メタモルフォーゼ ver.7


作者:でらさん














西暦二〇一八年も終わりに近づいた一二月下旬。
ここ第三新東京市に本部施設を構える国連特務機関ネルフには、安堵とも喜悦とも言える
安穏とした空気が充ち満ちていた。三年近くにも及んだ、未知の生命体・・使徒と呼ばれた敵
との戦いが、つい一週間ほど前に終結した事実が、その最大の理由であることは明白である。
ネルフの上部組織で、セカンドインパクト後の世界を事実上統治する人類補完委員会は、南
極で使徒を産み出していた古代の超兵器が完全に破壊されたと国連議会に報告。委員会は、
役割を終えたとして解散を決定。非常措置として制限されていた、議会及び事務総長の権限
を復活させ、以後の統治を国連へと委ねたのである。
しかし、ネルフに与えられていた超法規的特権はそのまま維持され、ネルフを通じての委員会の
間接的統治は、暫く続くことになるだろう。
この裏には、使徒戦の最中でも委員会と度々対立していた有力各国との権力闘争がある。
委員会が無条件に強権を手放せば、国連はたちまちセカンドインパクト前の脆弱な体制に貶
められ、安定しかかっている世界秩序の危機となると、委員会は考えたのだ。

とはいうものの、そのようなどろどろした国際政治の舞台裏など知るよしもない少年少女七人は
今、戦いから解放された喜びと自由を満喫している。
そう、使徒との戦いで最前線に立っていたのは、七人の少年少女達。現在はいずれも一七歳で、
第三新東京市立第壱高等学校に通う高校生。
使徒と戦うために用意された人類の切り札、巨大な人造人間エヴァンゲリオンを操るために集
められた子供達。
エヴァンゲリオン、通称エヴァを動かすには特殊な資質が必要であり、それは限られた条件の
下でしか身に付かない。この七人は、その限られた条件をクリアした特別な人間なのだ。
戦いは、決して楽なものではなかった。
フォースチルドレンの鈴原トウジなどは切断寸前にまで至った怪我を左足に負ったし、セカンド
チルドレンの惣流 アスカ ラングレーは、右目に失明するかもしれないとまで言われた怪我を
負った。いずれも奇跡的に快復し、重い後遺症もないのが救い。その他の五人も重傷こそないが、
戦闘での怪我は絶えなかった。
また、未熟な精神と源とするパイロット間の諍いも頻繁で・・
特に、サードチルドレンの碇シンジを巡る、ファーストチルドレンの綾波レイとアスカの確執は、
作戦面にまで影響を及ぼしている。

だが、それらの問題もすでに過去。
戦争は終わったのだ。あとは、適切な事後処理と明るい未来が彼らを待っている・・・
はずである。




ネルフ本部 第二会議室・・


「・・・というわけで、あなた方パイロットは予備役へ退き、学校へも完全復学となります。
予備役ではありますが、機密保持の観点から警備体制の変更はありません。これまで同様、私
生活には、充分な注意を払って生活してください」


葛城ミサト三佐は、すっかり馴染んだネルフの制服を身に着け、身じろぎ一つせずパイプ椅子に
座る七人のパイロットを一通り見渡すと、資料を机に置き、ふっと、肩の力を抜いた。ミサトの弛緩
がパイロット達にも分かったのだろう。彼らも体の緊張をほぐす。
作戦部や保安部など、ネルフの実戦部隊全てを統括する作戦本部。ミサトはその頂点に位置し、
事実上、ネルフ本部No.3の地位に在る。エヴァパイロットは、彼女の直下にあって、他部署から
の干渉を可能な限り排除しているのだ。
権力志向の強い人間から見たら垂涎の的とも言える地位ではあるけども、ミサト本人は、それほど
有り難がっていなかった。
人間相手の戦争ならともかく、相手は常識の通じない未知の化け物。自分がこれまで勉強し、経験
を積み重ねて培った戦術がほとんど通用しない。事実、勝つには勝ったものの、作戦上の不備を
理由に委員会から叱責されたことも数度ある。また、面従腹背を絵に描いたようなパイロット達を
相手にすることにも疲れていた。本人達に悪気はなく、ただ精神的に未熟なだけ。だが、本来子供
が苦手なミサトにとっては、苦痛以外の何物でもなかった。世の教師達は大したものだと、ミサトは
認識をあらたにしたものである。


