持ちに緩みが出てしまったようだ。
まだ父親になる覚悟はしてなかったが、こうなったら腹をくくるしかないだろう。
その前に、言うべきことを言わなくては。
今まで、気恥ずかしくて口に出来なかった言葉。
でも、いつか言わなければと思っていた言葉。
「冗談じゃないよね、アスカ」
「アタシが、こんなことでウソ言うはずないでしょ」
正直言って、妊娠のことは一時的に頭から消えていたアスカである。
今朝、家を出る前に自製のチョコと共に自分から”好き”と言ったのに、シンジは明確な意思表示
をしなかった。ただ好きと言ってくれれば、それでよかったのに。
それが心に引っかかって、昼までに鬱憤が溜まりに溜まり・・・
その果ての激情が妊娠を思い起こさせ、口から勝手に出てしまった。場所が場所だけに流石に恥
ずかしいが、言ってしまったことは仕方ない。
「待たせて、ごめん」
次にシンジの言った言葉を、アスカは一生忘れなかった。
その後のクラスメート達の祝福と冷やかしと、頬を伝う涙の暖かさも。
でらさんからバレンタイン話をいただきました。
濃厚な関係になりながら付き合っていると認識できないとは、変な風に素直じゃないですなあ。
シンジの方がわかっていたのでしょうか。
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