悩む女

    作者:でらさん













    境内を埋める、老若男女の群れ。
    それは満員電車並の混雑とはいかないまでも、それに近い光景。人波の動きに合わせなけ
    れば普通に歩くのも辛いし、また息苦しい。人混みがあまり好きではないアスカは、境内
    に入った瞬間に後悔したが、すぐに気を取り直して足を踏み入れている。
    子供の頃には、よく両親と来ていた。
    その時は父が肩車をしてくれたので、ただ愉しかった思い出しかない。
    それも遠い過去の話。今は両親と離れて一人暮らしだし、初詣も二〇年近くご無沙汰。物
    心付いてからは、神頼みなど己に自信のない軟弱者のすることだと馬鹿にしていた人間で
    もある。
    ところが、昨今の事情で状況が変わった。神にでも縋りたい気持ちなのだ、今のアスカは。


    (これなら、アイツも一緒でよかったかな)


    アスカは、今付き合う男の顔を思い浮かべ、一緒に来ればよかったと嘆息した。
    この人混みなら、たとえ知己がいても気付くまい。気付いたとしても、容易に近づけるも
    のではない。後に言われたとて、とぼければいいだけ。それに、今日は地毛の金髪をわざ
    わざ黒く染めてもいる。服も、ジーンズに適当な上着を羽織っただけの地味な格好。自分
    が第壱高等学校の英語教師、惣流アスカと気付く者は、まずいないだろう。
    こういうときは、白人の血が四分の三を占める自分の容姿を恨めしく思う。天然の金髪碧
    眼は、この国では目立ってしょうがない。髪の毛は染めれば済むが、顔立ちとかはどうし
    ようもないし。
    そのためアスカは、用心のためと言って彼を別の場所で待たせている。彼と一緒の所を、
    同僚や生徒に見られるわけにはいかないのだ、絶対に。
    なぜなら、彼女が付き合う男というのは、自分の教え子であるからだ。


    (なんで、こんなことになったのかな・・・
    年下趣味なんて、なかったのに)


    相手の男子生徒、碇シンジは、いわゆる目立つ生徒ではなかった。
    成績は学年上位にあるものの、普通に優秀といった程度。目を見張るほどの成績ではない。
    性格もおとなしく、いつも騒がしい鈴原トウジや、色々と話題に上る相田ケンスケの陰に
    隠れるような存在。アスカも、彼の成績が普通であったら名前を覚えるのに苦労したこと
    だろう。
    ただ一八〇に迫る身長や、割と整った顔が一部の女子生徒に注目されているとは、委員長
    の洞木ヒカリから雑談の折りに聞いていた。
    だがそれとても、アスカの歓心を引くものではなかった。
    アスカは、二八年を生きた女。一八の男など、子供にしか思えない。幾ら魅力的であって
    もだ。


    (焦ってたのかしらね。認めたくないけど)


    シンジと出会うまで、二人の男と付き合っている。
    初めて付き合ったのは、高校生の時。その時は、初デートでいきなりキスを迫られて拒否。
    まずは人となりを知ろうと思っていたアスカは激昂し、殴り倒して終わった。
    次は、大学に入ってすぐ。相手は、英文学系サークルの先輩。
    彼は優しく、アスカが嫌がることは決してしない男だった。
    が、半年もそれが続くと、流石に異常と思うようになる。アスカがさりげなく周囲に探り
    を入れると、気付いた彼が自分で告白した。自分はゲイだと。
    つまり彼は、アスカをカモフラージュとして使ったのだった。
    そのショックを思い出にするため、それから数年を勉強に傾注させたアスカの周囲からは
    自然と男の影は消え去っていき、自分はいつの間にか、男に興味を示さない冷酷で石のよ
    うに堅い女と評されるようになっていた。
    教師となった今でも、それはあまり変わらない。
    生徒との馴れ合いをなるべく避け、授業でも場を和ませるジョークは滅多にない。そのせ
    いだろう。赴任当初は容姿のおかげでかなりの人気を集めて生徒が群がったものだが、今
    は逆に避けられているくらい。例外は、ヒカリ他数人の女子生徒だけ。アスカも、何かと
    自分をフォローしてくれる彼女達は気に入っている。