「質問、いいですか?」


と、シックスチルドレンの洞木ヒカリが右手を挙げ、張りのある声で問うてくる。
七人のリーダー的な立場にあるヒカリは、ミサトが一番信頼するパイロットでもある・・・
と言うか、まともな人間はヒカリ一人だとミサトは認識している。シンジも常識人であったはずなのだ
が、アスカと付き合い始めてから、どうもずれてきていると思う。


(素直だった昔のシンジ君が懐かしいわ)
「どうぞ、洞木さん」


「予備役ということですが、それは、いつまで続くんですか?」


「現在、技術部が総力を挙げて開発中のダミープラグが完成すれば、パイロットは必要なくなるわ。
それまでの我慢ということになるわね。
でも、ここだけの話なんだけど、あと一年くらいで何とかなるらしいわよ。そしたら、退職金と恩給付き
で、正式に解職ってわけ」


ミサトの話は、その場に安堵をもたらし、部屋にホッとした空気が流れた。
ほとんどのパイロットは、戦闘が好きなわけではない。普通の生活に戻れるのならば、それに越した
ことはない。


「アタシも質問」


弛緩した空気の中、今度はアスカが手を挙げる。
ミサトは、すっかり気を抜いたのか、公的な立場ではなく、フランクな口調で応えた。アスカが今、か
らかいがいのある対象であることも影響しているだろう。


「あら、幸せ一杯のお姫様が、どうしたの?
いくらネルフでも、日本の法律には口出せないから勘弁してよね」


「なに言ってんの?アンタ」


「民法改正させて、今すぐ結婚させろとか言うのかなと・・
いま、シンジ君とラブだしさ」


「アンタ、バカぁ!?
このアタシが、そんな非常識なこと言うはずないでしょ!!」


「ええ!?違うの!?
あんた達、とっくにできちゃってるから、てっきりそうかと・・」


ミサトの狼狽えようからして、単にアスカをからかったのではなく、本気で言ったらしい。それを悟った、
アスカを始めとするパイロット達は、呆れて言葉もない。
いくらネルフが法の拘束を受けない特権を持つとはいえ、むやみやたらに行使するわけではない。
やむを得ずと判断された場合にだけ、その特権は使用されるのだ。それくらい、パイロット達とて常識
として理解している。
・・・が、呆れ果てたパイロットの中で、レイが、ある言葉に反応した。


「・・・できてる?」


レイはアスカとの戦いに負けたものの、まだシンジを完全に諦めたわけではない。
そしてヒカリも、ミサトの放った言葉の意味を最大限に拡大解釈する。


「ア、アスカ、あなた」


「ちょ、ちょっと待ちなさい、二人とも。
できてるっつっても、別に」


話が変な方向へ向かいそうなので、アスカがその場を収めようとする。それを可能にする行為は既成
事実ではあるものの、現実としてアスカの体は普通の状態だし、第一、まだそこまで考えていない。
が、漫才コンビを組むこの二人が、その努力をぶち壊した。
フォースチルドレンの鈴原トウジと、セブンスチルドレンの相田ケンスケである。


「「妊娠か〜〜〜!!」」










しばらくお待ち下さい。










下品な男二人を沈黙させたアスカは、何事もなかったかのようにシンジの隣に戻ると、話を続ける。
沈黙させられた二人は、鼻から血を流し顔もあちこち腫れているようだが、気にかける人間はいない。
二人の幼馴染みであるヒカリすら、チラと視線を移しただけ。


「さて、話を戻すわ。
アタシが聞きたいのは、アタシの身柄よ。アタシは一応、ドイツ支部からの出向職員だもんね。戦争が
終わったなら、帰ってこいとか言われそうだわ」


米系独人の父と日独ハーフの母を持つアスカは、アメリカで生まれ、ドイツで育った。
パイロットに選出されたのはレイと同時期で、彼女と同様、一番の古参。当然ながらネルフドイツ支部で
パイロットとしての養成訓練を受け、本部へ派遣されてきたのは、使徒戦勃発直前。それも出向扱い。
本来ならパイロットは全て本部所属のはずで、出向も何もない。現にアメリカ支部で養成されていたフィ
フスチルドレンの渚カヲルは、本部に異動という形を取っている。アスカの例が異常なのだ。本部に対抗
意識を燃やす、ドイツ支部の不穏な思惑の現れとも言える


「それは大丈夫よ、アスカ。
あなたの身分は、正式に本部へ移籍させてあります。ご希望なら、考えられる最短の手続きで日本国籍
も取得できるわよ」


「国籍か・・
ま、それはいいわ。あともう少しすれば、自然に取れるから」


「へ〜、そんな制度があるんだ」


シンジが感心したように、とぼけた声を発した。何か、盛大な勘違いをしているようだ。
アスカの言葉は、この場にいるシンジ以外の全ての人間は理解している。言葉に対する反応は様々だが。
それはともかく、アスカはシンジに一言。恋人ながら、情けない。


「なに言ってんの?アンタ」


「日本に何年か住んでれば、自動的に国籍くれるんだろ?」


「そんな脳天気な法律や制度が、どこの国にあるってのよ」


「え?違うの?」


「アタシがアンタと結婚してアンタの籍に入れば、国籍取れるってこと。
少し考えれば、分かるでしょ?」


「結婚!?
いつするんだよ!僕、全然考えてないよ!」


「アンタと話してると、疲れるわ」


初めて会った当初に比べれば体も心も成長したシンジではあるが、基本的な部分には、あまり変化がな
いようだ。
アスカは、シンジをパートナーに選んだのは間違いではなかったかと一瞬思い、すぐにそれを打ち消した。
彼の顔を見たら、やっぱり自分には、この男しかいないと思う。それに、まだ人生は長い。シンジの成長を
見守りながら彼と同じ道を歩むのも、悪くない。


「とにかく、考えといて。
猶予は、あまりないわよ」


「わ、分かった」


まだ一七歳の自分に何を考えろと言うのかシンジは今ひとつ掴めないが、返事だけはしておいた。
それが最良の選択であることは、間違いないだろうから。








「シンジ!こっち、こっち!
早く、来なさいよ!」


停泊中の航空母艦。気温は高いものの、洋上を吹く僅かな風が心地いい。
その甲板上を、丈の短いレモンイエローのワンピースを着たアスカが駆けてゆく。
腰まで届きそうな見事な金髪が揺れ、芸術品に例えられる脚線美が惜しげもなく甲板上の兵士達に披露
されている。
が、彼女の後を追いかけるシンジは、気が気ではない。使徒戦で怪我を負ったアスカの右目は快復して
いるものの、まだ完全ではない。突然に視力が低下することもあるのだ。
そしてシンジの心配した通り・・


「アスカ!そんなに走ったら、危ないって!
まだ、目が完全に」


「きゃっ!」


アスカは、何かに躓いたように甲板へ身を躍らせてしまった。
全力で駆け寄るシンジは、アスカの体に手を回して抱き起こすと、怪我はないか一通り彼女の体を見回す。
幸いにも、膝を少し擦りむいたくらい。他に怪我らしい怪我はない。


「危ないって言ったじゃないか」


「だって・・
シンジと初めて会った場所だから、嬉しくて」


はにかむように自分を見上げてくるアスカは、暴力的なまでに可愛い。ここが衆目の集まる場所でなかった
ら、このまま押し倒したいくらい。
思えば、アスカも変わった。ここで初めて顔を合わせた当時の彼女は、顔は綺麗だが高飛車で口の悪い、
いけすかない少女だった。それはアスカも同じだったようで、自分を、はっきりしないひ弱な少年と侮蔑すら
したそうだ。お互い、第一印象は最悪に近かった。
それが今は、離れられないほど結びついた恋人同士。
時の流れは、予期せぬ未来を提供してくれた。万感の思いが、シンジの胸を圧する。


「・・・僕も嬉しいよ」


向かい合った顔は自然と近づき、唇が合わされた。暇な兵達が、口笛や歓声で二人を冷やかす。
映画のワンシーンのような光景に、同行した他のパイロット達は祝福をこめて優しく見守って・・・
なんてことはなく、ただ呆れている。