    この歳になると、友人知人は次々と結婚し子供を産んでいる。
    それに対し、自分は経験すらない。人並以上の魅力を持つ自分に、何故、恋人すらできな
    いのか。
    その焦り。
    そして、毎年入学して巣立っていく生徒達。
    若々しいエネルギーに満ちた彼らに、自分の精気を吸い取られていくようだ。
    彼らの多くは、自由で奔放で、自分に嘘をつかない。それに付いていけず、ただ歳をとっ
    て取り残されていく自分。今は誇れる容姿も、いずれ衰える。これが褒めそやされるだけ
    で終わるのが怖い。
    でも身近には、擦り切れた男や勘違いした男、自分に臆するだけの男しかいない。夜の街
    へ出て、男を漁る馬鹿な真似は論外。人生を捨てるつもりはない。
    それら諸々の感情が、自分の正常な思考を妨げたのか。
    夏休み前のある放課後、担任の都合で進路指導を副担任のアスカが一人で応対することに
    なった。その日の相談者は、碇シンジ。進路相談室は、秘密性からか周囲から隔絶された
    場所に位置し、防音構造にもなっている。その上、内から鍵をかけられるようにも。
    進路についての意見の食い違いで父との確執に悩むシンジへ過剰に感情移入し、高ぶる感
    情の赴くままに彼と関係してしまったのは、密室という環境も影響していたかもしれない。
    理由はどうであれ、アスカはシンジと関係し、しかも関係はその一度だけで終わらなかっ
    た。アスカは過ちを正そうと何度も決意したのだが、シンジの顔を見ると決意はたちまち
    萎え、彼に進んで抱かれてしまう。
    今ではもう、すっかり諦めてしまった。行けるとこまで行くしかないとまで、考えている。
    それに、日を追うごとに彼を好きになっていく。自分が怖いくらいに。
    心の繋がりというより、肉欲が中心の関係。歳の差もあるので結婚は難しいだろう。
    しかし、彼が卒業すれば大手を振って付き合える。そうすれば、関係にも良い変化がある
    と思いたい。
    そのために今日は、神に頼み事をしに来たのだ。


    (シンジと結婚させてください、神様。お願いします)


    アスカは壱万円札を折って賽銭箱に入れ、目を瞑り両手を合わせて祈る。
    金額の大小が願掛けに影響するわけもないだろうが、気休めにはなる。
    それが通じたのだろうか、または神様が気を利かせすぎたのか、目を開けたアスカの横で、
    ヒカリとその友人二人が興味深げにこちらを見ていた。
    まさか無意識のうちに声に出してしまったのかと思い、アスカは内心で焦りまくる。
    その反対に、変装しているから気付いていないかもといった楽観的な自分もいた。
    が、世の中、それほど甘くない。


    「奇遇ですね、惣流先生。
    あけましておめでとうございます」


    「そ、そうね。こんな偶然、笑っちゃうわね。
    あははははははは・・」


    変装をいとも簡単に見破られた動揺のあまり、新年の挨拶も忘れたアスカの顔は自分でも
    分かるほど引きつり、声はうわずる。自分で何かあると言っているようなものだ。
    事実、ヒカリは意味ありげにニヤリとして言った。


    「ほら、やっぱり惣流先生じゃない。
    私の言った通りでしょ?」


    「さっすが、ヒカリね。
    わたしは、絶対別人だと思ってたわ」


    「尾けてきて正解よね。
    でも、なんで髪の毛を黒く染めてるんですか?先生」


    ヒカリは、確実に見破っていたわけではない。探りを入れただけ。とぼけてしまえばよかっ
    たと後悔したが、すでに遅い。何とか言い訳をしなければ。
    アスカの目が空を泳ぎ、ヒカリ達の背後で待っている仲間連れらしき中年女性数人が、何
    をしているのかと目で訴えているのを捉えた。これは使える。


    「こ、ここじゃ他の人達に迷惑だから、場所を変えましょ。
    さ、行くわよ」


    「あ、先生、待って!」


    急いでいるふりをして彼女達を振り払ってしまえば、この人混みである。再び自分が見つ
    けられることはないだろう。後で聞かれたら、


    『ご免なさい。
    アタシも一時間くらい探したんだけど、あの人じゃあね』


    などと言って誤魔化してしまえばいい。
    そう考えたアスカは、わざと人の多い場所を選び、人の流れを強引に突っ切って境内を抜
    ける。
    早くここを抜け、近くの喫茶店で待っているシンジと合流して駅に向かわないと。今日か
    ら明日にかけて、一泊の小旅行を予定しているのだから。親が厳しいので一泊しかできな
    いと言うシンジの都合のためそれほど遠くへは行けないが、初めての二人きりの遠出。
    前々から楽しみにしていたので、何が何でも旅行は中止できない。


    「もう、大丈夫かな」


    ようやく境内を抜けて後ろを振り返ったアスカは、ホッとして上着のポケットから携帯を
    取り出す。
    シンジに、これから向かうとのメールを出すのだ。駅に向かって歩きながら合流すれば、
    待ち合わせとは思われない。見ず知らずの他人が、同じ方向へ歩いているとしか見えない
    はずだ。荷物は既に旅館へ送ってあるし、他には何もいらない。あとは、合流するだけ。


    「・・・と、送信。
    よし、これでOKね。さて」


    「何がOKなんですか?先生」


    「ひぃぃぃぃっ!!」


    いきなり後ろから声をかけられたアスカは、驚いた拍子に、手にした携帯を落としそうに
    なって更に慌てる。こんな文面を見られるわけにはいかない。シンジの名もあるし、文章
    がいつもの自分とはかけ離れている。たとえシンジのことがばれなくても、イメージダウ
    ンは必死だ。


    「ほ、洞木さん。
    みんなも着いたのね、待ってたわ」


    体ごと振り返ったアスカは、ヒカリ他二名の女子生徒の笑顔に歓迎される。
    あの人混みの中をはぐれずに付いてくるとは、いずれもただ者ではない。若さ故の行動力か。


    「先生ったら、足早いから。
    でも必死で付いてきました、私達。
    教え子の鏡よね」


    「そ、そうね。みんな偉いわ。
    じゃ、アタシは急ぎの用があるから」


    「ちょっと待って、センセ。
    まだ理由聞いてないですよ。髪の毛染めた理由」


    上着の裾をヒカリに掴まれたアスカは、やはり駄目かと諦め、あらためてヒカリ達と向き
    合う。
    好奇心で輝く彼女達の目は、自分の応えを期待している。強引に逃げることも可能だが、
    数少ない自分の理解者を失うわけにもいかない。
    アスカは、真実も混ぜた嘘でこの場を凌ぐことにする。話が長くなると拙い。リニアは指
    定席。時間の遅れは許されないのだ。


    「彼が、黒の方がいいって言ったのよ。
    彼はその、あまり派手な女は好みじゃないの。これでいい?」


    「ね?言った通りでしょ?」


    「ヒカリって凄いわ。
    ことごとく当てるじゃない」


    「惣流先生の彼氏って、どんな人なのかしら。
    興味ある〜」


    「これから会うんでしょ?わたし達にも」


    「ああ、待って、みんな」


    話が変な方向に向かいそうだったので、アスカは身振りも交えて場を制した。
    いくらなんでも、もう限界だ。これ以上は付き合えない。


    「アタシは、これからデートなの。
    あなた達も、デートは邪魔されたくないでしょ?
    だから、そろそろアタシを解放して」


    二人の女の子はヒカリに視線を送り、彼女の出方を窺う。リーダーはヒカリだ。彼女が行
    動を決定する。


    「すみませんでした、先生。
    でも、休み明けに写真くらい見せてくださいね」


    「え、ええ、いいわよ」


    咄嗟に返事はするものの、今の台詞は聞かなかったことにする。見せられるわけがない。
    裏切られていることを知らない可哀相な少女達は、アスカに手を振りながら人混みに紛れ
    消えていった。
    そして安心したアスカは、小走りで駅の方向へと向かうのだった。
    ・・・が、ヒカリ達三人は、物陰からアスカの様子を窺っていたりする。ヒカリは、入学
    してから三年、学年トップスリーを維持してきた秀才。この国の最高学府にも間違いなく
    合格するであろうと目されているほど優秀な生徒。いつもと違うアスカの様子に気付かな
    い筈がないのだ。