「なんや、見せつけられに来たみたいやな、ワイら」


「だから俺は、あの二人を外そうって言ったんだ。
こうなることは、目に見えてたじゃないか」


ケンスケは、予想通りの展開に溜息しか出ない。
ここは、国連軍太平洋艦隊旗艦オーバーザレインボーの甲板上。約三年前、パイロット達が初めて一堂に
会した場所。
今日は、久しぶりに寄港した思い出の艦に、使徒戦の褒美の一つとして訪問させてもらっている。

アスカは、ドイツからこの艦に乗って日本まで来ている。当初は、エヴァ専用の輸送機を使い、ドイツ支部
で建造されたエヴァ弐号機と一緒に来日するはずだった。数ヶ月後に迫った使徒戦開始に備え、パイロット
同士の連携を確立するため、全員を招集して合同訓練を行う予定であったからだ。
だがドイツ支部は、輸送機が不調とかアスカが航空機アレルギーとか屁理屈をこねて洋上輸送を主張。
本部の決裁を待たずに国連軍へ依頼し、艦隊を動かす経費まで払って出航させてしまった。完全な嫌がら
せである。
だがその嫌がらせを、本部は逆に利用。日本の領海に入る寸前に完全武装した保安部の部隊とミサトを
戦略自衛隊の協力を得て艦隊に送り込み、領海に入った時点で、アスカと弐号機の引き渡しを、同乗して
きたドイツ支部全権代表に要求したのである。艦隊の近くには、これまた戦闘態勢に置かれたエヴァ六機
が輸送艦で待機していた。
始めは、あからさまな恫喝に反発していたドイツ支部代表であるけども、国連軍が協力を拒否すると態度を
一変。慌てて、引き渡しの書類にサインしている。
その後、パイロット達はオーバーザレインボーに全員が集合。アスカとの対面を果たした。このとき起こった
イベントは、一つや二つではないのだが、それは別の機会に語られることだろう。


「せやかて、ここは、あいつらにとって思い出の場所やで。
外す言うたかて、あいつらが・・
特に惣流が納得するわけないやないかい」


「この艦は、あと一ヶ月ここにいるんだぜ。俺達と別の日にすりゃ、問題ないじゃないか。思い出の場所は、
別にここだけじゃない。あいつらは、二人で勝手にやらせとけきゃいいんだ。
大体、同じパイロットだからって全員が一緒に行動することは」


「あ、相田君」


と、熱弁を奮うケンスケに後ろから声をかけたのは、カヲル。
いつも冷静で、シニカルな笑顔を絶やさない彼にしては珍しく、声が震えている。彼がこのように冷静さを
失うのは、レイやアスカを相手にしたときだけ。ネルフ総司令に対してでさえ傲岸不遜な言葉を投げつけ
る彼も、この二人の少女は苦手のようだ。


「なんだよ、渚・・
うっ!あ、綾波!」


振り向いたケンスケに目に映ったのは、カヲルではなくて、レイ。
警告を発したカヲルは、ヒカリと共に背を向けて歩き去っていた。最近、あの二人が付き合い始めたらしい
との噂は、本当だったようだ。
そんなことはどうでもいいが、レイの顔が恐い。元が異常に綺麗な顔だけに、生半可な恐怖ではない。


「碇君とセカンドを二人きりにしては、危険だわ。
碇君が襲われたら、誰が責任をとるの?」


「お、襲うって・・
普通は、逆だろ?惣流が危険なんじゃないのか?」


「危険なのは、碇君。
私の言うことに文句あるの?変態メガネ」


「い、いえ」


レイは言うだけ言うと、未だキスを続けるアスカとシンジの方へ向かって歩いていった。これから、もう一騒
ぎあるだろう。
アスカに対抗したようなミニの白いワンピースと、ほどほどに肉の付いた太腿が目に眩しい。痩せすぎの
きらいがあり、綺麗なものの女性としての魅力に乏しかった三年前から比べると、隔世の感がある。
とはいえ、ケンスケにとって友人以上の存在ではない。自分を慕ってくれる年下の彼女もいることだし。
ただ気になるのは、彼女の性格。近頃、感情の起伏が大きくなってきたように思えるのだ。しかも、きつい。
以前は儚い花のような印象のあったレイだが、今は美しくて刺々しい薔薇みたい。


「おい、綾波の性格、変わってないか?
滅茶苦茶きついぜ」


「シンジにふられてからやな、あんなんなったんは。
ワイも、筋肉馬鹿あつかいやで」


「変態メガネよりマシだよ」


ケンスケは、キスする二人に茶々を入れトリオのコントを始めたレイを見て、戦いが終わった安堵を実感する。
変態メガネはきついけども、戦闘の緊張と恐怖よりはマシ。それに、感情の存在すら疑ったあのレイが変わっ
たのを見ると、戦争も悪いことばかりではなかったと、今は思えるのだ。


「なあ、トウジ」


「なんや」


「お前、まだミサトさんに憧れてるのか?」


ケンスケは、トウジと二人になったところで、話を変えた。
トウジとは、小学校以来の付き合い。
でも最近は彼女と過ごす時間が長くなり、トウジと落ち着いて話したことがなかったから。


「憧れてるのは確かやが、憧れは憧れや。
いつまでも馬鹿やっとれんしの」


「将来のこと、考えてるのか?
意外だな・・」


「なんやねん、それ」


ケンスケは、トウジが先のことを考えているとは意外だった。
良いにしろ悪いにしろ、行き当たりばったりが彼の信条だと思っていたからだ。


「惣流は、どこまでもシンジに付いていくやろ。シンジかて、何があっても惣流を離さへん。
洞木は、渚と早く結婚して専業主婦に収まるかもしれへんわな。ケンスケは、町の写真屋とか開きそうな感じ
や。綾波は、リツコはんみたいな、ごっつい科学者になるんやないか」


「えらく冷静に見てるんだな。
当のお前は、どうなんだよ」


「まだ誰にも話してへんが、夢は、あるんやで」


「ほう・・
どんな夢だ?」


「ずばり、医者や!
ワイは医者になって、世の難病すべてを征服したるんや!
どや、ごっつい夢やろ!」


トウジが何を思って医者を目指すかは知らないが、彼の成績を知るケンスケは、夢の実現が相当に困難な
ことを知っている。一応は進学校に籍を置くものの、一流の医学部を目指すにしては、かなり物足りない。
そのケンスケにしてみれば、この言葉しか言えない。


「ま、頑張れよ」


「おう、やったるわい!
ワイが医者になったら、世の中から病気をなくしてやるで!
だ〜っははははははははは!!」




この時ケンスケは、トウジの言葉をまともに受け取ることはなく、彼が医者になるなどあり得ないとまで考え
ていた。
だが数年後、トウジは見事に国立大の医学部に合格し、現役で医師免許試験にも合格している。
驚愕すべき事象は、その後も続き・・
トウジは、治療が困難とされた難病の一つの完全な治療法を確立。博士号まで取得しているのである。
ケンスケは、取材を受けるトウジをテレビのニュースで観て、学者然とした姿が板に付き標準語で話す彼に、
開いた口がふさがらなかったという。


「こ、これがトウジか・・
信じられん」


「お父さん。この人、お父さんの知り合い?」


「あ、ああ。
昔の友達だよ。昔のな」


「ふ〜ん・・
すごい人と友達だったんだね、お父さん。昔から勉強できたんでしょ?この人」


「いや、それがその、なんと言うか・・」


まだ幼い娘の夢を壊すのも忍びないし、友人の名誉もあるしで、ケンスケは説明に苦慮するのだった。





でらさんからトウジ変身小説をいただきました。

標準語を話す知的なトウジ‥‥‥かつてここまで過激な変身がエヴァ小説界にあったでしょうか(w

ケンスケも説明に苦慮したことでしょうね。
しかし「昔はそんなでも無かったけど、一所懸命努力したからすごくなったんだよ。おまえも努力すればすごい人になれるんだよ」
って言えば教育的なような気もしますが‥‥‥。

素敵なお話を書いてくださったでらさんにぜひ感想メールをお願いします。