    「また尾けるの?ヒカリ。
    そこまでしなくても」


    「わざわざ一人で初詣に来るのが怪しいわ。
    彼とデートなら、彼と一緒に来ればいいだけのことじゃない」


    「彼の都合とかは?」


    「あの変装がなければ、わたしもそう考えたけど。
    服も地味だし、絶対何かあるわ。惣流先生の彼って、大っぴらにできない関係なのよ。
    きっと、いいえ、絶対にそうだわ!」


    「ええ!
    じゃあ、数学の林とか化学の鈴木ってこともあり得るの?
    信じたくないけど」


    林も鈴木も、妻帯者ながらアスカに執心しているのは校内では有名。見た目は・・・
    ここでは割愛する。まあ、普通の中年といったところ。信じたくないという女の子の台詞
    から想像してもらえれば幸いだ。
    決して描写が面倒になったわけではない。作者を疑わないように。


    「それを、これから確かめるんじゃない。
    さ、先生の後を尾けるわよ」


    アスカに気取られないよう、見失わないように尾行する三人の少女。
    彼女達の好奇心は、とんでもない事実を発見することになる。






    初詣に行った神社と第三新東京駅とのちょうど中間あたりにある喫茶店あたりで、小走り
    から普通の徒歩になったアスカに、特に変化はない。人を探しているような感じはないし、
    携帯で連絡を取り合うでもない。しきりに時間を気にしている以外に、おかしなところは
    ない。
    向かう方向は、駅。駅の中で待ち合わせしている可能性もある。駅には、そのような場が
    数多いし。
    そこでの待ち合わせでなければ、更にその先。デート先か旅行先。そうなったら、追跡は
    無理だ。
    と、ビルとビルの間にある小道から見慣れた顔が現れた思った次に、アスカと付かず離れ
    ずの距離を維持してビルに向かうのを、ヒカリが確認。慌てて他の二人に確認を求める。
    が、すでに後ろ姿しか見えない。


    「あれ、碇君よね?」


    ヒカリは、他の二人に確認するように言った。
    でも他の二人には、判断がつかない。それらしいとは思うが。


    「後ろ姿だけじゃ、分からないわ。なんとなく似てはいるけど。
    彼だとしても、駅に行くだけよ。三鷹に親戚がいるらしいから、年始にでも行くんじゃな
    い?」


    「そうよね。
    惣流先生に気付いた感じもないし」


    ヒカリも後ろ姿をよく見てみるけども、服装は、ジーンズに野暮ったい上着を羽織ってい
    るだけ。とても、これからデートする服装ではない。
    それに、多少、顔がいい程度の彼とアスカが付き合うなど、想像でも無理があると思う。
    大体、何をきっかけとして付き合うのか。接点自体が見当たらない。林と鈴木は論外とし
    て、アスカの相手は、出身大学の関係者とかその辺りだと考えた方がいい。相手は恐らく
    妻帯者で、地位も名誉もあるのだろう。
    だとすれば、これ以上探るのは気が引ける。というか、洒落にならない。


    「やっぱ、偶然ね。
    教師と教え子が付き合うなんて、エッチな漫画とか映画とか」


    ヒカリは、言葉の途中でポカンと口を開けたまま、歩みも止めて固まってしまった。
    二人が駅の入り口に差し掛かったので、もう潮時と考え、おふざけもこれまでと思ったそ
    の瞬間、ちょうど横に並んだシンジの腕にアスカが自分の腕を絡めたのだ。ここまで来れ
    ば安心と、気を抜いたかのように。
    二人は、そのまま愉しげに歩いていく。そして、姿は完全に消えた。
    これから後を追っても、あまり意味はないように思える。三人の少女達は、あまりのこと
    に暫く言葉を失って舗道上に立ち尽くした。行き交う人々がチラと見ていくが、そんな視
    線も気にならないほどのショック。
    数分後、ヒカリが立ち直った。


    「まいったわね。
    とんだ結末だわ」


    ただの興味が先に立った、悪ふざけのつもりだった。
    厳しい姿勢が目立つアスカにも可愛い女の部分があると知って、少し気分が昂揚していたに
    しても、知らない方がよかったと思う。休み明け、シンジと普通に会話できる自信がない。
    シンジは、ヒカリが付き合うトウジの友人。シンジと絡むことが比較的多い。受験も卒業も
    近いというのに、困ったことだ。
    そしてそれは、ヒカリに付いてきた二人のクラスメートも同じ。


    「どうする?ヒカリ。
    秘密にするのは当然だけど、つい調子に乗って喋っちゃいそうだわ」


    「わたしも・・・
    調子いいから、わたし」


    ヒカリは、心配はそっちかと拍子抜け。
    アスカに幻滅し、彼女と関係を持ったシンジに対して辛く当たるのかと思ったヒカリにすれ
    ば、良い方向の勘違いだったが。
    でもそれなら、そんなに悲観することもない。


    「卒業式までよ。それまでに沈黙を守れば、わたし達は平穏なままに卒業できるの。
    余計なトラブルは、ご免でしょ?受験にも響くわ」


    「そうよね。ヒカリの言うとおりだわ。
    わたし、今日見たことは忘れる」


    「わたしも。
    騒ぎ起こして、クラスのみんなに迷惑かけられないし」


    「じゃ、決まりね。
    以後、この話題は一切厳禁よ。卒業式終了まで!」


    「「了解!」」


    三人の誓いは固く護られ、アスカとシンジの付き合いは、卒業式終了まで誰にも明かされる
    ことはなかった。
    そう、卒業式終了までは。
    卒業式終了後、教室に集まったクラスメート達全員の前で関係をばらされた後の騒動につい
    ては、ご想像にお任せしたい。
    ただ、シンジは男子生徒達全員から手荒な祝福を受け、制服と髪の毛が滅茶苦茶になったこ
    とは確かである。
    中には、嫉妬から本気で殴ろうとした者もいたとかいないとか。
    それを、シンジの旧き友人二人が止めようとして混乱に拍車がかかり、男子ほとんどを巻き
    込む殴り合いの喧嘩に発展したとかしないとか・・・
    全ては、思い出の彼方。
    惣流アスカと碇シンジの結婚式で語られた、懐かしいエピソードの一つ。












    おまけ


    「駅に入った途端に腕組むなんて、ちょっと早かったんじゃないですか?先生」


    「我慢の限界だったのよ。
    それと、その先生っての、いい加減にやめて。言葉使いもよ。
    変なプレイしてると思われたら、恥ずかしいじゃない」


    「で、でもさ」


    「アタシ達、付き合ってんのよ?
    学校を離れたら名前で呼んでって、何度言わせるつもり?
    これから先生って言ったら、返事しないから」


    「そんな〜。
    勘弁してよ、せ、じゃなかった。
    ア、ア、ア、ア、ア・・スカさん」


    「”さん”は、いらない。
    ま、合格じゃないけど、とりあえず許してあげる。
    その代わり、向こうに着いたら、たっぷり可愛がってね。シンジ」


    「わ、分かりまし、
    いや、分かったよ、ア、アスカ」


    「その調子よ。
    もう一息ね」


    快調に走り続けるリニアの中、アスカはシンジの肩にもたれかかるようにして、体を預ける。
    そしてその姿勢は、彼らが目的地に着くまで変わることはなかった。
    彼らが時折交わす怪しげな会話に、家族連ればかりの周囲が引きまくったのは、言うまでも
    ない。







    でらさんからあけましておめでとうのお話をいただきました。

    これは‥一年の節目というか、一生の節目となったようですね。
    らう゛に開眼するとバカップルになってしまうのも実にLASですね。いいお話であります。

    読み終えたらでらさんに年の初めの感想メールなどぜひ。

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